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March 19, 2012

「意識」の世界地図 1

■ 新入学準備の時節である。
 従弟、従妹の子供達が「ピッピカの一年生」になるので、彼らにとって「風変わりなおじさん」らしい雪斎としても、お祝いとして「地球儀」を贈ることにしようとしている。
 何故、「地球儀」かといえば、「世界に眼を向けた大人」になるようにということである。
 ところで、人々の意識の中で、国の「存在感」や「」親近感」を基準にして世界地図を書いたら、それは、実際のものとは相当に懸け離れたものになるはずである。子供のころから今に至るまでを振り返れば、その「意識の世界地図」がどのように描かれたかが判ってくる。「「反米」、「反中」、「嫌韓」といった言葉があるけれども、それは、総て人々の「意識の世界地図」を反映したものでしかない。日本は、どこぞの国とは違って、特定の国々に対する対抗意識や反骨意識を社会全体で植え付けるようなことはやらないので、「意識の世界地図」も結局は、「個人の来歴」を反映したものでしかない。
 たとえば、感動した映画や芸術作品などが一つでも二つでもあれば、その国は、人々の「意識の世界地図」の中で確かな位置を占めることになるであろう。
 雪斎の場合、次のような塩梅になるであろう。
 先ず、アジア・太平洋世界から。
 ● 中国
 実は、中学辺りから、杜甫や李白の詩に触れたりしていたので、本来は馴染みが深い国である。今でも、下手な漢詩を作って遊んでいたりする。
 だが、子供のころ。「この国は暗い…」と思った、当時、中国人が指導層から庶民まで来ていた「中山服」には、違和感だけが残った。「何故、同じような服ばかり着ているのだろう…」と思った。
  ● 台湾
 子供のころ、台湾といえば、「バナナ」であった。
 素朴に「いい国だ・…」と思った。
 大学時代以降は、候孝賢監督の映画世界に耽溺した。
 『悲情城市』は、忘れられない作品である。
 他にも、『恋恋風塵』『冬々の夏休み』といった味わい深い作品がある。
 そういえば、十年くらい前に、台湾で李登輝氏と面談し、氏の見識に感銘を受けた。
 ● インド
 「インドの山奥で修業をして、ダイバ・ダッタの魂宿し…」。
 懐かしい『レインボーマンの歌』である。
 実は、雪斎にとっては、これが最初の「インド体験」である。
 加えて、ゴダイゴの『ガンダーラ』である。
 In Gandhara, Gandhara. They say it was in India .
 「インドには仙人が、いるのだ」と素朴に思った。
 因みに、大学時代、『カーマ・スートラ』を読んだ。
 それは、雪斎の価値意識に最たる影響を与える書となった。誠に深遠な書である。
 ● 韓国
 何故か、「親近感」も「存在感」も感じる機会を得ることのなかった国である。
 唯一の例外は、コリアン・ヌーヴェルバーグの傑作『風吹くよき日』(監督/イ・ジャンホ、一九八〇年)である。
 「形容しがたい泥臭さとエネルギー」を感じさせる作品だった。高校の時分にでも観たのであろうか。
 だが、近時の韓流ドラマやK-POPは、何が面白いのかが判らない。
 「少女時代」や「KARA」といった女性ユニットは、雪斎には、「若き日の夏木マリさんや安西マリアさん、あるいは山本リンダさんが何人か並んでいる…」ようにしかみえないのだが…。
 ● 豪州
 父親が遠洋航海で行ったシドニーの話を折に触れて聞かされた。
 実は、雪斎は、まだ「南十字星」を直に見たことはない。
 ● シンガポール
 一度、ラッフルズ・ホテルに行って、サマセット・モームが愛した「シンガポール・スリング」を嗜んでみたいとおもう。

 このようにみると、雪斎の「意識の世界地図」の中で、台湾やインドの比重は、高いけれども、中国と韓国の比重は高くない。「海からつながっている場所」というのが、雪斎にとっての「親近感」の基準であろう。

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March 09, 2012

震災一年後の「反省」

■ 宮城・栗原にある雪斎の故地の実家は、昨年の震災の折の震度7の地震にも耐えた。
 もう数十年は経っている二階建ての建物である。
 首都直下地震の想定は、震度7に引き上げられたそうである。
 しかも、震源は東京23区東部。江東区在住の雪斎は、「震源の真上」に住んでいることになる。
 流石に怖気づき、東京脱出をちらりと考えた。
 だが…。
 
