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参議院会議録情報 第132回国会 外務委員会 第6号」
平成7年3月17日(金曜日) 案件:平成七年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成七年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成七年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について (外務省所管)
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(略)
○清水澄子君 次に、従軍慰安婦問題についてお尋ねしたいと思います。
これまでも当外務委員会で私はいろんな質問をしてきたわけですけれども、現在政府が進めているような対応というのは国内的にも非常にいろんな意見が出ておりますが、私はきょうは特に、とりわけ国際的な世論ですね、これについては、政府の対応に対する世論というのは非常に厳しいものがあります。政府はここで政策判断を誤ると、国際的な女性への人権問題として、また日本の戦後処理問題として私は禍根を残すことになるのではないかということで非常に深く憂慮しております。
そこで、この慰安婦問題に対する国際世論の関心について質問をさせていただきたいと思います。
まず、国連の有力なNGO団体であり、また
国連の諮問機関でもあります国際法律家委員会、いわゆるICJの慰安婦問題に関する報告書についてでありますけれども、昨年の十一月二十五日の実は与党の従軍慰安婦問題小委員会において、
外務省は、ICJ報告書は政府に渡されていない、そして日本政府とは何ら面会せずに報告書を作成したということを発言されました。
ところが、私どもはずっとその後この報告書をもらっております。外務省も当然あると思いますが、この報告書には、読みますと、第七章に「日本政府の立場」というのが書かれています。その中で、
ICJの調査団が当時の外務省のアジア局次長の高野審議官とか藤井新・北東アジア課長補佐と面会していることがきちんと報告書に書かれているわけです。にもかかわらず、なぜ外務省は面会をしていないとかそれを余りよく知っていないとかという報告になったのか、その理由をぜひ御説明いただきたいと思います。
○政府委員(川島裕君) まさに報告書を入手していないということと、それから高野審議官でしたか
会った事実があったわけですけれども、それについて接触をしていないということを十一月二十五日の従軍慰安婦問題小委員会において申し上げたわけでございます。これは
全くの事実誤認でございまして、申し開きの余地もないんですけれども、部内におきまして担当部局を昨年の夏以降ちょっと主管が変わったものでございますから、それで事実誤認が生じたということで、これはその後、小委員会において、まことに申しわけない次第で、正確な事実を申し上げるとともに陳謝申し上げた次第でございます。
その後、十二月九日にまさにその国際法律家委員会の担当の方々が外務省にいらっしゃいましたので、外務省の方から、同委員会作成の従軍慰安婦に関する報告書に関して、同年九月、中間報告がジュネーブの日本政府代表部に送付されてコメントを求められていたこと、それから最終報告が十一月未に同代表部に送付されていたという事実について、内部の手違いにより事実誤認があったということを認めまして、これによって、大変申しわけなかったということをおわび申し上げた次第でございます。これに対しまして、先方、国際法律家委員会の方からこの対応について非常に懸念が表明されたということでございます。
○清水澄子君 そのコメントされた中身はどういうことをコメントされたんでしょうか。
○政府委員(川島裕君) コメントを求められていたということでございまして、日本政府の方からコメントを特にこれこれであるというようなことは申し上げた経緯はございません。ただ、そもそも作成の過程で日本政府と接触がなかったかのごとく従軍慰安婦小委員会で申し上げたのは全くの事実誤認だったということでございます。
○清水澄子君 これまでこういう
国会で報告しているようなことをきちんとコメントされていますよ。これが全部この報告書に出ています。ですから、国際的にこの報告書が扱われているのに、私は
外務省というのはそういう問題の情報ということについて非常に何か軽視をされているのじゃないかと思いますが。
○政府委員(川島裕君) コメントと申しますのは、昨年の九月に中間報告がジュネーブの代表部に送付されまして、それに対してコメントを求められたのについてはコメントをしていないということでございます。
他方、日本のいろんな、どういう立場で対応しているか等々については、先ほど御質問の中でございましたアジア局の高野審議官が訪日された国際法律家委員会の方たちといろいろ意見交換というか説明を行う機会があったと、こういうことでございます。
○清水澄子君 中身を聞いています。何をコメントされましたか、どういうふうに。もっと簡単に言ってください。
○政府委員(川島裕君) コメントというのは、昨年の九月に中間報告が出された際にそれについて国際法律家委員会の方からコメントを求められたということでございますが、これについてのコメントをしたということはございません。
その前に、その一年くらい前だと思いますけれども、高野審議官と国際法律家委員会の間で、これは主として日本政府の立場というか、どういう状況にあるかを取材しにいらしたのではないかということでございますけれども、やりとりは、いろいろ対話をしたということでございます。ですから、コメントというふうには受けとめておりません。その時点ではまだ報告書とかそういうものの準備の段階だったわけでございます。
○清水澄子君 では、私は今はそういうふうに受けとめておきますけれども、この報告書には書いてあります、どういうふうに話されたかということが。それは今まで国会でも言っておられるように、
すべての請求権が最終的かつ完全に解決されているんだというふうなことを話をされております。だけれども、それもされていないんでしたら、またそのいない事実を もう結構です。
そこで、その次に入りますけれども、この
