楽しかった、面白かった……というには届かなかったカンジ。
でも、その着想と、実際に物語に顕したという実現度には賞賛を!
古くから不思議なことが起こる街で催される「算数杯」。
伝えられる遺題を解き合う競技が、じつは宇宙の法則に繋がっていた!?
算数杯に挑む小学生たちが、宇宙を構築する「数」の秘密に迫りながら、彼らが住むこの宇宙を守り抜く冒険小説。
いや、も、この「数学」+「冒険」って構成に脱帽。
リーマン予想が世界を、宇宙を救う!ですよ??
なにをどうしたらそうつながるのか……。
だけれども、おおざっぱに言って「世界は数学で成り立つ」という主張には、真に理解できなくてもわたしは納得してしまいました。
証明するということはまさに数学的解釈でしょうし、存在の中身は数のハズですから。
しかも着想こそ意外性を感じながらも、その物語構成や展開はジュヴナイルのそれに見事に収まっているあたりもスゴイ。
つまるところ――
変わらない日常がある日突然来訪者によって壊され、予想もしない出来事に巻き込まれる冒険がいやおうなしに始まって、危機に際しては仲間と手を取り合い前に進み、オトコノコはオンナノコを助けに行くし、オンナノコはオトコノコに夢を託し、みんなの願いがひとつになって勝利を得る!
――みたいな。
これを数学ネタでやってしまうんですよ?
なんという構成力か!(笑)
さらに結びが秀逸。
この冒険を通して少しだけ大人になった少年少女たちには、少しだけ苦い現実が相応しい――そう思える結びなのです。
でもそれは悲しいことではなくて、いつかまた出会える約束の物語。
……ああ、これはやぱし、通過儀礼の物語でもあったのだなぁ。
結局、わたしにはリーマンもオイラーも理解できませんでした。
けれど、そこに深い物語が流れていることを感じます。
こういう本と幼い頃に出会えていたら、もう少し違った人生があったかもなぁ……とか、おこがましくも思ってしまいます(^_^;)。
数学を楽しむのではなく、冒険を楽しんでください。
そんな物語です。