2012年12月31日月曜日

今年観た映画『映画と恋とウッディアレン』『屋根裏部屋のマリアたち』『夢売るふたり』などなど

ブログを書き始めてからは、観た映画の記録は必ず残そうと決めたんだけれど、半年以上、書かないままだった。
未来の自分へのメモ(ライフログ)でもあるので、年末にまとめて記しておくことにする。
時系列思い出せないし、ランキングにするのは面倒すぎるので、順不同で。本数が多くなってしまったので手短に。

ちなみに、映画名をクリックすると公式サイトに飛びます!

『映画と恋とウッディアレン』
ウッディ・アレンは好きだ。今、「一番羨ましい人は?」って聞かれたら、迷わずこの人だと答えると思う。毎年、世界の色々な街で、好きな様に映画が撮れる。美女達に囲まれ、離婚した女優からも愛されている。そんな彼のドキュメンタリー伝記映画。
ニューヨークでスタンダップコメディをやっていた頃の逸話など、知らない話も沢山あった。ファンはマスト!

『恋のロンドン狂騒曲』
そんな、ウッディ・アレン監督の映画、バルセロナ、パリに続いて、今回はロンドン。相変わらずエスプリ感溢れて、良い感じ。恋愛も宗教も人生の悩みもいろんなものを、ちょっと小バカに茶化しながらも嫌みにならないのは、登場人物に対する愛情があるからなんだろうな。ともかく、長生きして、たくさん映画を作って欲しい。ウッディアレンが描く都市と人の姿が大好きだから。

『アーティスト』
アカデミー賞作品賞等受賞。サイレント映画が滅んで、トーキー映画に移り変わる時期の、サイレント映画のスター俳優が主人公。設定は珍しくないけれど、映画のほとんどがサイレントになっているというアプローチが秀逸。映画好きが喜ぶ映画だと思う。

『肉体と悪魔』
『アーティスト』の影響かどうかわからないけれど、最近、サイレント映画に人気が高まっているそうだ。弁士では無く、生ピアノの即興演奏付きという上映会が頻繁に行われるようになっている。豊洲で行われた上映会でのピアニスト、柳下美恵さんは、旧い友人。ソーシャルメディア上で久々に再会したら、サイレント映画のピアニストになっていた。活躍が嬉しい。この日の演奏もグレタ・カルポの美貌に似合う好演だった。
 ●柳下美恵さんツイッター:@miesilentpiano


『アリス』
変わった上映方法と言えば、目黒クラスカの「ルーフトップシネマ」にも行った。広い屋上に座って、お酒を飲みながら、大きなプロジェクターの上映を観る。一部の人には、夏の風物詩になっているらしい。気持よかった。
チェコ巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の作品も東欧らしくて良かった。鬼才の脳みその中を覗いた感じ。『アメリ』をもっと変態ぽくした印象。

『へルタースケルター』 
ロードショー映画も観たよ、って事で。まずは、蜷川実花監督、沢尻エリカ主演の本作。
原作の漫画が人気だから難しいかなぁと思ったけれど、予想以上に良かった。監督と主演のキャスティングが適切だったね。
興行的には、女の子も観られるって大事だよね、デートムービーとして成立していたと思う。


『アウトレイジ・ビヨンド』
北野武監督は、尊敬する日本人クリエイターの一人だけれど、怖い映画が好きじゃ無い僕は、時々見逃してしまう。前作『アウトレイジ』は観てないので、DVDで観なきゃ。続編だけれど、前作を観て無くても十分楽しめた。
やくざ映画は日本映画の伝統だね。俳優陣が好演。任侠の世界に惹かれるのは社会の縮図になっているからなんだなと改めて思った。オススメです。

『夢売るふたり』
もう一つ、オススメ邦画。西川美和監督は素晴らしい才能だね。前作『ディアドクター』も良かったけれど、本作も心理描写と映画ならではの世界観の組み方が秀逸。
ゆったりとした展開をしながら、そのまま終わらずに、最後にサプライズを用意するという構成も好き。しっかりとしたエンターテイメント感を持っている人なんだと思う。音楽もセンス良いけど。もう少しシナリオと絡んだトリッキーな要素があるといいのになと高望みな希望。いつか仕事でご一緒したい監督です。

『メリダとおそろしの森』
最近はアニメはこれしか観てないな。クオリティが高い。シナリオもよく練られていて、グローバルマーケットへの意識が高い。ディズニー4000年の歴史がノウハウとして蓄積されているなぁと今更ながら感心。
3Dは目が痛くなるから個人的には好きじゃ無いんだけれど、だんだん3Dの必然性がある表現が増えている気がする。色んな意味でもっと洗練されて、定着していくんだろうな。

