自民・二階氏、安倍氏支え与野党にパイプ　歯に衣着せぬ発言で物議

　政治資金パーティー裏金事件を巡り、自民党の二階俊博元幹事長が、この時期に次期衆院選への不出馬を表明した。二階氏は、政治的に距離がある岸田文雄首相が処分を下す前に、自ら身を処し、後継に二階氏の三男の名前も取り沙汰される衆院選に備えることを重視した結果と言えそうだ。

　二階氏が政治資金パーティー裏金事件で自信の秘書の有罪が確定したことを受けて、次期衆院選に出馬しない意向を表明しました。党執行部は二階氏に対する党の処分を見送る検討に入りました。背景などをくわしく解説します。（全2回の第2回）
第1回・因縁の首相に突きつけた「けじめ」
第2回・与野党にパイプ　発言で物議も
本文・次期衆院選への不出馬を表明
図解・二階俊博氏の主な歩み
二階氏「お前もその年が来る」「ばかやろう」
不出馬会見で語った内容をくわしく
地元・和歌山の反応は？

　二階氏は与野党に太いパイプを持つ一方で、その言動が物議を醸すこともあった。次期衆院選不出馬を表明した二階氏に対し、野党は裏金事件の説明責任を果たすよう改めて求めた。

　立憲民主党の泉健太代表は25日、国会内で記者団に「二階氏の政治倫理審査会での説明はなされていない。全く不十分だ」と語った。そのうえで、二階氏が幹事長在任中の約5年間に約50億円の政策活動費を受け取ったとされることにも触れ「巨額の政策活動費のことも説明していただく必要がある」と述べた。共産党の小池晃書記局長も記者会見で「巨額の裏金を作っていた二階派のトップだったわけで、洗いざらい話してもらわなければいけない。最後はきちんと政治家として筋を通す対応をしていただきたい」と求めた。

「たたき上げ」　力の源泉は業界団体

　二階氏は和歌山県議から国政に進んだ「たたき上げ」。自民党を離党し、政党を渡り歩いた経歴も持つ。自民復党後、第2次安倍政権以降は派閥会長や党総務会長を務めるなど、急速に力を持つようになった。肝煎り政策の国土強靱（きょうじん）化を推進し、観光業をはじめ業界団体との太いパイプは力の源泉となっている。

　外交では日中関係の改善を後押しし、2023年には超党派の日中友好議員連盟の会長に就任した。自民内からは「日中議連会長は二階氏に続けてもらう」（党幹部）との声も漏れる。茂木敏充幹事長は25日の会見で「幹事長を歴代最長の5年2カ月務めるなど、長年にわたって党勢拡大に大きく貢献された政治経験豊かな方だ。今回の（不出馬の）判断を重く受け止めたい」と述べた。

　一方で、近年は歯に衣（きぬ）着せぬ発言で批判を浴びることも少なくなかった。19年10月には台風19号被害について「予測に比べると、まずまずに収まった感じだ」と発言し、その後事実上撤回した。21年2月には、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長（当時）の女性蔑視発言によるボランティアの辞退続出について「瞬間的に『協力できない』と言ったんだと思う。どうしてもやめたいならまた新たなボランティアを募集せざるを得ない」と、辞退者を軽視するかのような発言をした。

　同年3月には、19年参院選での河井克行衆院議員（当時）の公職選挙法違反事件について「他山の石」と発言。野党から「ひとごとのようだ」との批判が…