自爆史観派側 唯一の歴史学者と見なされている秦郁彦氏は、2007/6/24に開催された、在日特権を許さない市民の会他の「No! Korea ~韓国への反論がここからはじまる~」というイベントで、「『慰安婦と戦場の性』などの著作で知られる慰安婦問題研究の第一人者」として、「虚構と真実の狭間にゆれる慰安婦問題」と題する講演を行ったそうである(http://www.zaitokukai.com/)。
そこで、秦氏は以下の発言をしたという。
「私は歴史の研究をやっているわけなんですけども、慰安婦の問題というものははじめから政治問題でありまして、じゃあ歴史家の出る幕なんかないじゃないか、と言いますと、これは実際に当時の資料や人物に当たってみる、そういった意味での貢献は出来るわけです。」(この発言の存在は、
Stiffmuscleさんから教えていただきました。同じ人物による投稿と思われる
同様の内容がこちらにもあります)
政治問題に貢献するために歴史家として資料や人物にあたったって、自らおっしゃっているわけだ。この情報源であるブログはあきらかに「無かった派」なので、秦氏が実際にそう言う発言をしたことは確実だろう。なお、
こちらでも(その問題に対し積極的に発言している歴史学者でありながら)秦氏が「慰安婦問題ははじめから政治問題で、事実や論理とは離れた次元で動いている」と発言している事を確認している(注1)。
ではその貢献とは、
研究者として事実を客観的にあたった、中立的な貢献なのだろうか? 自爆史観派が、「無かった」の論拠として頻繁に言及する秦氏の著作「慰安婦と戦場の性」には以下の批判がなされている(以下の引用強調部分は、引用者による)。
1,林博史教授による「秦郁彦『慰安婦と戦場の性』批判」 「写真や図表の無断盗用、資料の書換え・誤読・引用ミス、資料の混同、意味を捻じ曲げる恣意的な引用・抜粋などの例をリストアップしてみたのですが、膨大な量」で呆れてしまったそうだが、
誤読あるいは引用ミスの例として「1938年に内務省が陸軍からの依頼をうけて慰安婦の徴集の便宜を図った資料」の扱いが、秦氏の著作では「内務省警保局の課長が局長に出した伺い書が、内務省から各地方庁への『指示』に化け」、「五府県に慰安婦の数」割り当てが実際には400名なのが秦氏によると650名に変わっていたり、「引用も言葉を勝手に変えたり、付け加えたり、およそ
研究者の仕事とは思えない(56頁)」という。
林教授は恣意的な引用を複数例示してくださっているが、その1例を再掲しておくと「シンガポールにおいて、軍が慰安婦を募集すると『次々と応募し』『トラックで慰安所へ輸送される時にも、行き交う日本兵に車上から華やかに手を振って愛嬌を振りまいていた』という元少尉(小隊長)の回想録 (P.383)」部分のみを引用し、その後の悲惨な状況を記述する「『ところが慰安所に着いてみると、彼女らが想像もしていなかった大変な激務が待ちうけていた』と続き、さらに部下の衛生兵の話として、
『悲鳴をあげて』拒否しようとした慰安婦の『手足を寝台に縛りつけ』、続けさせた」という、その直後箇所を著作から省いてしまっているそうだ。
つまり、秦氏の著作には、読む者に「慰安婦」とされた被害者への同情心がわかないようにする恣意的な引用が確認できる。
2,Stiffmuscle氏による「どくしょのじかん1」「どくしょのじかん2」「どくしょのじかん3」「どくしょのじかん4」 実在が疑われる文献の引用が確認されていたり、
原著の記述と秦氏の言及に不整合性があったり(多数!)、個人攻撃、その他色々、Stiffmuscle氏によって非常に具体的に例示されている。
3,山木氏による「秦郁彦が金学順さんの証言をでっち上げ(1)」「秦郁彦が金学順さんの証言をでっち上げ(2)」「秦郁彦が金学順さんの証言をでっち上げ(3)」 (1)で、秦氏が『慰安婦と戦場の性』p.180にて、金学順さんが自らが「慰安婦にされた事情」として「中国語ができたので中共軍の密偵役もやった」と発言し、その証言が別機会では食い違うと糾弾していることに対し、そもそも、金さんは
そんな発言をしていないこと、原資料では「スパイと疑われ連行されたのは、金学順さんではなく彼女の養父」であったことを論証されている。
(2)で、秦氏が、金学順さんの証言とそれを元にした訴状・書籍全てに同じ事実が言及されていないことを問題視しているのに対し、「(証言の中から)本のテーマに沿って重要なポイントを判断し、不必要だと思われる部分を削ぎ落として掲載するのはそれぞれの執筆者です(訴状なら弁護士)。そういった
当たり前のことを秦氏は完全に見逃しているのか、もしくは意図的に黙殺」と指摘されている。
(3)で、秦氏が、金学順さんの出身の「妓生を養成する家」の養父を「売春業者」、妓生学校出身のことを「娼婦予備軍」と事実と異なる解説をしていること、しかも金学順さん自身は妓生養成学校に通い卒業したものの、妓生(キーセン)ではないのを「キーセン出身」と表現し、
「売春婦」とイメージ操作を行っていることが指摘されている。
また、著書「慰安婦と戦場の性」の記述ではないが、秦氏の「慰安婦」問題に対する取り組み方について、以下の批判もある。
4,高橋亨氏による「歪曲の手法 -- 『歪められた私の論旨』の歪んだ論理」 ここで高橋亨氏によって、「
