平安期を舞台にしたドタバタ恋愛絵巻かと思っていたのですがー。
意外や意外、かなり真っ当に推理ミステリしてませんか、と。
姿の見えない13番目の楽器と、その楽器が置かれた部屋で起こった神隠し。
そして真相への突破口となる恋歌に重ねられた意味とかー。
雰囲気や精神論で押し切ることの少なくないコバルト文庫において、なかなかに本格志向ですわ。
きちんとトリックを考えられているという点で。
13番目の楽器については「目に映っていても見えないモノ」系のトリックですし、割に古典的なものではあるのですけれど、それにしたって展開においては裏を取るように進められていますし一筋縄では消化していないところが好感。
ことに恋歌への裏の意味を重ねてくるやりかたは、これでこそ平安絵巻!ってカンジで楽しいな~。
現代を舞台にした推理ミステリには無い風流さが漂ってくるといいますかー。
キャラ配置も好き~。
天才肌の探偵役の姫様に振り回される、凡人代表の助手役である恋人たち。
馨子姫は天才肌ってだけでなく自由奔放で型破り。
常識にとらわれない言動は見ていて飽きませんしー。
そんな姫様に振り回される乳姉妹の宮子は少しおっとりなところはありますけれど真面目で堅実路線な憎めない良い子ですしー。
宮子の許嫁の真幸にしたって、そんな宮子にお似合いの誠実さをカンジさせる好青年。
んがしかし、そんな爽やかな彼ですけれど両親を海賊に殺されているという過去を背負っていますし、さらには主家に残った男手が自分ひとりだということを受け入れて姫や宮子を守ろうと決心している様は立派すぎ。
今回の事件関係者である有子姫も散々振り回してくれたにしてもその真意を知れば他人を思いやることのできる人だとわかりますし。
主要キャラに嫌味が無いところが好感なのかな~。
読んでいて変にストレスが溜まらないっちうか。
宮中に上がった宮子がどんな騒動に巻き込まれるのか楽しみデス。
毎回今作と同レベルのトリックを配するのは難しいでしょうし、常に300ページ越えというのもコバルトでは異例にもなりますでしょうから、次は少し軽めな頃合いでも良いのかも~。
ちょうど真幸とは引き裂かれて、そこへ次郎の君がちょっかいをかけやすいシチュエーションですし、次は恋愛要素を増量しても……(笑)。