女性差別撤廃委員会の総括所見
(最終コメント、最終所見等と訳している場合有り)が出たことを受けた、各報道機関のネット記事が確認できるようになってきた。出た順に並べてみよう。
しんぶん赤旗(2009年8月19日)
短いが、指摘事項全般に言及し、日本政府の取り組みが鈍い点を指摘した記事。ただし、民法や雇用には言及しているが、選択議定書・「慰安婦」・性暴力ゲームへの言及無し。
asahi.com(2009年8月20日9時5分)
これも、指摘事項全般に言及した記事。しかも、民法・雇用・選択議定書・「慰安婦」・性暴力ゲームを網羅して言及。
時事ドットコム(2009/08/20-16:51)
取り組みが遅いことと、民法・選択議定書のみ言及。
共同通信(配信先は47ニュース・産経他、2009/08/20 22:42)
民法と雇用しか言及してない。「厳しい内容で、政府は迅速な対応を迫られそうだ」って、他人事っぽい表現に見えるような?
毎日新聞(2009年8月21日 12時51分 更新:8月21日 14時5分)
なぜか、「20日、
(略)最終見解を出した」 ことになっている
(この箇所、見落としていてコメント欄のご指摘により追加、ありがとうございます)。雇用に関する言及がほとんど無いような? 一応、民法・性暴力ゲーム・「慰安婦』問題への言及はあるが、選択議定書は無し。そして、どうしたことか、「女性が離婚後、6カ月しないと再婚できない民法733条の規定を撤廃するためただちに行動することなどを勧告」と出だしに書き、インタビューもそれに絞った、民報733条撤廃に極端に焦点を絞っている記事。
・
‥
…
……キョロキョロ。読売さーん?
「大手小町」の中(これ、解りやすい新聞社だとかなりうけてしまった…うけている場合でもないかもしれないけど)の「とれたて!ミックスニュース」のコーナーにて、『
女性参画、日本の遅れ指摘…国連』というタイトルで、『委員からは「日本全体で女性の参画は進んでいないのではないか」などの意見が出された』と簡単にしめている記事が、2009年
7月25日付で、あるだけで
ある。*19:40追記;19時07分付でようやく、「国際」から記事が出ました。
『
婚姻可能齢など差別是正を、国連委が日本に勧告』
国連の女性差別撤廃委員会は20日、日本における女性差別是正に向けた「最終意見」を公表し、女子の婚姻可能年齢を現行の16歳から男子と同じ18歳とすることや、女性が離婚後6か月経ないと再婚できないと規定した民法733条を改正することを勧告した。(後略)
こちらも21日報道組の毎日新聞と同じく、勧告が「20日」に出たことになっていてびっくり(^^;
わたくし、18日にこの総括所見でエントリ上げてますけど?略した部分には、『日本政府は勧告に沿った対応が必要となる』とあり、性暴力ゲーム・慰安婦に言及。選択議定書と雇用に関しては言及無し。民法の言及はあっても、別姓には言及無しでもある。
ついでに、
朝鮮新報(2009.8.21)
「慰安婦」問題に焦点を絞った記事。ここはまぁ、仕方ない。
以下、『
アジア女性資料センター - CEDAWが日本政府審査の総括所見を公表』2009-08-18付から、主なポイントの要約をお借りする。
●主要な懸念
条約のすべての条項を系統だてて実行するという政府の義務を果たすよう、あらためて求める。
●前回の勧告
2003年の審査で勧告された事項が、十分に取り組まれていないことを遺憾とし、前回の勧告実行を求める。
●差別的法規
男女で異なる最低婚姻年齢、女性のみに課せられる再婚禁止期間、選択的夫婦別姓、民法その他法規における婚外子差別などの差別的規定が、前回勧告を受けたにもかかわらず、いまだに改正されていない。世論を言い訳にせず、条約上の義務に従って即座に行動すべき。
●条約の法制化
女性差別撤廃条約が、法的拘束力をもつ重要な国際人権法であることを、日本政府は認識すべき。条約のすべての条項を国内法制に迅速に取り入れること、法律家や公務員が条約への理解を深め実践するよう啓発を行うことを求める。また選択議定書の批准を検討するよう勧告。
●差別の定義
