「何かの間違いと保健所に…」コロナ自宅療養死の兄は訴えていた
毎日新聞
2023/6/29 19:00(最終更新 6/30 19:53)
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明るくて強くて、いつも笑っていた兄。しかし、あの時ばかりは、絶望の淵にいて、どうしようもなく真っ暗な気持ちだったと思うのだ。
新型コロナウイルスに感染し、自宅で療養していた兄。パルスオキシメーターで血中酸素飽和度を測定すると、命の危機に直面していることを示す値が出た。
助けを求めた先の保健所の職員は電話口で告げた。「機械が壊れているか何かの間違いです」。そして自力で医師に連絡を取るよう求めた。
兄を亡くした女性は、何度も保健所に問おうとした。「なぜ兄を信じなかったのか。なぜ、はねつけたのか」
遺族は記録開示を求めた
2021年8月下旬、デルタ株の感染「第5波」は、東京都では新規感染者数でピークを迎え、重症者用病床の使用率は連日90%を超えていた。その頃、板橋区の会社員、北端(きたはた)明さん(当時57歳)は1人暮らしのマンションで亡くなった。
「亡きがらにも会えず、荼毘(だび)に付す時にも立ち会えず、つらい別れになりました」
妹の久保田純子さん(56)=兵庫県西宮市=は振り返る。
遺骨は宅配便で久保田さんの自宅に届いた。
「陶器」と書かれた段ボール。箱を開けると、母は膝から崩れ落ちた。
「ああっ」
短く声を上げると、骨つぼを抱きかかえた。声にならない声を上げて泣き、息子の名前を叫んだ。
…
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