ICJの報告によりますと、現在、日本政府は賠償義務を継続しているというふうに位置づけているんですね、この報告では。そして、さらに
日韓協定、日比賠償協定では個人の権利侵害に関する請求権は含まれていない、これはICJの見解ですよ、としているわけです。これは
日本政府の従来からの主張、完全かつ最終的に解決されたという主張と真っ向から対立することになるんですけれども、これに対して政府はどういう反論をされるわけですか。
○政府委員(川島裕君) 法的立場について申しますれば、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定の第二条一におきまして、日韓両国及び両国民間の財産・請求権の問題が完全かつ最終的に解決されたということを確認する旨規定されております。したがいまして、いわゆる従軍慰安婦問題についても、日韓国交正常化交渉の過程で従軍慰安婦問題ということで請求が行われなかったとしても、この問題を含めてすべての財産・請求権の問題が完全かつ最終的に解決されたということは同協定により確認されているとの立場でございます。
ただ、さはさりながら、まさに昨年の八月三十一日の内閣総理大臣の談話というものを御記憶がと思いますけれども、そもそもあの談話の発出の一つの契機となりましたのが慰安婦問題でございました。そして、先ほどの質問のやりとりのございました平和友好交流計画をこの談話において発足させたわけでございますが……
○清水澄子君 ちょっと済みません、私の質問だけに答えてください。なぜ反論しなかったんですか。そういう意見が違う報告書が出されたならば、なぜ反論しないんですか。
国際社会とか国際会議で出されている報告書を
違うならば違うという意見を出さないと、そのままその報告書がずっと出回っております。ですから、その点でこれに対する政府の反論とは何かとお聞きしたんですが、それについてなぜ反論されなかったんですか。○政府委員(川島裕君) 国際法律家委員会だけではなくていろいろな非政府機関の法律の見解が従軍慰安婦の問題を含めましていろいろな形で開陳されておりますけれども、非政府機関のいろいろな法律の議論について一つ一つ日本政府としてこれに反論するということはいたしておりません。
これは先ほど申しましたとおり、日本の法的立場ということはかねてから申している次第でございますし、慰安婦問題の日韓の脈絡では先ほど申した請求権・経済協力協定により解決されたという立場でございまして、それをいろいろな場においてもう一度非政府団体に対して申し上げるということはやっておりません。
○清水澄子君 大臣にお尋ねいたします。
ICJは昨年の九月二日にジュネーブの日本政府代表部に慰安婦問題に関する最終報告書の草稿を渡したわけですが、これを公表せずに、しかも受け取っていないというさっきの発言、私が質問したところ、それは事実誤認であったとかいろんなことをおっしゃったわけですけれども、
内部の手違いとかそういう問題ではやはりこの扱いは済まされない国際信義にかかわる重大な問題になってきているんですね。ですから、いろんな意味で国際的な反発がとても増幅されていっているということを私は指摘をしたいんです。
そして、最近、社会開発サミットで村山首相はNGOをパートナーと位置づけるという演説をしていらっしゃるんですけれども、これからの時代、日本はNGO団体をとても軽視しているのじゃないかと思います。特にICJというのは非常に権威のあるNGOなんですね。国連に登録されているこういう国際的なNGOの報告書を無視するというふうな扱いですね、こういう態度というのは私はやっぱり納得ができません。
ですから、
国際的にますます日本政府の姿勢に対する反発が起きているんですけれども、このようなことが起きたことに対して外務大臣はどのようにお考えになりますか。
○国務大臣(河野洋平君) 事実誤認があったということを認めて、これは認める認めないではなくて実際に明らかな事実誤認でございましたので、これは外務省としてまことに申しわけないことであったということを与党の会合でおわびを申し上げております。これは国際的な問題ではなくて、政府と与党の委員会における発言に対するおわびでございます。
そのことが国際的な問題となるかどうかという点は私にはよく理解ができませんが、それはそれとして、いずれにせよNGOとの連携を強めていこうということを私どもは考えております。これは主としてまずは日本国内のNGOとの連携というものが頭にあるわけでございますが、国際的な活動をする上で国際的なNGOとの連携というものも当然考えなければならないというふうに思います。
○清水澄子君
このことが国際問題になるということが理解できないとおっしゃるところが、感覚がやっぱりずれているんだと思います。こういう報告書が世界じゅう回って、そして日本の外務省は知らないと言っだということも全部報告されていますから、今、国連というところではやっぱりNGOの存在、発言というか、非常にある意味で重要な位置を占めているわけで、そういう意味の
感覚が問われていますよね。そういうことと、
今この慰安婦問題等の問題が非常にそこへ重複してしまっているということを私は指摘を申し上げているわけです。
それで次に、国連の人権委員会で、
女性に対する暴力問題のクマラスワミ特別報告官が、今度、従軍慰安婦問題で調査のために訪日されますね。日本政府はこの二月二十四日にジュネーブでクマラスワミ特別報告官の招待を発表しましたけれども、これは国連からの正式な調査となると思うんですけれども、どのような内容の受け入れ要請があって、どのような日程で来られるのか、御説明いただきたいと思います。
○政府委員(高野幸二郎君) 御指摘のとおり、人権委員会の主要議題の一つでございます女性に対する暴力、これについての特別報告者でありますクマラスワミ女史が、彼女の任期三年間における任務の遂行の一環といたしまして、日本を初め関係国を訪問したいという意向を持っているのはそのとおりでございます。
ただいま委員おっしゃいましたとおり、先月、御本人から我が方のジュネーブ代表部の方に訪日の申し入れがございました。それを受けまして、私どもは喜んで受け入れたいということを同女史に申し上げた次第でございます。