『台風クラブ』
名画座って言葉はあまり聞かなくなった気がするけれど、早稲田松竹の特集は、素晴らしいと思う。さすがに二本立てを続けて観る時間を確保するのは難しくなっているけれど、相米慎二監督特集とあっては、行かねばなるまい。
本作は、1985年ATG製作って懐かしいなぁ。工藤夕貴が可愛かった。

『お引越し』
相米作品のもう一作は、初めて見た。1993年作品だって。中井貴一と桜田淳子の壊れかけた夫婦の演技が絶妙。
惜しい人をあまりにも若く亡くしたね。改めて合掌。

『屋根裏部屋のマリアたち』
ロードショーを見逃したときも早稲田松竹のお世話になる。実は、今年一番良かったのは、これかもしれないと思うくらい良かった。
フランス映画。フィリップ・ル・ゲイ監督作品は初めてだったけれど、過去作品も観てみたい。フランスらしい上品さがありつつ、軽妙なエンタメ感が心地よい。
主演のファブリス・ルキーニは、キャリア十分だけど、今作は特に存在感が良かった。ちょっと橋爪功に似ている。
そして、主演女優のナタリア・ベルベケが美しい。美し過ぎる。”ワケアリな事情を抱えて気丈に生きるメイド”というのが、日本人好みの設定なのかも知れないけど、あの透明感があってこそ、活きたシナリオだとも思う。ブログを書いているうちに、もう一度、観たくなった。

『僕たちのムッシュ・ラザール』
カナダのフランス語圏の映画。これも佳作。
モントリオールの小学校での教師と生徒の交流が描かれている。担当教師が自殺して傷ついた生徒達を教える代用教員は、アルジェリアからの移民。政治的な迫害を受けて、家族を亡くしてカナダに移り住んだという設定。重みがあるけれど、説教くさくないのが良い。

2012年12月2日日曜日

二冊目の著作を出版しました。 〜音楽関連ビジネス書ブックレビュー2〜


 ずぼらでおっちょこちょいな性格は小学生の頃からだけれど、二冊目の著作を出させてもらったのに、一ヶ月以上経って、自分のブログに書いてないことのは、酷すぎるね。(> <)って顔文字で誤魔化したい気分。遅ればせながらブログ更新です。
 もう、だいぶ間が抜けた告知になるけど、1025日に『ソーシャル時代に音楽を"売る"7つの戦略〜“音楽人”が切り拓く新世紀音楽ビジネスという書籍を出しました。「ソーシャル7」と呼んでね(^_-)-

 立場の違う4人による共著。共通点は音楽が好きで、音楽と関わる仕事をしていること。とはいえ、いわゆる音楽業界の内側にいるのは僕だけで、他の3人はそれぞれ、プロモーション、キャスティング、ソーシャルメディアマーケティングという専門的な能力を持って音楽業界に関わっている。僕は、EAの松本拓也さんに誘われて、共著者になった。4人で何度かミーティングをして、現状認識、将来展望など日本の音楽ビジネスに関する意見交換をした。このミーティングが、執筆よりも楽しくて、いつまでもミーティングを続けたいと思った。

 そうもいかないので、パートごとに役割分担をして、執筆作業にとりかかった。初めて体験したのが、口述筆記的なやりかた。テーマに合わせて話した内容を編集者が文章にしてくれる。それに対して訂正するというやり方なんだけれど、これが良かった。僕が音楽ビジネスについて書こうとすると、どうしても熱くなりすぎる。編集者に理解してもらって、咀嚼されるから、僕自身が書くよりも客観的でわかりやすい文章になる。気になるニュアンスは、そこから手を加えて修正すれば良い。しかも時間的な負担がなくて、本業への影響が小さい。

 作家を気取るつもりは毛頭無いけれど、一から自分で描こうとすると、まとまった集中する時間が必要だ。打合せの合間に1時間空いたからって、ちょっと書くみたいなことは難しい。ビジネスの打合せと執筆は、自分のテンションが違うから、脳みそのチューンナップは結構、大変。このやり方だと、そういう調整が無くても大丈夫。もしかしたら僕は味をしめてしまったかもしれない。

 もちろん、そんなやり方ができたのは、有能な編集者だったからだ。発刊記念イベントの時に、共著者の殿木さんが、「僕ら4人がバンドで、編集者がマネージャーみたいな関係。マネージャーが居ないと成り立たなかった」って言ってたけど、その通り!「ソーシャル7」の貢献度のMVPは、リットーミュージック山口一光さんだ。この場を借りて、お礼申し上げます。本当にお世話になりました。m(__)m

