親父、1000万貸してくれ。
4年前にこう言ってきた時の事は今でも鮮明に思い出せる。
地方で小規模な会社を経営している俺は、1000万程度を難なく出せる余裕は有った。
しかし、100万200万を横領して人生を棒に振る奴をいくらでも見てきた俺は、息子がその道を行くのは防ぎたかった。
なんでもトレーディングカードを売り買いするビジネスをやりたいらしい。
金はいくら有っても足りない。カードを鑑定して価値を上げて販売したいらしく、その間に固定される資金がデカいという話だった。
これでも社長をしているので、ビジネスの要点を掴む能力は有ると思っている。
要するにこういう事だ。
1~2ヶ月後にそのカードが鑑定されて返ってくる。
このようなビジネスらしい。
そこで質問をした。
自信を持って鑑定に出したカードが、仮に最高評価を取れなかった場合は?
カードは相場変動が激しいのでは?1~2ヶ月の間に相場が大きく変わったときの安全マージンは?
数枚、数十枚なら販売は難しくないだろう。だが数百、数千と増えていった時の出口は?
ビジネスとして成立しがたいように思える。
代案を出す事にする。
まずお前が持っている資金はいくらだ?と聞いた。(20万らしい)
ならそこに30万足して50万にしてやる。
この合計50万を100万にしてこい。方法は任せる。
出来るか?と聞いたら、やると言うのでやらせてみた。
2ヶ月後に100万になったと言ってきたので、詳細を聞く。
ド田舎のカードショップで状態の割に安く売られているレアカードを、秋葉原のショップに転売する事で利益を得たらしい。
なかなかやるじゃないかと思った。
交通費、仕入れ代金、販売代金、一部はメルカリで販売もしたらしく、その手数料もちゃんと記帳していた。
息子が100万にした資金にもう100万を追加してやった。
今度は合計200万を500万にしてこい。方法は任せると言った。
税務署に文句を言われるのは嫌だろうから借用書を書いておけとも伝え、本人納得の上で書かせた。
そして一つアドバイスをした。ショップの店員とは仲良くしておけ。
ド田舎の店で、たくさん購入してくれる客は上客だ。
必ずお前の事を覚えている。感じよく話しかけろ。店長やオーナーと繋がれ。そのラインは、お前のビジネスに必ず役に立つと。
間違ってもお客様は神様などと勘違いするな。相手はお前の利益に貢献してくれる取引相手だ。尊重しろ。
そのように伝えて3ヶ月後。息子は資金を500万にしてきた。
詳細を聞いた。
ショップの店員と仲良くなり、店頭に出す前のカードを仕入れられるようになったらしい。朝6時に家を出ていたのは知っていたが、そんな事をしていたのかと笑った。
特定のレアリティのカードを大量に仕入れて、秋葉原のショップにまとめて卸売もしたそうだ。
1枚数万円、数十万円の鑑定に出せる良品カードを現金購入して、他の鑑定に出している奴に流して利益を分ける。
そして、鑑定に出している奴の失敗したカードを安く購入して、それを秋葉原のショップに卸売もしたそうだ。
親父の言った通り、人の繋がりはすげえ金になる。それ以上に入ってくる情報がすげえと言っていた。
いいじゃないか。最初に1000万貸してくれと言ってきた時とは雲泥の差だ。
それで500万にもう500万足して1000万にしてやった。
税理士と信金を紹介してやるから、さっさと法人成りしろと伝えた。
事業計画書の書き方も教えてやるから、融資を引っ張れ。お前のビジネスは資本が必要だ。
俺への返済は有る時払いでいい。信金には口を利いてやる。
そう伝えると、唸りながら事業計画書を書き上げ、1000万の融資を決めてきた。
奴の手元には2000万の資金が準備された。20代の駆け出しとしては、悪くない金額だ。
そこから3年半。
2025年はカード市場が良かったらしく、息子の会社の営利が2億を超えた。
その間には色々あった。
例えば初めてアルバイトを雇用する時に、20代のフリーターと、40代の主婦で、どちらを選ぶべきか相談された。
事業をしている人、採用担当なら迷うまでもないが、こんなもの主婦に決まっている。
20代フリーターの顔が好みと言い出したバカ息子の頭を叩いて説教。
若い奴は店をやる時の接客担当や、肉体労働が多い職場ではアリだが、事務所に置くには向かない。
お前の扱っている商品はおばちゃんでも仕分けができる軽いカードだろ。若いやつの体力よりも、おばちゃんの確実性が重要だ。
持ち家で子持ちの主婦は手堅い。彼女たちは守るものがあるから横領や急な退職が無い。
若い奴はカードが金になる事を知っているし、フリーター属性は後先考えず守るものがない。金の使い方も荒い。
20代フリーターを雇用したなら、お前の在庫が気がつけば消えているぞと伝えた。
カードをエンドユーザーから買取もしたいというので、eKYCとPOSも手配してやった。
俺の会社の業務の一つとしてブランド物の買取をしている。その縁でシステム会社の担当者を紹介。
うちの会社から在庫管理担当のおばちゃんを週2で派遣。彼女は弊社在庫管理の女王様だ。
新入社員を教えるつもりで容赦なくやって良い、俺の息子とは思うなと伝えた結果、めちゃくちゃ怒られながら教わったそうだ。
お陰で息子の会社のカードデータは全品POSに入って1円単位でコスト管理が出来ている。
息子の会社のロジはワシが作ったと言っても過言ではない。これはサシ飲みする時の定番ネタだ。
他にも色々な事があった。
右腕候補が数百万の現金と1000万以上のカードを持って高跳びしたり
キャッシュが不足して飛びそうになった時に一瞬助ける事が何度か有った。
まだまだ危なっかしい奴だ。
それでも少し前まで甘ったれたガキだった息子が、今は男の顔になってきた。
クソ生意気に正月に年賀だと言って100万持ってきやがったので、昔を思い出して書いてみた。
まぁ息子がうまく行っているならそれでいい。
正月からしょーもない妄想乙
うーん、設定に無理がある 4年くらいの期間にしては出来事が多すぎるし(右腕の逃亡、盗品トラブル、偽物トラブル、海外販路開拓などを3年半の間にすべて経験し、かつ営業利益2億ま...
トレカ業界にいるけど、こんなバイヤーいっぱいいるぞ。 単価がクソ高いから人数いらない。横領するやつをどれだけ排除できるかと、在庫管理を徹底できるかが鍵。 初年度億も珍しく...
興味ないね