2014年9月22日月曜日

THE BIG PARADE佐野元春さんとの対談録〜パレードは続く

 代官山エリアで始まったデジタル時代の新型ミュージックフェスティバル「THE BIG PARADE」。その幕開けにして、メインイベントの一つで有る佐野元春さんのキーノートスピーチにモデレーターとして登壇した。
 音楽性や文化論ではなく、メディアやビジネスについてアーティストに語ってもらうというスタンス。


 TBPのお手本の一つであるSXSWでは、毎年ビッグアーティストのスピーチが注目されている。今年もLady GAGAのキーノートや、Neil YoungPONOに関するセッションが話題を呼んだ。僕も会場で見ていたけれど、大物アーティストが、ビジネスも含めて本音で語っていて面白かったし、聴衆に刺激を与えていた。

 企画が立ち上がったころから、TBPにはアーティストキーノートが重要だと思っていた。佐野元春さんと小室哲哉さんに参加してもらえて、本当に良かったと思う。


 佐野元春さんは、いち早くセルフマネージメントを始めたアーティストだし、テクノロジーへの取り組みも先駆的だった。アーティストが独自のデジタルチームを持ったのは日本初だったと思う。当日知ったことだけれどniftyBBSで集まったファンと一緒にインターネットの研究をしたのが、今のMotWebServerの源流だという話や、その頃のブラウザは日本語表示ができないNetscapeだったという、佐野さんの先進性を思い知らされるお話しだった。


 惜しまれながら昨年亡くなったヤングジャパングループの細川健さんのお話しができたのも嬉しかった。佐野さんを見いだして、裏で支えていた方だ。僕もお世話になった。昨秋に渋谷公会堂で行われた細川さんのお別れ会での佐野さんの引き語りは感涙ものだった。佐野さんが自分の意思を貫けたのは細川さんのバックアップが大きかった。


 丸山茂雄さんのお話も興味深かった。佐野さんが育ったEPIC/SONYをつくった人だ。プロ野球で言えば長島茂雄みたいな存在で、みんなの憧れ。「28分じゃ巨人の4番はつとまらないように、この業績ではソニー(Sony Music Entertainment)の社長として失格だ」と、メチャカッコイイ発言で退社して、mf247という音楽配信サイトをつくった。

 佐野さんを取り巻く人達は多彩だったのだと改めて実感した。


 パッケージと音楽配信、ストリーミングや高音質など、テクノロジーについての話は弾んだ。

 佐野さんはアーティストとしてのスタンスを保ちながら、堂々とビジネスを語り、テクノロジーに対する高い見識を見せてくれた。横で聞いていてすごく格好良かったし、TBPらしさを示せたように思う。

 来年のツアーで「18歳以上は無料にする」という宣言がメディアには拾われていたけれど、テクノロジーへの見識やアーティストとしての矜持や社会性の持ち方についての発言が僕には刺さった。


 何年後かにTHE BIG PARADEが広く認知されるイベントになった時に、語り草になるような、そんな1時間だったと思う。レジェンドとなる場に同席できて、光栄だ。


 企画が立ち上がった去年からずっと関わってきたけれど1314時に僕の仕事は終わり、そこから三日間はこのイベントを堪能した。ファウンダーの鈴木さん、牧野さんを始めとした関係者の皆さんに心からの敬意と賛辞を捧げたい。今回のことが、日本の音楽業界のターニングポイントにできるかもしれない。
 場にバイブレーションがあったと思う。本家SXSWには、規模は遠く及ばないけれど、同じ種類のワクワク感があるなと、旧山手通りを歩きながら思った。デジタル化の進展によって、様々な業界の障壁を溶かして、ビジネスモデルの再構築、再定義が求められている。殊更に、音楽とITは欧米では密接に関係して発展している。そのためには、業種の壁を越えてコミュニケーションをとり、考える場が必要だ。


 音楽とITの美しい関係ができるために、このパレードは、来年へと続いていく。僕も一緒に歩いて行きたい。

2014年9月4日木曜日

音楽ビジネスに「ニューミドルマン」が求められている!

