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2026-01-03

この作品かな?

https://anond.hatelabo.jp/20260102110150

導入

岸谷昌也という男子中学生イジメを苦に自殺をした。

菅原拓悪魔です。誰も彼の言葉を信じてはいけない』という遺書を残して。

しか自殺した岸谷君は人気者の天才少年で、彼をイジメていたとされる菅原君はスクールカースト最下層の地味な生徒だった。

他にもイジメ目撃者が誰もいなかったことなど、多くの謎が残る事件だった。

なぜ天才少年の岸谷君は自殺しなければならなかったのか。

というのが、あらすじです。

低い評価をつけてはいますが、魅力的なストーリーであることは間違いありません。

まだ読まれていない方はここで引き返して、買って読んでいただけたら幸いです。

物語

事件真相を探るべく奮闘する自殺した岸谷君のお姉さんと、イジメ加害者とされている菅原君の視点を交差しながら進められていきます

本作で最も多く使われている単語はおそらく『クズ』でしょう。

とにかく自己評価の低い主人公菅原君はことあるごとに自らをクズ呼ばわりして、挙句のはてに自分のことを『キモオタコミュ障ボッチ童貞ゴミクズ野郎』と表現します。

なんてきたない言葉でしょう。

でも、これが人から避けられるタイプだというのなら、この正反対人格ならみんなの人気者になれるのではと思い、せっかくなので考えてみました。

『小綺麗な非処女』なんてのはどうでしょう

評価理由

さて、私が本作を低評価にしている決定的な理由

この物語の根幹に関わるルールに全く共感できないから、その一点のみです。

まり、そこ以外は悪くないと考えています

ここが最終防衛線です。ここから先はネ○バレのパレードです。未読の方は今すぐ商品カートに入れて読んでから戻ってきてください。

あらすじ

では、はじめます

まずはこちらをご覧下さい。本文から引用です。

人間力テストは二種類の質問事項によって構成される。

『この時代、○○に重要能力はなんだと思いますか? 以下の群から三つ選びなさい』

『同じ学年の中で、××を持つ人物を挙げてください』

その二種類だ。

○○にはリーダー上司、人気者、などといった言葉が入る。リーダー必要ものは何か? 友達になりたいのは何を持つものか? 文化祭ではどんな能力を持つ者がいれば役に立つか? 将来、仕事活躍するのに必要能力は何か? などとなる。

そして、××には、優しさ、真面目さ、外見の良さ、などが書き込まれる。

生徒は各々の理想像やその理想に合った人間を答案に書き込むのだ。「リーダーシップには勤勉さ、優しさ、カリスマ」「学年の中で、一番勤勉なのは加奈子、二番目は妙子」などと。

最後に、すべてを点数化する。現在、生徒が重要視する能力を持った人間ほど高得点というわけだ。生徒全員の順位公表することはないが、生徒たちは自分順位や点数を目の当たりにすることになる。