国内法に女性差別の定義が欠けていることを改めて懸念、条約1条に基づく差別定義を迅速に取り入れるべき。
●人権擁護機関
男女平等も視野に入れた独立人権擁護機関を迅速に設置すべき。
●国内推進機関
ジェンダー平等を推進する男女共同参画局などの機関を機能強化するため、責任と権限の明確化、調整機能の強化を行うべき。第三次男女共同基本計画の法的枠組みとして女性差別撤廃条約を活用し、モニタリングメカニズムを設けること。
●暫定的特別措置
女性の雇用、公的領域への参加、意思決定への参加を促進するため、委員会一般勧告25号に沿って、暫定的的特別措置を設けるよう勧告。
●ステレオタイプ
女性の人権に対する政府内の「バックラッシュ」に懸念を表明。メディアや教育における男女の役割に対するステレオタイプを取り除くため、教科書の見直し等の取り組みを行うこと、また、公人による女性差別発言の頻発や、女性を性的対象とするポルノグラフィー、メディアにおける女性差別表現に対する政府の取り組みを求める。
●女性に対する暴力
女性に対する暴力に関する意識啓発、データの収集と調査にもとづく介入を行うよう勧告、法執行官や医療関係者等が十分な知識にもとづく支援を行うよう求める。DV法があらゆる形態の親密な関係の暴力を対象としていないことを指摘、保護命令の発行を急ぐこと、暴力被害者のための24時間ホットラインや質の高い支援を提供するよう勧告した。特に、移住女性やマイノリティ女性、弱い立場にある女性の状況に懸念を表明し、弱い立場の女性たちに対し、被害の届け出等について支援を行うほか、暴力防止の意識啓発を行うよう求める。性暴力の親告罪規定の撤廃、強姦罪の法定刑引き上げ、近親かんを性暴力犯罪として規定することを勧告。
●性暴力ポルノ
ゲームや漫画が児童ポルノ禁止法の対象外となっていることに懸念を表明、性暴力を当たり前かのように扱うビデオゲームや漫画の販売を禁止するよう、日本政府に強く求めるとともに、児童ポルノ法の改正を求める。
●日本軍「慰安婦」
被害者への補償、加害者の処罰、公衆教育など、問題の持続的解決措置を求める。
●人身売買、売買春
人身売買や売春搾取の被害者に対する保護やリハビリ、社会統合支援を強化するとともに、女性の経済状況の改善など、人身売買の根本的解決の努力を求める。
買春需要の抑制、売春女性の社会統合、リハビリ、経済的エンパワーメントなどの支援を勧告。研修生・技能実習生が人身売買の温床となっていることを指摘、モニタリングの継続を求める。また、人身取引防止議定書の批准を勧告。
●政治・公的活動への参加
政府や議会、法曹や学術領域の上位に就く女性が少なく、マイノリティ女性の公的活動参加に関する統計の欠如について懸念、事実上の男女平等な参加を確保するため、さまざまな手段による取り組みをもとめる。
●教育
教育基本法が改正され旧5条が削除されたことに懸念を表明、教育における男女平等実現のため、ジェンダー平等の条項を再度取り入れることを真剣に検討するよう日本政府に求める。非伝統的領域における女性の教育・キャリア機会を拡大すること、第三次男女共同基本計画において、大学教職における女性割合を現行の 20%から引きあげ平等を達成するよう勧告。
●雇用
労働市場における女性差別と賃金格差、出産・育児を理由とする違法な解雇、セクシュアルハラスメントの横行に懸念を表明。また、「雇用管理区分」が女性差別の抜け穴となっていること、ILO100号条約にもとづく同一価値労働同一賃金の原則が国内法規に欠けていること、セクハラ防止義務違反に対する制裁措置の欠如、差別是正のための法的プロセスに時間がかかりすぎることなどを批判した。
事実上の男女平等の達成を優先課題とし、女性の雇用・昇進機会を拡大すること、賃金格差の是正、違反企業への制裁強化、および救済手段の整備を勧告。
●ワークライフバランス
男女間の平等な家族責任と雇用の分担を促進し、女性がパートタイムに集中する状態を改善すること、保育施設の改善、男性の保育を促すことを勧告。
●健康
女性の性感染症の増加、若年の中絶の増加を懸念。特に若い世代に対し、セクシュアルヘルスに関する教育・情報・サービスを提供すること、中絶を非犯罪化することを勧告。
