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 十数年前、静かな田舎町で起こった少女殺人事件。
 事件の関わった者たちが「あのとき他に何が出来たか」「どうすれば良かったのか」と懐古の念に囚われ、現代までその想いを引きずってしまう悲劇。
 忘れようとしても忘れさせてくれない呪いのような想いが向けられ、それがまた次の悲劇を生む連鎖となってしまうという……。


 当事者の独白で過去の出来事が明らかにされていくというスタイルは『告白』でもお馴染みの湊センセらしい構成でした。
 ただ、そのぶん内容をどうしても『告白』と比較してしまうのですよねー。
 んー……正直、明らかにされていく展開、真実などが凝りすぎているカンジがして。


 個々のエピソードとしてはそれぞれが興味深い内容を披露されていっているのデスヨ。
 でも、エピソードをつなぐ大筋の中での要素がわかりにくいような……。
 凝っているようでいて、しかしそのせいで迂遠すぎるっちうか。


 今作は、事件当時その場に居合わせながら愛娘を救えなかった同級生たちを「人殺しと同じだ」となじる母親と、その言葉を呪いのように受け止めてしまいその後の人生を「贖う」ために生きることになってしまった同級生たちの悲劇なのですよね。
 誰が悪かったというものでもないのだけれど、かといって全て善かったワケでもなく。
 もちろん確かな「悪」は犯人であることは間違いないのですけれども。

 善でもなく悪でもなく、ただ世の中ってうまくいかないものだなぁ……というやるせなさを感じるのもセンセの作品の特徴ですか。


 特徴といえば「大衆の無作為の悪意」みたいなものもありますね。
 集団心理の凶暴性というか、無責任であるがゆえに放たれる善意を装った攻撃性というか。

 生徒を助けるための行動について激しい非難にさらされた教諭の──
──あなたたちの子どもなど、助けなければ良かった。

 ──という声はあまりにも痛烈です。


 行動を起こせば必ず結果が発生します。
 結果があれば、大衆は各々が好き勝手に自分の気持ちをぶつけることができてしまいます。
 それが、いまの世の中でいうところの「自由」というもの、らしい、ですから。
 批難を望まないのであれば(望む人なんているのでしょうか?)、行動しなければいいのです。
 行動しなければ結果も生み出されませんから。


 世界に漂う停滞感というものは、そんな「自由」な空気が生み出したものなのかも。

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