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2012年12月31日月曜日

今年観た映画『映画と恋とウッディアレン』『屋根裏部屋のマリアたち』『夢売るふたり』などなど

ブログを書き始めてからは、観た映画の記録は必ず残そうと決めたんだけれど、半年以上、書かないままだった。
未来の自分へのメモ(ライフログ)でもあるので、年末にまとめて記しておくことにする。
時系列思い出せないし、ランキングにするのは面倒すぎるので、順不同で。本数が多くなってしまったので手短に。

ちなみに、映画名をクリックすると公式サイトに飛びます!

『映画と恋とウッディアレン』
ウッディ・アレンは好きだ。今、「一番羨ましい人は?」って聞かれたら、迷わずこの人だと答えると思う。毎年、世界の色々な街で、好きな様に映画が撮れる。美女達に囲まれ、離婚した女優からも愛されている。そんな彼のドキュメンタリー伝記映画。
ニューヨークでスタンダップコメディをやっていた頃の逸話など、知らない話も沢山あった。ファンはマスト!

『恋のロンドン狂騒曲』
そんな、ウッディ・アレン監督の映画、バルセロナ、パリに続いて、今回はロンドン。相変わらずエスプリ感溢れて、良い感じ。恋愛も宗教も人生の悩みもいろんなものを、ちょっと小バカに茶化しながらも嫌みにならないのは、登場人物に対する愛情があるからなんだろうな。ともかく、長生きして、たくさん映画を作って欲しい。ウッディアレンが描く都市と人の姿が大好きだから。

『アーティスト』
アカデミー賞作品賞等受賞。サイレント映画が滅んで、トーキー映画に移り変わる時期の、サイレント映画のスター俳優が主人公。設定は珍しくないけれど、映画のほとんどがサイレントになっているというアプローチが秀逸。映画好きが喜ぶ映画だと思う。

『肉体と悪魔』
『アーティスト』の影響かどうかわからないけれど、最近、サイレント映画に人気が高まっているそうだ。弁士では無く、生ピアノの即興演奏付きという上映会が頻繁に行われるようになっている。豊洲で行われた上映会でのピアニスト、柳下美恵さんは、旧い友人。ソーシャルメディア上で久々に再会したら、サイレント映画のピアニストになっていた。活躍が嬉しい。この日の演奏もグレタ・カルポの美貌に似合う好演だった。
 ●柳下美恵さんツイッター:@miesilentpiano


『アリス』
変わった上映方法と言えば、目黒クラスカの「ルーフトップシネマ」にも行った。広い屋上に座って、お酒を飲みながら、大きなプロジェクターの上映を観る。一部の人には、夏の風物詩になっているらしい。気持よかった。
チェコ巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の作品も東欧らしくて良かった。鬼才の脳みその中を覗いた感じ。『アメリ』をもっと変態ぽくした印象。

『へルタースケルター』 
ロードショー映画も観たよ、って事で。まずは、蜷川実花監督、沢尻エリカ主演の本作。
原作の漫画が人気だから難しいかなぁと思ったけれど、予想以上に良かった。監督と主演のキャスティングが適切だったね。
興行的には、女の子も観られるって大事だよね、デートムービーとして成立していたと思う。


『アウトレイジ・ビヨンド』
北野武監督は、尊敬する日本人クリエイターの一人だけれど、怖い映画が好きじゃ無い僕は、時々見逃してしまう。前作『アウトレイジ』は観てないので、DVDで観なきゃ。続編だけれど、前作を観て無くても十分楽しめた。
やくざ映画は日本映画の伝統だね。俳優陣が好演。任侠の世界に惹かれるのは社会の縮図になっているからなんだなと改めて思った。オススメです。

『夢売るふたり』
もう一つ、オススメ邦画。西川美和監督は素晴らしい才能だね。前作『ディアドクター』も良かったけれど、本作も心理描写と映画ならではの世界観の組み方が秀逸。
ゆったりとした展開をしながら、そのまま終わらずに、最後にサプライズを用意するという構成も好き。しっかりとしたエンターテイメント感を持っている人なんだと思う。音楽もセンス良いけど。もう少しシナリオと絡んだトリッキーな要素があるといいのになと高望みな希望。いつか仕事でご一緒したい監督です。

『メリダとおそろしの森』
最近はアニメはこれしか観てないな。クオリティが高い。シナリオもよく練られていて、グローバルマーケットへの意識が高い。ディズニー4000年の歴史がノウハウとして蓄積されているなぁと今更ながら感心。
3Dは目が痛くなるから個人的には好きじゃ無いんだけれど、だんだん3Dの必然性がある表現が増えている気がする。色んな意味でもっと洗練されて、定着していくんだろうな。

『台風クラブ』
名画座って言葉はあまり聞かなくなった気がするけれど、早稲田松竹の特集は、素晴らしいと思う。さすがに二本立てを続けて観る時間を確保するのは難しくなっているけれど、相米慎二監督特集とあっては、行かねばなるまい。
本作は、1985年ATG製作って懐かしいなぁ。工藤夕貴が可愛かった。

『お引越し』
相米作品のもう一作は、初めて見た。1993年作品だって。中井貴一と桜田淳子の壊れかけた夫婦の演技が絶妙。
惜しい人をあまりにも若く亡くしたね。改めて合掌。

『屋根裏部屋のマリアたち』
ロードショーを見逃したときも早稲田松竹のお世話になる。実は、今年一番良かったのは、これかもしれないと思うくらい良かった。
フランス映画。フィリップ・ル・ゲイ監督作品は初めてだったけれど、過去作品も観てみたい。フランスらしい上品さがありつつ、軽妙なエンタメ感が心地よい。
主演のファブリス・ルキーニは、キャリア十分だけど、今作は特に存在感が良かった。ちょっと橋爪功に似ている。
そして、主演女優のナタリア・ベルベケが美しい。美し過ぎる。”ワケアリな事情を抱えて気丈に生きるメイド”というのが、日本人好みの設定なのかも知れないけど、あの透明感があってこそ、活きたシナリオだとも思う。ブログを書いているうちに、もう一度、観たくなった。

『僕たちのムッシュ・ラザール』
カナダのフランス語圏の映画。これも佳作。
モントリオールの小学校での教師と生徒の交流が描かれている。担当教師が自殺して傷ついた生徒達を教える代用教員は、アルジェリアからの移民。政治的な迫害を受けて、家族を亡くしてカナダに移り住んだという設定。重みがあるけれど、説教くさくないのが良い。

2012年7月1日日曜日

最近観た映画『シャーロック・ホームズ』『ドラゴン・タトゥーの女』『スーパー・チューズデイ』『フリューゲルの動く絵』『ミッドナイト・イン・パリ』

3ヶ月も更新をサボってしまった。断片的なことは、ツイッターとフェイスブックに書き留めることが習慣になっているので、ブログは、少しテーマ性のあることをまとめて書こうなどと思っていると、ついつい先送りになってしまう。
映画については、自分の備忘録としての意味もあるので、公開時期からはだいぶずれてしまったけれど、記しておきたい。

『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』
物心ついた頃から、本を沢山読む子供だった。親の教育もあると思うけれど、同じ環境だった妹は読書しなかったから、そういう性質だったんだろう。小学校低学年では、親から与えられた「ドリトル先生シリーズ」「アーサーランサム全集」(『つばめ号とアマゾン号』とかね。)「ケストナー全集」(『二人のロッテ』とか)で、高学年に読みふけったのが、シャーロックホームズシリーズだった。当時は、好きになった作家やシリーズで文庫本か、図書館で、手に入るのは全部読んでいた。中学生時代に太宰治と司馬遼太郎を読みあさったのを最後に、小説から人文科学系の新書に興味は移っていったけれど。
シャーロックホームズは、英語の勉強になるかと思って、短編集を英語版も買ったりした。ホームズファンはマニアックで熱狂的なファンがたくさん居るので、ファンのうちには入らないかもしれないけれど、ベーカー街のホームズの部屋には、イメージがある。勝手に浮かぶ景色を持っている。
ということで、この映画。ともかく思ったのは、ホームズファンは怒るだろうなということ。世界観が全然違う。ホームズとワトソンの男色を匂わせるような台詞もあって、衝撃だった。世界中のホームズマニアは、決してこの映画を許さないだろうなと思うと、その事にどきどきして、映画に集中できなくなった、ホームズとかワトソンとか言わないでくれれば、もっと楽しめたのになぁ。
エンタメ映画としては、良く出来ているし、とても面白いです。