自分という存在価値を知る。

自分という性格評価を知る。

以上が、本作の柱というべき『人間力テスト』を説明しているくだりです。

自殺した岸谷君のお姉さんは、この人間力テスト存在と岸谷君の自殺関係があるのではと推理します。

後述しますが岸谷君の自殺人間力テストにそこまでの関係性はありませんでした。

さて、生徒同士で格付けしあうこのシステム誕生した経緯は

これの生みの親である主人公たちが通う中学校長先生がまだ若い教師だったこ

学業は優秀だったのにコミュニケーション能力がないせいで自殺した生徒がいて

そういう生徒をもう出さないために発案したのだそうです。

マッドサイエンティスト的といえるかもしれませんが、全く問題解決になっていません。

コミュニケーション必要なのは相手理解する気持ちと伝達能力ですが

他者を格付けするこの人間力テストが生徒に要求しているのは比較区別による差別です。

校長が何を言っているのか私にはさっぱりわからないのですが

校長先生曰く、『このテスト批判するやつは何も分かってないマヌケだ。』そうで。

いいですか、みなさん。つまりこのレビューマヌケが書いてます。いえーい。

人間力テストはあっても、人間力の授業がないというチラムネ千歳くんが許容できる人でもツッコミたくなるほどのガバ設定

100歩譲って人間力テストコミュニケーション能力を養うために開発されたものしましょう。しかし、根本的な問題が他にもあります

この学校には人間力テストはあっても、人間力の授業がないのです。

グループワークが多い学校だと後で説明が入るのでそれが授業なのかなと思うと

それも人間力テストの採点素材だと書かれていますし、そもそもコミュニケーション能力の低い人にとってグループワークは地獄ですから

もう一度確認しましょう。

人間力テストコミュニケーション能力が低いせいで自殺した生徒のために作られました。

言葉を変えると、

英語ができないせいで自殺した生徒のために毎週英語テストをすることにしたけど、英語の授業自体はしない。

それがこの中学スタンスなんです。

校長先生のやり方だと生徒の自殺するタイミングが早くなるだけだと思うのですが。

まだまだこんなものじゃないガバ設定

人間力テストに関して覚えておくべき情報があと二つあります

まずはその内の一つ。

生徒がお互いを格付けして採点して順位を出すこのテストですが、安心できる要素もあります

それは、順位自体は公にされることな

トップからといって学校内で何か良いことがあるわけでも、最下位からといって悪いことがあるわけでもないということです。

そして、それこそがこの物語全体を異常なほど理解しがたいものにしているのです。

全く実効性がない人間力テスト

ここでヒロイン石川さんに登場していただきましょう。

セミロングの黒髪を持つ美少女で、人間力テスト順位も高いみたいです。

出会って数分しか経ってないのに、石川さん菅原君にこんなことを言います

わたしおっぱい触らせてあげる代わりに、次の人間力テストわたし投票してくれませんか?」

ご覧ください、みなさん。まさに小綺麗な非処女です。

なぜ石川さんがそんなことを言い出したかというと

彼女はおそろしく人間力テスト順位を気にしていて精神を病んでいるみたいなのです。

石川さんに限らず、この学校の生徒たちはカルト的に人間力テストを信奉しています

学生さんたちにとって学校こそが社会であり世界。そこでの評価こそ全て」

みたいなことがいいたいのかもしれませんし、そういう描写もあるのですが、そんなことってありえますか?

この作品1950年くらいを舞台にしているならそういうのもわからなくないですけど、おもいっき現代舞台の話ですし。

まり世界は開かれているのです。

なぜ人はコンビニアイスケースに入ったりファミレスソースを鼻の穴に突っ込む姿を撮影してネットにアップするのかといえば「頭がおかしいから」・・・というのは大前提として、そこに過剰な承認欲求があるからです。