相手側資料に依拠しているかのように見せながら実際にはその内容を歪曲し、あるいはそこに
書かれてもいないことを『発明』して自らの『論旨』に利用する」「原資料をちょっと確認すればすぐバレてしまうような安易なデタラメを平気で書く」といった秦氏の資料歪曲批判がされている。
具体的には、
秦氏は『歪められた私の論旨』で、名乗り出ている元「慰安婦」の数を「とくにインドネシアでは日弁連の某人権派弁護士が出かけて働きかけたものの、三千、六千、一万六千人とうなぎ登りにふえすぎて、さすがに当惑していると聞く。何しろ日本軍の兵力が一万人前後なのに、それを上まわる慰安婦はありえず、大多数は便乗組と思われる」「インドネシアの場合、川田文子の現地調査によった96年1月14日付けの朝日新聞報道によると16884人に増加」とするが、
ここの原資料である新聞記事を高橋氏が確認すると、
・報道の日付が間違い。(細かいことではあるが、資料の扱いがいい加減であることを示す)
・日本軍による
性暴力被害者の登録総数を「名乗り出た慰安婦の数」と歪曲。
・資料には「インドネシア兵補協会による調査」とあるものを川田文子氏によるものの様に表現し、川田氏
個人のイメージを操作。
と言った箇所があったそうだ。(なお、川田文子氏は「戦争と性:近代公娼制度・慰安所制度をめぐって 明石書店 1995」の著者で「慰安婦制度が当時の公娼制度と類似であっても、公娼制度自体が実際には金銭で行動をしばる人身売買で奴隷制として扱われるべき」との立場を取るそうである、
<従軍慰安婦についての出典のはっきりした本当の話>参照)。
また、高橋氏は、秦氏の文章に「(日本軍慰安所と)『類似の慰安所制度は第二次大戦期のドイツ、イタリア、アメリカ、イギリス、ソ連などにも存在した(くわしくは吉見義明『従軍慰安婦』を参照)のに、日本だけを処罰せよというのは、公平を欠くのではないか』としているが、「あたかも吉見氏がその著書で当時これらの国々にも日本軍と同様な慰安所制度があったと書いているかのように述べています [『歪められた私の論旨』文藝春秋1996年5月号 p.189] が、これは事実ではありません。吉見氏が日本軍と類似の慰安所制度があったと述べているのはドイツ軍の場合だけであり [吉見義明『従軍慰安婦』岩波新書 p.202-208]、イタリアなど名前すら出てきません。」とあるのを指摘している(吉見氏の著書は碧猫自身が確認済み)。
すなわち、秦氏は吉見氏の
意見を捏造して自説を展開するために利用した上で「日本だけ…公平を欠く」との「論旨」を成立させているという。
このサイトでの追求はさらに続いた上で、
高橋氏は秦氏を「歴史学者失格」と結論する。そして、その根拠を「
至る所に資料事実の歪曲・改変があるので、(中略)
論拠とする資料に逐一自分で当たってその内容をチェックする作業が必要になってしまいます。(中略)その資料が普通の書籍や新聞記事のようにチェック可能なものであれば私がやったようにその歪曲を明らかにすることもできますが、一般人が容易に
アクセスできない一次史料や「誰それは…と言っていた」といった類のものでは、チェックすること自体が不可能です。そのような論文は、特定の政治的主張のための
プロパガンダとしてはともかく、歴史学上の論文としては成立しません」と述べる。
…高橋氏の上記文章は1998.08.12のものだが、
2007年7月現在、秦氏の著作は実際に「政治的なプロパガンダ」として機能しているのではないか? それが
政治問題に貢献するために歴史家として資料や人物にあたったって自らおっしゃっている歴史学者によってなされ、その人物が「
慰安婦研究の第一人者」として自爆史観派の学術的裏付けとして機能している様子なのだ(注2)。
あるいは、秦氏による「慰安婦」問題に対する取り組み方には、以下の言及もあった。
5,「NHK ETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』 第2回「問われる戦時性暴力」(1月30日放映) についての見解と公開質問状」における、番組中なされた秦郁彦氏の「『慰安婦』の存在を否定しようとする不正確かつ片寄った発言」として;
1. (アミカス・キュリエ(法廷助言者)として弁護士が被告の国の立場をきちんと説明したにもかかわらず)
被告弁護人がいないと発言。2. (アフリカ系アメリカ人であり、戦時性暴力を初めて人道に対する罪で裁いた旧ユーゴ国際戦犯法廷関係者である)
裁判官と検事を、アメリカ人だと非難。(なお、他の地域の裁判官、検事もいるのにそれにはふれなかった)
3. (東京裁判において被告は性暴力、特に性奴隷制犯罪については問われていないのに)
被告は東京裁判ですでに裁かれたのだから、一事不再理で同じ被告を二度裁くのはおかしいと発言。4. (戦争犯罪や人道に対する罪に時効はないことが国際的な合意なのに)
すでに時効であると主張。5. (判決日のみの傍聴であるのに)
被害者証言に証人がいないと言い、証言に信憑性がないかのような発言。(「法廷」では、証言した一人の北朝鮮の被害女性については連合軍側に残されていた証拠が提示され、多くの証言者の証言もその他の資料で裏づけされており、また、被害者同士や地域の目撃証言が提示されている)。
6.