 日本は、「自然災害の博物館」のような国である。
 世にある自然災害の類は、日本にいれば、大概のものが経験できる。
 地震、津波、台風、火山噴火、豪雨、洪水、竜巻、落雷、豪雪、寒波、熱波、渇水・…。
 こういうものが一つの国の中で全部、起こる。
 だから、
 たとえば、雪斎が金持ちで軽井沢に移ろうとしたとしても、「浅間山噴火を心配しなければなるまい。
 もっとも、今時の日本の資産家ならば、そもそも海外に拠点を移すであろうが…。
 モナコとか、近場だとシンガポールとか。 

 こういう国と「自然災害が余り多くない国」の政治が同じであっていいはずはない。
 たとえば英国である。
 英国は、どのように考えても台風や火山噴火とは無縁な国であろう。
 地震も滅多に起きない。英国史上最大の沿海地震は、北海震源、1931年6月にマグニチュード(Richter scale)6・1を記録したものがあり、英国全土、ノルウェー、デンマーク辺りが揺れたようである。だが、これは、到底、日本には比べられない。

 雪斎は、「マニフェスト」を掲げて選挙をするという有り様は、自然現象に伴う「突発事態」が容易に起こる日本には、ふさわしいものではないと思い始めている。幾ら綿密に「マニフェスト」を書いたところで、「突発事態」が起これば、それに対応しなければならない。民主党内閣の弁護をしてみれば、震災という突発事態のために「マニフェスト」に書いたことが円滑に実行できなかったということになるかもしれないけれども、そもそも、「統治」の本質とは、平時において、決められたことをどれだけ円滑に処理できるかということではなく、有事において、「突発事態」をどのように管理できるかということでしかない。民主党内閣は、そうしたクライシス・マネージメントに明らかに失敗したから批判されているのである。日本では、

 ジョン・メイナード・ケインズが語ったことがある。「一つの土壌で育った植物を他の土壌に移植しようとすると、その植物は育たないどころか、その移植先の土壌を壊してしまうことがある」。一つの国で展開されていた施策は、それを安易に他の国でも行おうとすると、失敗に終わるだけではなく、社会の土壌を壊してしまうことになる。ケインズは、英国での政策が英国ならではのものであることを説いたのである。「ケインズの経済学と米国のケインジアン経済学は別物である」。こうした評も、ケインズの意図を伝えている。故に、もしかしたら、英国に倣って導入した「マニフェスト」選挙も、そうしたものだったのではないか。雪斎は、「マニフェスト」選挙を日本で行う意義については、きちんとした思考を怠っていた。のみならず、過去数度の国政選挙では、当然のように各党の「マニフェスト」の内容に論評を加えていた。「政治に必要なのは、マニフェストに書いてあることを粛々と実行することというよりは、マニフェストに書いていないような突発事態に機敏に対応することである」。こういうことを、もっと口酸っぱく語るべきだったのに、それをしなかった。

 震災後一年である。政治学徒としては、そうしたことも真面目に反省しなければなるまい。

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March 02, 2012

「解散」への極秘会談?

■ そろそろ、動き出したのであろうか。
 □ 極秘会談、民・自に波紋=話し合い解散、連立テーマか
                時事通信 3月1日(木)11時33分配信
 野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁の極秘会談が判明したことを受け、民主、自民両党内では1日、複雑な波紋が広がった。野田、谷垣両氏が消費増税必要論で一致していることから、消費増税関連法案の成立に自民党が協力する代わりに首相が衆院解散を約束する「話し合い解散」を模索したのではないかとの見方も広がっている。
 極秘会談は2月25日に都内のホテルで行われた。これに関し、藤村修官房長官は1日午前の記者会見で「そういう事実はない」と否定した。今後の政局への影響を考慮し、沈静化を図る狙いがあるとみられる。一方、同日昼の自民党代議士会では、谷垣氏に説明を求める声が上がり、同氏は「私が野田さんと会ったという事実はない」と強調した。
 会談内容は明らかになっていないが、関係者によると、消費増税法案の扱いが主要テーマだった。「反増税」を掲げて首相に圧力をかける民主党の小沢一郎元代表の周辺には、民自両党のトップが「消費増税法案成立―話し合い解散」で折り合うことへの警戒感が募っている。一方、民主党幹部は「今、衆院を解散したら(民主党は)ほとんど落選だ。話すとしたら『連立』しかない」と指摘した。
 自民党内では、評価と反発が交錯している。谷垣氏の「対決一辺倒」路線に批判的だった自民党幹部は「自民党が与党になっても消費増税はやらなければならないから、いいことだ」と理解を示した。これに対し、中堅議員の一人は「国会論戦が茶番だということになる。国民を愚弄(ぐろう)する話だ」と谷垣氏を批判した。 

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