すなわち、もっとリツイートしろいいねボタンを押せ、動画再生数よ伸びろ、ということです。

みんなに自分評価してほしい。そしてどれほどの数字を稼いだか見てほしい。

見せびらかせない評価価値などないのです。異論は認めません。

誰かがよくわからない基準投票した公表もされなければ学校生活に支障もない点数にどれほどの意味があるというのでしょうか。

実際、人間力テストがほぼ最下位菅原君もトップクラスの岸谷君もそれが理由学校生活は良くも悪くもなっていません。

余談ですが私も小中学生のころ、人間力テストみたいなことは何度かやらされました。

特定の項目に該当する生徒の名前を書いて採点をさせられました。

ご丁寧なことに後で順位と点数をプリントアウトして配ってきたので、この作品学校よりも鬼畜です。

自分順位菅原君と同じく最下位あたりだったと記憶しています

性病検査並みに自分には関係のないイベントでしたし、それを理由に嫌な思いをしたこともないので

作品内で人間力テストにおびえる生徒たちの姿にリアリティーを感じないのです。

物語内で最重要ともいえる人間力テストですが、作中でテストを受けているシーンが一度もないのです。

どれくらいの頻度で行われているのか、今回はどういう出題で、その回のトップ最下位は誰で、その人たちはその後の学校生活にどういう影響があったのか。

最低でもそれくらいは描いてもらわないと、人間力テストのおそろしさについてイメージできません。

特殊ルールのある学園ものといえば、幾原邦彦監督の『ユリ熊嵐』や衣笠彰梧先生の『ようこそ実力至上主義の教室へ』などがあります

クラスメイト全員で気に入らない生徒に投票して見事1位に選ばれたら教室から排除されるとか

テストの成績が悪いと人間扱いしてもらえなくなるとか

現実味ゼロですが、敗者をしっかり描くことでその物語の中ではリアリティーがあるし、ストーリーから目を離せない魅力となっています

「このシステムの中で敗北すると、人間としての尊厳を奪われてしまう。だから立ち向かわなくてはいけないんだ」

そういうもの人間力テストには欠落しているのです。

作品リアルも緊張感もない人間力テストに異様なまでに血眼になっている登場人物がわんさか出てくるこの作品には説得力がありません。

ラムネ千歳くんを許容できる人でも耐え難い主人公ガバ行動

人間力テストに苦しむ石川さんを救うべく菅原君はそれを破壊するための革命を起こそうと決意します。

ここから物語の飲み込みづらさは爆発的に上昇していきます

菅原君の目的人間力テストをやめさせることです。

しかし、そのための手段無意味かつ遠回りすぎます

詳細を書いていたら文字数制限に引っかかったので割愛しますが、

風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな

一見よくわからない理屈でも順を追って説明されたら納得いくようなもの・・・ではありません。

一歩目から破綻しているし、仮にうまくいったとしてもテストがなくなるとは思えませんし、実際、作中では失敗します。

くどいようですが

人間力テストの結果が良かろうが悪かろうが生徒たちの人生には何の影響もないのです。

それなのになぜそこまでテストに執着しているのかわかりません。

まりにも価値観が違うので実は物語舞台地球ではなく猿の惑星だったみたいなどんでん返しがあるのかなと勘ぐったくらいです

異世界転移もの流行ってますし。

とりあえず『人間力テストをやめないなら自殺します』といった内容の手紙学校マスコミに送ればそれでよかったような気もします。

ただ、それだけでよかったんです

とはいえ、この流れ自体は嫌いではありません。

小説の中盤で菅原君は読者に、この物語は僕の愚かさを笑いながら読むのが正しい読み方であると推奨してきます

わざわざ言われるまでもなく、今のところ順調に愚かとしか思えません

それに、頭の中で完成した完璧で素晴らしい計画が後から考えたら清々しいほど無意味だった、なんてことは誰でも一度は経験あると思います

これまであれこれ書いてきましたが、ここまでの印象は決して悪くありません。

Amazon的に評価するなら星四つはつけます。

ラムネ千歳くん(ry)な校長先生ガバ行動

さて、物語も残りわずかとなりました。ページ数でいうと248ページ。問題はここからです。

万策つきた菅原君は最終手段として人間力テストの生みの親である校長先生殺害しようとします。

それを紗世さんという女子大生に阻止されます

紗世さんは岸谷くんのお姉さんの幼馴染みです。

小学校から高校まではずっと一緒で、岸谷君のお姉さんに依頼されて今回の事件の解明に協力をしていました。

この情報はとても重要なので覚えていて下さい。

人間力テストのせいでどれだけの人が傷ついているのかわかっているのか、と叫ぶ菅原君。

校長先生は言います

「もちろんわかっている。テストは不完全だ」「だからこそ順位の低い生徒には個別に連絡を取っていた」

そこで菅原君は気づきます。「お前が『ソーさん』だったのか?」と。

ソーさんというのは、主人公ネット上でメッセージのやりとりをしていた友達です。

校長先生は言います。「キミがソーさんに学校のことを相談していれば今回の悲劇は起こらなかったのに」と。

意味がわかりません。

どこの世界

ハンドルネームしか知らない赤の他人リアル情報提供して問題解決を頼む人がいるのでしょう。

「いやー実は僕、学校むちゃくちゃなことされて困ってるんだけど、もしあなたがその学校校長だったりしたら、なんとかしてもらえませんか?」とでも言えと?

このソーさん(校長)はすごいんです。

自分学校イジメが発覚して真っ先にしたこと

イジメの起きたクラス担任YouTubeのページに匿名突撃して荒らしをはじめることですからね。

それだけじゃおさまらなくて、あろうことか、その担任個人情報マスコミ拡散します。

・落ち度のある人間には何をしても許される。

・なぜならそいつは悪であり、それに怒りを覚えた自分たち正義の側は無限制裁を与える権利がある。

・その結果そいつが死のうが破滅しようが知ったことじゃない。

・なぜなら悪いのはそいつから

・・・なんていう歪んだ価値観は教育者絶対に認めてはいけないものだ思うのですが。

そして校長は決定的な一言を放ちます

「ただ、キミは情けない。困ったら周りに相談しなさい。それだけのことを言わねばならないなんて」

あのですね

そもそも校長人間力テストなるものをはじめた理由

コミュニケーション能力が低くて自殺した生徒のため』だったはずです。

コミュニケーション能力が低い人がどういう人なのかというと

そこまで追いつめられても、それでも声をあげることができない人なんです。

そういう人をさらに追いつめたらどうなるか。説明必要はないと思います

物語ラストで突然異世界転移した校長がそこにいたオークとゴブリンに惨殺されてしまえば、私は迷わず本作の評価を五つ星にしたのち、もう一冊買って近所の図書館に寄贈したことでしょう。

感想

多少の矛盾ご都合主義後出し設定についてはそこまで気にしません。

しかし、物語の根幹への不誠実さは無視できません。

どうしてここまでふざけた話になってしまったのか、そのこたえは簡単で、作り手が信じていないからです。

作者の松村涼哉先生は信じてないんです。こんな話あるわけないって。

から自分が作ったルールの間違いにすら気づけてないんです。

後出し設定は気にしないと書きましたが、この作品に関してはちょっとひどすぎます

校長がひどすぎてもはやどうでもよくなった冒頭の話の回収

最後に話の発端となった人気者の岸谷君が菅原君にいじめられていた問題について書いておきます

文字数制限にひっかかったのでトラバに続きます

 
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