清沢洌の言葉
■ 「お前がこの国に生れた以上は、国家を愛するに決まっている。が、お前の考えるように考えなくても、この国を愛する者が沢山いることだけは認めるようになってくれ」。
―清沢洌『非常日本への直言』「序に代えて わが児に与う」『清沢洌評論集』(岩波文庫)所収―
清沢洌が書いた文章の中でも、かなり印象的な言葉である。昭和八年三月は、前々年の満州事変、前年の上海事変を経て、日中関係の「不幸な時間」が本格的に始まろうとしていた時期である。清沢の幼い子供が、中国人を観て、「あの人たちと戦争をするのでしょう」と問いかけてきたのに驚いて、清沢は、子供を諭す体裁で文章を書いた。冒頭の言葉は、その文章の一節である、
「自分の考えるように考えなくても、この国を愛する者が沢山いる」と考えない人々、もしくは「自分の考えるように考えなければ、この国を愛していない」と考える人々が、最近、矢鱈に多くないか。昔は、「自分の考えるように考えなければ、平和を愛していない」と考える人々を相手にして、疲れる想いをしたものであるけれども、今は、「自分の考えるように考えなければ、この国を愛していない」と考える人々を相手にして、疲れなければならない。
雪斎には、まだ息子・娘はおろか、妻もいない。だが、先々、息子・娘を持つ身になったら、この清沢の言葉に倣った言葉を自分なりに伝えたいと思う。
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