ただ、いつごろお見えになるのかまだ具体的な連絡がございませんで、私ども今御連絡を、多分これは人権センターを通じて参ると思いますが、御連絡があるのをお待ちしているという状況でございます。御連絡があり次第、日程及びその他、訪日といいますか滞日中のことにつきましては、私ども最大限誠意を持って対応させていただきたいと思っているところでございます。
○清水澄子君 具体的日程なり決まったときには、ぜひ御連絡いただきたいと思います。
次に、国連の女性に対する暴力問題委員会のクマラスフミ特別報告官は、昨年の十一月二十二日に、この人権委員会で討議する予備報告書を人権委員会に提出をしております。この予備報告書における慰安婦問題についての骨子は、一つは、国際人道法のもとでの犯罪としての認定とあるわけですね。そしてもう一つは、武力紛争時に犯された暴力の被害女性のための補償による救済。この二点が骨子になっています。
そこで、私は、一般論としてでいいです、別に慰安婦とかかわらなくていいですが、一般論として政府は、この報告書で言う性的奴隷行為の国際人道法のもとでの犯罪としての認定という部分についてはどのような御見解をお持ちでしょうか。
○政府委員(折田正樹君) クマラスワミ女史の予備報告書は、私どもも勉強させていただいていますし、女性に対する暴力全般について幅広く論じたものでございます。その中に、いわゆる従軍慰安婦に対する部分があるのはそのとおりでございます。そして、今、委員御指摘のように、国際人道法上の犯罪というところにも記述がございます。
ただ、私どもといたしましては、この国際人道法上の犯罪なるものがどのような根拠、規定に基づく主張であるのか必ずしもつまびらかにしないのでコメントするのはなかなか難しいわけでございますが、いずれにしましても、こういう問題から生じます請求権の問題は、これまでも累次申し上げておりますように、サンフランシスコ平和条約、あるいは韓国の場合でしたら……
○清水澄子君 一般論を聞いております、この問題に対する。日本の経過は今聞いておりません。今のこういう見解に対して、一般論としてどういうふうに受けとめられますかと聞いています。
○政府委員(折田正樹君) 一般論として、先ほど申し上げましたように、国際人道法上どのような根拠でどのような規定で御主張なされているのかというのを我々つまびらかにいたしませんものですから、ちょっとコメントをするのは差し控えさせていただきたいということでございます。
○清水澄子君 ではもう一つの、武力紛争時に犯された暴力の被害女性のための補償による救済という、この報告書の全般的なものをお読みだと思いますけれども、その中には二つある、私は今その二番目の方を申し上げた。これも一般論で結構です。政府はどのような見解をお持ちですか。
○政府委員(折田正樹君) 一般論として申し上げますと、国際法上得る権利が果たして個人も有しているのかという問題だろうと思いますけれども、国家が国際違法行為を行った場合、被害国に対する加害国の賠償義務については国際法上確立しておりますけれども、それでは個人に国際法の主体性が認められるのかということになります
と、そこまでは国際法上確立しているとは言えないのではないかというのが私どもの一般論としての考え方でございます。
○清水澄子君 この報告書のパラグラフ二九〇には、「一九九二年七月、日本の首相は、日本軍が広範な政府運営の売春所網において、何万もの女性に性的奴隷としての労働を強いたことを認めて謝罪した。」とあります。
政府は、パラグラフ二九〇のこの記述をお認めになりますか。もし認められないとすればどの部分かということをちょっと簡潔に言ってください。
○政府委員(高野幸二郎君) このパラグラフ二九○の話は、今、委員おっしゃいましたとおり、九二年七月という時点を限定しております。その時点との関連で私ども、日本国総理が云々ということは承知しておりません。
ただ、九二年の七月に当時の官房長官から、従軍慰安婦問題につきまして政府の関与があったと認められることを云々の調査結果を当時発表いたしました。その際あわせて、いわゆる従軍慰安婦として筆舌に尽くしがたい辛苦をなめられたすべての方々に衷心よりおわびと反省の気持ちを表明したという経緯はございます。
○清水澄子君 これは当時官房長官だった外務大臣が報告をされたわけですけれども、外務大臣、日本政府が従軍慰安婦問題について認めだというのは、このパラグラフ二九〇による一九九二年七月ということになりますね。それで、そのことが改めて確認ができるかどうか。そして、一九九二年七月以前には、日本政府にとって慰安婦問題というものは余り意識していなかった、いわゆる存在していなかったということになりますけれども、これは私はもうこれ以上追及しませんから、どうぞ率直に御意見をお聞かせください。
○国務大臣(河野洋平君) ちょっと私、原文を申しわけありませんが見ておりませんので、その原文と合わせて確認をしろと言われるとちょっと今直ちにできませんが、間違いなくその当時官房長官でございました私は、従軍慰安婦問題についてのそれ以前、大分前からこの問題についての調査をずっといたしておりまして、その調査の結果をもとにして発表いたしました。その調査の結果を発表すると同時に、先ほど政府委員が御答弁申し上げましたように、私の気持ちを述べたものでございます。
発表の時点はその時点でございますが、清水議員も長く関心をお持ちでありましたように、かなり以前からこの問題については政府としても関心を持ち、調査をずっと続けてきた経緯がございます。
○清水澄子君 さっき私がお尋ねしたときに、二九〇のパラグラフについてはこの記述を認めるかというときに、首相という表現だけは別として、あとはお認めになりますか。
○国務大臣(河野洋平君) ちょっと申しわけありません。ただいまの答弁を若干修正させていただきます。
九二年の発表ということであると、実は私ではなくて加藤官房長官であったと思います。したがいまして、私の今の答弁は、九三年の発言ということに訂正をさせていただきます。九二年の部分については、申しわけありませんが、ちょっと手元にございません。
○清水澄子君 九三年の場合はそういう形でお認めになりますね。
それで、先ほどの二九〇というパラグラフの部分はお認めになりますか。
○政府委員(高野幸二郎君) このパラグラフ二九○に書いてあることの趣旨におきましては、現実に東京での九二年七月の官房長官の発言とほぼ同趣旨がというふうに私どもとしては考えております。