●マイノリティ女性
アイヌ、部落、在日コリアン、沖縄など、マイノリティ女性の教育、雇用、健康、福祉、暴力などに関する情報の欠如に遺憾の意を表明。マイノリティ女性への差別を撤廃するため、意思決定機関にマイノリティ女性の代表を加えることを勧告。
●弱い立場の女性
農村女性、シングルマザー、障害女性、難民女性、移住女性など、複合差別に遭いやすい弱い立場の女性について情報統計を提供し、特別なニーズに応じた政策をとるよう勧告。
●その他国際文書
北京行動綱領、ミレニアム開発目標、その他の国連人権条約を活用すること、移住者の権利条約を批准することを勧告。
『
FEM-NEWS : 女性差別撤廃委員会、日本政府にお灸』8月19日付にて、総論部分である20条の和訳を掲載してくださっていた。
■20条
女性差別撤廃条約は、女性に対する差別をなくしてゆくための、最も適切な法的拘束力を持った国際文書である。
委員会は、日本政府に、ただちに次の方策をとることを要求する:条約が国内の法制度において完全に適用されるようにすること、国の法規に条約の条文が完全に一致するようにすること。その際、必要ならば制裁を含めること。
さらに委員会は、日本政府に勧告する:裁判官、検察官、弁護士が、条約の目的・内容をよく理解し、司法の中で使えるようにするため、条約や委員会勧告の周知徹底に努力をすること。
加えて委員会は、日本政府に勧告する:公務員に、条約と男女平等を周知徹底させ、さらに条約と男女平等についての能力を高める研修を提供するような方策をとること。
繰り返しになるが、委員会は、日本政府が条約の選択議定書を批准するよう勧告する。そして、委員会は、選択議定書批准によって、条約が直接法的に使われるようになり、かつ女性に対する差別への理解を助けることになることを固く信じる。
そして同じく、『
FEM-NEWS : 女性差別撤廃委員会、日本政府にお灸』8月19日付より、「決定の場への女性参加促進」に関連する、28と42の和訳。
■28条
委員会は、日本政府に強く要求する。条約4条1節、ならびに委員会勧告25条にのっとって、あらゆる分野における決定の場に女性の代表が増えるよう、女性の雇用分野、政治的公的分野や学術分野への女性の参画について、達成しようとする数字と年月を明示した暫定措置をとること。
■42条
委員会は日本政府に要求する:実際に女性が男性と平等になるために、条約4条1節、ならびに委員会勧告25条における特別措置を実行して、政治的・公的分野における女性の代表を増やすこと。
さらに委員会は、女性が政治的公的分野の代表となることは人口の多様性を真に反映させることであると、日本政府が確信するよう奨励する。
加えて委員会は、日本政府に、次期レポートには、マイノリティの女性や移民女性を含め、女性が、政治的公的分野、学術、外交分野にどの程度参画しているかの統計と情報を提供するよう要請する。
委員会は、日本政府に求める:クオータ制や、一定基準、目標、動機づけなどの可能な方策を使うことを考慮にいれ、条約7条、8条、10条、11条、12条、14条の実行を強化すること。
さらに、『
女子差別撤廃条約実施状況の結果について | クレセントワークス[Crescentworks] 』スタッフブログさん(2009年08月19日)にて、総括所見の概要説明の後、
その他国際文書
北京行動綱領、ミレニアム開発目標、その他の国連人権条約を活用すること、移住者の権利条約を批准することを勧告。
と言うことで、
総括所見は、実に60項目に及んでいます。
前進面(肯定的側面)はわずか7項目。
これまでの委員会からの勧告を実施していないことが強く指摘されました。
差別的法規についての言及も目立ちました。
雇用も男女の機会均等を主張できる社会へと勧告は謳います。
そして、
総括所見は、日本政府に対し、
(1)民法の改正
(2)雇用・政治・公的領域等での暫定的な特別措置の2点について、2年以内に実施状況詳細報告を提出することを要請しています。
と、言うことで日本政府が速やかに勧告を守り実行するであろう今後に期待します!!!
…そうですね、期待しましょう!!!
