2008年度分以前のジェンダーギャップ指数については、
当ブログでは2008/11/13にエントリにまとめていた。2005年は58カ国中38位、2006年は115ヶ国中79位、2007年は128ヶ国中91位、2008年は130ヶ国中98位、そして、2009年に134ヶ国中75位。
生活実感に基づく感想としては、「20位以上も上昇するほど、男女格差ってなくなったっけ?」だったので
(とはいえ、75位というのは主要国最下位らしいけどw)、例によって元データを確認。
The World Economic Forum (WEF)から、
The Global Gender Gap Report 2009へ。
ちなみに、2008年分のレポートは、私はPCに保存してあった
(笑)が、
こちらでもダウンロードできる。
Japanの2009年が75位である計算の元のスコアは、0.6769。2008年のスコアが0.6434、2007年のスコアが0.6455、2006年のスコアが0.6447。かなり改善していると見える。
ではその内訳。発表順は無視して、こちらの都合順で挙げていってみる。
まず、もっとも日本の順位とスコアが継続的に高い項目である、健康関係。
1行目の太字がこの項目全体の評価で、2行目以下が細目となる。
| Rank | Score |
2009 | 2008 | 2009 | 2008 |
Health and Survival | 41 | 38 | 0.979 | 0.979 |
Sex ratio at birth (female/male) | 89 | 88 | 0.94 | 0.94 |
Healthy life expectancy | 1 | 1 | 1.06 | 1.06 |
この辺りは経年でスコアも順位も変動は無い。出生児の性比は男性がやや多く、寿命は女性の方が長くでているが、この辺は日本の達成度はほぼ満点で頭打ち状態といえるだろう。2007年でも37位、スコアは0.9791と変動はない。
次に教育関係。
| Rank | Score |
2009 | 2008 | 2009 | 2008 |
Educational Attainment | 84 | 82 | 0.985 | 0.985 |
Literacy rate | 1 | 1 | 1.00 | 1.00 |
Enrolment in primary education | 1 | 1 | 1.00 | 1.00 |
Enrolment in secondary education | 1 | 1 | 1.00 | 1.00 |
Enrolment in tertiary education | 98 | 90 | 0.88 | 0.88 |
識字率、初等教育の機会、中等教育の機会に、現代の日本で男女格差があったら驚くが、さすがにそれはない。正し、高等教育においての男女格差に対しては、人によっては驚くのかもしれないが、実はある。というのは、
OECD教育局からも2008年9月に指摘されていることだ。
OECD加盟国の中では、男性の大学進学者数が女性を上回る国は日本、ドイツ、韓国及びトルコのみであり、その差は日本が最も大きい。日本における大学型高等教育機関への進学率は男性が52%、女性が38%であるのに対し、OECD 平均では男性50%、女性が62%である。
この項目は、2007年の順位は69位でスコアは0.9864。高等教育の機会だと、2007年は83位でスコア0.81だったので、スコア自体は少し上昇している…とは言える。一応。
続いて、相変わらず足を引っぱっている政治的参加。
| Rank | Score |
2009 | 2008 | 2009 | 2008 |
Political Empowerment | 110 | 107 | 0.065 | 0.065 |
Women in parliament | 105 | 100 | 0.10 | 0.10 |
Women in ministerial positions | 85 | 83 | 0.13 | 0.13 |
Years with female head of state (last 50) | 41 | 40 | 0.00 | 0.00 |
…いっそ、ご立派と言いたくなるぐらい
(言っている場合でもないような気がするが)スコアに変動がない。2007年は94位でスコアは0.0675だったので、別に日本の格差が積極的に開いたわけではない。女性の国会議員数、女性大臣数、女性国家元首数を勘案した政治的参加において、別の参加国の格差が縮まったのだろう。なお、女性国会議員数は2009年7月、女性大臣数は2008年、女性国家元首数は2009年6月に得た情報から数えたそうなので、2009年8月の衆院選の結果は反映されていない。
なんと1割を超え、過去最多の女性議員数に達したという、2009年の衆院選の結果は。
先の衆議院選挙で、女性議員が初めて480議席の1割以上を占めた。(略) 世界の国会における女性議員率は平均18.5%だから、世界の平均値にはるかに及ばない。
世界の国会(1院)における女性議員率の国際比較をしているIPUという組織によると、2009年7月31日現在、日本は、世界187カ国中134位と低かった。ケニアとトルコの間に位置し、ガンビアと同じランキングである。今回の衆院選で11.3%に上がったものの、この数字はアゼルバイジャンやルーマニア(11.4%)の下、ボツワナ(11.1%)の上に位置する。他国が変わらないと考えると、今は世界で119番目だ。(後略)
そういう訳で、今回の日本のジェンダーギャップ指数ランキングの大躍進は、「経済的な参加とその機会」の結果のようだ。
| Rank | Score (av) |
2009 | 2008 | 2009 | 2008 |
Economic Participation and Opportunity | 54 | 102 | 0.678 (0.594) | 0.544 (0.587) |
Labour force participation | 83 | 76 | 0.72 (0.69) | 0.72 (0.69) |
Wage equality for similar work (survey) | 99 | 93 | 0.59 (0.66) | 0.59 (0.64) |
Estimated earned income (PPP US$) | 100 | 96 | 0.46 (0.52) | 0.45 (0.51) |