『ドラゴン・タトゥーの女』
傑作だと思う。骨太な構成と練られた脚本。映像の美しさ。申し分ない。デヴィッド・フィンチャー監督はミュージックビデオの印象の方が強かったけれど、改めて映画監督しての実力を思い知った。
ダニエル・クレイグには、これまであまり興味なかったけれど、本作を観て、好きになった。でも、なんと言っても賞賛すべきは、主演女優のルーニー・マーラーだと思う。幼少期に問題を抱える影のある役を見事に演じている。ハードなシーンも多いのだけれど、観た後に、映画『ソーシャル・ネットワーク』で、主人公ザッカーバーグの恋人役もやっていたことを知って、心底驚いた。思いっきりコンサバな女子大生の役だったから。どんだけ芸の幅が広いねんっ!
脚本はミステリーとしても非常によくできている。原作がベストセラー小説だったというのも納得。見逃した人は、DVDで是非!ディレクターズカットで観た方が良いと思う。

『スーパー・チューズデイ』
「天は二物を与えず」という諺があるけれど、ジョージ・クルーニーは、いくつ持っているのだろう?俳優として、監督として、映画プロデューサーとして、どれも成功して、大きな経済力を持ち、米国政界にも影響力があるという。羨ましいを越えている。
本作は、米国の大統領選挙の内幕が鋭く描かれる映画。面白い。主役は選挙参謀。若き参謀が、様々な陰謀に翻弄されているうちに、自ら権謀術数に長けていくという、悪漢ロマン的なシナリオ。
ジョージ・クルーニー演じる大統領候補も、ライアン・ゴズリングが演じる若き選挙参謀も、高い志を持って、政治に取り組み始めるのだけれど、実際に選挙に勝つためには、きれい事では済まなくなっていく。考えさせられるところも多いけれど、テンポの良い展開にハラハラしながら引っ張られていくことになる、よくできたエンターテイメントとなっている。オススメです。

『フリューゲルの動く絵』
一転して、とてもアート的な映画。
中世最後期の画家、ブリューゲルの絵のモデルに多くの民衆をかり出している聖書の世界を再現させるという設定。16世紀に描かれた「十字架を担うキリスト」のシーンが再現されている。摩訶不思議な寓話の世界と謳われているけれど、寓話と言うよりは、芸術家の妄執を感じた。そして画面が非常に美しいのが印象的だった。
 シナリオが練られた作品が好きで、映画は「火薬の量やSFX効果より、脚本が練り直された回数」の方が大事だと思っている僕だけれど、こういう絵画的な映画も好きだ。
これは映画館で観たい類の映画で、小さな画面では、その良さがわかりにくいもしれない。

『ミッドナイト・イン・パリ』
好きな街はどこかと問われれば、迷わずに、ニューヨークとパリと答える。世界中で、色んな街に行ったけれど、今のところ他にいつでも行きたいと思える都市は無い。
20代半ばで初めてニューヨークに行ったとき、このまま留まって住もうかと思った。東京で生まれ育った僕の働き場はここしかないのではと。その時はもう会社を始めてたから、もちろん帰国したけれど、以来、折にふれて訪れている。
パリは京都的なよそ者への冷めた暖かさと、長い歴史に裏打ちされた猥雑さが好きだ。ニューヨークに住めば、多分俺もニューヨーカーだけど、逆立ちしてもパリジャンにはなれない。そんな僕にとって、ニューヨーカーであるウッディ・アレン監督が撮った憧れのパリ映画、しかも過去の芸術家達にタイムスリップして会いに行くという設定らしい、絶対、見逃せない!
そして、期待は裏切られなかった。ウッディ・アレンらしい洒脱な世界を堪能。大好き!

2012年3月17日土曜日

最近観た映画『マリリン7日間の恋』『ももへの手紙』『監督失格』『風にそよぐ草』『HUBBLE』『スリ』『ラルジャン』

最近は、「ライフログ」って言葉をあまり聞かなくなった気がする。IT用語は流行廃りがあるからね。表現はともかく、ライフログ的に、自分の行動記録は、支障が無い範囲で公開して、記録に残していこうと思うようになった。ソーシャルメディアが情報のプラットフォームになる時代に生きていて、コンテンツに関わる仕事をしているし、去年はソーシャルグラフをテーマにした本も出したし、その責任もあるかなと。
読書記録は、メディアマーカーにまとめている。映画は、せっかくブログを始めたので、定期的にまとめて書こうと思っているのだけれど、気付くと1ヶ月以上経って、旬なネタじゃなくなってるな。と反省しつつ、最近観た映画。試写会で観させていただくことも多いので、タイミング良く紹介するようにします。

『マリリン7日間の恋』
今年は、マリリンモンローの没後50周年。イベントなどもいくつか行われるマリリンブームの中、アニバーサリーな映画。『王子と踊り子』撮影中のエビソード。映画業界に憧れて、見習いで現場にいた青年とマリリンとの淡い交流の話。実話ベースらしい。ミシェル・ウィリアムズには、興味なかったけど、この演技は良いね。セクシーで可愛らしい。アカデミー主演女優賞は、メリルストリープだったけど、惜しかったね。構成、編集のテンポ感も良くて、飽きさせない。マリリンファンじゃ無くても楽しめる。お薦めです。3月24日公開。    

『ももへの手紙』
アニメーション(animation)という英語が、日本語からの逆輸入でアニメ(anime)として広まり、日本のアニメを指す言葉として世界中で使われるようになって久しい。その代表の一つは、なんと言ってもジブリ映画だろうけれど、プロダクションIGがつくったこの作品は、そんな日本アニメの様式に則った映画だと思った。
主人公は11歳の少女。父親を失って、母と一緒に田舎の島に移り住んでくる。妖怪達との心の交流があり。と、既視感のあるような、いかにも日本アニメのフォーマット。物語の展開自体に、心踊らされるところは、正直無いけれど、すべてにおいてクオリティは高い。ジブリとの違いは、「作家性」の有無だろう。ジブリは、どんなに様式を踏まえていても、それを凌駕する(あるいは、はみ出る)作家の表現がある。そういう意味で、この作品は「四隅がきちんしたお行儀の良い」映画だ。日本アニメの様式を踏まえた良質の映画が、観客からどう評価されるのかに、興味がある。4月21日公開。興行成績が気になるな。

『風にそよぐ草』

神保町の岩波ホールに、ものすごく久しぶりに行った気がする。『ヒロシマモナムール』も撮った巨匠の作品。難解という訳じゃ無いけど、ちょっとヘンテコなストーリー。拾った財布の持ち主に恋する老人が、ストーカー的な行為をはじめるって、どうよ?
でも、『アメリ』に通じるフランスらしいエスプリは感じたし、映像は綺麗で、嫌な感じはしない。何故か清々しい。不思議な映画だった。


『監督失格』
評判が良いけれど、見逃していたので、下高井戸の名画座的な映画館で一人で観たのだけれど。観終わった後に何ともいえない気持ちが残る。涙は出るけれど、悲しいとか感動とかいう言葉は違う。AV女優と監督の恋愛と、その後の交流に感情移入はしにくい。でも、愛とか、幸福とか、人生とか、親子とか、色んな事に思いを馳せることになるから、心の琴線をひっかかれるということは、良い映画なんだよね。「(エンディング曲の)矢野顕子は素晴らしいとか」「やっぱり、親孝行しなくちゃ」とか、脈略ない独り言を言いながら、下高井戸シネマを後にした。