(期待するだけは) ちなみに、今回の女性差別撤廃委員会審査へ、ロビー活動をするために多くのNGOが赴いたことについて「動員」がかけられていると批判的に見る人が結構居る様子が散見できるのだが…。1998年の国連・自由権規約委員会による「第4回日本政府報告書審査」の折に、アムネスティ・インターナショナル日本支部はこんな記事を公開していたものだ。
審査にあたっては数多くのNGOが、政府報告書の誤りや、政府が規約違反と思われる問題を隠していたり、国内で述べていることとの食い違いを報告していることを指摘すべく、独自の報告書を提出したり、オブザーバーとして委員会の委員に対するロビー活動を行なう。今回の審査においても、日本の多くの NGOがそれぞれの関心事項に基づいて活動を展開している。
また、今回の審査において、ある委員より、「これだけ多くのNGOが審査現地に来るということは、日本国内において、政府とNGOの間に十分な協議の機会が確保されていないことを示していると思われる。」という言及があったことに注目したい。この点は、「最終所見」にも明確に反映されている。今後、日本政府が「最終所見」に述べられた「勧告」を実施する際にはもちろんのこと、次回審査に向けたプロセスにおいて(政府報告書の作成段階から)、NGOとの十分な協議の機会を保障することを求めていく。
…眼を光らせないといけない、自国の代表達という状況を物悲しく感じたのであった。
余談の蛇足。
今回の女性差別撤廃委員会会期には、
「家族の絆を守る会」の会員の方達もオブザーバー参加してこられたという。「家族の絆を守る会」って何?と思われた方には、事務局長が岡本明子氏と表現すれば通じるだろうか。あの、
ネットで大量増殖した選択議定書反対運動の元となった文章「「女性差別撤廃条約」の危険性を纏めてくれました」「緊急拡散してください。ネットだけ転載フリー」の執筆者が「ジャーナリスト」の岡本明子氏だ。
『
在日韓国・朝鮮人も含めたフェミニストらは、大挙して国連に押しかけ、「従軍慰安婦」や議定書批准等々の問題について、日本政府に圧力をかけています。我々の手の届かぬ所での反日活動を展開しているのです』ということで、三野由美子・藤沢市議という方が参加したのだそうだ。ちなみに、この
「家族の絆を守る会」は、かの伊藤純子・伊勢崎市議とも仲がいいようだ。
…ブログには「のまりん」氏のコメントもあるし、こちらで同志として並んでいるサイトがああいった路線だ。 そして、『8月10日から3日間、世界80カ国余の保守が集まる、アムステルダムで開催される世界家族会議にも、私共は参加して、「従軍慰安婦」問題は嘘から始まったものであるという文書を作成して、配布してくるつもり』なのだそうである
(オブザーバー参加の箇所のリンク先参照)。結果のレポートは是非とも拝見したいと思っている今日この頃だ。
以下、『
アジア女性資料センター - CEDAWが日本政府審査の総括所見を公表』2009-08-18付から、主なポイントの要約をお借りする。
●主要な懸念
条約のすべての条項を系統だてて実行するという政府の義務を果たすよう、あらためて求める。
●前回の勧告
2003年の審査で勧告された事項が、十分に取り組まれていないことを遺憾とし、前回の勧告実行を求める。
●差別的法規
男女で異なる最低婚姻年齢、女性のみに課せられる再婚禁止期間、選択的夫婦別姓、民法その他法規における婚外子差別などの差別的規定が、前回勧告を受けたにもかかわらず、いまだに改正されていない。世論を言い訳にせず、条約上の義務に従って即座に行動すべき。
●条約の法制化
女性差別撤廃条約が、法的拘束力をもつ重要な国際人権法であることを、日本政府は認識すべき。条約のすべての条項を国内法制に迅速に取り入れること、法律家や公務員が条約への理解を深め実践するよう啓発を行うことを求める。また選択議定書の批准を検討するよう勧告。
●差別の定義
国内法に女性差別の定義が欠けていることを改めて懸念、条約1条に基づく差別定義を迅速に取り入れるべき。
●人権擁護機関
男女平等も視野に入れた独立人権擁護機関を迅速に設置すべき。