売春は当時合法行為であり、「慰安婦」は親によって同国人の周旋屋に売られ、商行為であると発言。(秦氏は朝鮮半島以外での強制連行、集団強かんと直結している慰安所については触れていない)
…「『法廷』ではアジア大平洋全域にわたる性奴隷被害の実態を証言と日本軍や連合軍側の文書証拠によって明らかにし、さらに、指揮命令系統や責任者もはっきりさせた。これらの解明は、各国の被害者支援グループや歴史、法律などの専門家が力を結集し、2年以上にわたる国際的な調査活動の成果である」にもかかわらず、判決日のみ傍聴した秦氏は上述の発言をし、改変されたNHK番組にて放映されたとのことである。
6,白石秀人氏(@永井和教授研究室)による「従軍慰安婦問題に関する自由主義史観からの批判を検証する」から「(2)「資料」はどう読まれているか」 (1) 秦氏の「軍慰安所従業婦等募集に関する件」(1938年3月4日 陸軍省から北・中支軍宛)解釈
多くの歴史学研究者から「募集に任ずる者の人選適切を欠いたため誘拐に類し警察当局に検挙取調べを受くるものが少なくない。(中略)社会問題上、手落ちのないようにするよう通牒する」と、誘拐に類する徴募事例の証拠とされている資料を、秦氏は
原文にない「取り締まり」という言葉を補って「募集の方法に誘拐に類して検挙取締を受くるものがあるので、軍の威信保持と治安維持のため業者をしっかり取り締るよう要求している」(秦郁彦「歪められた私の論旨」)と、日本軍が強制連行を行わなかった根拠として提示している。
(2)秦氏の「日本人捕虜尋問報告・第49号」(1944年10月1日 米軍心理作戦班)解釈
秦氏はこの第49号のみから、「慰安婦は、(i) 将軍より高収入で、(ii) 借金を一年で返し帰国したものもいた、(iii) 現在の物価に換算して1千万以上を家族に送金したり、(iv) 休日に町へ買い物に行ったり、(v) 接客を断る権利も認められていた」と解釈するが、吉見氏から「比島軍政監部の慰安所規定などの
「一次資料」を無視した第49号の使用」を批判されているという。しかし、秦氏は一貫して「第三者の立場で観察した唯一の公文書」とする第49号以外の根拠を示さずに、論証結果を公表しているそうである。(秦郁彦「従軍慰安婦問題で国の法的責任は問えない」)
白石氏によると第49号報告は;
1. この文書は、一般的「報告」。
2. 従って、予備知識なしに、一般的なことを訊いている。
3. 従って、正確・不正確な証言を判別出来ず、現に、相反する記述が含まれている。
4. 特に、朝鮮人慰安婦の聞き取りを何語で行ったか不明。
5. 誰が何を話したか特定出来ない、つまり情報の提供者が不明。
6. 断片の繋ぎあわせ、主観的な印象を感じざるを得ない。
と評価されている。また、
他の同時期資料を突き合わせると秦氏の様な結論が出せないことが論証され、「『資料』をどう読んだのでしょうか、『資料』の読み方を是非知りたい」と、白石氏は結論している。
また、秦氏については「慰安婦」関連以外でも、以下のような批判が収集できた。
7,榎原雅治氏による「『諸君!』2002年2月号秦郁彦氏の文章を嗤う」 秦氏は、賛同人として関わっている新しい歴史教科書を作る会の、扶桑社版『中学社会 新しい教科書』の176ページに掲載された「ペリーが渡した白旗」と題するコラムに対して、2001年7月4日東京大学史料編纂所の宮地正人氏が「
ペリ―の白旗書簡は偽文書である」等の批判をしたことに対して、
“正体見たり!「白旗書簡」ニセモノ説を掲げ「新しい歴史教科書」潰しに狂奔した宮地正人とその一派”(『諸君!』2002年2月号)なる反論らしき一文を掲載し
(タイトルだけで引きますけど)、それをさらに、2002年4月19日付けで歴史学研究会事務局長[当時]の榎原雅治氏に
「『諸君!』2002年2月号秦郁彦氏の文章を嗤う」として批判されていた。この榎原氏の文では
1 歴史学研究会に関する誤謬を含んだ言及、あるいは一派というような宮地氏への根拠なき中傷
2 歴史学研究会が指摘した『新しい歴史教科書』の初歩的誤りは「難くせぞろい」、「文部省が無視して、返事もしなかったのは当然だろう」とした下り→難癖と言える誤りではなく、文部省へは送付していないので返事の来るはずがない。
3 秦稿の中には、秦氏の研究者としての基礎的能力を疑わせる部分が複数ある(具体的には
リンク先参照)。
と批判されている。(なお、
『ペリーの白旗伝説』そのものについてはこちら、
問題視された経緯はこちら、
コラムはこちらで確認可能)
8,bluefox014氏による「週刊新潮のスクープした「画期的な資料」、実は6年前に判明していました(秦郁彦氏、阿羅健一氏の不勉強ぶりに驚く)」 タイトルのままだが、「あなたが「あった派」の書籍を読むのをサボっているだけ」と批判されている。
9,Apeman氏による「秦郁彦による旧軍の餓死者推定」と、蝙蝠氏による「戦没者三一〇万人」 秦氏のカウントする戦没者数がいい加減らしい(via
Stiffmuscleさんの日記コメント欄 by
法華狼さん)
(なんか、文章書きつかれて要約が大雑把になっている?)。
これら秦氏の用いている手法は、『
Non-Fiction (Remix Version)』のうちゃ氏によると、
歴史修正主義者の用いる手法そのものだそうである。
ちなみに、秦郁彦氏は2007/07/06付けのSankei WEB【正論】にて
「沖縄集団自決をめぐる理と情」と題した記事で、「研究者でも集団自決や慰安婦の強制連行を証する軍命令が見つからないのは、終戦時に焼却したからだとか、個々の命令はなくても戦前期の天皇制や軍国主義教育に起因すると強弁する人が少なくない」とのべている。
これも「政治問題に歴史家として貢献」しているのだろうか?
本エントリは、Stiffmuscleさんから、秦氏の聞き捨てならない発言を教えてもらって以来情報を集めていたので、当ブログでもメモがてらWEBに上げておくことにしたものです。________________________________________
注1
当該URL先の秦氏発言引用の全部;「慰安婦問題ははじめから政治問題で、事実や論理とは離れた次元で動いている。『ニューヨークタイムス』は反日的。東京支局は朝日本社の中にある。官憲による組織的強制連行はなかった。一人もなかったと断定して良い。新聞広告で慰安婦はいくらでも集まった。アメリカは自分の国が世界の文明国で最後まで奴隷制を持っていた国だから『性奴隷』という言葉を使う。実態は日本の遊郭と同じであろう。沖縄戦で手榴弾を持たせたのは攻撃のためであって自決用ではない。そもそも手榴弾は攻撃のためのもの。怪しい話には疑問を持ち、調査することが大事。」
注2
「上野輝将は従軍慰安婦に関する論争自体を対象に研究をしていますが、その中で研究者の動向を振り返り、慰安婦が性奴隷であることには研究者の間には議論はないとしています。いわゆる自由主義史観論者など反対している人が吉見義明の研究に触れないのは、学問的な議論では太刀打ちできないからと、見ています。又反対している歴史学者は中村粲と秦郁彦だけで彼らも吉見らの研究にはふれず政府の対応などしか批判していない事を指摘しています。(性を考えるわたしたちの講義 世界思想社 1997)」とのこと。
…中村粲氏って聞かないなぁ?