『HUBBLE 3D 〜ハッブル宇宙望遠鏡〜 』

2年前くらいから、3D映画が広まっているけれど、正直言うと、苦手だ。眼に負担が掛かって、頭痛になりそうだし。眼鏡も邪魔。エンターテインメントビジネスに携わる者として、新技術は大切だし、映画業界の売上にも貢献するのだろうから、できるだけ批判しないようにしているけれど、1ユーザーとしては、少なくとも今の技術の3D映画が、あまり広まらないことを密かに祈っている。
そもそも、小説でも音楽でも映画でも、ヒトの想像力を刺激するのが素晴らしい作品だと思っているので、必然性も無く、3Dを導入している映画には辟易してしまう。
この映画の3Dには、明らかに必然性があった。しかもiMaxシアターの巨大スクリーンの3D。地上600kmの軌道上を廻る天体望遠鏡の修理をする宇宙飛行士のドキュメンタリー。まさに衛星の中にいる気分になり、宇宙の神秘や人間の小ささを実感させられた。星が好きな人には、激オススメです。

『スリ』 『ラルジャン』
10代の頃は、名画座と言われる映画館によく通った。二本立て、三本立てが普通で、名作を上映する映画館が、東京にはたくさんあったけど、随分減ったよね。VHS〜DVDが普及して、レンタルして自宅で観られるようになったからだろうけど。そんな中で、早稲田松竹は独自のキュレーションで頑張っていると思う。ブレッソン監督特集をやっていたので、観に行った。
フランス映画の巨匠。ヌーベルバーグに影響を与えた人と僕は理解しているのだけれど、違っていたら教えてください。60年代のモノクロと80年代の映画を続けて観ることができたので、面白かった。作風ってあるんだなって、当たり前のことを思ったり。主人公もスリとか偽札とか犯罪者だしね。


 以上、7本。
 それにしても、映画って一言でいっても、いろんなジャンル、カテゴリーがあるね。今後も雑食でいこうと思います。

2012年1月14日土曜日

最近観た映画『マネーボール』『モテキ』『ピアノマニア』『Pina』『ミラノ愛に生きる』『ゴーストライター』『ミッションインポッシブル』

年の瀬の慌ただしさに更新できずに、新年を迎えてしまったけど、映画評を7本。相変わらず、雑食感満載ですが。

『マネーボール』
原作はずいぶん前に読んだ。野球好きとして、アスレチックスのGMの存在は注目だ。気付いたら松井秀喜も在籍するようになった。そしたらブラッド・ピッド主演による映画化。プロデューサーも兼任。もちろん観に行きました。

投手を三振や球速では無く、与四死球の少なさで、打者を本塁打や足の速さ、肩の強さではなく、出塁率の高さで評価するという「マネーボール」理論は、原作で読んだときから、興味深かった。近年では、他チームでも採用されるようになったそうだ。アスレチックスの優位性が崩れてしまったという皮肉な話。
『メジャーリーグ』みたいな、単純明快なスポーツ映画とは全然違う。大リーグのGMやスカウトもリアルに登場するけど、基本的には、大人の男を描く人間ドラマ。含蓄のある良い映画だった。
興行的には苦戦してるみたいだけど、とてもいい映画ですよ。スポーツ映画では無く、人間ドラマだというのを宣伝的にも打ち出しせばよいのになと思った。

『モテキ』
すごく良かった!「J-popミュージカル」というキャッチコピーもあったけど、懐かしい曲をちりばめている、「反則!」と思うくらいの堂々たる盛り上げ方。大根監督とは、まだ彼が、堤幸彦さんのアシスタントだった頃に、仕事をご一緒したことがある。何かを秘めている印象は若い頃からあったけど、素晴らしく才能が開花!
ツイッターの使い方が、こんなにリアル(ピント外れで無い)のは、テレビドラマなど含めて、初めてじゃ無い?若者の生態を押さえているよね。ナタリーのTAKUYA社長は、あんな女好きじゃ無いけどね^^

ホイチョイプロダクションが、流行の真ん中にいた頃の『私をスキーに連れてって』を思い出した。2011年の東京のカルチャー&ライフを知りたければ、これを観ればいいという映画。この映画を観て、理解できない部分があれば「オジサン」という踏み絵にもなっているね。
興行的にも成功しているようだけれど、宣伝的な打ち出しで、4人の主要女優を同列に打ち出して、「美女達に翻弄されるモテキが突然きた主人公」というイメージにしたのは正解だったと思う。実際は、長澤まさみとのラブストーリーなんだけどね。前述の『マネーゲーム』は人間ドラマなのに、スポーツ映画っぽい打ち出しにして、苦戦しているのと好対照。

『ピアノマニア』
ウィーンに住む超一流、ピアノ調律師のドキュメンタリー映画。素晴らしい。ピアノが好きな人は、是非、観て欲しい。1月21日公開

ピアニストにとって、調律師というのは特別の存在だ。よほどのことが無い限り、クラシックの著名ピアニストでも、自分のツアーにピアノを持ち運ぶことは珍しい。山下洋輔さんがエッセイの中で、会場にあるピアノに「折り合いをつけなければいけない」ピアニストは、自分の楽器を偏愛する管楽器奏者やギタリストとは、違う性格が形成されると書いていた。
演奏する楽器別の性格の違いは三谷幸喜さんの舞台『オケピ』でも描かれていたのを思い出した。
この映画では、レコーディングの様子も丹念に紹介されていて、興味深い。ピアニストと調律師の会話は、別世界の話のようで、目の前で聞いていても魔法使いの言葉のような感じがする。以前、ジャズピアニストのマネージメントをしていたので、何度も立ち会っているけれど、ピアニストと調律師の関係は独特だ。でも、確かに音が変わっているのはわかる。でも、一流料理人の食事を食べても「おいしい」しか言えないように、「いい音だな」としか表現できないけど。
試写会会場のトッパンホールの音響も素晴らしかった。こういう素晴らしいホールがあるのが東京の文化力の高さだなと、改めて確認した。

『Pina〜ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』
音楽を生業にしていなければ、アート鑑賞を趣味にしていたのではないかと思う。「フィリップジャンティカンパニー」「ブルーマングループ」「山海塾」は好きです。ポピュラーミュージックを作って売るという商売をやっていると、アート作品を観ていても、なにか「盗める」ところがないか、ポップスに応用できないかと、知らず知らすに考えてしまうし、趣味とは思いづらい。ちょっと「卑しい」けど、仕方ないなぁ。

でも、ピナバウシュは、特別にリスペクトしている。人間の根源的な生命を感じさせる舞踊、そのまま凍らせて、美術館に飾りたいような美しい構図。
眼鏡を掛けて観ていると頭痛がしてくる気がして、3D映画はあまり好きじゃ無いけど、この作品は3Dでつくってくれてよかった。
日本の舞踏家、故大野一雄さんについても語られていて、故人の評価の高さを確認する。
2月24日公開。清流で心が洗われる気持になります。激オススメ

『ミラノ、愛に生きる』
大人の映画。美しさに溢れている。
名家の婦人が、息子の友人と恋に落ちるというと下世話な話のようだけれど、ミラノの名家のお屋敷でのパーティや、サンレモ郊外の風景など、うっとりするほど美しい。
食事とセックスには共通点があるというのは、文化人類学でよく語られているけれど、料理を作ること、食べることが、非常に官能的に描かれているところがすごく良かった。
以前、読んだ本で、アフリカのある民族の習慣では、未婚の男女のセックスは認められているけれど、一緒に食事をすることは禁忌とされている、と書いてあったのを思いだした。
ヨーロッパのカルチャーや絵画的な美しさを持った映画が好きな人には、強くお薦めします。年末から公開中。

『ゴーストライター』

観た映画は、ツイッターやフェイスブックだけでなく、ブログにまとめて書くのを去年から始めている。
この映画は、たまたまた書き忘れてた。
重厚で良質な映画。昨年の映画のベスト3に挙げている人が多いのもうなずける。

個人的には英国首相とその自伝のゴーストライター、そこに起きる陰謀という設定のリアリティに今ひとつ入り込めなかったけど、観る価値のある映画だと思います。

ちなみに、2011年の僕のベスト3は、
1)『ブラックスワン』
2)『マイバックページ』
3)『ゲンズブールと女達』
にしてみました。

その他の昨年観た映画はこちら。2011年は豊作だった気がする。

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル


そして、年明け一本目に観た。豊島園のiMAXシアターに初めていったけど、迫力満点だね。スクリーンが大きくて、こういう映画にはぴったりだと思う。
若い頃のトムクルーズは興味なかったけど、最近は、徹底したプロ根性をリスペクトしたいと思う。これぞ、ハリウッド映画という感じの大仕掛けでスリル満点。こういう楽しみも映画の醍醐味だと思った。


今年もよい映画をたくさん観たいと思います!