●国内推進機関
ジェンダー平等を推進する男女共同参画局などの機関を機能強化するため、責任と権限の明確化、調整機能の強化を行うべき。第三次男女共同基本計画の法的枠組みとして女性差別撤廃条約を活用し、モニタリングメカニズムを設けること。
●暫定的特別措置
女性の雇用、公的領域への参加、意思決定への参加を促進するため、委員会一般勧告25号に沿って、暫定的的特別措置を設けるよう勧告。
●ステレオタイプ
女性の人権に対する政府内の「バックラッシュ」に懸念を表明。メディアや教育における男女の役割に対するステレオタイプを取り除くため、教科書の見直し等の取り組みを行うこと、また、公人による女性差別発言の頻発や、女性を性的対象とするポルノグラフィー、メディアにおける女性差別表現に対する政府の取り組みを求める。
●女性に対する暴力
女性に対する暴力に関する意識啓発、データの収集と調査にもとづく介入を行うよう勧告、法執行官や医療関係者等が十分な知識にもとづく支援を行うよう求める。DV法があらゆる形態の親密な関係の暴力を対象としていないことを指摘、保護命令の発行を急ぐこと、暴力被害者のための24時間ホットラインや質の高い支援を提供するよう勧告した。特に、移住女性やマイノリティ女性、弱い立場にある女性の状況に懸念を表明し、弱い立場の女性たちに対し、被害の届け出等について支援を行うほか、暴力防止の意識啓発を行うよう求める。性暴力の親告罪規定の撤廃、強姦罪の法定刑引き上げ、近親かんを性暴力犯罪として規定することを勧告。
●性暴力ポルノ
ゲームや漫画が児童ポルノ禁止法の対象外となっていることに懸念を表明、性暴力を当たり前かのように扱うビデオゲームや漫画の販売を禁止するよう、日本政府に強く求めるとともに、児童ポルノ法の改正を求める。
●日本軍「慰安婦」
被害者への補償、加害者の処罰、公衆教育など、問題の持続的解決措置を求める。
●人身売買、売買春
人身売買や売春搾取の被害者に対する保護やリハビリ、社会統合支援を強化するとともに、女性の経済状況の改善など、人身売買の根本的解決の努力を求める。
買春需要の抑制、売春女性の社会統合、リハビリ、経済的エンパワーメントなどの支援を勧告。研修生・技能実習生が人身売買の温床となっていることを指摘、モニタリングの継続を求める。また、人身取引防止議定書の批准を勧告。
●政治・公的活動への参加
政府や議会、法曹や学術領域の上位に就く女性が少なく、マイノリティ女性の公的活動参加に関する統計の欠如について懸念、事実上の男女平等な参加を確保するため、さまざまな手段による取り組みをもとめる。
●教育
教育基本法が改正され旧5条が削除されたことに懸念を表明、教育における男女平等実現のため、ジェンダー平等の条項を再度取り入れることを真剣に検討するよう日本政府に求める。非伝統的領域における女性の教育・キャリア機会を拡大すること、第三次男女共同基本計画において、大学教職における女性割合を現行の 20%から引きあげ平等を達成するよう勧告。
●雇用
労働市場における女性差別と賃金格差、出産・育児を理由とする違法な解雇、セクシュアルハラスメントの横行に懸念を表明。また、「雇用管理区分」が女性差別の抜け穴となっていること、ILO100号条約にもとづく同一価値労働同一賃金の原則が国内法規に欠けていること、セクハラ防止義務違反に対する制裁措置の欠如、差別是正のための法的プロセスに時間がかかりすぎることなどを批判した。
事実上の男女平等の達成を優先課題とし、女性の雇用・昇進機会を拡大すること、賃金格差の是正、違反企業への制裁強化、および救済手段の整備を勧告。
●ワークライフバランス
男女間の平等な家族責任と雇用の分担を促進し、女性がパートタイムに集中する状態を改善すること、保育施設の改善、男性の保育を促すことを勧告。
●健康
女性の性感染症の増加、若年の中絶の増加を懸念。特に若い世代に対し、セクシュアルヘルスに関する教育・情報・サービスを提供すること、中絶を非犯罪化することを勧告。
●マイノリティ女性
