私たちの体には、年齢とともに体力の低下、目の不調、痛みや不具合など、さまざまな「老化現象」が現れます。この連載では、これらの老化現象を「衰え」ではなく「変化」としてポジティブにとらえ、上手に付き合っていく術を、これまでに延べ10万人以上の高齢者と接してきた眼科専門医の平松類先生が解説します。今回のテーマは「高齢者の便の異常」です。 80代の父親と同居する息子夫婦が、父親の話をしています。 妻「お義父さん、最近便もれがあるんだけど…」 夫「便もれかあ。年だから仕方ないんじゃないの？」 妻「仕方ないって…お世話しているのは私なのよ？」 夫「そんなこと言われてもなあ。どうすればいいんだ」 高齢になると7％の人に起こる便もれ 65歳を超えると30％の人が便秘になり、7％の人に便もれが起こるといわれています（＊1）。介護施設では50％近くの人に便もれの経験があるという研究もあります。高齢になると便秘

笑うことで、認知症リスクは減る 「笑い」が幸せをもたらすという意味で、笑いの効用は昔から経験的に知られていました。実際、笑いにおける研究はいくつかありましたが、世界的に一気に研究が進んだのは、ここ20年ほどのことです。そこで判明した笑いの健康効果は数多く、笑いと認知症の関係も明らかになってきています。 例えば、認知症は笑うことによって予防できるという研究データがあります。福島県立医科大学医学部疫学講座教授として「笑い」の健康効果を研究し、「笑い」の健康講座を開催するなどして、世の中に「笑いの力」を広めている大平哲也氏らの研究です。 大阪府の65歳以上の住民990人を対象とした横断研究では、「ほぼ毎日笑う」という人を基準にすると、認知機能の低下リスクは「月1～3回程度笑う」人は約1.37倍、「ほとんど笑わない」人は2.48倍になることが分かりました（下グラフ）。 もっともこの結果だけでは、笑

血管を若返らせるために最も大切なのは運動 血管が劣化していく原因には、加齢、高血糖、高血圧、高脂質、喫煙などさまざまある。このうち加齢は誰もが避けられないが、それ以外の要因は、バランスのよい食事、適度な運動、禁煙などにコツコツと取り組むことで改善することが可能だ。これらの対策は、加齢による血管の劣化のスピードを抑えることにもつながり、「100年元気な血管」づくりにつながっていく。 中でも重要なのが運動だ。 運動をすると、全身の細胞でより多くの酸素や栄養が必要になるため、心臓は拍動回数を増やして、血流を増やす。また、筋肉が伸び縮みすると、筋肉の中にある血管も圧迫と緩みを繰り返し、血液が流れやすくなる。 血流が良くなると、働きが悪くなっていた毛細血管に血液が再び流れ込み、酸素や栄養が体の隅々にまで行き渡るようになる。さらに、血流が増えると血管内皮細胞が刺激を受けて、血管の若さを保つ一酸化窒素（

つまむ、握るといった動作時の痛みや指の腫れなどから始まり、進行すると指が変形してしまうヘバーデン結節やブシャール結節。早めの対策で進行を防ぐことが可能です。早速始めましょう。今回は変形を防ぐマッサージ法と主な治療法を紹介します。 ＞前編 更年期以降に多い手の痛み　スマホの持ち方、つまみ動作に注意 指の変形性関節症は早めの対応で変形防げる へバーデン結節、ブシャール結節では指が折れ曲がる方向に指の変形が起こるほか、関節のまわりがふくらみ、指そのものが太くなりやすい。 「指が太くなるのは、削れた軟骨細胞の刺激で関節内に水がたまり、むくみが生じるためです」 前回の記事で紹介したミューカスシストのような水ぶくれができる前から、皮膚の下には関節炎から波及した炎症により皮下に水がたまる。関節を滑らかに動かす滑膜に炎症が起きると、滑膜から分泌される関節液量の吸収と排出のバランスが崩れ、排出されにくくなる

気象や生活環境の変化が「目」にとって負担となることが最新の研究から分かってきました。「白内障」と「ドライアイ」に焦点を当て、リスクや対策、治療法について紹介していきます。前編は、白内障についてです。