○政府委員(折田正樹君) ちょっと一点だけ補足させていただきますと、パラグラフ一九〇に性的奴隷という言葉が使っでございます。政府の発言の方にはそういう言葉はございません。
国際法上、奴隷とは何かということでございますが、日本はいわゆる奴隷条約というのには加わっていないわけでございますけれども、その奴隷条約で定義されているのは、その者に対して所有権を伴う一部または全部の機能が行使される個人の地位または状態を言うということで、まさしく所有権を伴うような感じの定義になっているわけでございます。
今度の従軍慰安婦問題が果たしてこういう表現にぴったりと当てはまるかどうかというところも問題があろうかというふうに思います。
○清水澄子君 きょう、ちょっと余り論争する気はしませんが、慰安婦なんという言葉は英語にもありませんので、その点どうぞ御理解ください。こういう性的奴隷という表現に国際的にはなっております。
そういう御認識であるということだけはきょうここで明らかにされましたから、これはまたいろいろ議論をしなければならないことがあるかとも思います。
そこで、今度は二九一のパラグラフなんですけれども、これもぜひ大臣に私はお聞きいただきたいと思います。この報告書のパラグラフ二九一には、
第二次大戦後約五〇年が経過した。しかし、この問題は、過去の問題ではなく、今日の問題とみなされるべきである。それは、武力紛争時の組織的強姦及び性的奴隷制を犯した者の訴追のために、国際的レベルで法的先例を確立するであろう決定的な問題である。象徴的行為としての補償は、武力紛争時に犯された暴力の被害女性のために「補償」による救済への道を開くであろう。ということがここで明確に報告書として提起をされて、そしてこの報告書は国連人権委員会に正武に報告をされている文書でございます。
そして、この文書は、国連の文書として広く一般に公布されておりますし、現在ニューヨークで開かれております第三十九回国連女性の地位委員会においても報告され議論されている問題でありますので、そういう意味でやはり政府も改めてこの従軍慰安婦問題というのは女性の重大な人権問題として国際的に非常に新たな問題になっているという認識をされないと、私は今後非常に大きな政策的なずれというんですか、問題が起きてくるのではないかと思って今までこういう問題について質問してまいりました。ですから今後は、私は、政府は十分にその点を自覚をしていただきたいと思います。大臣、よろしゅうございますか。
○国務大臣(河野洋平君) それぞれのパラについてお尋ねでございますけれども、実は大変恐縮ですが、私が今見ておりますものと訳文が大分違うのでございまして、これはいずれが正確かということはよくわかりませんので、ちょっとその……
○清水澄子君 原文、あります。
○国務大臣(河野洋平君) いや、原文はもちろん持っておりますけれども、その内容について一字一句を議論することはこの際、申しわけありませんが留保させていただくことといたしまして、今の議員の御認識について申し上げれば、私ども政府としてはかねてから、この従軍慰安婦問題についていえば、二国間関係は、繰り返しで恐縮でございますが、国と国との関係は決着がついておるということを一貫して申し述べてきております。
しかしながら、国と国との関係は決着がついているけれども、一人一人の心の痛みといいますか、そういうものは残っている人もいるし、いない人もいるということだろうと思います。ひどく痛みを感じている人もいれば、余り痛まない人もいるということはございます。傷つけられた方、傷つけた方、あるいはそれが非常に身近な事象としてある人、ない人、それによってさまざまなのだと思います。したがって、個人がいろいろとそれについて議論をなさる、あるいは議論だけでなくて具体的な行動をなさるということはあるだろうと思います。
したがって、平和友好交流計画を村山総理の指示で私どもは実施しようといたしておりますし、それについても議員にはいろいろ御意見がおあり
だと伺っておりますが、私は広く国民の皆さんの理解と協力が得られることを期待しているわけでございます。
○清水澄子君 これはその本人の心の痛みの問題だけじゃないですね。やはり
日本の姿勢とか日本の人権に対する認識が問われていることだと思いますが、きょうはもう、でも議事録に残るでしょうから。それが今後どういう論議を呼ぶか、私はむしろそういう認識の方に心配をいたします。
次の質問に入りますけれども、(以降略)
―――――・―――――
なお、
清水澄子氏は、社民党所属の元参議院議員。もちろん、上記の引用の強調部分は引用者による。
…途中で文章が切れているようにしか見えない箇所があるのはなぜかなぁ。。。
「
第154回国会 参議院憲法調査会 第8号」
平成14年6月12日(水曜日)案件「日本国憲法に関する調査(基本的人権 ―人権の国際化)」
─────────────
○会長(上杉光弘君) ただいまから憲法調査会を開会いたします。日本国憲法に関する調査を議題といたします。
本日は、「基本的人権」のうち、「人権の国際化」について、中央大学法学部教授の横田洋三参考人及び神戸大学大学院国際協力研究科助教授の戸塚悦朗参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。(中略)
○参考人(戸塚悦朗君) 憲法調査会という重要な場所にお招きいただきましたことを大変光栄に存じます。(略)
日本に関して言いますと、まず国際的に人権が保障され、それを受ける形で国内的に人権保障がされるようになったというのが正しいのではないでしょうか。ですから、実際は国際的に保障された人権が国内化してきたというふうに見るべきではないかと思います。
具体的な歴史的事実を若干申し上げますと、いわゆるフランス人権宣言というものがございますが、これは実は人権ではなくて、男性の権利の宣言にすぎないというふうに思われます。人権宣言という翻訳は美しい誤解あるいは誤訳ではないかというふうに思います。また、アメリカ合衆国憲法、これは一七八七年のものですが、は先住民、黒人奴隷をその主体に含めておりませんでした。また、それが保障した人権は、実は白人男性の権利であったにすぎないことが指摘されております。
大日本帝国憲法、これは一八八九年でございますが、が保障したのは臣民の権利でありまして、人権ではなかったわけであります。
