「戦争と性」 第25号 特集「『慰安婦』問題の現在」(2006年5月30日発行)に収録されていた「慰安婦」裁判一覧表(2006年4月時点)を抜き出し、以降、現時点までの情報を追加したもの。
アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求訴訟(遺族会裁判)1991.12.6(一次)、
1992.4(二次)提訴。
2001.3.26 東京地裁で棄却判決。…背景事実、個別事実認定。
2003.7.22 東京高裁で棄却判決。…背景事実、個別事実認定。
違法性判断(奴隷状態類似の重大人権侵害。醜業条約違反。民法上の不法行為責任)。
「国家無答責」を否定(「現憲法の下では正当性、合理性は見いだしがたい」)。
2004.11.29 最高裁棄却判決。
釜山従軍慰安婦・女子勤労挺身隊公式謝罪等請求事件(関釜裁判)1992.12.25(一次)、
1993.12.13(二次)、
1994.3.14(三次)提訴。
1998.4.27 山口地裁下関支部で一部勝訴判決。立法不作為を認定した画期的判決。
背景事実、個別事実認定。
違法性判断(婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約、強制労働条約違反)。
2001.3.29 広島高裁にて―審判決を破棄。背景事実、個別事実認定。
2003.3.25 最高裁 棄却決定。
フィリピン「従軍慰安婦」国家補償請求事件1993.4.2(一次)、
1993.9.20(二次)提訴。
1998.10.9 東京地裁で棄却判決。背景事実認定。
2000.12.6 東京高裁で棄却判決。
2003.12.25 最高裁 棄却決定。
在日韓国人元従軍慰安婦謝罪・補償請求事件 (宋神道裁判)1993.4.5提訴。
1999.10.1 東京地裁で棄却判決。背景事実、個別事実認定。
2000.11.30 東京高裁で棄却判決。背景事実、個別事実認定。
違法性判断(強制労働条約、醜業条約違反)。
2003.3.28 最高裁 棄却決定。
オランダ人元捕虜・民間抑留者損害賠償請求事件1994.1.25提訴
1998.11.30 東京地裁で棄却判決。個別事実認定。
違法性判断(ジュネーブ条約、ハーグ陸戦規則違反)。
2001.10.11 東京高裁で棄却判決。
2004.3.30 最高裁 棄却決定。
中国人「慰安婦」損害賠償請求訴訟(一次)1995.8.7提訴。
2001.5.30 東京地裁で棄却判決。
2004.12.15 東京高裁で棄却判決。背景事実、個別事実認定。(判決要旨は
こちら)
2007.4.27 最高裁 棄却決定(書面だけの決定により敗訴が確定)。
「本件を上告審として受理しない」
参照;
中国人戦争被害者の要求を支える会に掲載の要旨。
中国人「慰安婦」損害賠償請求訴訟(二次)1996.2.23提訴
2002.3.29 東京地裁で棄却判決。背景事実、個別事実認定。原告のPTSDを認定。
2005.3.18 東京高裁で棄却判決。背景事実、個別事実認定。違法性判断(日本民法。中華民国民法。国際法)。「国家無答責」を非適用(「本件は権力行為ではない」)。(判決文は
こちら)
2007.4.27 最高裁 棄却決定(第一小法廷、才口千晴裁判長)。
棄却理由として「二審は「日華平和条約によって請求権は放棄された」と理由を述べたが、「日中共同声明によって放棄された」と理由を変更」された模様。
asahi.com、2007年04月27日報道より、および
参考1山西省性暴力被害者損害賠償等請求事件1998.10.30提訴。
2003.4.24 東京地裁で棄却判決。背景事実、個別事実認定。違法性判断(国際法。日本法)。
付言(「立法的・行政的措置を講ずることは十分に可能」)。
2005.3.31 東京高裁で棄却判決。背景事実、個別事実認定。
違法性判断。付言(一審判決を引用)。
2005.11.18 最高裁 棄却決定。
台湾の元「慰安婦」謝罪請求・損害賠償訴訟1999.7.14提訴
2002.10.15 東京地裁で棄却判決。
2004.2.9 東京高裁で棄却判決。
2005.2.25 棄却決定。
海南島戦時性暴力被害賠償請求訴訟2001.7.16提訴
2006.8.30 東京地裁で棄却判決。加害行為は認定。除斥期間や被告の作為義務の違反が認められず。(判決文要旨は