2011年11月7日月曜日

最近観た映画〜『tree of life』『猿の惑星 創世記』『ガザを飛ぶブタ』『素敵な金縛り』


最近と言いつつ、ずいぶん幅があるけど、4本。
映画は、観たらすぐ、書かないと、タイミングを逃すよね。と、反省しつつ。

『ツリー・オブ・ライフ』
ツイッターでも話題になっていた映画。意見を聞かれて「よい映画だと思うし、嫌いじゃないけど、他人には薦めづらいな」とツイートした。
父と子供の葛藤に、恐竜の親子を重ねてるのもわかりやすくないし、キリスト教的な感覚も前提になっている気がするし、全体的に重苦しさはあるし、結構長いし(138分)というのが、薦めにくい理由。
同時に、良い映画だなと思うのは、監督がしっかりとしたイメージを持っていて、それが実現できている気がするから。
2時間以上の時間をテレンス・マリック監督に「支配」されてしまった。この「支配」は、重苦しいんだけど、心地よさがある。グレン・グールドやセロニアス・モンクのピアノソロを聴いたときに感じる「支配感」と似ているなと思った。

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』

宇宙で漂流してたどり着いた、猿が支配する惑星が、実は未来の地球だった。というのは、今更ネタバレと言う必要もないだろうけど、何故、地球がそうなったかというのが、今回の「創世記」バージョン。
よくできた構成とシナリオ、そして、今更だけど、本当にリアルなCGの技術で、すごくリアル。人間社会の弱さも描かれていて、様々なことを考えさせられる。
主人公は、愛情と正義感が溢れる人物として描かれているけど、結局、この人が、個人プレーで、勝手に研究したことで、人類を滅亡させたんだよね。
エンタメとしてレベル高いです。

『ガザを飛ぶブダ』
 素晴らしい!
イスラエルが長期にわたって「占領している」パレスチナのガザ地区が舞台。主人公はパレスチナ人の男と占領地にいるロシア系ユダヤ人女性。そして、突然現れたブタ。イスラム教徒であるパレスチナ人にとってブタは不浄だし、ユダヤ教徒にとっても、忌避すべき存在。
フランス人的なエスプリに溢れてるけど、独りよがりてはない。 難しい社会状況を笑いに変えながらリアルに描いている。
宗教的対立も相対的に、そして愛情ある目で捉えて、くすっと笑える。久々に良い映画を観た気分。
東京映画祭(TIFF)で観客賞をとった。まだ配給決まってないみたいだけど、是非、上映して欲しい。もう一度観たい。

『素敵な金縛り』
絶賛上映中、大人気の映画。 
演技力の高い役者が多数出演。深津絵里と西田敏行、阿部寛と中井貴一と巧い人がたくさんという印象。浅野忠信もすごくよかった。
エキストラに近い端役が超豪華なのも、三谷作品の特徴だよね。ぜいたくーって思いながら、なんか楽しい。
物語の展開もテンポ感良く、笑いながら楽しめる。幽霊がいなくなってからラストまでは、ちょっとくどかったけど、そこにも味わいはあるしね。
フジテレビ×東宝という日本の大メジャーは、何となく敬遠しがちだけど、今回は、映画館で観て良かったな。

『モテキ』も観たいんだけど、タイミングを逃しているな。

 それから、DVDで観た『LOVE ACTUALLY』は、凄く良かった。
60年代の海賊ラジオ局を描いた『パイレーツオブロック』のリチャード・カーティス監督の代表作というので観てみたんだけど、群衆劇として最高のシナリオ。いくつものラブストリーが折り重なっていくシナリオが素晴らしいし、気持ちの良いハッピーエンド。デートムービーとしても鉄板。



2011年8月21日日曜日

園子温監督の傑作『恋の罪』と円山町の思い出

 

 1980年代後半、大学には全く行かなくなっていたけど、学生証は持っていた頃、僕が最初に「事務所」として、部屋を借りたのは、渋谷の円山町だった。今でこそ、ライブハウスや映画館が建ち並んで、華やいだ場所になったけれど、その頃はまだ、ラブホテル街とその周辺という怪しいエリアだった。百軒店商店街というアーケードをくぐって、ジャズ喫茶やロック喫茶の前を通り、小径を入ったところにある、今にも壊れそうな木造のアパート、3畳ちょっとくらいのスペース。知人からのまた借りみたいな形だったけど1年半くらいで、取り壊しを理由に追い出された。

 園子音の最新作『恋の罪』1990年頃の渋谷円山町が舞台だ。実際に起きた殺人事件から触発されたオリジナルストーリー。映画で登場アパートのイメージ元は、もしかしたら僕たちが借りていたところかもしれない。追い出された後も、かなりの間、建て直しされずにいて、前を通ると無人になっていたのを覚えている。

 その頃に「立ちんぼ」と呼ばれる娼婦が、路上に並んでいたというのは、ちょっと誇張だけど、隠れて少しは居たと思うし、怪しいマンションの一室を借りた風俗営業が盛んだったのは間違いない。電話ボックスに小さなチラシがたくさん貼られていて、ラブホテルに出張させるのは盛んだったようだ。

 戦前から、娼婦街(それも公営の「赤線」では無く、「青線」街)だったらしいから、年季の入った、怪しい雰囲気を醸し出していた。今は、ほとんど無くなってしまった、ジャズ喫茶やバーがあって、高校時代からよく通っていた。そんな僕が観ても、あの頃の街の空気が見事に描かれている。


 3人の女性の生と性と死の物語、とまとめてしまうのは、あまりにも陳腐だろうか?恵まれているように見える彼女たちが、自分が手に入れられない何かを求めてもがいてる。

 水野美紀、富樫真、神楽坂恵の主演女優三人が、素晴らしい。文字通りの体当たり演技だし、女性の心の奥底が見えそうで、見えない、そんな凄みと深みがある。

 園監督は、男性目線で女を語らないようにシナリオを書いたと言っているけれど、その通りだと思った。女の怖さと強さと、言葉にできない真実がある。強烈なエロスだけれど、半端な男には勃起が躊躇われるような、大胆な女の性。


 詩人でもある園監督の台詞は、言葉の一つ一つに陰影がある。引用されている田村隆一の詩は、既知だったせいか個人的にはそんなに響かなかったけど、女性達が叫ぶ言葉は、心に刺さった。「オマエは、自分できちっと、ここまで堕ちてこい」って凄い台詞だと思わない?

 映画でしか描けない世界。そして、もしかしたら日本人にしか描けない、けれでも普遍的な、映像世界をつくりあげてくれた園子温監督に脱帽。絶賛。

 海外の映画祭でも好評だったようだし、試写会も毎回、座りきれないほどの盛況ぶりらしい。


 普段、ハリウッド映画とアニメしか観てない人には、刺激が強すぎるかもしれないけれど、観る価値がある映画です。デートで女性を誘うのは、かなりチャレンジ。大成功か失敗か、はっきり結果が出るでしょう。女性が男の品定めをするのにはいい映画かもね。もちろんR-18指定の成人映画です。1112日公開だって。


 観逃していたを反省して、今年初めに公開された同監督の前作『冷たい熱帯魚』DVDで観た。

 こちらも凄い。壮絶という意味では、こちらの方が過激。食事の前後に観たりしない方がいいし、精神的にも「持って行かれる」可能性もあるから、観るシテュエーションを考えた方がよいと思う。不快なんだけど、惹かれるという感じ。セックスと殺人シーンが続くのに、何故か詩情がある。本当に園子温監督の世界は独自だな。


