最近、ブログをサボりすぎだったので、プチ反省して、少なくとも週1回くらいは、1週間のニュースを振り返って、短くても何か書こうと思う。というのも、昨年11月から『音楽ビジネス最前線』というメールマガジンを毎週、監修していて、ニュースキュレーションを毎週やっている。1週間のニュースの中で、音楽ビジネスに関係のありそうなニュースを選んで、簡単な解説付きで紹介しているのだ。毎週末にその作業をやる習慣はできているので、その時に一番気になった記事について、ブログに書くのなら続けられる気がしている。(メルマガ購読もヨロシクです。)
今日は、海外音楽ITサービス事情をわかりやすく紹介してくれて、いつも助かっているジェイコウガミ君の「Alldigital music」から、この話題を。
「Nielsen SoundScan」による、2013年度第3四半期米国音楽売上レポートは非常に興味深いものだ。
概要は、
概要は、
<デジタル・アルバム売上>
・前年同期2830万ユニットから5%減少
・カタログ(旧作)の売上は前年同期比1.4%減少し、4240万ユニット。一方新作リリースは6.6%増加で4530万ユニットと好調。
・1-9月までの9ヶ月間でみると6.1%減少
<パッケージ売上>
・CD売上は12.8%減少し、1億1310万ユニット
・アナログレコードのアルバム売上は30%増加し、410万ユニット
この変化の意味を僕は、米国音楽配信の主役が、iTunes StoreからSpotifyへと変わるの兆しだと捉えている。金額の減少は、「主役の変化」の時期の過渡的な現象で、必ずしも悲観すべき状況ではないと思う。音楽配信が楽曲単位のダウンロード型から、ストリーミングによる月額課金(サブスクリプション)型に変わるだろう。
関係者の話によると、Spotifyの有料会員は、確実に伸びていて、既に800万人を超えて、早ければ年内にも1000万人に到達する模様だ。特に米国での増加が著しいそうだ。日本法人も着々と準備を進めているようなので、サービス開始を心から期待したい。
もちろん、このままアップルが黙っているとは思えない。再生プレイヤーとしてのiTunes、配信プラットフォームとしてのiTunes Storeの存在は米国では圧倒的だ。iCloudに加えてMusic Matchというパーソナルクラウドの機能も提供している。既にiTunesをベースに楽曲を購入して、ライブラリーを持っているユーザーは、アップルのエコシステムから離れるのは強い抵抗感があるだろう。新サービスiTunes Radioで、新たな音楽のリコメンド機能も強化されている。
ただ、音楽配信サービスにおけるDL型からストリーミング型への移行という大きなトレンドは、環境の変化による必然だというのが僕の基本的な認識だ。
いずれにしても、米国音楽市場は、世界をリードする存在だ。この変化に注目していきたい。
パッケージ売上についてもCD売上は減少しているけれど、アナログが増加していることにも着目したい。ストリーミングが主流になる時代のパッケージの役割はこれまで以上に、コレクションとしての価値になる。アーティストやレーベルがパッケージの在り方、見せ方を工夫すれば、音楽ファンへの興味喚起は可能なはずだ。
Austinの老舗CD店Waterloo |
でも、今春に行ったオースティンの老舗CD店では、ほとんどのCDは12ドル〜15ドル、アナログレコードの主価格帯は20ドル以上だった。今頃は、CDアルバムが8ドルくらいになっているのかなと思っていたので、驚いた。米国でも、パッケージの価値は再認識されているような気がした。
もう一つ、この記事で着目したのは、レーベルのシェアだ。「レコード会社のマーケット・シェアでは、ユニバーサルレコードが38.3%、ソニー・ミュージックが29.1%、ワーナーミュージックが19.7%」とある。メジャー3社で9割のシェアだ。
一方、日本は34%だ。ここに日本の音楽市場の特殊性が表れている。エイベックス、ビクター、キング、トイズファクトリー、ポニーキャニオンなどは、グローバル視点では、ドメスティックインディーズレーベルとなる。
米国も以前は、メジャー比率は50%から70%を行き来していると言われていた。元気なインディーズレーベルが売上を伸ばして成功するとメジャーレーベルに売却するというのが、米国音楽市場のシステムの一つだったらしい。9割になった現状は、どうなんだろう?そもそもパッケージと配信という、原盤からの売上をベースにシェアを語ることが無意味な時代になっているのかも知れない。
一方、日本は34%だ。ここに日本の音楽市場の特殊性が表れている。エイベックス、ビクター、キング、トイズファクトリー、ポニーキャニオンなどは、グローバル視点では、ドメスティックインディーズレーベルとなる。
米国も以前は、メジャー比率は50%から70%を行き来していると言われていた。元気なインディーズレーベルが売上を伸ばして成功するとメジャーレーベルに売却するというのが、米国音楽市場のシステムの一つだったらしい。9割になった現状は、どうなんだろう?そもそもパッケージと配信という、原盤からの売上をベースにシェアを語ることが無意味な時代になっているのかも知れない。
また、Spotifyについては、大物ミュージシャンからの反対論が話題を呼んでいる。最近も、こんな記事があった。
トムヨークの時も同様だったけれど、この種の批判は、僕からは論理的に成立していないように思える。Spotifyは、楽曲の著作権使用料とは別に、売上の5〜6割をレーベルとアーティストに支払っている。新人アーティスへの支払が少なすぎるというのは、音楽配信サービスに対する期待が過剰過ぎる。これまでレコード会社が担っていた、新しい才能への投資をIT企業に期待するのは、お門違いではないか?
それだけ、Spotifyの存在感が欧米では大きくなっていて、脅威を覚えているのかも知れない。KickstartaterやIndiegogoなどのクラウドファンドが、その役割を受け持っているように日本に居る僕からは見えるのだけれど。
そんなことを思う、2013年10月from東京。ともかくは、欧米に比べて"周回遅れ"を走っている日本の音楽配信状況が、前に進むことを心から願う。