一九一九年、パリ平和会議が採択しました国際連盟規約、これはベルサイユ条約の第一編でありますが、にも人権という文字はございません。そのときに作られました国際労働機関、ILO憲章、これはベルサイユ条約の十三編でありますが、にも人権という文字はなかったのであります。
基本的人権が世界的な規模で法的文書により約束されるようになったのは、連合国による国際連合憲章が採択された一九四五年六月二十六日でありまして、ちょうど今から五十七年前の今月のことであります。
米、英、中首脳が署名して発表しましたポツダム宣言がございますが、これは国際連合憲章が定めた基本的人権の保障を日本に要求したのであります。日本政府はこれを無条件で受諾しましたが、これが日本が人権の保障を法的に約束した最初のことだったのではないかと思われます。日本政府はこれを無条件で受諾したのでありまして、ポツダム宣言受諾による基本的人権保障の責務は現在も日本が継続的に負う国際的法的義務であります。
日本国憲法の制定による基本的人権の保障は、この国際義務の履行であるというふうに理解できるわけであります。
国連加盟によりまして、日本は国連憲章の履行を約束いたしました。先ほど横田参考人から御説明がありましたとおり、これにより日本は憲章が国際的に保障した基本的人権を日本として保障することを約束したのであります。さきに述べましたポツダム宣言受諾に重ねて、更に基本的人権の保障を約束したことを意味するのであります。
こうして見てまいりますと、国内的に保障された人権が国際化したのではなくて、国際的に保障された人権が国内化されたと理解すべきであることがお分かりいただけると思います。
日本は、国際的に保障された基本的人権を憲法と国内法を通じて実効的に実現する国際的な法的義務を負っていることに思いをいたさなければならないと思います。その意味は、憲法を改正するといいましても、このように日本を拘束する国際法上の枠組みの範囲内で行うべきものであるということであります。
したがって、今私たちが議論すべきなのは、国際的に保障されている人権をどのように国内化しなければならないのか、またどのようにしたら実効的に国内化することができるのかという課題ではないかと思います。このような観点から憲法の実施状況を見てまいりますと、以下述べますように、この課題に十分こたえていないと言わざるを得ないのであります。
次に、人権の国内化について申し上げます。
基本的人権を国内化するための原則を、憲法九十八条二項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と定めております。この解釈には、学説、判例上さしたる争いはございません。国際人権法などの国際法は原則として国内的な効力を持ち、国内裁判所はこれを直接適用すべきである、これは法律より優位でありまして、国際法に違反する法律は無効であると。(中略)
次に、日本軍性奴隷問題に関する立法不作為の問題があります。
国連とILOの報告書は、重ねて条約など国際法違反を指摘し、日本軍性奴隷被害者個人への国家補償などの義務を履行するよう勧告しております。控訴審で覆されたのでありますが、山口地裁下関支部関釜裁判判決は、韓国の被害者に関して、国会議員が国家補償立法義務を負うことを認め、合理的期間内の立法不作為を違法としたことを忘れてはならないのであります。
法案の準備に時間は掛かりましたが、野党三党の参議院議員による議員立法統一法案、戦時性的強制被害者問題解決促進法案の参議院への提案が実現し、この通常国会で参議院内閣委員会に継続しております。日本軍性奴隷問題に関し、被害者への国家による個人補償を実現しようとするいかなる法案も憲法、条約に違反し、国会に提案することは不可能であると信じられていた時代に比較しますと、これは大きな進歩でございます。立法運動を推進してこられた多くの市民と国会議員に深い敬意の念を表明いたします。
この法案は、サンフランシスコ条約などの条約にも憲法にも違反しません。被害者側はこぞってこの法案を歓迎しております。連立与党が賛成していないので、この法案が成立する見通しは立っておりません。立法不作為による国際法違反は継続しているのであります。
次に、一九四九年ジュネーブ四条約の違反、これは処罰立法義務に違反する不作為でありますが、について申し上げます。
一九四九年ジュネーブ四条約、一九五三年に日本は加入しております。これら四条約は、重大違反行為を処罰するための立法義務を加盟国に課しております。ところが、なぜなのか、処罰立法の義務については日本の行政府も立法府も学者、弁護士会なども真剣な議論をしてこなかったのでありまして、立法の提案さえないのであります。
この重大違反行為というのは、
戦争犯罪、人道に対する罪の典型例でありまして、時効がないことが国際条約で確認されております。現在、国会審議中の有事立法の論議ではこの点は全く無視されており、一九四九年ジュネーブ四条約が求める立法については何の法案も提出されていないのであります。
まず第一になされるべきことは、過去の軍事行動で日本がどのような過ち、戦争犯罪及び人道に対する罪を犯したのか、その真相究明に基づく反省、再発防止の措置としての立法措置が取られるべきであります。これらは、歴史から何を学ぶかという問題であります。
そのような段階を経ていない以上、憲法九条に触れるまでもなく、日本の行政府も立法府もそれ以上の有事立法を討議する資格を欠くと言わざる得ないと思います。
最後に、それでは憲法九十八条二項の実効的な実施のための方策はあるかということに触れます。
第一に、政治的決断が必要であります。憲法九十八条二項を実効的に実施するという政治的決断をすることが極めて重要であります。これを実効的に実施するには、国際人権法に関する限りは国際人権機関による解釈を受け入れるという決断をすることが必要であります。国際人権法違反について国連などから指摘を受けた場合は、可及的速やかに立法措置などを取り、解決を図る必要があります。