 こんな監督が日本から輩出できているのは、日本文化の豊かさとして誇っていいと思う。


2011年8月19日金曜日

最近観た映画『アンダルシア』『コクリコ坂から』『GET LOUD』あと「名和晃平展」

『アンダルシア 女神の報復』
 自宅でテレビをつけっぱなしで観なくなって久しい。スポーツ中継やニュース以外は、仕事と関係のある番組以外は、ほとんど観ない。職業柄、威張れることでは無いし、忙しいというのもあるけれど。

 そんな中で、久々に録画して毎週観た連続ドラマが『外交官 黒田康作』だった。テンポのよい展開と、伏線を張り巡らせて、少しずつ謎が解けていくシナリオが面白かった。織田裕二の新境地のキャラクターもよかったし、草刈民代や近藤正臣、岩松了などの助演陣も光っていた。

 なので、続編的な位置づけの『アンダルシア』は、楽しみにして観にいった、『黒田~』の前に公開された劇場版『アマルフィ』はDVDで観て面白くなかったけれど、今度は違うだろうと。
 期待は見事に裏切られた。面白くないです。脚本がイケてない。物語の展開に驚きが無いし、気の利いた会話も無い。黒木メイサが美しい服を着るわけでも無いので「サービスカット」もない。『ツーリスト』のアンジェリーナ・ジェリーと比べるのは酷かもしれないけれど、見所が見つからない、久々に空振りの映画だった。予算も手間も掛けただろうに、どうして、こういう映画ができるのか不思議だな。


 実は、映画館でジブリ映画を観たのは、もしかしたら初めてかもしれない。宮崎駿アニメは、高校生の頃に観た『天空の城ラビュタ』や『風の国のナウシカ』から大好きだ。ブームになったからって、そっぽを向くほど、へそ曲がりではないつもりだけど「まあDVDで観ればいいかっ」って、毎回してきた気がする。そんな反省も込めて、今回は劇場に。

 宮崎吾朗監督は、宮崎駿の息子さん。偉大な父を持つジュニアが同業者になるのは、本当に大変だと思う。演者なら知名度や人気が武器にもなるけれど、作り手だとシビアに実力が問われて、誤魔化しは効かない。

 いい意味で、ジブリ的な作品になっていたし、佳作だと思う。そろそろ「宮崎駿の息子」では無く、「宮崎吾朗監督」として評価してあげたい。
(それにしても、せめて苗字だけでも換えればいいのにね?そういうことをやらない潔さも嫌いじゃ無いけど。)
 映画は、昭和30年代後半の横浜の歴史ある高校が舞台。『三丁目の夕日』の漫画&映画が典型的だけど、東京オリンピック前後の日本って、日本人にとって一つの原風景になっているんじゃないかな?厳密に言うと僕は生まれる前だけれど、子供の頃の記憶と重なる部分はある。ちょうど高度成長の後期で、社会のインフラが揃ってきて、日本人の気持ちにも余裕が出てきた頃からかもね。

 今更、薦める必要も無いほど有名な映画だけど、良いと思いました。ジブリの世界に浸ると、心洗われる気持になるね。過去作も一通り観なおそう。


 Yeah! Great! で終わらせてもいい? そんな気分。


 三世代のスーパーギタリスト。プレイだけで無く、思想性も含めて総合的な評価が高い3人。レッド・ツェッペリンを含め、50年近いキャリアのジミー・ペイジ。U2のジ・エッジ、そして、1997年にホワイト・ストライプスでデビューしたジャック・ホワイト。彼らの自分の音楽遍歴とギター観を肉声で聞くことができる。ラストシーンの3人のセッションも素晴らしい。

 音楽好きは、絶対に観るべきです。ギターマニアは、ヨダレが出るからハンカチを忘れずにね。9月9日公開。そうはいっても、万人受けの映画では無いから、公開直後に観ることをお勧めします。見逃すのは惜し過ぎる。

 そういえば、この映画は、フジロックで先行試写会をやるのを知って、観られなくて残念とツイートしたら、配給会社の方が、それを見つけて、試写会の案内を送ってくださいました。ツイッターをやってて、良かったと思った^^;

 


 映画じゃないけれど、東京都現代美術館の名和晃平展のことも。

 最近、とても注目されている現代美術家。今回の展覧会では、渋谷の西武百貨店ともコラボしていて、すごくよかった90年代の文化の香りがして、かっこよかった頃の西武みたいだった。渋谷シードホールや池袋スタジオ200というオルタナティブスペースで、毎週公演が行われていた時代。

 東京都現代美術館での展示もすごくよかった。素材を活かして、既成概念を壊し、美術というフィールドでしかできない表現をしている。新しい価値観を提示している態度は、ちょっと口幅ったいけど、自分がコンセプトを立てて新人アーティストを世に出すときのマインドと通じる気がした。村上隆さんをはじめ、現代美術家の方が、新人の音楽家よりもシビアで逞しいよね。甘やかしちゃいけないなと反省もさせられつつ、刺激と元気をもらった。



 ということで、激オススメです。828日までやってます。


2011年8月4日木曜日

極私的タイ論。タイ好きは、ダメンズ好きと似てる? 〜「ハングオーバー2」を観て、バンコクについて書きたくなった。〜

「ハングオーバー2」を観た。独身最後の夜に男友達が集まって馬鹿騒ぎをするのだが、
記憶が無いくらいハメを外して、事件を起こしてしまうというコメディ。好きな映画だ。
前回は、ラスベガスが舞台だったけれど、今回は花嫁がタイ人と言うことでバンコク。
映画自体は、前作以上のハチャメチャで面白かったけれど、そこで描かれているバンコクが矮小化されていて、映画は面白かったんだけど、大好きな街だけに、ちょっと悲しかった。リアリティを求める映画では無いけれど、そんな偏見で捉えるなよって思ってたら、タイについて書きたくなった。

「ハングオーバー2」で出てくるタイは、ごみごみした町並みと、オカマのショーがフューチャーされて、少し前のプロトタイプの東南アジアの都市という感じ。
(後半の重要なシーンででてくるビルの屋上の絶景レストランは、有名な「シロッコ」だと思う。)

僕は、オーディションで選んだ16歳のタイ人女子高生を日本でシンガーとしてデビューさせたという珍しい経験を持っている。(その過程は誠ブログに書いたので、こちらをご覧ください。)
CDリリースやフェスティバルへの出演等、音楽活動をしただけでなく、タイのアーティストとも交流したし、タイのレコード会社や制作会社と直接、契約をして、様々な形で関わった。

その体験を踏まえて、僕なりのタイ観がある。バンコクは、サブカルチャー、都市文化という意味では、今、世界一刺激的なんじゃないかな?
音楽も、バンド系、クラブミュージックなど、幅広く、良い意味で無節操。不良欧米人も多いし、宗教的な禁忌も無い。ゲイが一番のびのびしている街かもしれない。

そもそも、日本人にとって、タイは親しみやすい国だと思う。よく言われていることだけど、
1)西欧の植民地になったことがなく
2)仏教国で
3)王様がいる
というのが、アジアでは、日本とタイだけの共通点だ。
「微笑みの国」と言われるくらい、優しい国民性だし、日本人には付き合いやすいと思う。
ちなみに、今、世界で一番たくさん日本人がいるのは、バンコクだそうだ。数年前にニューヨークを抜いたと聞いた。
大使館が把握している「公式の」滞在者だけの数なので、実際はもっと多いかもしれない。食事も、すごく美味しい。辛いのが苦手な人は、ちょっとつらいかもしれないけど、
タイ料理だけでなく、イタリアンなども安くて、美味しいお店がたくさんある。

 そんなタイに、去年はテロがあった。テロと言っても、イスラム圏の無差別とは違って、当初は牧歌的だった。占拠されているデパート前を歩いたけど、屋台まで出ていてお祭りみたいな雰囲気。後に、お互い引っ込みがつかなくなって、先鋭化していったね。日本の反安保の学生運動とかこんな感じだったのかなと思った。
死者が出たのは、国際的にもイメージダウンだった。空港を占拠したのも驚いた。観光が大きな収入源のはずなのに、国内の政治闘争で大きな損失をつくった。
 自分の仕事にも悪影響があったので、詳しく知りたくなって、タイの政治状況について、タイの友人達にいろいろ取材してみた。