ではその貢献とは、
研究者として事実を客観的にあたった、中立的な貢献なのだろうか? 自爆史観派が、「無かった」の論拠として頻繁に言及する秦氏の著作「慰安婦と戦場の性」には以下の批判がなされている(以下の引用強調部分は、引用者による)。
1,林博史教授による「秦郁彦『慰安婦と戦場の性』批判」 「写真や図表の無断盗用、資料の書換え・誤読・引用ミス、資料の混同、意味を捻じ曲げる恣意的な引用・抜粋などの例をリストアップしてみたのですが、膨大な量」で呆れてしまったそうだが、
誤読あるいは引用ミスの例として「1938年に内務省が陸軍からの依頼をうけて慰安婦の徴集の便宜を図った資料」の扱いが、秦氏の著作では「内務省警保局の課長が局長に出した伺い書が、内務省から各地方庁への『指示』に化け」、「五府県に慰安婦の数」割り当てが実際には400名なのが秦氏によると650名に変わっていたり、「引用も言葉を勝手に変えたり、付け加えたり、およそ
研究者の仕事とは思えない(56頁)」という。
林教授は恣意的な引用を複数例示してくださっているが、その1例を再掲しておくと「シンガポールにおいて、軍が慰安婦を募集すると『次々と応募し』『トラックで慰安所へ輸送される時にも、行き交う日本兵に車上から華やかに手を振って愛嬌を振りまいていた』という元少尉(小隊長)の回想録 (P.383)」部分のみを引用し、その後の悲惨な状況を記述する「『ところが慰安所に着いてみると、彼女らが想像もしていなかった大変な激務が待ちうけていた』と続き、さらに部下の衛生兵の話として、
『悲鳴をあげて』拒否しようとした慰安婦の『手足を寝台に縛りつけ』、続けさせた」という、その直後箇所を著作から省いてしまっているそうだ。
つまり、秦氏の著作には、読む者に「慰安婦」とされた被害者への同情心がわかないようにする恣意的な引用が確認できる。
2,Stiffmuscle氏による「どくしょのじかん1」「どくしょのじかん2」「どくしょのじかん3」「どくしょのじかん4」 実在が疑われる文献の引用が確認されていたり、
原著の記述と秦氏の言及に不整合性があったり(多数!)、個人攻撃、その他色々、Stiffmuscle氏によって非常に具体的に例示されている。
3,山木氏による「秦郁彦が金学順さんの証言をでっち上げ(1)」「秦郁彦が金学順さんの証言をでっち上げ(2)」「秦郁彦が金学順さんの証言をでっち上げ(3)」 (1)で、秦氏が『慰安婦と戦場の性』p.180にて、金学順さんが自らが「慰安婦にされた事情」として「中国語ができたので中共軍の密偵役もやった」と発言し、その証言が別機会では食い違うと糾弾していることに対し、そもそも、金さんは
そんな発言をしていないこと、原資料では「スパイと疑われ連行されたのは、金学順さんではなく彼女の養父」であったことを論証されている。
(2)で、秦氏が、金学順さんの証言とそれを元にした訴状・書籍全てに同じ事実が言及されていないことを問題視しているのに対し、「(証言の中から)本のテーマに沿って重要なポイントを判断し、不必要だと思われる部分を削ぎ落として掲載するのはそれぞれの執筆者です(訴状なら弁護士)。そういった
当たり前のことを秦氏は完全に見逃しているのか、もしくは意図的に黙殺」と指摘されている。
(3)で、秦氏が、金学順さんの出身の「妓生を養成する家」の養父を「売春業者」、妓生学校出身のことを「娼婦予備軍」と事実と異なる解説をしていること、しかも金学順さん自身は妓生養成学校に通い卒業したものの、妓生(キーセン)ではないのを「キーセン出身」と表現し、
「売春婦」とイメージ操作を行っていることが指摘されている。
また、著書「慰安婦と戦場の性」の記述ではないが、秦氏の「慰安婦」問題に対する取り組み方について、以下の批判もある。
4,高橋亨氏による「歪曲の手法 -- 『歪められた私の論旨』の歪んだ論理」 ここで高橋亨氏によって、「
相手側資料に依拠しているかのように見せながら実際にはその内容を歪曲し、あるいはそこに
書かれてもいないことを『発明』して自らの『論旨』に利用する」「原資料をちょっと確認すればすぐバレてしまうような安易なデタラメを平気で書く」といった秦氏の資料歪曲批判がされている。
具体的には、
秦氏は『歪められた私の論旨』で、名乗り出ている元「慰安婦」の数を「とくにインドネシアでは日弁連の某人権派弁護士が出かけて働きかけたものの、三千、六千、一万六千人とうなぎ登りにふえすぎて、さすがに当惑していると聞く。何しろ日本軍の兵力が一万人前後なのに、それを上まわる慰安婦はありえず、大多数は便乗組と思われる」「インドネシアの場合、川田文子の現地調査によった96年1月14日付けの朝日新聞報道によると16884人に増加」とするが、
ここの原資料である新聞記事を高橋氏が確認すると、
・報道の日付が間違い。(細かいことではあるが、資料の扱いがいい加減であることを示す)
・日本軍による
性暴力被害者の登録総数を「名乗り出た慰安婦の数」と歪曲。
・資料には「インドネシア兵補協会による調査」とあるものを川田文子氏によるものの様に表現し、川田氏
個人のイメージを操作。
と言った箇所があったそうだ。(なお、川田文子氏は「戦争と性:近代公娼制度・慰安所制度をめぐって 明石書店 1995」の著者で「慰安婦制度が当時の公娼制度と類似であっても、公娼制度自体が実際には金銭で行動をしばる人身売買で奴隷制として扱われるべき」との立場を取るそうである、
<従軍慰安婦についての出典のはっきりした本当の話>参照)。
また、高橋氏は、秦氏の文章に「(日本軍慰安所と)『類似の慰安所制度は第二次大戦期のドイツ、イタリア、アメリカ、イギリス、ソ連などにも存在した(くわしくは吉見義明『従軍慰安婦』を参照)のに、日本だけを処罰せよというのは、公平を欠くのではないか』としているが、「あたかも吉見氏がその著書で当時これらの国々にも日本軍と同様な慰安所制度があったと書いているかのように述べています [『歪められた私の論旨』文藝春秋1996年5月号 p.189] が、これは事実ではありません。吉見氏が日本軍と類似の慰安所制度があったと述べているのはドイツ軍の場合だけであり [吉見義明『従軍慰安婦』岩波新書 p.202-208]、イタリアなど名前すら出てきません。」とあるのを指摘している(吉見氏の著書は碧猫自身が確認済み)。
すなわち、秦氏は吉見氏の
意見を捏造して自説を展開するために利用した上で「日本だけ…公平を欠く」との「論旨」を成立させているという。
このサイトでの追求はさらに続いた上で、
