2016年9月14日水曜日

輝けダイヤの原石!新人発掘プロジェクト始めます。

  無名の新人アーティストを発掘して、サポートする新プロジェクトを始めます!

追記:デモテープを公開品評するラフダイアモンドミートアップの詳細はこちらです!

 音楽事務所はアーティストを見つけて、育てるのは本業中の本業なので、ずっとやってきたことだけれど、レコード会社を中心とした日本の音楽業界の生態系が壊れてしまって、ここ数年は新人開発よりも以前にやることがあるような気がしていた。だから、一流音楽家とプログラマーでミュジシャンズハッカソンを始めたし、エンタメ系スタートアップを支援するアワードや、次世代の音楽家やプロデューサーを育成するセミナーとフォローの仕組み(山口ゼミ〜CoWritingFarm、ニューミドルマンラボ)、インターネットラジオRakutenFMでの「Tokyo Tech Street」の企画監修、など新分野に注力してきた。
 最近、名乗り始めた「エンターテック・エバンジェリスト」的な活動だ。


 でも、僕の本籍は音楽ビジネスで、肩書も音楽プロデューサーがアイデンティティだ。音楽の分野で新しいスターが生まれることに関わりたいという気持ちは変わらず持っていた。

 旧知の人に会うと「いろんなことやっていますね?」と言われることが増えた。褒められているのか、揶揄なのかわからないけれど、確かにいろいろやっているなという実感もある。でも、セミナー主宰もモデレーターも番組企画も企業のアドバイザー業も僕の活動のベクトルは「日本の音楽ビジネスの生態系を再構築する」という動機から始まっていて、同じ問題意識で取り組んでいるので、全て繋がるなという実感がある。

 そして、この活動を行うときのマインド、スキルは、全て、「アーティストマネージメント」をやってきた方法論で取り組んでいる。例えば、拙著『世界を変える80年代生まれの起業家』(SPACESHOWER BOOKS)の出版したり、START ME UP AWARDSのオーガナイザーをやってりし、たくさんの若い起業家と付き合っているけれど、コミュニケーションをするときは、新人アーティストに対するマネージャーのやり方が有効だった。


 ちょっとだけ毒を吐くと、ほとんどのアーティストは何かが上手くいかないと、スタッフのせいにするけれど、起業家は自己責任で生きていて、他人のせいには絶対しないので気持ち良い。

 日本の音楽業界は、音楽を創るアーティストは、売れる前からちゃんとリスペクトして付き合うという素晴らしい伝統があって、僕もその系譜の上で仕事してきているつもりなのだけれど、時にアーティストを甘やかし、スポイルする側面がある。アーティストにビジネス面でも自己責任を持たせて、イコールパートナーになるというやり方に切替えたいと、自分に対して思っている。

 日本人音楽家でセルフマネージメントを立派にやっている方はたくさんいらっしゃるけれど、みなさん「売れた後に自分でやる」というパターンだ。売れる前からビジネス面を自分でリスクを取ってマネージメントしてサクセスした音楽家は、僕の知る限り日本には一人も居ない。そう見えていても、実は裏に敏腕マーネジャーが必ずいる。それが学生時代の同級生で未経験な素人の場合もあったりするのが、このビジネスの面白さなんだけれど、いずれにしても、金銭面に関してはシビアな場面に直面せずにやっている場合がほとんどだ。世の中には、音楽家が事務所やレコード会社に搾取されているという偏見を持っている人も少なくないけれど、初期リスクを取ってもらって、道筋もつくってもらえるのだから、もし一定の期間、「搾取」されたとしても当然というのがビジネス的な感覚だろう。