次に、それを具体化する方法でありますが、国際人権機関への個人通報権を保障する人権条約の選択議定書を批准することができます。この問題が国会で真剣に討議され始められた当時は、アジアではこれを批准している国がございませんでした。それが、日本政府が批准に消極的な理由の一つとされたのであります。しかし、日本政府が批准を怠っているうちに、フィリピン、韓国など多くのアジア諸国が次々に批准、加入してしまいまして、日本はすっかり取り残されてしまったのであります。これが、先ほど横田参考人が御指摘になった大きなギャップの原因の一つだと思います。
第三に、司法改革がございます。現在、司法の国際化の論議が進行中でありますが、その中で、憲法九十八条二項の実効的な実施を検討し、消極司法の解決を図る具体的な方策を立てることができます。残念ながら、議論はそのような方向には向かっていないのでありますが。
例えば、規約人権自由権委員会、規約人権社会権委員会は裁判官などの国際人権法を含む人権教育を実施するように勧告しております。これらに誠実に対応しなければならないと考えます。しかし、現状は逆行しておりまして、国際人権法を含む国際法は、最近、司法試験科目から外されてしまいました。したがって、新たに設立されるであろう法科大学院のカリキュラムでは、国際人権法はこれまで以上に軽視されるでありましょう。このままでは、日本の司法は国際競争に堪えないのではないかというふうに恐れます。
次に、国連による人権教育の十年の努力が進んでいるのでありますが、これについて申し上げたいと思います。
これは、国際人権法が草の根的に市民レベルに至るまで浸透するような教育を目的としております。国連ウェブサイト、これは英語等の公用語で書かれておりますが、これを日本語化するということを実現し、日本語を母語とする人々が草の根レベルで国連の人権情報を容易に入手できるようにするという方策がございます。詳しくは論文の方に書いてありますので、そちらをごらんいただきたいと思います。
最後に、国際協力は国際法上の義務であります。日本は社会権規約委員会からODAの増額勧告を受けております。このことをも想起する必要があると考えます。(戸塚氏の意見表明以上)
(途中の質疑略)
○吉岡吉典君 日本共産党の吉岡です。
まず、戸塚先生にお伺いします。
私、従軍慰安婦問題を始め戦後処理問題をずっとやってきましたので、戸塚先生のお書きになったものをかなり読ませていただきました。お書きになっていることでもあるんですけれども、国会でいろいろ取り上げる場合にも、また運動の中でも問題になるのは、結局は解決済みだということで、今求められている謝罪あるいは償いという問題の解決が進まないという状況にあります。これ、戸塚先生よく御存じの問題です。
同じ問題はほかの問題にもありまして、例えば私、最近政府関係者と議論している問題ですけれども、旧日本軍が中国に遺棄した毒ガス弾による被害の問題があります。これは日本軍が大量に残してきた中国にある毒ガスが、たまたま掘り当てて、戦後もう五十数年たった今でもいろいろな形のこの被害者が出ているという問題です。
毒ガス禁止条約によって、中国に遺棄した旧日本軍の毒ガスの処理の責任は日本にあるということになっておりますが、しかし、残された毒ガス弾による犠牲が出た場合、それの補償責任はもう既に解決済みで日本にはないんだというのが日本政府の説明で、まあこれは一般的に見れば非常に矛盾した話だと思いますね。毒ガスの処理する責任は日本にあるけれども、被害が出た場合、それの救済とか補償というのは日本にないということ。だとすれば、一体それはだれが救済し、だれが補償するのか。
あるいは、例えば従軍慰安婦問題にしろ、今の毒ガス弾による犠牲の問題にしましても、解決済みというのは日本が、ある合意があったとしても、その合意を超えて日本が補償したりすることは、禁止規定のような言い方ですけれども、それをやることは法律上できないものなのか、義務はないけれどもやることは構わないということなのかどうなのかというような点も含めて、まず戸塚先生のお話をお伺いしたいと思います。
○参考人(戸塚悦朗君) 論文を読んでいただいたそうで、ありがとうございます。
その論文の中でもるる説明をしておりますが、第一の問題ですね。過去、中国での戦争に際して日本が行った行為の結果起きた被害、こういったものについての補償、これを立法できないのかというこの問題は、もう既に先ほどお答えしたとおり、これは日本政府の野中官房長官の答弁もございますけれども、これは本岡昭次先生の質問に対してお答えいただいたものですが、サンフランシスコ平和条約その他の条約の存在にもかかわらず、慰安婦問題等について補償立法をするということは、条約違反でもないし憲法違反でもないという政府見解が出ておりまして、この点についてはもう解決済みだと思います。ただし、今申し上げたのは、すべてが条約で終わったとしても立法はできるという法的な見解であります。
しかし、私は第二点として、終わっていないという論文を発表しております。例えば、つい最近、ドイツの赤十字雑誌に出た英文の論文がございますが、その日本語版は「戦争責任研究」というところに出しておりますけれども、少なくとも中国については全く終わっていない。これは最近の福岡の判決でも同じでしたけれども、個人に対する補償問題が終わったという条約上の文言は一つもありません。
一九七二年の日中共同声明を見ても、戦争賠償だけは放棄されていますけれども、個人は書かれておりません。当時、日中で個人の重大人権侵害に対して個人の請求権を放棄するという条約を結ぶことはジュネーブ条約に違反するということで、できないようになっていたのであります。したがって、やっていないんだろうというのが私の推測です。
また、朝鮮民主主義人民共和国と日本の間では条約はございません。
それから、日韓でございますけれども、これはそれこそICJの意見書もございますし、国連のレポートもございますけれども、違法行為については全く言及がなくて、終わっていないと考えられます。
それから、フィリピンと日本の間ですけれども、これは私は別途書いておりますが、個人の請求権について終わったということを主張する条約の批准はジュネーブ条約のフィリピンと日本の批准より後にできておりますので、これはできなかったというふうに私は解釈しております。
アメリカでも最近の判決が幾つかありますが、連邦地裁でも、カリフォルニアの裁判所の判決でも、日中について、日韓についてはサンフランシスコ平和条約等で終わっていないというふうに解釈しております。