高橋氏は秦氏を「歴史学者失格」と結論する。そして、その根拠を「
至る所に資料事実の歪曲・改変があるので、(中略)
論拠とする資料に逐一自分で当たってその内容をチェックする作業が必要になってしまいます。(中略)その資料が普通の書籍や新聞記事のようにチェック可能なものであれば私がやったようにその歪曲を明らかにすることもできますが、一般人が容易に
アクセスできない一次史料や「誰それは…と言っていた」といった類のものでは、チェックすること自体が不可能です。そのような論文は、特定の政治的主張のための
プロパガンダとしてはともかく、歴史学上の論文としては成立しません」と述べる。
…高橋氏の上記文章は1998.08.12のものだが、
2007年7月現在、秦氏の著作は実際に「政治的なプロパガンダ」として機能しているのではないか? それが
政治問題に貢献するために歴史家として資料や人物にあたったって自らおっしゃっている歴史学者によってなされ、その人物が「
慰安婦研究の第一人者」として自爆史観派の学術的裏付けとして機能している様子なのだ(注2)。
あるいは、秦氏による「慰安婦」問題に対する取り組み方には、以下の言及もあった。
5,「NHK ETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』 第2回「問われる戦時性暴力」(1月30日放映) についての見解と公開質問状」における、番組中なされた秦郁彦氏の「『慰安婦』の存在を否定しようとする不正確かつ片寄った発言」として;
1. (アミカス・キュリエ(法廷助言者)として弁護士が被告の国の立場をきちんと説明したにもかかわらず)
被告弁護人がいないと発言。2. (アフリカ系アメリカ人であり、戦時性暴力を初めて人道に対する罪で裁いた旧ユーゴ国際戦犯法廷関係者である)
裁判官と検事を、アメリカ人だと非難。(なお、他の地域の裁判官、検事もいるのにそれにはふれなかった)
3. (東京裁判において被告は性暴力、特に性奴隷制犯罪については問われていないのに)
被告は東京裁判ですでに裁かれたのだから、一事不再理で同じ被告を二度裁くのはおかしいと発言。4. (戦争犯罪や人道に対する罪に時効はないことが国際的な合意なのに)
すでに時効であると主張。5. (判決日のみの傍聴であるのに)
被害者証言に証人がいないと言い、証言に信憑性がないかのような発言。(「法廷」では、証言した一人の北朝鮮の被害女性については連合軍側に残されていた証拠が提示され、多くの証言者の証言もその他の資料で裏づけされており、また、被害者同士や地域の目撃証言が提示されている)。
6.
売春は当時合法行為であり、「慰安婦」は親によって同国人の周旋屋に売られ、商行為であると発言。(秦氏は朝鮮半島以外での強制連行、集団強かんと直結している慰安所については触れていない)
…「『法廷』ではアジア大平洋全域にわたる性奴隷被害の実態を証言と日本軍や連合軍側の文書証拠によって明らかにし、さらに、指揮命令系統や責任者もはっきりさせた。これらの解明は、各国の被害者支援グループや歴史、法律などの専門家が力を結集し、2年以上にわたる国際的な調査活動の成果である」にもかかわらず、判決日のみ傍聴した秦氏は上述の発言をし、改変されたNHK番組にて放映されたとのことである。
6,白石秀人氏(@永井和教授研究室)による「従軍慰安婦問題に関する自由主義史観からの批判を検証する」から「(2)「資料」はどう読まれているか」 (1) 秦氏の「軍慰安所従業婦等募集に関する件」(1938年3月4日 陸軍省から北・中支軍宛)解釈
多くの歴史学研究者から「募集に任ずる者の人選適切を欠いたため誘拐に類し警察当局に検挙取調べを受くるものが少なくない。(中略)社会問題上、手落ちのないようにするよう通牒する」と、誘拐に類する徴募事例の証拠とされている資料を、秦氏は
原文にない「取り締まり」という言葉を補って「募集の方法に誘拐に類して検挙取締を受くるものがあるので、軍の威信保持と治安維持のため業者をしっかり取り締るよう要求している」(秦郁彦「歪められた私の論旨」)と、日本軍が強制連行を行わなかった根拠として提示している。
(2)秦氏の「日本人捕虜尋問報告・第49号」(1944年10月1日 米軍心理作戦班)解釈
秦氏はこの第49号のみから、「慰安婦は、(i) 将軍より高収入で、(ii) 借金を一年で返し帰国したものもいた、(iii) 現在の物価に換算して1千万以上を家族に送金したり、(iv) 休日に町へ買い物に行ったり、(v) 接客を断る権利も認められていた」と解釈するが、吉見氏から「比島軍政監部の慰安所規定などの
「一次資料」を無視した第49号の使用」を批判されているという。しかし、秦氏は一貫して「第三者の立場で観察した唯一の公文書」とする第49号以外の根拠を示さずに、論証結果を公表しているそうである。(秦郁彦「従軍慰安婦問題で国の法的責任は問えない」)
白石氏によると第49号報告は;
1. この文書は、一般的「報告」。
2. 従って、予備知識なしに、一般的なことを訊いている。
3. 従って、正確・不正確な証言を判別出来ず、現に、相反する記述が含まれている。
4. 特に、朝鮮人慰安婦の聞き取りを何語で行ったか不明。
5. 誰が何を話したか特定出来ない、つまり情報の提供者が不明。
6. 断片の繋ぎあわせ、主観的な印象を感じざるを得ない。
と評価されている。また、
他の同時期資料を突き合わせると秦氏の様な結論が出せないことが論証され、「『資料』をどう読んだのでしょうか、『資料』の読み方を是非知りたい」と、白石氏は結論している。
また、秦氏については「慰安婦」関連以外でも、以下のような批判が収集できた。
7,榎原雅治氏による「『諸君!』2002年2月号秦郁彦氏の文章を嗤う」 秦氏は、賛同人として関わっている新しい歴史教科書を作る会の、扶桑社版『中学社会 新しい教科書』の176ページに掲載された「ペリーが渡した白旗」と題するコラムに対して、2001年7月4日東京大学史料編纂所の宮地正人氏が「
ペリ―の白旗書簡は偽文書である」等の批判をしたことに対して、
“正体見たり!「白旗書簡」ニセモノ説を掲げ「新しい歴史教科書」潰しに狂奔した宮地正人とその一派”(『諸君!』2002年2月号)なる反論らしき一文を掲載し
(タイトルだけで引きますけど)、それをさらに、2002年4月19日付けで歴史学研究会事務局長[当時]の榎原雅治氏に
「『諸君!』2002年2月号秦郁彦氏の文章を嗤う」として批判されていた。この榎原氏の文では