アイヌ、部落、在日コリアン、沖縄など、マイノリティ女性の教育、雇用、健康、福祉、暴力などに関する情報の欠如に遺憾の意を表明。マイノリティ女性への差別を撤廃するため、意思決定機関にマイノリティ女性の代表を加えることを勧告。
●弱い立場の女性
農村女性、シングルマザー、障害女性、難民女性、移住女性など、複合差別に遭いやすい弱い立場の女性について情報統計を提供し、特別なニーズに応じた政策をとるよう勧告。
●その他国際文書
北京行動綱領、ミレニアム開発目標、その他の国連人権条約を活用すること、移住者の権利条約を批准することを勧告。
『
FEM-NEWS : 女性差別撤廃委員会、日本政府にお灸』8月19日付にて、総論部分である20条の和訳を掲載してくださっていた。
■20条
女性差別撤廃条約は、女性に対する差別をなくしてゆくための、最も適切な法的拘束力を持った国際文書である。
委員会は、日本政府に、ただちに次の方策をとることを要求する:条約が国内の法制度において完全に適用されるようにすること、国の法規に条約の条文が完全に一致するようにすること。その際、必要ならば制裁を含めること。
さらに委員会は、日本政府に勧告する:裁判官、検察官、弁護士が、条約の目的・内容をよく理解し、司法の中で使えるようにするため、条約や委員会勧告の周知徹底に努力をすること。
加えて委員会は、日本政府に勧告する:公務員に、条約と男女平等を周知徹底させ、さらに条約と男女平等についての能力を高める研修を提供するような方策をとること。
繰り返しになるが、委員会は、日本政府が条約の選択議定書を批准するよう勧告する。そして、委員会は、選択議定書批准によって、条約が直接法的に使われるようになり、かつ女性に対する差別への理解を助けることになることを固く信じる。
そして同じく、『
FEM-NEWS : 女性差別撤廃委員会、日本政府にお灸』8月19日付より、「決定の場への女性参加促進」に関連する、28と42の和訳。
■28条
委員会は、日本政府に強く要求する。条約4条1節、ならびに委員会勧告25条にのっとって、あらゆる分野における決定の場に女性の代表が増えるよう、女性の雇用分野、政治的公的分野や学術分野への女性の参画について、達成しようとする数字と年月を明示した暫定措置をとること。
■42条
委員会は日本政府に要求する:実際に女性が男性と平等になるために、条約4条1節、ならびに委員会勧告25条における特別措置を実行して、政治的・公的分野における女性の代表を増やすこと。
さらに委員会は、女性が政治的公的分野の代表となることは人口の多様性を真に反映させることであると、日本政府が確信するよう奨励する。
加えて委員会は、日本政府に、次期レポートには、マイノリティの女性や移民女性を含め、女性が、政治的公的分野、学術、外交分野にどの程度参画しているかの統計と情報を提供するよう要請する。
委員会は、日本政府に求める:クオータ制や、一定基準、目標、動機づけなどの可能な方策を使うことを考慮にいれ、条約7条、8条、10条、11条、12条、14条の実行を強化すること。
さらに、『
女子差別撤廃条約実施状況の結果について | クレセントワークス[Crescentworks] 』スタッフブログさん(2009年08月19日)にて、総括所見の概要説明の後、
その他国際文書
北京行動綱領、ミレニアム開発目標、その他の国連人権条約を活用すること、移住者の権利条約を批准することを勧告。
と言うことで、
総括所見は、実に60項目に及んでいます。
前進面(肯定的側面)はわずか7項目。
これまでの委員会からの勧告を実施していないことが強く指摘されました。
差別的法規についての言及も目立ちました。
雇用も男女の機会均等を主張できる社会へと勧告は謳います。
そして、
総括所見は、日本政府に対し、
(1)民法の改正
(2)雇用・政治・公的領域等での暫定的な特別措置の2点について、2年以内に実施状況詳細報告を提出することを要請しています。
と、言うことで日本政府が速やかに勧告を守り実行するであろう今後に期待します!!!
…そうですね、期待しましょう!!!
