武石恵美子『「キャリアデザイン」って、どういうこと?』

 武石恵美子先生から、ご著書『「キャリアデザイン」って、どういうこと?ー過去は変えられる、正解は自分の中に』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

 岩波ブックレットの記念すべき?No.1100で、72ページの中にキャリアを考えるための大切なポイントがコンパクトにまとめられています。「人材版伊藤レポート」や「三位一体の労働市場改革」などに見られるとおり、企業による働く人のキャリア形成の行き詰まり・限界が明らかになり、キャリアの見通しが非常に不透明になってきている中では、自らキャリアを選択することがよりよいキャリアのためには必要であると説き、クランボルツやシャインなどの代表的なキャリア理論も引きつつキャリアデザインとキャリア自律が論じられます。
 その中核的なメッセージは副題にある「過去は変えられる、正解は自分の中に」であり、「過去は変えられる」というのはやや不思議な感じがしますが、「過去の出来事は、自分のキャリアの中にどう意味づけるかという視点で捉えなおすことができる」ということのようです。サンクコストにとらわれ(過ぎ)るな、というのはよく聞く話ですが、実はこれもサンクコストにとらわれ(過ぎ)ないための知恵なのかもしれません。「正解は自分の中に」は要するに他人との比較や他人の評価より自分自身の納得を大事にしようということのようで、これこそ企業によるキャリア形成が期待できなくなった中では最重要の考え方と申せましょう。人によっては従来の価値観を大きく転換することになりかねないので困難はあるのかも知れませんが。