1 歴史学研究会に関する誤謬を含んだ言及、あるいは一派というような宮地氏への根拠なき中傷
2 歴史学研究会が指摘した『新しい歴史教科書』の初歩的誤りは「難くせぞろい」、「文部省が無視して、返事もしなかったのは当然だろう」とした下り→難癖と言える誤りではなく、文部省へは送付していないので返事の来るはずがない。
3 秦稿の中には、秦氏の研究者としての基礎的能力を疑わせる部分が複数ある(具体的には
リンク先参照)。
と批判されている。(なお、
『ペリーの白旗伝説』そのものについてはこちら、
問題視された経緯はこちら、
コラムはこちらで確認可能)
8,bluefox014氏による「週刊新潮のスクープした「画期的な資料」、実は6年前に判明していました(秦郁彦氏、阿羅健一氏の不勉強ぶりに驚く)」 タイトルのままだが、「あなたが「あった派」の書籍を読むのをサボっているだけ」と批判されている。
9,Apeman氏による「秦郁彦による旧軍の餓死者推定」と、蝙蝠氏による「戦没者三一〇万人」 秦氏のカウントする戦没者数がいい加減らしい(via
Stiffmuscleさんの日記コメント欄 by
法華狼さん)
(なんか、文章書きつかれて要約が大雑把になっている?)。
これら秦氏の用いている手法は、『
Non-Fiction (Remix Version)』のうちゃ氏によると、
歴史修正主義者の用いる手法そのものだそうである。
ちなみに、秦郁彦氏は2007/07/06付けのSankei WEB【正論】にて
「沖縄集団自決をめぐる理と情」と題した記事で、「研究者でも集団自決や慰安婦の強制連行を証する軍命令が見つからないのは、終戦時に焼却したからだとか、個々の命令はなくても戦前期の天皇制や軍国主義教育に起因すると強弁する人が少なくない」とのべている。
これも「政治問題に歴史家として貢献」しているのだろうか?
本エントリは、Stiffmuscleさんから、秦氏の聞き捨てならない発言を教えてもらって以来情報を集めていたので、当ブログでもメモがてらWEBに上げておくことにしたものです。________________________________________
注1
当該URL先の秦氏発言引用の全部;「慰安婦問題ははじめから政治問題で、事実や論理とは離れた次元で動いている。『ニューヨークタイムス』は反日的。東京支局は朝日本社の中にある。官憲による組織的強制連行はなかった。一人もなかったと断定して良い。新聞広告で慰安婦はいくらでも集まった。アメリカは自分の国が世界の文明国で最後まで奴隷制を持っていた国だから『性奴隷』という言葉を使う。実態は日本の遊郭と同じであろう。沖縄戦で手榴弾を持たせたのは攻撃のためであって自決用ではない。そもそも手榴弾は攻撃のためのもの。怪しい話には疑問を持ち、調査することが大事。」
注2
「上野輝将は従軍慰安婦に関する論争自体を対象に研究をしていますが、その中で研究者の動向を振り返り、慰安婦が性奴隷であることには研究者の間には議論はないとしています。いわゆる自由主義史観論者など反対している人が吉見義明の研究に触れないのは、学問的な議論では太刀打ちできないからと、見ています。又反対している歴史学者は中村粲と秦郁彦だけで彼らも吉見らの研究にはふれず政府の対応などしか批判していない事を指摘しています。(性を考えるわたしたちの講義 世界思想社 1997)」とのこと。
…中村粲氏って聞かないなぁ?
No. 1494
碧猫さん、はじめまして。
中村粲氏は南京事件の否定派として名前を見る人ですね。
Wikipediaへのリンクを貼っておきます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E7%B2%B2 No. 1495
>MKMさん
はじめまして。お名前はうちゃさんのところその他でお見かけしています。
中村粲氏の情報ありがとうございます。(「慰安婦」の)無かった派でもあまり著作等に言及されているのを見かけたことのないヒトで??となっていました。私がこの手の話題をチェックするようになったのも、せいぜい3月頃以降ですし。
『慰安婦問題の虚像と実像 國民會館叢書 5』なんて、みるからに香ばしい著作もおありの方だったのですね。
No. 1497
こうしてまとめられると、改めてひどいというのがよくわかります。私が読んでいて一番頭にきたのは、CBI Round Upの記事を慰安婦たちがカネ目あてにやってきたように要約しているところでした。
これでよく慰安婦を嘘つき呼ばわりできたものですね。恥知らずもいいところでしょう。
No. 1499
秦氏は歴史学者としてはかなり業績を上げている人で、現近代史の研究を語る上では無視できない方です。
この人は、主義としては保守というよりも右派と言ってもいい立場なのでしょうが、研究者として一線を引くだけの節度を持っている(いた)ので左派と称される論客からも一定の信頼を得ています(した)。ただ、慰安婦問題に関係してはご自身の偏りからか、かなり粗雑な議論を行ってしまっているというのが私の印象です。
また、発表する媒体によっては読者を誤誘導させる(意図してかはわかりませんが)文章を書くことがあります。私やApemanさんが取り上げた正論の記事が典型だと思いますが、その結論に達した筋道を書かないで、結論のみを事実のように書くので裏取りが必要になります。
確かに実績も上げ、南京事件や日本軍の行動に対してもかなり客観的な視点を持つ学者だけに、慰安婦問題に関する発言は声望を下げてしまっているようで残念です。
No. 1502
>うちゃさん
…そちらで、歴史修正主義者と指弾するエントリーを上げてくださってありがとうございました(エントリーの内容に言及せず、自分の質問だけしに行ってしまっていてすみませでした)。
政治的であると認識している問題に、研究者が、予断をもって、一定方向の意図を込めた情報を発信するなんて、やってはいけないことであり、研究に携わる者たちの共同体に対する背信行為です。
そして、ただでさえ口を閉ざす圧力のかかる性暴力の被害者に対し、最初から侮蔑を込めた発話体勢で臨んでいる様子では、そりゃ、口も閉ざすでしょう。リンクを貼った先では、元「慰安婦」の人に「なんで当時の話をしないんですか、お金ももらえますよ」と尋ねたと堂々と書いてあるんですよ。最悪です。
>蝙蝠さん
私が秦氏の業績としてみたのが、「慰安婦」関係なので印象最悪なんです。
秦氏が「政治的」と判断した事柄に関して歪曲なり誤誘導なりをするとすれば、情報の受取手はどうやって秦氏が「政治的である」or「政治的でない」と判断したかを知ればいいんでしょう? 評価されている業績のある方であればあるほど、困った状況を招くでしょう(まねいているというか)。