 でも、そんな状況がそろそろ変わる時代かなと思っている。SNSの普及でコミュニケーションコストは著しく下がった。マスメディアに頼らずとも自分の作品を広げる方法がたくさんある。レコーディングのコストを下げることも可能になった。(あまりにも安直で安価なレコーディングが横行していることには不安を覚えていて、レコーディング・エンジニアの価値を再確認する運動もしたいと思っていけれどね。)Tunecoreを使えば、世界中の配信サービスに簡単に楽曲を流通させることができる。まだまだ日本では弱いけれど、資金集めにはクラウドファンディングも広まり始めている。レコード会社に頼らなくてもできることがほとんどだ。
 一方で、変わらないこともある。経験と人的ネットワークだ。創作上の課題をクリアーする方法は経験が役に立つ。エンタメビジネスは属人性が高い分野だから、相談できる相手がどれだけいるかは財産だ。著作権関係の知見も必要だし、明文化されてないことが多い業界慣習も知っておけば、地雷を踏むことがない。そんな分野では僕らが役に立てると思っている。


 今回のプロジェクトのキッカケは、年末の加茂啓太郎さんのFB投稿。ユニバーサルミュージックを辞めて、フリーランスになるとのこと。すぐに連絡をとって「一緒に新人開発プロジェクトをやりませんか?」と声がけした。加茂さんは、東芝EMI時代に「グレートハンティング」という新人開発部門を始めた、業界では知らない人はいない、掛け値無しに日本一の新人開発A&Rマンだ。ウルフルズ、氣志團、ナンバーガール、相対性理論、赤い公園などなどなど数々の才能あるアーティストを発掘、売り出してきている。ただ、これまで新人開発は、大手レコード会社のコストセンターだった。
「その考え方はもう古いし、無理じゃないですか?新人開発の仕組み自体を可視化して、ユーザーと一緒に育成していく新しい仕組みをつくって、それ自体をビジネスにしましょうよ!」
クレバーな加茂さんは、僕の意図はすぐ理解してくれて、乗ってくれた。そして流石だなと思ったのは「山口さんの言っていることは2年早いね」と看破されたことだ。だいたい僕が音楽業界で仕掛けたことは、2〜3年早いことが多い。ARの旗手だったセカイカメラとコラボして、自分がプロデュースするアーティストのキャンペーン(セカイカメラ × Sweet Vacationコラボレーションイベント「渋谷で恋するメッセージ〜AR恋文横丁〜」)を仕掛けたのは、2010年2月だから、PokemonGoARが一般化したと考えると6年早かったことになる(*_*)
 素晴らしいミュージックラバーで、抜群の目利き力を持つ加茂さんと組んで、僕のIT関係の知見、ノウハウ、人的ネットワークを注入して、無名の新人がスターダムを上っていく手伝いをしたいし、それが可能になるシステムを作っていきたい。

 やることが早過ぎるということは、功を焦らなければ、ゆっくり準備できるということのはずだ。僕もオトナになる年齢なので(遅すぎ!)今回は、2年位かけて新しいアーティスト育成のモデルを作ろうと思っている。


 募集ページのコメントには、「他力本願でも、タナボタ期待でも無い、才能とガッツのあるインディペンデントアーティストの応募を待っています。」と記した。

 まずはCreofugaのウエブサイトの楽曲を投稿してもらって、ユーザー投票が一次審査、tweet数などの上位を「ラフ・ダイアモンドMeet Up」と称する、公開デモテープ品評会で直接、僕らがアドバイスする。第1回は10/21(金)に渋谷LOFTに決まって、ゲストコメンテーターで元pillowsの上田健司さんが出てくれる。誰でも観られるトークイベントなので、興味のある人は、覗きにきて欲しい。

 そもそも、この「ラフ・ダイアモンド」は、好きなアーティストを見つけて、応援する人を「ダイアモンド・ディガー」と呼んで、ネットワークしていきたいと思っている。アーティスト育成プロセスを可視化するというのは、ユーザー参加型のオープンな仕組みにするということだ、加茂啓太郎フォロワー、ミニ啓太郎も輩出したいと思っている。


 

 音楽ビジネスに興味のある人は、来月から始める。ニューミドルマン養成講座も来て欲しい。今回も素晴らしいゲスト講師の方をお呼びすることができた。「テクノロジーでエンタメを拡張する」という僕のテーマに大きな示唆をもらえる方々なので、ホストの僕が楽しみにしている。