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『ローマ人の物語』 31 終わりの始まり[下]

本書では仮定で書いてあるが、断定で抜き出してしまおう。
p108

人類の歴史は、悪意とも言える冷徹さで実行した場合の成功例と、善意あふれる動機ではじめられたことの失敗例で、おおかた埋まっている。






『ローマ人の物語』38-40 キリストの勝利

塩野七生さんが文藝春秋で小沢一郎さんをカエサルばりにプッシュしていたのを覚えていたから、民主党代表選後に本屋でみかけて足が止まった。後回しにしていた続きを読もう。

民主党代表選にまつわるいろんな記事を読んだ後だったから、いやでもダブらせて読んでしまう。p199

…つまり、本音は脱税にある、聖職者コースへの転出である。キリスト教を公認したコンスタンティヌス大帝と息子のコンスタンティウス帝の二人によって、キリスト教会に属する聖職者は免税と決まった。地方自治体の有力者層が、雪崩を打ってキリスト教化した真因は、これにあったのだ。しかも後期のローマ帝国は、兵士と行政官僚の数を倍増している。そのうえ教会関係者という、非課税の階層を作ってしまった…
この状態でもなお、皇帝は税制を変えない。その皇帝から税の減収の穴埋めを迫られた官僚が、特別税や付加税の名目をつくっては税を集めるようになったのも当然の帰結だった。
…ユリアヌスのところに官僚が持ってきた税の増収案も、いつものように官僚たちの頭がひねりだした、名称だけはもっともらしい特別税だった。しかもかれらは、ガリアの安全が保障されなかった時期の余波でブリタニアからの税収も入ってこなくなり、この窮状を打破するには増税しかないと、副帝の彼に承認を迫ったのである。
 しかしユリアヌスは、決然とそれを拒否した。そして、次の二つの政策をただちに実施するよう命じたのである。
 第一は、出費の無駄の解消とと既存の費用の節約。無駄はあらゆるところにあった。…
 第二の政策は、税の徴収の公正。地位の高い者や富裕者には甘く低所得層には厳しくなりがちだった徴税執行者による手加減を、厳しく罰することで牽制したのだった。
 政策の第三だが、特別税による増税どころか、既存の税の減税を命じたのである。税の減収の主因は、蛮族の侵略によって破壊されたガリアの東半分の生産性の低下にあった。それなのに新しい特別税を課したりして増税すれば、蛮族の撃退には成功して平和がもどっても,それはこの地方の活性化にはつながらなくなる、というのがユリアヌスの考えである。…
 ユリアヌスによる減税は「人頭税」と呼ばれていた税で早くも実行に移され、それがこれまでは25ソリドゥスであったのが7ソリドゥスにまで引き下げられたという。



二十歳まで幽閉生活で「哲学の一学徒」でしかなかったのが、いきなりローマ軍の「副帝」としてデビューし、持ち前の生真面目さと意志の強さで蛮族の侵入で荒廃していたガリアを再興してしまう。その後兵士たちが正帝の命令を拒否するだけでなくユリアヌスを皇帝としてかつぎ、実際そうなってしまうというのだからおもしろい。


管陣営の人が選挙に勝ったあと「こっちの選挙対策本部はサークル活動のようだったよ」と言っていた。また小沢支持の細野豪志さんは、「自由党との合併前の民主党には一年生議員が代表に直接食ってかかっても誰も驚かないような空気があって、自由党はそうじゃなかったからどうかと思っていたが、小沢幹事長の下で働いてみて、ここは力で押さないともう決まらないという局面ではさすがだと思った」とも言っていた。そういう話が耳に残っている。

二十四歳のユリアヌスにはあったのに、小沢一郎さんに足りないもの、今の民主党政権にないものはなんだろうね。

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ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉 (新潮文庫)
塩野 七生
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笹部 政宏
笹部 政宏
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