…あちらこちらで再生産されている、「慰安婦」を無かった事にする議員・文化人(ホンマか)・ブロガーの意見は、秦氏の意見のコピーらしいです。
No. 1503
蝙蝠さん
こんなトンデモ手法を使って、日本政府や日本軍を免罪するような結論を出すような行為は批判されなきゃならないと思います。
きちんとした業績を上げた人間が、自身の専門分野で科学とは言えない手法を使って結論を歪曲しているのですから、最初っからトンデモ学者である東中野センセとかデムパ八木センセなどより罪深いですよ。
なにより、ご自身の過去の業績に対する裏切り行為でしょう。
No. 1506
慰安婦は徴用ではなく募集だったーー日本政府調査資料から:ステージ風発
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/243239/眠れぬシーサーさんやni0615さんにたちまち論破されてしまいましたとさw
小森さんは、"sex slavery"の意味もご存じないだけじゃなくて、"systematic"という普通に使う単語の意味さえご存知ないらしいです。「組織ぐるみ、命令がちがち」とでも思っておられるんでしょうね。オワットル
No. 1508
えーと、ちょっと勘違いされてしまったようですが、(私の書き方が拙かったようですね、すみません)私は秦氏を批判するなと言っているわけでないのです。
ただ、念頭に修正主義者の歴史学者に対する誹謗がありまして。一部を取り出してその人の業績をすべて貶めるような言説がことにネット上では目立っているので、そういった言説と同種と見られることは避けるべきではないのかなと。特に最近の慰安婦問題に関連しては吉見氏、林氏、田中氏などに対する誹謗の酷さはよくお分かりかと思います。
正直、秦氏は実証についてはともかく、旧軍を免罪する方向での解釈が多いようなので、私は保守ではなく右派と見ています。
No. 1511
>Stiffmuscleさん
…瞬殺ですね。あれだけ、「慰安婦」問題で、上からの意見を、ジャーナリストとして振りまいていたのに、それ、読んでなかったの? しかも、それももらい物?
しかし、ご本人と取り巻きさんは、瞬殺されているのに気づいていないゾンビ集団と化しているのがなんともはや。
>蝙蝠さん
そもそも、批判のエントリとして引用させていただいている訳ですから、批判するなと仰せだとは思っていません。「一部を取り出してその人の業績をすべて貶めるような言説」に対する危惧も理解しているつもりです。
でも、これだけしつこく、具体的な批判の根拠を示してくださっているサイトを引用して例示して、なおかつ一部を取り出した誹謗と受け取る人がいるなら、何をしてもそう受け取る人ではないかと。
…秦氏は、おもちの女性観ゆえに「慰安婦」問題のみ歪んだ解釈をするのかと思ったら、そう言うわけではないようですね。逐一、原資料などにあたったり、他研究者の意見と比較して、見解を検証する必要のある研究者。すでに近・現代史の知識を広くおもちの人以外も、秦氏の研究成果を参照するのですが。。。
No. 1512
よくまとめていただいて感謝です。これだけの資料、読むだけでもたいへんだったでしょう。
以下に私の考えを述べさせていただきますが、決して蝙蝠さんに対する批判ではないのでご了承ください。
秦氏の慰安婦に関する記述は、量的には研究の一部かも知れませんが、その一部が社会に与えた影響は大きいです。今回、碧猫さんが取り上げてくださった拙エントリーにも書いたことですが、たとえば秦氏は、元「慰安婦」の金学順さんが言ってもいない「中国語ができたので中共軍の密偵役もやった」という証言を創作し、他の証言と食い違ってると主張しています。そして、それを鵜呑みにした小林よしのりが『新ゴーマニズム宣言』で金学順さんを嘘つきと描いたことが、現在の元「慰安婦」に対する「嘘つき呼ばわり」の源流になっていると思われます。
ですから、批判するべき部分に対して、批判していくことは大事なことだと思います。被害者の名誉回復のためにも。
「慰安婦問題で事実に反することを書いたから、秦氏の研究はすべてウソだ」という風なことを言わない限り、秦氏の業績をすべて貶めることになるという心配はないように思います。
No. 1513
スミマセン!タイトルに名前を書いてしまいました。↑
何を焦ってるんだろう、私は(笑)
No. 1514
>山木さん
コメントありがとうございます。
もともと、この辺りはほとんど読んでいた情報だから話の道筋は頭に入っていたのですが、具体例を抽出しつつの要点抜き書きが、、、特に高橋さんの文章は「掲示板の書き込み」形式なのでなかなか手がつけられませんでした。
本当はもっと早くにまとめたかったんですが。
Stiffmuscleさんのところにも同様のことを書いてきましたが、元資料にはある数字を無いと断言したり、証言にないことを合成して作り上げ、自分の研究として公表し流布するって、(高橋亨さんも指摘していましたが)実験系研究者のデータ捏造に匹敵する行為ではないですか。…実験系なら、所属の調査委員会による確認実験でデータが再現しなければ公表論文取り下げ、それまでの研究実績も疑いの目で見られ、再現実験で洗い直されるでしょうね。
…私自身、秦氏の研究業績を参照したい時は、まず、近・現代史に詳しい方に「この情報は信用できるか」を尋ねることでしょう。でも、この場合、秦氏ではなく、「秦氏のこの研究は信用できるか」を教えてくれた方を信用している事を意味する、と思うのです。
No. 1516
読んでいて、頭が痛くなってきました・・・
秦氏批判としてあげられた項目のほとんどが、秦氏よりも吉見義明氏により強く当てはまるか、または議論として破綻しているものばかりだからです。
永久にお花畑に住んでいて下さい。
特定亜細亜のマゾ奴隷さんたちは。
No. 1518
じゃ、吉見氏による著作のどれの何ページ目の記述に、ここで挙げた恣意的引用や歪曲というような批判が当てはまるのかを、その原資料の記述を比較検討した上で、具体的にリストアップしてブログ記事をまとめてトラックバック送ってくれ。
他人相手に、「議論が破綻している」「脳内お花畑」と指摘して、自分はそうじゃないつもりでいるようだから、当然できるよな? 今回が初回訪問でリンク先の一つも確認せず、テンプレあるのか的ヘイコメを、捨てハンでコメントするぐらいなんだから、まさかできないなんて事無いんだろ?