話題の中心である元首相のタクシンは、本当に賛否両論、毀誉褒貶がすごい。話を聞いていて、日本で言えば、田中角栄とホリエモンを合わせたような感じかなと思った。
タイの農村を「改造論」を掲げて、お金をばらまいて、地方の農民から強い支持がある。同時に、旧い経済の仕組みを改革して、経済を活性化させたけれど、その事で旧体制から反発を受けた。王様に対する敬意が足らなかったことも嫌われている理由。価値観のパラダイムシフトをやろうとして、中途で国から追い出された。私欲も強くて、国も豊かにしたけど、私腹も肥やしたらしい。田中角栄+竹中平蔵+ホリエモンという感じかしら?そのくらいの影響力があったと思う。

いろんな話を聞いていて感じたのは、社会としてダメなところも、日本とタイは似ているなということ。既得権益の仕組みを壊せずにいる様子、変な壊し方で不都合がでてる状況が日本をもう少し悪くしたような印象をもった。

長くタイで仕事をしている多くの日本人が、タイ人には「木を見て森を見ない」という特質があると言う。目先の感情論や面子みたいなものに引っ張られて、本質を見失ってしまうことが多いらしい。実際、デモの先鋭化もそういう印象がある。
僕自身、タイの会社とビジネスをしていても、視野が狭くて、半端な感情論から抜けられず結果、その本人も損しているのに気づかないというケースを何度か見た。ずるく立ち回るうとしているなら予測も交渉も可能だけれど、論理を理解せずに、目先の気分で突っ走られると、対処が難しくて困ってしまう。環境をきちんと認識せずに、損な選択をかたくなに選ばれると打つ手が無い。深い嘆息とともに諦める。そんな経験を何度かしている。

正直、ここには書けないようなことも含めて、タイ人やタイの会社からは、理不尽な迷惑を受けたことがあるのだけれど、それでも何故か、タイとタイ人を好きでいる自分がいる。
以前「ダメンズ」と言う、甲斐性の無い男ばかりを好きになる女性のコミックが話題になっていたけれど、そんな気分もあるのかもしれない。暑いところで、辛くて美味しいもの食べていると、「マイペンライ(まあいっか)」と思いがちだよね。シンハービールも旨いしね。

まったく個人的でとりとめの無くなってしまったけれど、タイのことは、今後も時々書こうと思います。違うと思ったら遠慮無く指摘してください。嗚呼、トンローの屋台のバーミーが食べたい!

2011年7月13日水曜日

最近観た映画。名作揃い。〜『八日目の蝉』『奇跡』『ブラックスワン』『ゲンズブールと女たち』

 たまってしまっていた最近観た映画。今回は名作揃いでお薦め感が満載なり。


 『八日目の蝉』
 とても評判が良くて、興行的にも成功しているみたいだけど、確かによくできた映画だ。井上真央(が主役って観終わるまで気づかなかった)スゴいね。永作博美も超熱演。演技力に圧倒される。

 物語が、女のたくましさと情の深さが主題になっていて、男性は影が薄い。女性の女性による女性のための映画って感じ。男って、いい加減で、情けない存在だなって、突きつけられる。「すみません、、。m(_ _ )m」って気持ちにさせられた。
 中絶させられた愛人が、妻が産んだ赤ん坊を誘拐して、逃亡しながら、愛情豊かに育てるが、4年後に捕まる。その娘が大学生になって、、という設定なのだけれど、特異な状況と思わせない迫真性がある。
 残念だったのは、ラストシーン。エンディングで主題歌「Dear」(中島美嘉)が流れるのだけれど、感動が台無し。こみ上げてきた涙が引いてしまった。歌詞がある事で、イマジネーションを狭める事ってあるなと、音楽プロデューサーとして身につまされた。曲自体はJポップとして、とてもよくできている作品なだけに、よけいに残念。ギョーカイ人としては、もしかして何かご事情がおありかもとご推察申し上げるけれど、作品の傷になるのは、やっぱり駄目だよね。イメージソングとしては素晴らしいのだし、TVスポットCMで散々、聞かせてあるんだから、ラストはオーケストラバージョンで始めれば良かったのに。インストルメンタルでドラマと少し馴染ませてから、歌が入ってくれば、随分印象が違ったと思う。


 『奇跡』

 これも友人たちから評判が高かったのだけれど、スゴく良かった。僕は、子供と年寄りが主役の映画は、敬遠しがち。そもそもの設定が「反則」という気がするし、お涙ちょうだいにしようとしている?って感じ。もう一つ告白すると、是枝監督の世界も、あまり好みじゃない。小説家の文体のようなものが、映画監督にもあると思うんだけれど、その「文体」が、肌に合わないんだと思う。そんな僕が、すごく良いというのだから、名作だよ。
 上演時間が127分でちょっと長い。人間関係やタイトルの「奇跡」何を指すのかがわかるまで、最初の30分間は半分位に編集すれば良いのにと思うのだけれど、説明を省いて、淡々と描くのが是枝流なんだろうね。認めざるを得ない。
 子役達の演技が不自然さが無く、抜群。周辺の大人の俳優陣も好演。オダギリジョーと大塚寧々もよかったけど、鹿児島の実家の祖父母が、橋爪功と樹木希林というのが、贅沢だ。
 淡々として、特に事件の無い映画が、興行的にも成果を収めるのは良いことだと思う。九州新幹線の開通の話なので、JRとはタイアップしているみたいだけど(裏事情は何も知りません)全然、嫌みじゃなく良い形だと思う。クライマックスのトンネルとか実在するのだろうから、観光名所になるよね。地方振興に映画が貢献する例が増えるのは嬉しい。


 くるりの音楽も素晴らしい。前述の『八日目の蝉』と違って、エンディングで曲が掛かると、ぐっとくるのは、音楽家と監督の距離が近くて、必然性が濃いからだろう。本編の中でも、モチーフが使われているしね。
 ということでオススメです。


 『ブラックスワン』

 大名作!アカデミー賞作品賞は、何故、これじゃなかったの?と思った。鬼気迫るナタリー•ポートマンの演技は歴史に残るレベルだから、主演女優賞は当然として、作品としても、『英国王のスピーチ』より、断然こちらを推したい。って、もう遅いけど^^;
 ニューヨークのバレエ団で主役に抜擢されたバレリーナが、ものすごいプレッシャーを感じて、様々な幻覚も見る。幻覚のシーンは、ホラー映画のような怖さ。心身ともに追いつめて技量を磨いていくバレリーナのストイックさが、よく描かれているのだけれど、この感覚は、すべての芸事に通じると思う。本番前は自分を追い込んでいくのが、表現者というもの。音楽業界でもスタッフの条件の一つは、ナイーブになっているアーティストと同じ楽屋に居られるかどうかだ。何かあればフォローするのは、当然だけど、黙って近くに居ても、アーティストに気を遣わせない存在、関係性になるのは、マネージャーには、マストの資質だ。僕は冗談で「俺たち危険物取扱主任一級の免許を持ってるみたいだよね。」と言っている。


 そういえば、演出家の鈴木裕美が「翌日に本番や大事な稽古のある俳優は気をつけて」とツイートしていた意味が分かった。情緒豊かな女優や歌手が見たら、主役に感情移入して食あたりのように、「アタって」しまっても不思議は無い。決して悪い事ではないけれど、翌日の表現には支障があるかもね。


 子役出身の大女優は少ないと言うけれど、ナタリー•ポートマンは、着実にハリウッドを代表する女優の一人になるだろうね。記念碑的作品。特に、舞台と並行して進むラスト15分は、最高。
 音楽は、クリント・マンセル。「白鳥の湖」の音楽の変奏でつくられていて、非常にレベルが高い。作品に求心力を与えている。チャイコフスキーの曲が元ということで「作曲賞」には資格がなかったらしいけれど。
 蛇足だけど、もしこれが日本映画だったら、バレエシーンは吹き替えだろうなと、ふと思って、寂しくなった。ナタリーは8割以上のシーンを踊っているそうです。っていうか、全部かと思ったよ。全然気づかない。
 以上、絶賛です。もう一度観たい。