したがって、そのすべてについて条約によって終わったという法的な見解は、私は明白な誤りであると。ただそれは、国会等で政治的に効果を発揮しているというだけではないかというのが私の考えであります。
(途中略)
○平野貞夫君
私も十年ぐらい法務委員やっておりますので、今のお話を参考にして改めて認識を深めて対応したいと思いますが、当面の問題として、外務大臣とかあるいは中国大使とか、日本のですね、あるいは総領事とかという人たちの人権というものに対する、亡命者のですね、感覚といいますか、あるいは責任といいますか、そういうことについてはどのようなお考えでございましょうか。
○参考人(戸塚悦朗君) 実は、これは私は個別に考えていても駄目なんじゃないかという気がするんですね。実は、今まで私、アジアの侵略とか戦争責任とか外国人に対する人権侵害の問題を問題にしてきたんですが、そういった問題も含めて、国連で重大人権侵害の被害者に対する補償の問題ということを人権委員会で討議しております。これは、まだ結論出ておりませんけれども、これを研究するということが一つあると思います。これによれば補償はしなければならない、あるいはした方がいいと。
実は韓国、台湾、こういったところでは、過去政府が行った重大人権侵害、これは外国人じゃありません、自分の国民です、に対して行った重大人権侵害について次々反省する、補償する、そういう法律を作っております。その点で、日本はまだそこへ、過去清算というところに踏み込んでいけていないと、これが問題なんですね。その根っこがどこにあるかなんですけれども、私は実は、日本人の人権が尊重されていないところにあるということだと思うんですね。
と申しますのは、戦時中、戦争被害ですね、これはアメリカの爆撃等による被害その他ですけれども、があって、
日本人が被害を受けたと。こういうときにどうするのかというと、実は東条内閣が提案してできた法律がありまして、補償といいますか対応がなされたんですね。これを戦後廃止してしまったんですね、これは連合軍による勧告。これは軍人に対する恩給と一緒に廃止したわけですね。
ところが、独立したときに
復活したのが軍人恩給系統だけだったんですね。この日本人が受けた物すごく大きな被害、爆撃の被害その他の戦争被害について、日本の政府も国会も何の対応もしなかったし、恐らく多くの方々はそういう法律があったということ自体、御存じないんじゃないか。この法律を復活すると、そしてやはり日本人の人権を擁護するというところからスタートしない限り、やはり他人に対する思いやりもできない、極めて冷たい国だと、日本は、人権に対してですね。人がどういう被害を受けようと構わぬというふうに感じているんじゃないかというふうに思われますので、そういった大枠の話に対応していただくことができないと難民の問題も対応できないんじゃないかと、こういうふうに思います。
(途中略)
○大脇雅子君
私は、女子差別撤廃条約の委員会を、条約を批准した後傍聴したことがございまして、その委員会に私どもが様々な国内における性差別を持ち込むことによって画期的な変革がもたらされるのではないかと非常に期待して行ったのですが、しかし実際のところは、委員会のコンセンサスという形で、言わば勧告という形で日本政府にそれがもたらされる、日本政府がそれに対応しなければ何らの現状の変更もないということを目の当たりにして、がっくりきたことがございます。
先生は、国連の規定として人権の基準設定やモニタリングのシステムをおっしゃいましたし、戸塚先生は、国際法の中で国内法化を要請する様々な委員会の勧告が重ねられているということを言われました。
裁判に取り組んでおりますと、裁判規範としてやっぱりそうした条約の国内の法的実効性といったものがほとんど議論されていないし、実務では拒否されている。今度はこの国会に参りまして、例えば選択議定書の批准などいいますと、最高裁判所は国内で最終最高の判断基準であるので、それを外に持っていくという頭が元々ないんですよね。
私はやはり、今国連も、武力による解決ということよりも刑事裁判所などの条約がその効力を発生いたしまして、言わば法治、国際法的な法治の世界というものが非常に進んでいるような気がする。しかし、日本の法治の状況は全くそういう国際法と切断されたところにしかないということを痛感するわけですが、これをやはり双方流れ合うというか、日本の法体系に組み込むためには私たちはどういう作業をした方がいいのか、どこに欠陥があるのかということを両先生にお話しいただきたいと思います。
○参考人(横田洋三君) (中略)
裁判規範の問題ですけれども、これをどういうふうに日本の国内できちっと受け入れてもらえるようにしたらいいかと。これは、戸塚先生の先ほどの参考人としての御発言の一つの中心的な課題だったと思います。やはり、国際法をきちっと日本の実定法の人たちに理解してもらう、とりわけ人権条約、人権関係の慣習法はきちっと理解してもらうということが重要だと思います。
それから、国連や人権のいろいろな委員会がありますので、そういうところで議論されているものを法律実務を行っている人たちがきちっとフォローする。そのために、できれば私は、法務省、外務省がそういうところで議論をされている非常に重要なポイントだけでも日本語できちっと紹介して、現在、国連ではこういうことが議論されて、日本にもこういうことが影響があると思うので参考までにといって、情報を裁判官、検事、弁護士あるいは大学の先生たちに渡すというようなことも今後やっていく必要があるのではないかという気がしております。(後略)
○参考人(戸塚悦朗君) 一時間も話をしたい内容なんですが、できませんので簡単に申し上げます。
先生にそんなことを申し上げるのは本当に釈迦に説法なんですけれども、一つは、先ほど申し上げた、今、横田先生もおっしゃった日本語化の問題ですね、ウェブサイトの。これで日本人、先生方も含めて、だれでも読めるというふうになることがまず第一に非常に重要じゃないかというふうに思います。それから、ロースクールでの国際人権法の教育、そういったものも実現していただかなきゃいけないと思います。
それで、ただ、私たちがなぜこの人権の問題に駄目なのかというのは、これ実は私は自分で体験しているんですけれども、慰安婦問題をやるまで私は、男は仕事をする、女は家庭を守るということで正しいと思っていたんですね。正に女性差別撤廃条約に違反した考えを持っておって人権弁護士だと自分で思っていたわけですね。これは、やはり慰安婦問題に取り組んで、その中から、ああ、これは自分の考えは間違っていたと、自分はやっぱり女性差別をやっていたんだということで改めた経験があります。