ハイナンNETニュースのこちらから)
高裁、係属中。
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参考1中国人「慰安婦」損害賠償請求訴訟(二次) 最高裁判決骨子
・原告の上告を棄却する
・旧日本軍による拉致、監禁、暴行で、原告は極めて大きい精神的・肉体的苦痛をうけたと認められる。
・日中共同声明はサンフランシスコ平和条約と同様の枠組みで、個人の賠償請求権を放棄したと解釈できる
・ただ、請求権は消滅したわけではなく、裁判上の権利喪失にとどまる
参考2
他サイトで、
慰安婦裁判の一覧参考3
中国人「慰安婦」第2次訴訟最高裁の上告棄却判決に対する弁護団声明(以下転載、強調等は当方によって施した)
1 本日,最高裁判所第一小法廷(才口千晴裁判長)は,日本軍によって「慰安婦」とされた中国人被害者らが,1996年,日本政府に対して損害賠償を請求した訴訟(中国人「慰安婦」第二次訴訟)において,上告人らの請求を棄却する判決を下した。
2 本件は,中国山西省において,旧日本軍が当時13歳と15歳の中国人の少女を強制的に拉致・監禁し,継続的かつ組織的に性的暴力を加えた事案である。
本判決は,上告人らの損害賠償請求権について,
日中共同声明により個人の請求権は「裁判上訴求する権能」が失われたものであると判示した。
しかし,日中共同声明の解釈は,本来二国間の一致した解釈によるべきであるところ,日本国側にのみ立った不公正な判断である。また個人の賠償請求権の放棄を明記していない条約の文言解釈にも反するもので,到底受け入れることはできず,極めて不当なものであり断固抗議するものである。
3 もっとも本判決は,本日判決された西松強制連行事件と同様,
個人の賠償請求権につき,その権利は実体的には消滅しないと判示した。これは,
個人の賠償請求権につき,裁判上訴求する機能のみが失われたとするものであり,個別具体的な請求権について,債務者側において任意の自発的な対応をすることは何ら妨げられないものである。
4 この点,日本政府も,二国間条約で損害賠償問題は解決済みであるとの主張しながらも,「慰安婦」の問題について解決されていない問題があると認め,1993年,河野洋平官房長官の談話(以下「河野談話」という)において,被害者に対して事実を認め謝罪をし,適切な措置をとることを表明した。
そして,日本政府は,「慰安婦」問題につき「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を設置したが,同基金によってすら中国人被害者に関しては何らの措置もとられていない。
したがって,本判決で損害賠償請求権が裁判上訴求できないからといって問題が解決されたわけではなく,未だ河野談話の見地にたって解決されなければならないことにかわりはない。
しかも,それは過去の戦後処理の問題ではなく,被害者らが今なお苦しみの中で生きており,まさに現代において速やかに解決すべき課題である。
5 近時,アメリカ連邦下院における対日謝罪要求決議に現れているように,国際社会は,被害を受けた女性の尊厳と人権の回復のための真の措置をとるよう日本政府に強く迫っている。
これに対して,安倍晋三内閣総理大臣は「河野談話」を承継すると表明し,また訪米前には,いわゆる「慰安婦」問題は女性達の人権を侵害した問題であり,日本にその責任があると述べた。
しかし,今,日本政府に問われているのは言葉ではなく行動である。真に河野談話を承継し,また女性達の人権を侵害した問題であると理解しているのであれば,なによりもまずそのことを行動で示すべきである。
6 本件判決は,それぞれ上告人らが旧日本軍により強制的に拉致・監禁され継続的に性的暴力を受けたという中国人被害者らの被害の事実を明確に認めている。
日本政府が真に河野談話を承継するのであれば,まず上記加害と被害の事実及び責任を認めるべきである。そして,被害者ら一人一人が納得するように謝罪をし,その謝罪の証として適切な措置をとるべきである。
私たちは,日本政府に対してこれら被害者らの要求の実現を求めるとともに,これらの要求が実現されるまで戦い続ける決意を表明するものである。
2007年4月27日
中国人「慰安婦」事件弁護団
中国人戦争被害賠償請求事件弁護団
(転載以上)