「また逢う日まで」
■ 60年前に制作された『また逢う日まで 』という映画がある。ロマン・ロランの『ピエールとリュース』を翻案した作品である。主演した岡田英次さんと久我美子さんのガラス越しのキス・シーンが、まことに印象的な作品である。それは、日本映画史において最高の名シーンとされているけれども、むべなるかなである。
久我美子さんは、旧侯爵家の令嬢である。こういう正真正銘の令嬢が、「河原乞食」の世界に入ったことにこそ、戦後という時代の特色がある。芸能界が「河原乞食」の業とみなされなくなるまで、久我さん以降の世代の努力があったと思うけれども、そうしたことを忘れた輩が最近、多くないであろうか。米国のように、「俳優組合」というものでも作って、そこのメンバーでなければ芸能活動が出来ないようにしたら、どうであろうか。薬物などの触法行為を犯せば、即、メンバー・ライセンス剥奪と相成る。「無頼は芸の肥やし」などと甘やかすわけにもいくまい。
たかが芸能ネタと切り捨てるのも簡単だが、彼らの仕事は、日本の「ソフト・パワー」の一端を成している。「のりぴー」逮捕が東亜細亜諸国に驚きを以って受け止められたのは、日本の「声望」には確かにダメージを与えた。そういう視点で、此度の騒動をながめる必要があるのではないか。
さて、『また逢う日まで』は、「自由」、「平和」を終生、考究したロマン・ロランの作品の翻案だけあって、「反戦」のメッセージがストレートに伝わってくる作品である。雪斎は、中学生くらいの頃、これを初めて観た。漫画『はだしのゲン』は、おぞましい印象しか持たなかったが、この映画には、「戦争は理不尽だ」という思いがした。
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