『マネーボール』
原作はずいぶん前に読んだ。野球好きとして、アスレチックスのGMの存在は注目だ。気付いたら松井秀喜も在籍するようになった。そしたらブラッド・ピッド主演による映画化。プロデューサーも兼任。もちろん観に行きました。
投手を三振や球速では無く、与四死球の少なさで、打者を本塁打や足の速さ、肩の強さではなく、出塁率の高さで評価するという「マネーボール」理論は、原作で読んだときから、興味深かった。近年では、他チームでも採用されるようになったそうだ。アスレチックスの優位性が崩れてしまったという皮肉な話。
『メジャーリーグ』みたいな、単純明快なスポーツ映画とは全然違う。大リーグのGMやスカウトもリアルに登場するけど、基本的には、大人の男を描く人間ドラマ。含蓄のある良い映画だった。
興行的には苦戦してるみたいだけど、とてもいい映画ですよ。スポーツ映画では無く、人間ドラマだというのを宣伝的にも打ち出しせばよいのになと思った。
『モテキ』
すごく良かった!「J-popミュージカル」というキャッチコピーもあったけど、懐かしい曲をちりばめている、「反則!」と思うくらいの堂々たる盛り上げ方。大根監督とは、まだ彼が、堤幸彦さんのアシスタントだった頃に、仕事をご一緒したことがある。何かを秘めている印象は若い頃からあったけど、素晴らしく才能が開花!
ツイッターの使い方が、こんなにリアル(ピント外れで無い)のは、テレビドラマなど含めて、初めてじゃ無い?若者の生態を押さえているよね。ナタリーのTAKUYA社長は、あんな女好きじゃ無いけどね^^
ホイチョイプロダクションが、流行の真ん中にいた頃の『私をスキーに連れてって』を思い出した。2011年の東京のカルチャー&ライフを知りたければ、これを観ればいいという映画。この映画を観て、理解できない部分があれば「オジサン」という踏み絵にもなっているね。
興行的にも成功しているようだけれど、宣伝的な打ち出しで、4人の主要女優を同列に打ち出して、「美女達に翻弄されるモテキが突然きた主人公」というイメージにしたのは正解だったと思う。実際は、長澤まさみとのラブストーリーなんだけどね。前述の『マネーゲーム』は人間ドラマなのに、スポーツ映画っぽい打ち出しにして、苦戦しているのと好対照。
『ピアノマニア』
ウィーンに住む超一流、ピアノ調律師のドキュメンタリー映画。素晴らしい。ピアノが好きな人は、是非、観て欲しい。1月21日公開
ピアニストにとって、調律師というのは特別の存在だ。よほどのことが無い限り、クラシックの著名ピアニストでも、自分のツアーにピアノを持ち運ぶことは珍しい。山下洋輔さんがエッセイの中で、会場にあるピアノに「折り合いをつけなければいけない」ピアニストは、自分の楽器を偏愛する管楽器奏者やギタリストとは、違う性格が形成されると書いていた。
演奏する楽器別の性格の違いは三谷幸喜さんの舞台『オケピ』でも描かれていたのを思い出した。
この映画では、レコーディングの様子も丹念に紹介されていて、興味深い。ピアニストと調律師の会話は、別世界の話のようで、目の前で聞いていても魔法使いの言葉のような感じがする。以前、ジャズピアニストのマネージメントをしていたので、何度も立ち会っているけれど、ピアニストと調律師の関係は独特だ。でも、確かに音が変わっているのはわかる。でも、一流料理人の食事を食べても「おいしい」しか言えないように、「いい音だな」としか表現できないけど。
試写会会場のトッパンホールの音響も素晴らしかった。こういう素晴らしいホールがあるのが東京の文化力の高さだなと、改めて確認した。
『Pina〜ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』
音楽を生業にしていなければ、アート鑑賞を趣味にしていたのではないかと思う。「フィリップジャンティカンパニー」「ブルーマングループ」「山海塾」は好きです。ポピュラーミュージックを作って売るという商売をやっていると、アート作品を観ていても、なにか「盗める」ところがないか、ポップスに応用できないかと、知らず知らすに考えてしまうし、趣味とは思いづらい。ちょっと「卑しい」けど、仕方ないなぁ。
でも、ピナバウシュは、特別にリスペクトしている。人間の根源的な生命を感じさせる舞踊、そのまま凍らせて、美術館に飾りたいような美しい構図。
眼鏡を掛けて観ていると頭痛がしてくる気がして、3D映画はあまり好きじゃ無いけど、この作品は3Dでつくってくれてよかった。
日本の舞踏家、故大野一雄さんについても語られていて、故人の評価の高さを確認する。
2月24日公開。清流で心が洗われる気持になります。激オススメ
『ミラノ、愛に生きる』
大人の映画。美しさに溢れている。
食事とセックスには共通点があるというのは、文化人類学でよく語られているけれど、料理を作ること、食べることが、非常に官能的に描かれているところがすごく良かった。
以前、読んだ本で、アフリカのある民族の習慣では、未婚の男女のセックスは認められているけれど、一緒に食事をすることは禁忌とされている、と書いてあったのを思いだした。
ヨーロッパのカルチャーや絵画的な美しさを持った映画が好きな人には、強くお薦めします。年末から公開中。
『ゴーストライター』
この映画は、たまたまた書き忘れてた。
重厚で良質な映画。昨年の映画のベスト3に挙げている人が多いのもうなずける。
個人的には英国首相とその自伝のゴーストライター、そこに起きる陰謀という設定のリアリティに今ひとつ入り込めなかったけど、観る価値のある映画だと思います。
ちなみに、2011年の僕のベスト3は、
1)『ブラックスワン』
2)『マイバックページ』
3)『ゲンズブールと女達』
にしてみました。
その他の昨年観た映画はこちら。2011年は豊作だった気がする。
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』
そして、年明け一本目に観た。豊島園のiMAXシアターに初めていったけど、迫力満点だね。スクリーンが大きくて、こういう映画にはぴったりだと思う。
若い頃のトムクルーズは興味なかったけど、最近は、徹底したプロ根性をリスペクトしたいと思う。これぞ、ハリウッド映画という感じの大仕掛けでスリル満点。こういう楽しみも映画の醍醐味だと思った。
今年もよい映画をたくさん観たいと思います!