したがって、例えば慰安婦問題を先生方が御審議する中で日本が変わっていく、日本の国会議員も変わっていく、そういうプロセスがすごく大事じゃないか。結果出てくる法律、法案は、これは非常に大事ですけれども、それは結果であって、そのプロセスが非常に重要である。したがって、女性差別撤廃条約の選択議定書になぜ加盟しなきゃいけないのか、その議論をする、そして加盟したら一つ一つの事件で国際的な基準と日本のギャップを吟味していくということがやはり必要だろうと思います。
弁護士会の中でも国際機関に対する大きな偏見があるのは先生も御承知のとおりでありまして、これは最高裁、法務省だけが悪いということではないんだろうと思うんですね。最高裁にも法務省にも弁護士会にもみんな考えてもらいたいと。
国際機関の判断を受け入れる、選択議定書を批准するのは司法権の独立を侵さないんだと。これは、ヨーロッパに行って、ヨーロッパ人権条約に加盟しているほとんどですけれども、その司法権の独立を侵すなどという議論は一つも出ておりません。最高裁は憲法については終審裁判所であるというふうに憲法に書いてあります。しかし、国際条約については国際機関の判断を尊重する、これは十分、条約を批准し、先生方が承認し、できることだというふうに思います。
○大脇雅子君 私たちも余りにも厚い壁に時々たじろぐことがございますが、先生方のおっしゃったような努力を積み重ねてまいりたいと思います。
最後に、先生は、ジュネーブ四条約を日本は批准しているけれども有事法制の中でその議論がないではないかと。現在出されている法案では二年間のうちに整備すると言われておりますけれども、そのジュネーブ四条約の国内法整備のための論点みたいなものを御教示いただけたらと思います。
○参考人(戸塚悦朗君) これは非常に広範なものになると思いますが、一つだけ簡単に申し上げます。
私は、慰安婦あるいは強制連行について直接刑事責任のあった方について、捜査し、訴追し、処罰していくべきだということを提案いたしました。検察庁にも被害者の方と一緒に参りましたけれども、門前払いでした。それ一番大きかったのは時効なんですね。しかしながら、この時効というのは絶対的なものではありませんで、
戦争犯罪、人道に対する罪については時効はないというふうに考えられております。その点、今後も要するに戦争犯罪や人道に対する罪を犯した人については、国境もない、時効もない、国籍もない、あらゆるケースで処罰をしていかなきゃいけないということを確認していただくのが一番大事だというふうに思います。
○会長(上杉光弘君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
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以下、アニカ★さんの「
ポジティヴで行こう」の記事にて;
「
従軍慰安婦」
「(前半略)(引用者注;戸塚悦朗著『日本が知らない戦争責任』に基づいて)簡単に言うと、誰が強制連行したかのは国の責任の成否には関係ない、委託業者が騙して連れてきたにしろ親に売られたにしろ、連れて来られた婦女子を軍の管理の下、意に反して無理矢理性行為を強要したことが国際法違反であり戦争犯罪だ、というのが国際法の判断だったのです。(この解釈自体に争いはありません。ですからこの解釈に明確な〈法的根拠〉を示すことなく異を唱える方は、残念ながら法解釈学という学問がどういうものかをわかってないと言わざるを得ないでしょう)(中略)「軍による強制連行は無かった」という証拠をいくら示してみても、的はずれと言えるでしょう。(中略)だって問題の所在はそこではなかったのだから。(後半略)」
「
従軍慰安婦」
「(前半略)慰安所は軍の管理下にあったことに間違いなく、そこにおいて女性達は意に反して強制的に『休みなく一日10人以上の相手をさせられ夢も希望もない(これはタダの売春ではなく強制売春又は強姦だ)』という凄惨な状態に置かれてた、ということ。これこそが奴隷条約(国際慣習法)、強制労働条約、国際人道法の3つの国際法に違反する戦争犯罪行為そのものだったのです…(中略)日本は既に過去何度も謝罪しているではないか…そう言う人もいるでしょうが、口頭の謝罪のみ(河野談話など)では「法的責任」をとったことにはなりません。単なる道義的責任を認めたにすぎない。(法的責任は道義的責任とは異なります)しかも最近になって安倍総理は、従軍慰安婦の道義的責任すら否定するかのような発言をしている。(後半略)」
「
追記及びもぐもぐわいわいさん専用箱」
「(前半略)もっとダイレクトに「軍による強制連行の有無」が全く抗弁にならない(言い訳にならない)国際法違反も犯しているのです。それは1925年に日本が批准した「醜業」3条約違反です。長くなるのではしょりますが、(中略)慰安婦を無理矢理な方法で集め、慰安所を設けることそのものが既に国際法違反だったのです。慰安所は発案から運営に至るまで軍主導監督の下、軍所属の施設であったことは明らかです(略)その運営の一部である女性の調達は業者に委託していたのですが、業者が女性を調達しやすいよう、軍の方からかなりな便宜を計り特権を与えています(略)いわば軍は業者を下請けとして使用しているのです。とすれば、軍はその業者が不正なことを行わぬよう監視監督する義務があり、もし業者が騙したり、強制的に連れて来た女性がいるのなら、即座にその女性を帰し、業者を処罰する義務を負っていました。しかるに業者が連れて来た女性を当然の如くその支配下におき、醜業に就労せしめたのは業者の違法行為を追認、利用することに他ならず、軍自らが違法行為を行うも同然です。従って、業者が勝手に不正な手段で女性を連れて来たんだから、軍の責任ではない、というのは、無責任な言い逃れにすぎず、不作為による醜業3条約違反が成立します。ちなみにこれも何ら疑義ははさまれていない普遍的な法的解釈です。(中略)実に「狭義の強制連行」云々はもはや世界に堂々と主張できる有力な反論ですらなく、残念ながら相手にもされていない、というのがどうやら実情のようですよ」