正解（間違っている説明）は、（3）筋肉減少リスクにさらされるのはシニアになってから です。 サルコペニアは「シニアの問題」ではない 筋肉減少やサルコペニアというと「シニアになってからの問題でしょう？」と思うかもしれません。しかし、油断は禁物です。全年代が筋肉減少リスクにさらされている、と立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授は指摘します。 「国民栄養調査によって、朝食におけるたんぱく質摂取量が全年代で不足の状態にあることが報告されています（＊1）。また、大学生を対象にした研究で、朝食を取らずにたんぱく質が不足していると筋肉量（除脂肪量）が減少することを確認しました（＊2）。年齢にかかわらず注意しないと、若いうちからサルコペニアになる危険性は十分にあります」と藤田教授は言います。 たんぱく質を取ることによって実現するのはあくまでも「筋肉量の維持」。筋肉を増やすには、筋トレが必要です。でも、

原因がよく分からず、放っておいていいのか不安を感じることが多い、手のしびれ。どんな病気が考えられるのでしょうか。また、受診のタイミングは？ 注意点は？ 手にしびれを起こす代表的な病気である、手根管症候群や肘部管症候群を中心に解説します。 速やかに受診すべきケースは？ 手指がしびれている場合、特に注意が必要なのが脳梗塞、脳出血、くも膜下出血といった脳卒中の症状のひとつとして表れるしびれだ。 「特に更年期前後の女性は、女性ホルモン・エストロゲンの減少によって動脈硬化が進みやすく、血管性の疾患のリスクが高くなります。実際、インターネットなどでしびれについて調べたうえで受診し、“この手のしびれは脳梗塞が原因ではないか”と不安を訴える人は少なくありません」と、柏Handクリニック院長で、手外科専門医の田中利和さん。 脳卒中によるしびれかどうかを判断する目安が、しびれが生じたタイミングだ。 「脳卒中の

FEATURES of THEMEテーマ別特集 ひざの痛みの解消法　なぜあえて「動かす」のがいい？ 中高年以降、多くの人が、椅子から立ち上がるとき、荷物を持つとき、走ったときなどでズキズキとひざが痛むようになります。ですが、健康な足腰を保つためにも痛みに一生悩まされるのは勘弁したいもの。実は、痛みはセルフケアでも改善できます。過去の人気記事をもとに、ひざの痛みの改善方法や日常生活での注意点について知っておきたいポイントを見てみましょう。 疑問解決！ 健診・人間ドックの上手な受け方 秋は健康診断の季節。「そろそろ人間ドックも受けないといけないかな…」と思案している人もいるのではないだろうか。今回のテーマ別特集では、健康診断での異常値の考え方や、人間ドックのオプション検査選びのポイントなどを解説していく。 どうにかしたい皮膚のかゆみ・痛み　アトピー性皮膚炎・帯状疱疹 「かゆくてたまらない。どう

筋トレ最少量研究から分かった「3秒筋トレ」、手軽に筋肉量が増えるコツ 2024/12/10　日経ヘルス 「3秒筋トレ」パーツメソッド気になる部位に効かせる5カウント3秒　ふくらはぎ、お尻、太ももなど、気になる部位を集中的に鍛えられる「3秒筋トレ」は、かかと下ろし、イススクワット、片ひざ下ろし、ひじ曲げの4種類。声に出して5カウントするとちょうど3秒の動きになる。いずれもブレーキをかけるようにゆっくり動かすのがコツだ。1日2メソッドずつ、日替わりで取り入れてみよう。歯磨き中や台所でお湯が沸くのを待つ間など、すき間時間に繰り返すといい。

FEATURES of THEMEテーマ別特集 ひざの痛みの解消法　なぜあえて「動かす」のがいい？ 中高年以降、多くの人が、椅子から立ち上がるとき、荷物を持つとき、走ったときなどでズキズキとひざが痛むようになります。ですが、健康な足腰を保つためにも痛みに一生悩まされるのは勘弁したいもの。実は、痛みはセルフケアでも改善できます。過去の人気記事をもとに、ひざの痛みの改善方法や日常生活での注意点について知っておきたいポイントを見てみましょう。 疑問解決！ 健診・人間ドックの上手な受け方 秋は健康診断の季節。「そろそろ人間ドックも受けないといけないかな…」と思案している人もいるのではないだろうか。今回のテーマ別特集では、健康診断での異常値の考え方や、人間ドックのオプション検査選びのポイントなどを解説していく。 どうにかしたい皮膚のかゆみ・痛み　アトピー性皮膚炎・帯状疱疹 「かゆくてたまらない。どう