ここではスコアの後に括弧で平均も示してみた。労働力としての参加、同じ仕事での給料、収入評価では、スコアでは変わらない(あるいはほとんど変わらない)が順位がむしろ下がっている。平均も動いていないか変動がわずかなので、同スコア同順位国が多くなった結果だと思われる。 ということは、今回の躍進の原因となる項目は、以下の二つに限定されると言えるだろう。
| Rank | Score (av) |
2009 | 2008 | 2009 | 2008 |
Legislators, senior officials, and managers | 6 | 101 | 0.86 (0.30) | 0.11 (0.28) |
Professional and technical workers | 1 | 69 | 1.00 (0.84) | 0.85 (0.72) |
"Legislator"というのは、"Women in parliament"とかぶっているような気がするのだが、地方議会も含んだ議員という理解でいいのだろうか? 報告自体を見ると、専門職あるいは技術職の女性割合は、2008年時点で「女性46:男性54」が2009年時点で「女性55:男性45」とある。そして、議員や上級官僚や企業の管理職の女性の割合は、2008年時点で「
女性10:男性90」が2009年時点で「
女性46:男性54」とのこと。これがもっとも大きな変動をしていた項目だ。
この二つの項目は、ILOや「LABORSTA Internet」というデータベース、国連開発計画(UNDP)のだす人間開発報告
(2009年版は先日でたとこだが、今回のジェンダーギャップレポートはIndex 2008からと書いてあるようだ。)等の入手可能な最新のものから算出しているという。「2007/2008, 2005」なんて表現もあるので、こんなに極端に数値が変動しているのが不思議といえば、不思議だ。特に「議員や上級官僚や企業の管理職の女性の割合」の変動があまりにも極端で。2008年と2009年、それぞれの年に
在籍した比からのスコアだろうと判断しているのだが、もしかして、それぞれの年に管理職等に
昇格した女性あるいは男性の比なのだろうか? それにしても変化が急激であるとは思うが。
もちろん、女性差別撤廃委員会に日本政府が提出した
平成20年4月付の女子差別撤廃条約実施状況 第6回報告(PDF)の18ページ目には、第4条として「特別措置」があげられているし、積極的改善措置
(ポジティブ・アクション)として「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する」との目標が掲げられている。「(1)国の審議会等委員への女性の登用」では、計画的な取り組みの結果「2005年9月末現在、女性委員の割合は30.9%」だそうだ。
この取り組みの結果として、第7条(政治的及び公的活動における差別の撤廃)によると、
(3)司法における女性
226(略)
227.女性初の最高裁判事が1994年2月に任命され、1997年9月までその職にあった。さらに、2001年12月には、女性で2人目の最高裁判事が任命された。また、2005年4月現在、2名の女性裁判所長が在職している。裁判官、検察官に占める女性の割合は、いずれも引き続き増加している。なお、司法試験合格者に占める女性の割合も増加しており、近年、20%台で推移している。
(4)女性国家公務員
228.国家公務員の管理職に占める女性の数と割合は、2004年度末現在142名、1.7%と依然として低い状況にあるものの、2000年度末では122名、1.3%であり、増加傾向にある。一方、国家公務員全体に占める女性の数と割合は、ここ数年横ばい状況となっている。
とも、報告されている。格差是正の取り組みが実を結びつつある…とはいえるのだろうけど。それにしても急激なのは、やっぱり不思議だ
(<-素直に喜ばないヤツ)。この不思議を説明できる理由を是非とも知りたいと思いつつ。。。でも、こんな落とし穴があったりもするので、登用数が増えただけではね、と思ったりもするのだった。
2009年版『男女共同参画白書』によると、全体では16.9%を女性が占めているが、係長級は17%、本省課長補佐・地方機関の課長級6%、本省課室長・地方機関の長級2.2%(ほら下に行くほど多いでしょ)となっている。
この文章は大変興味深かったので、他の部分も引用。
新政権の女性参画率はものすごく低いことが分かりました。許しがたいくらい低い。おかしいなぁと思っていたのだ。行政刷新会議のメンバーに女性が0、国家戦略室に女性が0という報道を聞いて。仕方ないので、政権のメンバーを調べてみた(「鳩山政権の顔ぶれ?内閣・国会・党役員」@民主党。以下敬称略)。
大臣こそ18人中2人だから11.1%だが、官房副長官0%、内閣総理補佐官0%、副大臣1人で(辻元清美;国土交通省)、4.5%、政務官3人で12%(西村智奈美;外務、高井美穂;文部科学、舟山康江;農林水産)。全体で見ると8.7%にしかならない。役職の女性比率は下に行くほど多いというのは日本全国共通の現象だが、内閣も、政務官でようやく1割に乗る。
こうなったら、国会運営はどうだ、というと、衆参両院で、議長0%、常任委員長2人で8.3%(田中眞紀子;衆議院文部科学委員長、円より子;参議院財政金融委員長)、特別委員長0%、審査会長0%、調査会長0%。全体で 5.6%にしかならない。民主党の党の役職で見ると、役員会は女性0。党の幹事長室16人体制のうち、女性は副幹事長ただ1人(青木愛衆議院議員)で 6.3%となる。
体質が古いといわれる労働組合と比較してみると、例えば連合の中央本部役員体制の中で、女性は20.4%。これは、女性枠を設けているからだが、少なくともナンバー2である会長代行は2人のうち一人は女性としている(「連合新会長に古賀氏選出 代行女性枠はNHK労連議長」@asahi.com)。 (略)
政府の女性参画率の方針は少なくとも30%のはずだ(「2020年までに、あらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度」になることを目指し、取組が行われている。2009年版パンフレット『男女共同参画社会の実現を目指して』より)。政府の方針は政府じしんには適用されないのだろうか?
女性閣僚があまり多くはなかったと思っていたものの、この指摘には気がついていなかったので驚いていた。
…それやこれやを見渡すと、、、なんで、あんなに去年と今年で「議員や上級官僚や企業の管理職の女性の割合」が増えるのかは、やっぱり謎だと思えるのだった。来年の結果がどうなるのか、楽しみである。