(期待するだけは) ちなみに、今回の女性差別撤廃委員会審査へ、ロビー活動をするために多くのNGOが赴いたことについて「動員」がかけられていると批判的に見る人が結構居る様子が散見できるのだが…。1998年の国連・自由権規約委員会による「第4回日本政府報告書審査」の折に、アムネスティ・インターナショナル日本支部はこんな記事を公開していたものだ。
審査にあたっては数多くのNGOが、政府報告書の誤りや、政府が規約違反と思われる問題を隠していたり、国内で述べていることとの食い違いを報告していることを指摘すべく、独自の報告書を提出したり、オブザーバーとして委員会の委員に対するロビー活動を行なう。今回の審査においても、日本の多くの NGOがそれぞれの関心事項に基づいて活動を展開している。
また、今回の審査において、ある委員より、「これだけ多くのNGOが審査現地に来るということは、日本国内において、政府とNGOの間に十分な協議の機会が確保されていないことを示していると思われる。」という言及があったことに注目したい。この点は、「最終所見」にも明確に反映されている。今後、日本政府が「最終所見」に述べられた「勧告」を実施する際にはもちろんのこと、次回審査に向けたプロセスにおいて(政府報告書の作成段階から)、NGOとの十分な協議の機会を保障することを求めていく。
…眼を光らせないといけない、自国の代表達という状況を物悲しく感じたのであった。
余談の蛇足。
今回の女性差別撤廃委員会会期には、
「家族の絆を守る会」の会員の方達もオブザーバー参加してこられたという。「家族の絆を守る会」って何?と思われた方には、事務局長が岡本明子氏と表現すれば通じるだろうか。あの、
ネットで大量増殖した選択議定書反対運動の元となった文章「「女性差別撤廃条約」の危険性を纏めてくれました」「緊急拡散してください。ネットだけ転載フリー」の執筆者が「ジャーナリスト」の岡本明子氏だ。
『
在日韓国・朝鮮人も含めたフェミニストらは、大挙して国連に押しかけ、「従軍慰安婦」や議定書批准等々の問題について、日本政府に圧力をかけています。我々の手の届かぬ所での反日活動を展開しているのです』ということで、三野由美子・藤沢市議という方が参加したのだそうだ。ちなみに、この
「家族の絆を守る会」は、かの伊藤純子・伊勢崎市議とも仲がいいようだ。
…ブログには「のまりん」氏のコメントもあるし、こちらで同志として並んでいるサイトがああいった路線だ。 そして、『8月10日から3日間、世界80カ国余の保守が集まる、アムステルダムで開催される世界家族会議にも、私共は参加して、「従軍慰安婦」問題は嘘から始まったものであるという文書を作成して、配布してくるつもり』なのだそうである
(オブザーバー参加の箇所のリンク先参照)。結果のレポートは是非とも拝見したいと思っている今日この頃だ。
No. 6393
いつもながらの精力的な更新、敬服いたします。
前エントリから引き続きお邪魔します。
細かいことかもしれませんが、前エントリでのコメントで、赤旗以外の各紙の報道がないことを指摘した手前、新聞社によって総括所見の公表日が異なっていることが気になります。
赤旗:"国連・女性差別撤廃委員会は18日、日本における女性差別撤廃条約の実施状況の審査の結果をまとめた「総括所見」を公表しました。"
朝日:"国連の女性差別撤廃委員会が18日、日本への勧告を盛り込んだ最終見解を公表した。"
時事:"国連の女性差別撤廃委員会は20日までに、日本に対する勧告書を公表した。"
共同:"国連の女性差別撤廃委員会は19日までに日本政府に対し(略)女性差別の完全な撤廃に向け早急な対策を求める勧告を発表した。"
毎日:"国連女性差別撤廃委員会は20日、日本の女性差別の現状に関する最終見解を出した。"
毎日が「20日」と特定していることが、他紙と矛盾してます。
いや、まあ、細かいことですが…
NGOのロビー活動に関しては、前エントリにコメントしたような日本の現状に絶望している(日本社会が自発的に変わっていくことを期待しているだけじゃ百年河清を待つに等しい)者としては、「ガンガンやってくれ」としか思いませんが、認識の違いすぎる「素で解らない」人たちには、それすらが批判材料にしかならないんですね…
ああ、なんという深い溝…
No. 6394
あ、あれ?
毎日のその部分、見落としていました。
たった今、読売のを見つけて追記しつつ、「20日だ」と書いていたのですが(^^;
共同の「19日までに」、時事の「20日までに」なら、「までに」が入っているので、まぁいいかと思えるものの、なんで20日なんでしょうねぇ?