なお、「議論が破綻している」ではなく「論理が破綻している」と表現すべきなのを指摘しておく。ここの批判文中で議論はしていない。
No. 1520
ちゃんと双方に氏をつけていたり、ですます調で書いているあたり、まだ普通の方かと。
個人的に興味を持ったのは後半ですね。
非武装論に対してお花畑と嘲笑するパターンはよく見られますが、慰安婦問題についてお花畑と呼ぶのは直接的な関係が無い。
この場合、「慰安婦問題と非武装論」をセットで捉えていることがわかります。逆に、「なかった派と強硬論」もセットで。
しかし、慰安婦問題と戦争論は全く別の問題です。
もちろん一個人の中で、「慰安婦問題と非武装論」を両方唱える人はいますし、「なかった論と強硬論」を同時に唱える人はいます。
けれど、そのようなセット感覚を自明のものとしているのでは、イデオロギーでものを考えていると言われても仕方ない。
共産党みたい。政治的なヒトってこわいなぁ。
No. 1521
>人生アウトさん
アレの特徴として、妙に素直ってのがありますよ。
ハムニダさんところに湧いたのがオリジナリティがないとあしらわれたら次には必死になってたり、例のブログペットなんかも『長文書いたからって頭良く見えるわけではない』ってからかったら次から文章が短くなったり。
だからこれも、注意事項を読んだ結果こうなったんじゃないかな、と。
ヒトをけなせば、自分が偉くなれると勘違いしているところが、シーズンに入ったアレそのものでしょ。
http://bogusne.ws/archives/20060820-1.html
No. 1524
無かった派の心の依りどころである秦先生の研究がこんなトンデモだったんですから。
秦先生以外の味方というと、平成五年の政府報告書を今頃になって読んだと得意げに報告してるコモリンとか、「トラックで二十万人の朝鮮女性を略奪した」とかいう毒電波を受信してる渡部昇一とか、例の自爆広告になまえをつらねちゃった人たちとか、そんなのばっかりですからね。
心もとない気持ちはよく分かりますよ、うん(笑)
No. 1525
秦氏の著作も吉見氏の著作も読んでいないに賭けときます。
No. 1526
>うちゃさん
単になんか文句つけられてる程度の理解かもしれません。そうじゃなくて、私の要求に対応するつもりがあるならそれもよし。まとめてくれるなら、対応もしやすいですから。
古森記者は、アレにはみんなずっこけましたねぇ。前に「もしかして本当にまだ解ってないのか?」っていじりましたけど、まさか本当にそこまで解ってない状態で大胆な発言をしていたもので。あの尋問報告第49号ネタかと思った記事も、実はもっと面白い事態だったみたいですね。
http://d.hatena.ne.jp/dempax/20070512>蝙蝠さん
賭が成立しませんよ(^^;
頭が痛くなったそうですが、知恵熱みたいなもんでしょうね。
No. 1590
中村粲氏といえば、秦教授は評価している軍事系サイトでも批判されています。
http://homepage1.nifty.com/SENSHI/book/2daitouasen-1.htm引用されている文章を見てもわかるように、何というか時代錯誤な人ですね。
No. 1592
アメリカは同盟国だからと、「慰安婦決議をなんとかやめて」とお願いした総理とか意見広告を出して反発をかった「文化人」とかは、「脳内お花畑」じゃなくて「リアリストなのか、っていうのが、まず最初の疑問ですねえ。
アメリカの‘物語’は、<ファシズム国家・日本を民主化してやった正義の国、ぼくちゃん>で、「イラクに爆弾落とそうぜ」という人間ほどその物語’を必要としているんだけどなあ。
No. 1593
>ほっけさん
実は、秦氏の「現代史の争点」を買ってきてしまいました。
引用文献リストのついていない放言集なので少しアテがはずれたのですが(立ち読み時点でチェックしたものの、それでも買ったわけですけどね)、、、中村粲氏って、秦郁彦氏に、渡辺昇一氏と並べられているんですけど(笑)。
ご紹介のURL先に、中村氏が「日本政策研究センター」から書籍を出しているとありますね。
あの、超香ばしい研究センターから(爆)。
>kuronekoさん
現実の認識が違っていれば、リアリストの定義が違っているかもしれません。自爆政治家も自爆文化人も、ベタに、捏造歴史学者と煽動新聞記者の意見を鵜呑みにしているんでしょうねぇ。
ところで、赤城山、やめちゃいましたね。
No. 1608
>秦氏の「現代史の争点」を買ってきてしまいました。
あー……秦教授の軽いエッセイを読むと左翼は怒りが込み上げてくることがよくあるので、顔面体操のきっかけには良いかもしれません(苦笑)。
No. 1612
>秦教授の軽いエッセイ
最初に「慰安婦」がらみのところを先に読んだので、腹筋を使いました。
どこかで冷静で理知的な語り口、みたいな評価をしている人を見かけたんですが、なんの冗談なんでしょうか?
自分以外の研究者や関係者を全てクサしまくり、どろどろの嫌み満載の本じゃないですか。呆れました。
No. 1618
>中村粲氏といえば、秦教授は評価している軍事系サイトでも批判されています。
>中村粲氏って、秦郁彦氏に、渡辺昇一氏と並べられているんですけど(笑)。
その中村粲氏に「常識に帰れ」と叱られたのが藤岡信勝氏だそうです。
http://www.jca.apc.org/nmnankin/news6-12.html No. 1622
>Apemanさん
ありがとうございます。
…互いに相手をメクソのハナクソのと、指さしあっている状態に見えますね。
無かった派の皆様も、こんな調子の「歴史学者」(カギ括弧付き)の「説」を頼りに、無かった無かったと主張して不安を感じないところがすごいです。
小心者の私にはとても真似ができません。
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