「音楽人」という言葉には、従来の「業界人」ではダメだよね?音楽に携わる人みんなで、前向きに変わっていこうよ!という僕らのメッセージが込められている。
 だから、いつまでも続けていたかったミーティングは、読者も巻き込んでフェイスブックページに引き継いだ。興味のある方は、こちらからご参加下さい。
 意見交換をしたい方は、ここで参加表明してもらえれば、グループに招待します。

 そして、続編に向けて?かどうかわからないけれど、メールマガジンも始めた。既に2号出して、まもなく第3号、共著者4人以外にも素晴らしい寄稿者が協力してくれている。

 世界中で放送されたいる日本の音楽番組NHK国際放送J-MELO」プロデューサーとして海外の日本ファンと最も接している原田悦志さんが、J-MELO世界発信紀」と題して連載してくれる。

 海外の音楽サービスの紹介ブログが素晴らしい、ジェイ・コウガミさんは、「海外デジタル音楽の今」で、最新情報を伝えてくれる。

 知財系弁護士として日本一だと僕は思う、Field R 山崎卓也さんが「クラウド時代の超ラディカル著作権論」を書いてくれる。これだけでもメルマガを始めることにして良かったと思うような刺激的な連載だ。

 そして、ハッピードラゴンの相方であるふくりゅう君には、本来の職域である「ミュージック・コンシェルジュ」としてお薦めの音楽を月1回紹介してもらう。

 そんな「音楽人養成メルマガ」、購読をお願いします。はじめて三ヶ月で読者が1000人を超えなければ、休刊するという方針を課したので、良いと思ったら、友人知人にも薦めてね。

 音楽ビジネスといえば、素晴らしい本が出版されたので、紹介したい。以前書いた、「音楽関係ビジネス書ブックレビュー」の続編。

 名著。著者はインターネットで全国のラジオ局の番組がきけるプラットフォームサービスradikoの生みの親。昨年、電通をお辞めになって、関西大学の教授になられたけれど、音楽業界、メディア業界には欠かせない人だ。
 日本の音楽業界、メディア業界の表も裏もよくご存じの方で、僕も色んな事を教わっているけれど、ビジネス論だけで無く、文化論的な分析も素晴らしい。日本と韓国の音楽業界、政府の施策などを比較すると同時に、SMエンタテインメントのイ・スマンを、60年代に米国で一世風靡した「モータウン」レーベルの創始者ベリー・ゴーディや、戦後に日本の芸能界を創った渡邉晋と並べて、分析している。
 これだけ幅広く、総合的かつ俯瞰した視点で、日本の音楽ビジネスについて語った本は、他には無い。音楽に携わる人は必読。余計なことだけど、タイトルだけ惜しいと思う。書名がキャッチーならベストセラーになったかもしれないのに。
 ということで、必ず読んでください!

 「ソーシャル7」の共著者で、気鋭のソーシャルメディアマーケッター髙野修平さんによる音楽愛溢れる好著。「ソーシャル7」の第1章「ソーシャルメディアが音楽をドライブさせる」を読んで、興味を持ったら、この本を読んで掘り下げると良いと思う。
 音楽が伝播する段階として「共有」「共感」「共鳴」の三つあると説明したり、「トライブ(部族)」という概念を用いたり、参考になる考え方が説明されている。
 ソーシャルメディア上での広まり方を「ソーシャルグラフ」「ミュージックグラフ」「インタレストグラフ」「リレーショングラフ」と4つの関係性(=クアトログラフ)と解き明かしているのも興味深い。
 音楽ビジネスに携わる人は必読だよ。


 もう一人の共著者、松本拓也さんも2008年前に本を出している。
 ドラマ仕立てのミュージックビデオに人気モデルなどを登用して、ブログと連動して配信ヒットを出すという方程式をつくった仕掛け人で第一人者。関わったビデオクリップのYouTubeでの平均再生回数が100万回という驚異的な実績を誇っている。そんな著者だけにブログ活用のポイントがよくまとめられている。
 インターネットネットの環境そのものは4年で変わっている部分もあるけれど、ブログ活用の方法を考えるにはとても参考になる。
 
 他にも音楽関連のオススメ書籍はある。以前、ブログにまとめたので、興味のある方はこちらをどうぞ。

 最後に、もう一つ報告。10月にドリルスピンに寄稿した原稿が、ネット上で拡がって驚いた。3日間で48000PV、平均滞在時間620秒という、大きな反響があって、結果的に3部作として書くことになった。まだ読んでない方は、こちらからどうぞ。

■コラムスピン 第40回、42回、43回『iTunes Storeは日本では失敗してるんだよ』