 『ゲンズブールと女たち』

 今回は、褒めてばかりだけど、これもスゴく良かった。
 セルジュ・ゲンズブールは、言わずとしてたフランスのソングライターでシンガー。プロデューサーとしても、多くのシンガーを世に送り出している。たくさん有名女優、歌手とも浮き名を流しているのだけれど、そのゲンズブールの人生を描いた作品。
 全編で、ゲンズブールの歌が使われていて、素敵な「音楽映画」でもある。僕は、シャンソンって、古くさい印象で興味なかったけど、これを観て、初めて良いと思った。言葉もとても大切な音楽だから、フランス語が少しでもわかると、もっと楽しめるのにと悔しい。歌っているシーンが物語と関わっているので、歌詞も全部字幕で出ているんだけど、この日本語訳がとてもいい。(古田由紀子さん)自然に入ってきた。おそらくスゴくレベルの高い翻訳作業なのではないかと推察した。
 ただ、シャンソンを本当に楽しむには、ある程度のフランス語の素養は必要だよね?そのくらい、言葉と旋律が結びついている。Jポップは、日本語の伝統的な発音をある程度壊して、つくってきた歴史があるよね?外国人が日本語歌詞で歌うのをディレクションすると気づくことだけど、母音の発音を相当変えても、Jポップとしては不自然じゃない。桑田佳祐以降かなと思うけれど、母音部分を「ア」でも「エ」でも「イ」みたいに発音しても、文脈から類推してくれる歌なんて、他の国ではあり得ないんじゃないかな?フランス語に殉じたシャンソンとの違いを知って、Jポップ、Jロックが海外でも受け入れられるのは、日本語の発音を曖昧でもよくしたこと(つまり、日本語ネイティブの語感を知らなくても歌のニュアンスが楽しめること)と、関係あるんじゃないかと思った。まだ、ジャスト思いついただけだけど。今後、意識して考えてみたい。


 レティシア・カスタが演じるブリジットバルドーも、ルーシー・ゴードン演じるジェーン・バーキンも、スゴく似てた。写真で見る本物より本人っぽい感じ。もちろん主役のエリック・エルモスニーノもめちゃリアル。
 美しい女性と美しい音楽にが溢れる映画らしい映画。醜男でユダヤ人なのが、ゲンズブールのコンプレクッスだったと言われているけれど、幸せな人生だよね。無頼派で無軌道な人生だけど、名曲もたくさん残したしね。これは、没後20年記念映画らしい。
 フランス映画だからだろうけど、それにしても煙草を吸い過ぎ。この映画の中で、ゲンズブールは何本、吸ったんだろう?脳梗塞で倒れた入院先でも吸ってたし。



 『美しき棘』

 フランス映画祭で上映された作品。新進女流監督の作品らしいけど、たぶん失敗作ないしは、意欲作?
 パリを舞台に、女子高校生の悩みみたいなものを描いているのだろうけれど、現代フランス事情を知りたい人や、欧州の若手映画監督を押さえておきたいというような人以外は、観なくていいですっていう感じ。
 というか、日本では公開されないんじゃないかな。



 以前は、誰かと約束しないと観たい映画を逃していたけど、最近は、隙間時間を使って、映画を観るのが上手になってきた。いろんな事を考えさせられ、異文化に触れ、感性を刺激されって言葉にすると、こっ恥ずかしいけど、映画を観るのは続けよう。
 今後は、できるだけ試写会か公開直後に観て、即、ブログでも紹介するようにします。情報としては遅すぎるよね、ごめんなさい。

2011年7月8日金曜日

最近観た映画『マイ・バック・ページ』 『somewhere』 『引き裂かれた女』 『悲しみのミルク』 『劇場版 神聖かまってちゃん』

映画の記録はまとめて書こうと思っていたら、随分、時間が経ってしまった。本数もたまっちゃった。
最近、ブログを読んでくれる人も増えているので、映画についても参考にしてもらえるように、できるだけ試写会か公開直ぐに観て、テンポよく書くようにしよう。


『マイ・バック・ページ』
久々に日本映画を観て、ガチンコで感動した。
全共闘の運動家(松山ケンイチ)と、新米新聞記者(妻夫木聡)が主人公だけど、学生運動には、思い入れは無い。全共闘世代には煙たい印象。若い頃は酒席とかで、下の世代として「世の中を悪くしたのはお前らなのに、なんでそんな偉そうに語るの?」て、漠然と思ってたくらい。
山下監督は、僕よりももっと若い。この映画は、ジェネレーションは関係なく、共感できる内容だと思う。過激派と呼ばれ始めた頃の運動家の底の浅さと、メディアや警察の対応など、昭和40年代前半の世相が上手に描けている。
でも、僕はこの映画は、もっと普遍的な魅力があると思う。青春という言葉だとあまりにも陳腐だけれど、誰もが持っている心の奥に疼いているほろ苦い何かを刺激してくる。泣きそうになった。正直に言うと、ちょっと泣いちゃった。
噂によると、興行的には成績がよくないらしい。おそらくはこの作品に思い入れがあるのだろう、人気と実力を兼ね備えた俳優陣が熱演している。山下監督は、前作『リンダリンダリンダ』も素晴らしかったし、最近の日本人若手監督ではピカイチだと思う。DVDでもいいから、みんなに観て欲しいな。好きな映画ほど、言葉で伝えるのは難しいんだけど、これは、マジで、絶賛です。オススメしたい。


 『somewhere』 
 以前、『Lost in translation』を観たときから思っていたんだけど、ソフィア・コッポラには、是非、ミュージッククリップを撮ってもらいたい。予算は、スゴくかかりそうだけどね^^;

 なんと言っても、コッポラの娘だから、子供の頃から超一流のクリエイターや、ハイセンスな物に囲まれていたんだろうね。映像の感覚が、「お洒落感」にあふれている。

映画の感想を男女で分けるのは不適切かもしれないけど、男的に言うと「本当に映画つくりたいの?」って疑問がある監督でもある。この映画も、全然、感動はしないし、感情移入もできないんだけど、「雰囲気が素敵」という意味では、100点。
家庭に不適合で女性にモテまくる俳優なんて、自己投影してもよいような主人公なのにね。「リアリティが無い。でも、別にリアリティなんて無くていいのかもね?」という感想です。ヒネクレタ感想でごめん。でも、多分、次作も観るよ。


『引き裂かれた女』
 すごく良かった。
フランス映画らしい「哲学的」な部分が、恋愛に上手に集約されている。
設定自体はありふれている。美しく奔放な娘が、強く求愛する大金持ちの息子よりも、親子ほど年の離れた男を愛してしまうという話。  「引き裂かれた女」のフランス語のニュアンスまではわからないけれど、このタイトルには、いろんな意味が込められているのだろうね。
主役のリュディヴィーニュサヌエが、無茶苦茶かわいい。だいぶ惚れました。


『悲しみのミルク』
何と、ペルーの映画。
「東京エスムジカ」というエスニックベースのJ-popグループを考案した位だから、欧米以外のカルチャーに興味があるんだけど、そんな僕も、さすがにペルー映画を観たのは、初めてだと思う。
観た後に、女性監督だと聞いて、ちょっと意外だった。感傷的な部分の繊細さは男性監督の感覚に思えたから。でも、よく考えたら、ペルーの迷信を信じて、「貞操を守るために、女性器に芋を入れてる娘」なんてエグイモチーフは、男じゃ無理で、女性監督じゃ無いと描けないかと、考え直した。
南米に行ったことは無いけれど、ペルーの貧しさと懸命さがよく描かれていると思う。
全体に、説明的な要素は少なくて、映画らしい映画。オススメです。


『劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ』
 この数年間で、日本の音楽業界、音楽シーンで最も話題になったのは、「神聖かまってちゃん」というバンドだ。ライブでの奇行に近い逸話の数々。ニコニコ動画等を活用したプロモーション。インディーズロックバンドとして、古さと新しさが共存しているのが魅力なんだよね?
この映画も、おそらくは監督が「かまってちゃん」のファンなんだろうなって思えて、好感が持てる。
日本のインディーズバンドには、頭脳警察や有頂天やBUCK-TICKやスターリンや、その他沢山の先達が居て、このバンドも、褒め言葉として、その系譜上に位置づけられるのだと、僕は勝手に思っている。
観客に夢を見せることができるというのが、一番大事なんだと、改めて思ったし、そう感じさせてくれた。映画のカタルシスの在り方も、良い意味でオーソドックスな古さがあった。嫌いじゃ無いよ。


そんな充実の映画ライフだった。あと、DVDで観た二つの映画
『シャネル&ストラヴィンスキー』『最後の忠臣蔵』がスゴク良かった。これもオススメです。

2011年4月10日日曜日

最近観た映画 ~「英国王のスピーチ」「ツーリスト」「アレクサンドリア」「トスタニカの贋作」「ブンミおじさんの森」

最近観た、映画の感想まとめ。

自分のメモとして書いたものをあっさり公開するのが、「スケスケ社会」のやり方なのかなと、いうことで、今後はブログに記録しておこうと思います。


『英国王のスピーチ』

今年のアカデミー賞作品賞受賞作。吃音を持つ国王の次男が、予想しなかった国王の座について、スピーチを話すようになるのに苦労するという話。オーストラリア人のトーキングトレイナーと英国王の心の交流が描かれています。

 映画の典型的な楽しみ方の一つは登場人物への感情移入して観ることだと思いますが、この映画の登場人物に感情移入をするのは、私には無理でした。もちろん悪い映画ではありません。

第二次世界大戦前のイギリスが美しく描かれているし、深い夫婦愛もあるので、アカデミー賞を取らなければ、もっと褒められていたかもしれませんね。良い映画で、そういう意味では批判が多いのは、大きな賞をとった「有名税」という感じでしょうか?

ちなみに、対抗馬と言われて、脚本賞、編集賞、音楽賞の三章を獲ったものの、作品賞を逃した『ソーシャル・ネットワーク』は去年の秋に試写会で観ました。ITmedia「誠ブログ」に感想を書いたので、興味のある方は、こちらをご覧下さい。
フェイスブックの創業者を描いた、面白い映画でした。でも、アカデミー賞審査員の平均年齢を考えれば、作品賞は無理だったんでしょうね。


『ツーリスト』

アンジョリーナ・ジョリーとジョニー・ディップの豪華共演。予告編が、言葉を選ばずに言うと「あまりにバカバカしくて素敵」と思い、観てみたくなりました。
その後、評論家や映画ライターなどのレビューは、どれも惨憺たる酷評であることを知って、ちょっと腰が引けましたが、勢いで観てしまい、とても満足しています。

私は、昔からいわゆる「単館系」の映画を好んで観る傾向があります。できた頃のシネマライズには、毎月通っていました。でも、子供の頃から007シリーズは大好きだったという過去もあります。
ジェームスボンドが、幾多の困難を乗り越えて事件を解決し、毎回必ずナイスバディーのオネーチャンと懇ろになるというオチは、男の憧れだし、究極の非日常を描いています。実際に起こりえない「夢」を見せるのが映画だとすれば、こんな映画もあって良いはず。アンジェリーナは(ちょっと痩せすぎな気もするけど)常にヒールで颯爽と歩いているし、ヴェネツィアの街も美しいです。

デート・ムービーとしても相手を選ばずに、最適だと思います。ということで、世論には逆らって、オススメ^^

『アレクサンドリア』


歴史大作。四世紀のエジプトが舞台。ちょうど、ローマ帝国がキリスト教化し始めた時代に、科学を信じて殉じたという実在の女性天文学者が主人公。

主演のレイチェル・ワイズは、史上初の女性天文学者を好演。美しいです。
大きな予算を無駄に使わずに、丁寧に描かれていて好感が持てます。奴隷との関係など、現代人の眼ではなく、当時の人たちの価値観で表現しているところも良いと思いました。

 物語は、古代の神々を信じる街の貴族たちが、”野蛮”なキリスト教徒達を押さえ込もうとして、逆に敗れ去るという話。知の象徴である大使館を、”無知な”キリスト教徒たちが焼き尽くします。

主人公の最期も含めて、徹底的にキリスト教徒が悪く描かれているこの映画が、なぜカトリックが強い筈のスペインでつくられ、欧米で普通に上映できているのかが不思議。監督が、特に「反キリスト教」という意図は無く、歴史を忠実に描いていることが伝わったのでしょうか?その辺の事情をご存知の方がいらっしゃったら教えてください。

塩野七生著『ローマ人の物語』の愛読者としては、納得できる四世紀の描き方でした。非常に大雑把な表現になりますが、私の好きなヨーロッパはローマ(とギリシャ)で作られたもので、悪いと思う部分はキリスト教教会の影響だというのが、私の西洋史観です。その観点でも、この映画は申し分ありませんでした。
難しい話ばかりになってしまいましたが、娯楽大作としても楽しめますよ。


『トスカーナの贋作』


とても好きな映画です。なんと形容すればよいのだろう。
イタリア・トスカーナ地方の小さな街が舞台です。宣伝文句としては、大人のラブストーリーみたいになるのかもしれないけれど、陳腐で似合わない気がします。
 こういう映画は、説明するよりも、「良かったよ。観てみたら?」というのが正しい態度な気がしてしまいますね。

蛇足的に付け加えると、トスカーナのアレッツオという街の景色が、とても美しいです。映画の楽しみの一つは、美しい風景と人を見ることですよね?前述の『ツーリスト』が一般的な観光ガイドだとすると、こちらは「地球の歩き方」にも載ってない街の駅に降り立ったような楽しみでしょうか?

もう一つ、私自身は、語学力不足で十分には味わえないのですが、英語とフランス語とイタリア語が会話の中でミックスされていて、音としても美しいし、作品に陰影を与えています。ヨーロッパ人ならば、ここも楽しみ所でしょう。なぜ、この言葉はフランス語で言い、このセンテンスはイタリア語なのか、計算されている脚本です。


『ブンミおじさんの森』


東南アジアを仕事のフィールドに入れている僕としては、タイ映画がカンヌ映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞したと聞いて、観ないわけにはいきません。渋谷シネマライズに行ってきました。


 びっくりするくらい、地味な映画です。これに賞を出すとは、さすがカンヌと思いました。タイの田舎が美しく描かれたファンタジーなので、ヨーロッパのインテリが心地よく思うアジアなのでしょう。


 私はバンコクの猥雑な都市文化にタイらしさを強く感じるのですが、確かにこれもタイの魅力の一つですね。死んだ人が育った家に戻ってくるというモチーフは仏教的なので、日本人には飲み込みやすいでしょう。タイが好きの方は要チェックです。


 エンディング曲がタイ語の渋谷系みたいな感じだなと思って聴いていたら、Small Roomという、まさに「タイの渋谷系」を得意とするレーベルの「ペンギンギラ」というアーティストでした。前知識を持たずに行ったのですが、日本にもファンの多い漫画家ポンニミットさんのイラストともコラボしてるし、タイのサブカルチャーフィルムという側面もありますね。


 映画を観てから、検索していたら、アビチャッポン監督のトークショーに関するブログを見つけました。エンディング曲は「高いところから降りてきてください」という曲で、監督は自分には届かない憧憬の気持ちを表したかったとのことでした。




 そんな充実した映画ライフでした。

他には、DVDで『ゲバラ!』と『イングロリアス・バスターズ』を観ました。

『涼宮ハルヒの憂鬱』のシリーズもレンタルで観ています。
これは、自分の中で、「コンテンツの仕事をしている者として、見逃しているアニメを一通りチェックしよう運動」を実施中なので、その一環で借りたのですが、面白いです。そして、この面白さが理解できた自分にほっとしました。
変な言い方ですが、この「オタク的感性」(これだけ多数派になるとこういう言い方も不適切で、単に日本のある世代の感覚というべきでしょう)に共感できたのは、発見でしたし、エンターテインメントコンテンツのプロデューサーとして、自分が「現役感」が持てている気がして、嬉しかったです。シリーズ全部観ようと思います。