第2回　最大の敵は高血糖！　高血圧、高コレステロールも血管を老化させる 2024/12/5　梅方久仁子＝ライター 全身に酸素や栄養を届ける血管の劣化は、どのように始まり、動脈硬化から重篤な病気へとつながっていくのだろうか。また、一度劣化した血管を若返らせる方法はあるのだろうか。カギとなるのは血管の一番内側にある「血管内皮細胞」の働きだ。特集第2回は、動脈硬化のもとになる内皮細胞の劣化の仕組みと、100年元気な血管をつくるための鉄則について見ていこう。

「股関節」を動かしたときに引っかかりがあったりして、「可動域」が不十分になってしまう場合があります。「そのようなときは股関節の可動域を適正にする動的ストレッチに取り組んでください」と話すのは、書籍『すごい股関節』を出版したフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さん。動的ストレッチのやり方と、可動域の考え方について教えてもらいました。

「膝の曲げ伸ばしがつらい」「ケガをしやすい」こういった不調を感じたら、骨ケアを意識した方がよいかもしれない。高齢者の介護原因の4分の1は骨折や転倒、関節疾患などの運動器の障害。その予兆は40代から始まっている。なるべく早い段階からの予防が大切だ。ただ、間違った思い込みや古い情報で落とし穴にはまっている可能性もある。そこで、失敗しない骨ケアのためのポイントをゼスプリ インターナショナル ジャパン主催のセミナー「正しく！知ろう キウイではじめる骨ケア～キウイによる骨粗しょう症対策の可能性について～」の内容を再構築する形でまとめた。 骨ケアに関する思い込み、心当たりはありませんか？ 間違った思い込み① 骨は成長期にしかできない？ ・・・ではなく、いつでも骨は強化できる 骨がもろくなり骨折しやすくなる「骨粗しょう症」。厚生労働省「国民生活基礎調査」（2022年）によると、介護が必要になった主な原因

間違った思い込み➃ 骨作りに良い成分を食事でとればOK ・・・ではなく、運動もあわせて行うことが重要 「骨を作るためには、骨の材料を食事からとるだけでなく、骨密度を高める運動の刺激が重要です。せっかくとった食事を生かせるように運動も併用してください」と、強調するのは、城西大学経営学部教授で運動生理学を専門とする石倉惠介氏だ。 「骨は、運動などの負荷がかかると骨量や構造の変化を起こすことが分かっています。つまり、刺激が加われば加わるほど骨密度が向上すると考えられます」（石倉氏） 実際、全身に負荷をかけてトレーニングをする体操選手の骨密度は非常に高いという。「ただし、ケガをしては逆効果です。特に運動不足の人が急に激しい運動をするのは危険です」（石倉氏）。まずは、オフィスや自宅で無理なく毎日続けられることが大切なのだという。 ヒールレイズ（かかと落とし） 背筋を伸ばして立つ。背伸びをするようにつ

FEATURES of THEMEテーマ別特集 ひざの痛みの解消法　なぜあえて「動かす」のがいい？ 中高年以降、多くの人が、椅子から立ち上がるとき、荷物を持つとき、走ったときなどでズキズキとひざが痛むようになります。ですが、健康な足腰を保つためにも痛みに一生悩まされるのは勘弁したいもの。実は、痛みはセルフケアでも改善できます。過去の人気記事をもとに、ひざの痛みの改善方法や日常生活での注意点について知っておきたいポイントを見てみましょう。 疑問解決！ 健診・人間ドックの上手な受け方 秋は健康診断の季節。「そろそろ人間ドックも受けないといけないかな…」と思案している人もいるのではないだろうか。今回のテーマ別特集では、健康診断での異常値の考え方や、人間ドックのオプション検査選びのポイントなどを解説していく。 どうにかしたい皮膚のかゆみ・痛み　アトピー性皮膚炎・帯状疱疹 「かゆくてたまらない。どう

