医学専門誌に連載していた中高生向けの読み物……と聞いていたので、現役の海堂センセが医学のなんたるかを易しく語り「目指せ、ジェネラルルージュ!」みたいな激励を贈る作品かと思ってましたー(笑)。
したら、あーた。
人生の教訓を集めて諭すあたりはなるほど中高生向けだなぁ……と感じたのですけれども、いや、ちょっと、これって普通にセンセの「桜宮市と東城大付属病院」を舞台にしたシリーズじゃないですか!
しかーも。
はじまりはやはり教訓めいたことを説話としてつなぎ合わせているだけで、その舞台や背景にはそれほど意味はないのかなーと思っていたのですけれど、大間違い。
クライマックスでのシリーズとの関わり具合が半端無くて、一気に感情を持っていかれましたよ!
こういう装幀ですし、出版社も異なるので仕方がないかもですけれど、この本を海堂センセの作品としてはじめて手にする人も少なくないのではないかなぁ……と。
あぅぅぅ……もったいない。
是非とも『ナイチンゲール』『ジェネラルルージュ』を読んだあとに手にして欲しいトコロ。
そうすることで、クライマックスが持つ意味が何倍もふくらんでくると思うー。
まさかオレンジ新棟がねぇ……。
でもって如月翔子ちゃんが師長ですか……。
『チーム・バチスタ』を読んでもいまひとつ理解したとは思えなかった「アクティブ・フェーズ」と「パッシブ・フェーズ」の仕組みというか本質?みたいなものがようやくわかりました。
さすが中高生向け……っちうことは、わたしの読解力はティーンレベルということですか、そうですか(T▽T)。
突然に不相応な社会的地位を与えられた中学生が父親をはじめとする正しい人に支えられて失敗を乗り越えつつ、正しくない人と立ち向かう決心をするお話。
語られているいくつかの教えのなかでわたしが好きなのは――
「エラーは気付いた瞬間に直すのが最速で最良だ」
「悪意と無能は区別がつかないし、つける必要もない」
――のふたつです。
特に後者は明言だと思ってます。
戦いを決意するのに迷ってはいけないということでもあるような気がするので。
それが敵であるならば、相手の立場が動であろうと打ち負かし勝たねばならないのですし。
医学ミステリーと銘打たれていますけれど、それは海堂センセのこれまでを持ち上げすぎて内容とは乖離してないかなーという印象が。
この作品は、もっと、こう、少年の成長譚な部分とか、言質や修辞などの筆致の妙に楽しさがあるのではないかなーと。