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December 04, 2007

「再可決条項」の道理

■ 「自分が衆議院で三分の二を握っていたら、こういう考えは起こすまいに…」という話である。
 □ 新テロ法、世論対策に本腰=再可決封じ目指す-民主
              12月3日21時1分配信 時事通信
 新テロ対策特別措置法案の廃案を目指す民主党が、世論対策に本腰を入れ始めた。参院での法案否決などを想定し、衆院の3分の2の賛成による再可決も視野に入れる与党側をけん制するため、再可決反対の機運を醸成するのが狙い。近く憲法学者らによる研究会を設置、再可決の「理不尽さ」をアピールする提言を発表したい考えだ。
 「これからは情報戦。どううまく国民に訴えていくかです」。民主党の山岡賢次国対委員長は2日、鳩山由紀夫幹事長と会い、世論対策のための研究会設置を提案。鳩山氏も「大切な問題なのでわたしがやる」と即座に応じた。4日の党役員会で設置を決定し、来週にも初会合を開く予定だ。
 再可決をめぐっては、各界の有識者による「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)が先に、「普通のこととして使うべきだ」と提言。民主党が再可決阻止に向けて検討している福田康夫首相の問責決議案についても、否定的な見解を示した。

 そもそも、二院制を採る日本の議会制度の中で、何故、衆議院の優越が明確に位置付けられているのか。それは、「衆議院と参議院の決定が異なるのは、当たり前である」という前提があるからである。本来、衆議院(庶民院)と参議院(貴族院)は、異なる社会階層の利害を代表する以上、こうした利害の相克を収拾するためには、どちらかの決定を優先せざるを得ない。民主主義体制下では、「庶民」の利害が優先されるのが自明なので、憲法でも「衆議院の優越」が位置付けられているのである。件の「再可決条項」も、「予算先議」、「総理大臣指名」と並んで、その「衆議院の優越」を機能させる条件なのである。
 その点、「21世紀臨調」が「再可決条項」を普通のこととして使えと提言しているのは、二院制を機能させる意味からは、別段、奇矯なものでもあるまい。「参議院は衆議院のコピー」ではなく、「衆議院と参議院の決定は異なる」という二院制の「初期設定」に戻った以上、この「再可決条項にも本来の役割が期待されるようになったのである、
 故に、民主党が主張するように、「再可決条項」が理不尽だというのであれば、「衆議院の優越」という二院制の趣旨それ自体が理不尽だという話になる。もっとも、衆議院で多数を制していない民主党にとっては、この「衆議院の優越」も鬱陶しく映るのかもしれないが…。
 高々、「新テロ特措法案」を潰したいがために、民主党は、議会制度の根幹にまで文句を付けようとしている。「焼きが回った」と視るべきであろうか。ところで、民主党研究会に呼ばれる憲法学者とは、誰なのであろうか。こういう合理付けを行う理屈をひねりだすのは、だいぶ険しいことだと思われる。
 民主党は、黙って、「衆議院の三分の二」の制圧を目指したほうがよいと思われる;。それが出来れば、民主党も、次に参議院での優位を失っても、今は理不尽だと唱えている「再可決」を躊躇なくやるのであろうから…。

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Comments

期待を集めたつもりの民主党ですが・・
ちょっと限界ですね。ひとことで言えば

「がっかりだよ!!」

古いネタで恐縮です??
 

Posted by: SAKAKI | December 04, 2007 10:28 PM

安倍政権は何故、テロ特措法を何故07年8月の内に衆院で可決しなかったのでしょうか。しないという事は即テロ特措法を政争の道具にするということですが、当時の安倍政権にはそれに成功する(例えば民主党を割る)目算があったのでしょうか。
テロ特措法を政争の道具にしたのは、安倍政権です。

Posted by: 赤木大介(akakiTaisqe) | December 06, 2007 04:07 AM

雪斎さん

こんばんは。夜中ですが。。。

結局、小沢代表の論文・発言にしても、この度の民主党の批判優先で、対案も出せない(出さない)状況で、再可決が理不尽だという非難にしても、憲法の根幹まで辿りつく問題です。結局、民主党が改憲を目指しているのか定かではありませんがその方が、無理な法的根拠にロジックを組み立てるよりわかりやすいことばかりに思えるのですが・・・。

Posted by: forrestal | December 06, 2007 04:45 AM

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