自律神経の状態を赤・緑・青で理解する「ポリヴェーガル理論」。心身の不調を改善するには、色の概念を知ることが近道。今回は、「緑」に近づく習慣を紹介します。 ＞前編 赤・緑・青、あなたは何色？ 自分の心身の状態を色でチェック 色のブレンドの概念を知る 赤、青、緑…体の状態は3色のいずれか1つとは限らない。3色は常にあり、どれが強いかと考えるほうが、実際の自分の状態を把握しやすい。これを説明する概念が「ブレンド」だ。 緑赤のブレンドは、安心して頑張る、安心して逃げるといった状態。ポリヴェーガル理論を提唱したポージェスはこれを「遊び」と呼ぶ。「つながりがありながら活動する、一緒に闘うとも表現できる。赤が『安心したくてやっている』状態であるのに対し、緑赤は『安心してやっている』状態。子どもが安心して遊んでいる状態だと表現する。赤との違いは、安心感・つながり感・一体感が必ずあること」と公認心理師の吉里

全身に酸素や栄養を届ける血管は、健康の要。老化すると全身の機能がうまく働かなくなり、心筋梗塞、腎臓病、認知症といった重い病へと突き進む「老化ドミノ」が起こってくる。人生100年時代を健康に生き抜くには、100年機能する若々しい血管を保つことが重要だ。本特集では、血管の老化を予防するために知っておきたい最新情報を、愛媛大学抗加齢医学講座教授の伊賀瀬道也氏に聞いていく。

ナッツ摂取者全体では認知症リスクが12％低下 必要なデータがそろっていた40～70歳の5万386人（平均年齢56.5歳、49.2％が女性）を分析対象にしました。75.3%の人たちがナッツを摂取していませんでした。全体のナッツの平均摂取量は1日あたり5.8gでした。 平均7.1年の追跡期間中に、1422人（2.8％）が認知症を発症していました。ナッツの摂取量の平均は、認知症を発症した集団では5.7g、発症しなかった集団では5.9gでした。性別、年齢、学歴のみを考慮して分析したところ、ナッツを摂取しない人に比べ、摂取する人の認知症リスクは13％低く、性別、年齢、学歴に加えて、BMI（体格指数）、喫煙習慣、飲酒習慣、総エネルギー摂取量、野菜果物の摂取、運動習慣、睡眠時間、握力、孤独感、聴覚障害、診断されている慢性疾患の数などを考慮して分析しても、ナッツを摂取していた人では認知症発症リスクが12％

自律神経に関する「ポリヴェーガル理論」。これを基にしたメンタルケアが今、話題になっています。公認心理師の吉里恒昭氏が分かりやすくアレンジした方法を教えてくれました。ポイントは赤・緑・青の3色です。 自律神経の状態を3つに分類 気分が落ち込んで、うつうつ、イライラから抜けられない…「そんなメンタル不調を悪化させる要因は、それらを自分のせいだと思い、自らを責めること」と公認心理師の吉里恒昭氏は話す。 悩みの原因を探そうと自分の性格や能力のせいにしたり、前向きになれない自分を責めがちだ。だが、原因探しの渦からいかに離れるかが悩みの解決のためには大切だという。吉里氏が薦めるのは、悩みを体のコンディションという視点からとらえ直すこと。 「自分の体の状態に気づく手助けとなるのがポリヴェーガル理論。理論を使った考え方は仮説ですが、心理療法の現場でこの考え方を用いると、患者さんが自身の体の状態に気づき、心

「健康Q＆A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。 2024年11月の回答者は、「手指のトラブル」に詳しい京都大学医学部附属病院リハビリテーション科教授の池口良輔先生です。 前編 Q 1 母指CM関節症の対処法を教えてください 答え Q 2 中指を曲げるときの抵抗感・痛みの改善方法を教えてください 答え Q 3 閉経後、ヘバーデン結節を発症しました 答え Q 4 関節の変形がひどくなったら、どのような治療がありますか 答え Q 5 ゴルフをすると、第2関節の痛みとこわばりが数日続きます 答え 後編 ←今回 Q 6 中指と薬指の第2関節から根元にかけて、こわばりを感じます 答え Q 7 朝方、右手の指がこわばるのはなぜでしょうか 答え Q 8 小指と薬指がこわば