 メルマガでは前振りしていたけれど、新たなプロジェクトを立ち上げることにした。ぶっちゃけモードで気持ちを吐露すると「マジで超アタマにきた」のが理由。
 僕は日本の音楽業界で育ったし、今でもこの業界が好きだ。また、日本人には中庸の知恵があるはずだから、「デジタルファースト」という世界の趨勢に周回遅れにはなっているけれど、さすがに今年は巻き返すと信じていた。だから新年にはこんなエントリーも書いた。
 ●独断的音楽ビジネス予測2014 〜今年こそ、音楽とITの蜜月が始まる〜

 詳しいことは書けないけれど、Spotify Japanは夏前には始まると思っていた。LINE MUSIC6月から始まると聞いていたし、オープニングイベントのモデレーターも引き受けていた。J-POPを国策として海外に売っていこうという時代に、日本の音楽市場のサービスが世界水準に遅れているのは、国益を毀損している。何故、そうなっているのかは、概ねわかっているけれど、もちろんここには書けない。本当に日本の音楽業界を愛しているというのなら、僕は「テロリスト」になるべきなのかもしれない。効果的なテロの方法はわかる。結構、まじめに悩んだけれど、自分のIDは、音楽プロデューサーだ。具体の成功例で、ヒット曲やスターアーティストを生み出すことで世の中を変えていきたい。


 悩んだ末に、セミナーを始まることにした。

 作曲家育成の「山口ゼミ」をやってみて、望外にうまくいったというのも理由の一つだ。メジャーデビューが作曲家やサウンドプロデューサーのインキュベーションの機能を果たさなくなっている近年、何かしなくちゃという危機感が原動力だった。予想以上に求められていたし、手応えがあった。次は、スタッフを育てたい。

 グローバル視点でクオリティの高いコンテンツを出すプロジェクトは既にいくつか準備している。でも、ブレイクスルーするには、もう少し根元から変えなきゃダメなんじゃないかと思う。新しいエネルギーが必要だ。


 「山口ゼミ」を始める時も「自社のアーティストを育てる気持ちで、弟子を取るようなスタンスで」と思ったけれど、今回は、これからの音楽業界、エンタメ・コンテンツ業界を伸ばしてくれる人材を輩出できるような場をつくりたい。

 ITに詳しい人は、「中抜きの時代」だと言う。アーティストが直接、ユーザーとコミュニケーションをとるのだと。もちろん、本質はそうだ。ただ、アーティストとユーザーだけでは、イノベーションは起きない。もう一つ役割が必要だ。中間会社=ミドルマンという概念は、目新しくないけれど、マネージャーもA&Rもプロモーターも音楽ライターもITサービス事業者も、アーティストとユーザーの間に入るという意味では、同じ職業で、新時代に対応する必要がある。そのことを「ニューミドルマン」と呼んだみた。他の業界でもそうだろうけれど、特に音楽では、「ニューミドルマン」の役割が重要だ。時代を変える起爆剤になるはずだ。

 余談だけれど、最近よく使う喩え話。近況を問われた時に「僕はホームラン王とりたくて、この仕事始めたんだすよ。でも、最近は、アウト3つでチェンジでいいですか?とか、野球場の形はこのままで大丈夫ですかね?とか訊かれることが多いんです。ルールをどうするかも大事なので両方やってます」って答えてる。みんな笑って理解してくれているみたいだ。

 無知からくるデジタル恐怖症と、保身のために従来型のビジネスモデルを守る力学で、日本の音楽業界は、衰退の道から抜けられずにいる。

 少し視野を広げるだけで、大きなチャンスが広がっているのに、すごく惜しい。音楽産業が「オワコン」扱いされていて、本当に悔しい。ITサービスについて語るのは、音楽の力を信じている人ではないというミスマッチも、とても悲しい。

 欧米では、音楽サービスが異常に高い時価総額や、びっくりするような大型投資を得ている中、日本は、「CD売れない」みたいな話題に終始している。


 本当に変えようよ。音楽の力を信じている人達が、新しいテクノロジーを活用して、市場を活性化する、そんな当たり前のことを日本でもやろうよ。

 少なくとも俺は本気でやる。


 そんな昂ぶった気持で檄文を書いてしまってので、これを読んでみて欲しい。ゲストは超豪華。二つ返事で引き受けて下さった。みんな改革の同志たちです。

 ●ニューミドルマン養成講座〜これからの音楽で稼ぐには? 



 何を言っていんのこいつ?という人は、無料のトークイベントもやるので、来て欲しい。9月8日(月)19時から代々木のMUSE音楽院本館で。

 ●ニューミドルマン養成講座開講記念トークイベント「デジタルファーストで行こう」
ゲスト:
野田 威一郎(tunecore Japan代表)/高野 修平(トライバルメディアハウス)