ありがとうございます。毎日にも、ツッコミを追加しておきます。
No. 6395
やっと読売も出ましたか(^^;
「までに」って書いてくれると、「ああ、この日まで気づかなかったんだな」って思えますが、自信満々に「20日に」なんて書かれてしまうと、こちらが勘違いしていたのかと、一瞬あせっちゃいますよね(笑)
No. 6396
>quagmaさん
>日本社会が自発的に変わっていくことを期待しているだけじゃ百年河清を待つに等しい
<
「自発的に変わる」のは無理な気しかしませんねorz。
政権交代したら、少しぐらいはましになるかもしれませんが、でも、社会がこうだから…。当方、2007年から「慰安婦」問題を多くエントリで扱ってきましたが、知れば知るほど、初期から下手をうちまくり、国外へと国内への二枚舌を使いまくりですから、そりゃ、解決を目指せば外圧に頼るでしょうね。他の人権問題も、推して知るべし状態でしょう。
>自信満々に「20日に」なんて書かれてしまうと、こちらが勘違いしていたのかと、一瞬あせっちゃいますよね(笑)
<
大抵の人は、しつこく報道をありったけ見て回ったりしないでしょうし(^^;
ましてや、紙版のしか情報源にしてない人は、と思うと、怖い状況ですよね。
No. 6398
知れば知るほどひどい、てのは日本の戦後史のほかの領域にも言いうることかと思いました(笑)
なるほど、民草を上手に支配する方法として、「知らしむべからず、依らしむべし」ってのは、分断支配と並んで鉄板だなあ、と。
社会がこのていたらく、てのは、教育とメディア(サブカルも重要。だからエロゲも重要。)の問題が大きいと思っています。
ところが、現時点では国家による統制がさほどは及んでない(はず)のネットにしてこの状況、というのは、絶望も深まらざるを得ません。
その中で、碧猫さんのブログは本当に貴重なものと思っていつも拝見しております。
食い意地記事とか猫記事も、楽しませてもらってます。
No. 6401
>quagmaさん
>社会がこのていたらく、てのは、教育とメディア(サブカルも重要。だからエロゲも重要。)の問題が大きい
<
女性差別撤廃委員会総括所見に対するリアクションを見て回っていると、寝込みそうです(乾笑
女性に対する暴力に対抗し、女性の尊厳を護る立場をとるCEDAWから、それほどの強い表現で評される事態なんですけどね。改めてイクオリティ・ナウのアクション33.1(
http://www.app-jp.org/modules/about/index.php?content_id=6)を見直すと、CEDAWの勧告の方が、ジェンダーステレオタイプ強化の原因をより広範にとらえてるんですね。そして、こういう社会の中で、フィクションの創造物で制限無しに造形できるにもかかわらず、性暴力を加える対象として「女の形をしたもの」が選択され、娯楽として消費されていれば、、、まぁ、言われるでしょう。それも「性奴隷」にしたりのイベントもあるそうで…orz 同じカテゴリーで一向に解決しない問題として勧告されている件がありましたねぇ(ぼそ
食い意地テロネタも、ネコ写真もたまってますので、またエントリにしますね^^
No. 6423
トラバありがとうございました。
こんな厳しい評価を受けるようじゃ日本って先進国ってどうよ?って
気になってしまいますが、ジャンププラスという団体が実施された
エイズ対策についての政党アンケートへの自民党の回答をみてちょっと
納得しました。
「わが国の新規HIV感染者・エイズ患者の発生動向については、先進国と比べ
罹患率は低いものの」って、自民党としては日本は先進国じゃないという認識
だったんですね、きっと。
No. 6426
>debyu-boさん
>こんな厳しい評価を受けるようじゃ日本って先進国ってどうよ?
<
自民党が選択議定書批准に反対する真の理由(推定)もアレのようですからねぇ。こんな評価を受ける国・社会であること、そのものを議論とか検討とか考察のスタートとした方がいいんじゃないかと思うのですけど。
…なんか、レスポンスが違っているみたいです。私の観測範囲ですが。
No. 6444
胎児殺し権の問題についても触れられていますね。
やはり、報告書は、フェミニズム的な胎児殺し存置論という、
オーソドックスに『リベラル』な路線で来ましたか。
『順当』なところでしょうかね。
No. 6448
>abduluzzaさん
>オーソドックスに『リベラル』な路線
>『順当』なところ
<
全体を通して、書籍などでよく読むロジックが使われている印象はあります。確かに。論者によって範囲が違いますが、部分的に『順当』でないとの意見も目にするのが困ったもんだなと思います。
No. 6450
>>碧猫氏
『順当』であるといいましたが、それは私がこの報告書の意見に
完全に賛同するわけではありません。
少なくとも、胎児殺し問題については。
No. 6453
>abduluzzaさん
なるほど。
なお、初めてコメントいただいたようであり、常日頃どのような意見を発してらっしゃるのか存じ上げません。言葉の少ない、論旨が不明確なコメントでは意図を読み取れませんので、ご配慮いただけましたら幸いです。
No. 6455
>>碧猫氏
それは失礼しました。気をつけます。
あと、ブログを持っていますので、URLを乗せておきます。
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