国際情勢

April 07, 2012

「外交青書」と韓国の抗議

■ 新年度最初のエントリーである。
□ 「竹島」日本領土は遺憾、韓国が外交青書に抗議
読売新聞 4月6日(金)20時45分配信
 【ソウル=門間順平】韓国外交通商省は6日、玄葉外相が同日、閣議報告した2012年版の外交青書に、日韓が領有権を争う竹島(韓国名・独島(トクト))を日本の領土と記述したことに対し、「不当な主張に深い遺憾を表明する。我々の領土主権に挑戦する、いかなる試みも容認できない」と抗議する報道官の談話を発表した。
 談話はまた、「日本が誤った歴史認識で独島を自国領土と主張するなら、『未来志向的な韓日関係』は空虚な言葉に終わる」と指摘。「日本は国際社会で責任ある役割を果たすことはできない」と激しく反発した。
 外交青書は竹島を「歴史的事実に照らしても、国際法上も明らかに日本固有の領土」とし、「問題の平和的解決のため、粘り強い外交努力を行っていく」と記載した。
 
 相変わらずの反応である。
 ただし、韓国サイドがどのように反応しようとも、竹島領有権、日本海呼称、歴史認識に関する日本サイドの対応は、変わらないし、変えてもならない。故に、この件は、日韓関係の業病として長く続く。
 もっとも、「蒲柳の質」の人物が、養生専一に務め結局は長命を保つことがあるのと同じ理屈で、こうした業病を絶えず認識していることは、日韓関係に惰性や慣れが生じるのを避けることでもある。それ自体は、決して悪しきことではない。
 昔日、韓国は、日本にとっては、政治上も経済上もマイナーな存在でしかなかった。日本は、韓国に対して、「上から目線」で接してきたのであり、それ故にこそ、「泣く子」をあやすようにして韓国に相対してきたのである。歴史認識や領土が絡む摩擦が生じた折に、日本が示した対韓姿勢とは、そうしたものであった。韓国からすれば、日本の「反省」が「反省」として映らないのにも、そうしたことに理由があろう。
 だが、もはや、そういう時代でもあるまい、韓国は、相応の国力を持つ存在になったのであるから、日本も、今後は遠慮なく自らの「国益」を主張すべき段階である。「子供相手のボクシングでは手抜きはするけれども、大人相手のボクシングでは本気で打ち込む」というのと同じことである。その「本気のボクシング」に韓国が耐えられるかは、雪斎には判断する材料がない。日本は、憲法や外交人員・予算の点で、片手を縛ったままの状態で、対韓関係を含む国際政治のゲームを半世紀以上も続けてきたのであるから、その縛りが解けたら相当に「楽しい」ことになりそうである。韓国は、「普通の国」としての日本を相手にしたことはないのである。
 野田佳彦内閣は、外交の面では、「大過なく」振る舞っている。鳩山由紀夫内閣期の外交上の対応が、余りにも禍々しかった故に、野田内閣の「普通の対応」が一層、清々しく感じられるだけかもしれない。武器輸出三原則の緩和は、実に佳き対応であった。自民党が政権を奪回した暁には、前に触れた日本の「縛り」は次々と外していくことになる。雪斎は、その準備を急ぐように、自民党関係者サイドに提言している。

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March 02, 2011

「想定外」の話

■ 実に1か月ぶりのエントリーである。
 ところで、奇妙な話が伝わっている。
 西岡武夫参議院議長が、予算案の「受け取り」を拒否しているのだそうである。
 その背景がうかがわれそうなのが、下の記事である。
 

□ 「鈴をつけるのは?」政局の舞台は参院へ 鍵握る輿石氏の動向
                       産経 2011.2.27 22:02
 前略、輿石氏は27日、フジテレビ系「新報道2001」に出演し、予算案本体と予算関連法案を切り離して採決するという民主党の異例の手法について、こう語った。輿石氏の歯切れが悪いのは、野党が多数を握る参院で、与党が思い通りに予算案と関連法案を可決させるのは至難の業だからだ。さらに、民主党出身の西岡武夫参院議長が「今の内閣の人たちは国会運営のイロハが分かっていない。予算案は歳入法案と絶対セットでないとだめだ」と批判し、混迷が深まっている。後略。

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November 03, 2010

「国後」の仇を「尖閣」で討つ。

■ 今度は、「メドベージェフ・ショック」である。
 だが、実態としては、これは、「尖閣」のとき以上に、日本に対するダメージは少ないはずである。
 ロシアの大統領が自ら「実効支配」の下に置いている土地に出かけて行った。
 それだけのことである。
 「現実の支配」を続けている立場というのは、それほどまでに強いものなのである。
 何がショックかといえば、ロシアが日本のいうことに耳を貸さなかったということである。
 要するに、「日本の言うことなど聞く必要がない」と判断が、ロシア政府に働いたということである。
 そのような判断を促したのは、民主党内閣の体たらくである、

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November 01, 2010

罵倒を切り返す感性―「ひのもと おにこ」

■ 日本経済新聞の最新世論調査によれば、菅直人内閣支持率は、71から40に一気に31ポイント下げたようである。不支持率は、24から48に倍増した。
 この下落幅というのは、余り例が多くないであろう。
 多分、田中真紀子を更迭した小泉純一郎という例があるだろうが…。
 これは、菅直人が「当事者能力」を失ったことに起因する。「学級崩壊」どころか「内閣崩壊」としても過言ではない風景が出現しているのである。それ故に、それぞれの政策課題を前に、それぞれの政治家がばらばらなことを言っている。仙谷由人も、「影の総理」と呼ばれている割には、内閣への風圧を大きくすることに熱心である。
 雪斎は、内閣支持率は40を切れば、余程のことがなければ戻らないという見方をしているので、この内閣も、そろそろ手仕舞いが近いであろうとおもっている。
 菅も仙谷も、罵倒を切り返す能力は相当に低い。だから、「イラ菅」、「イラ仙」と呼ばれる反応をして、却ってボロを出している。両人を含めて、民主党政治家に、ユーモアやエスプリの感性を感じさせる発言が少ないのは、どうしたものであろうか。
 「冷めたピザも、チンすれば旨い」と切り返した小渕恵三の事績ぐらいは、参考にしたほうがいい。

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October 30, 2010

日本鬼子(ひのもと おにこ)

■ 「何をやってんだか…」と思う。
 

□ <日中首脳会談>見送り 野党からは菅政権批判も
            毎日新聞 10月30日(土)0時13分配信
 日中首脳会談が見送られたことで、沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を巡り、日本政府への批判が再燃する可能性もある。自民党の石破茂政調会長は29日夜、毎日新聞の取材に「(中国人船長の釈放を)検察のせいにし、政府の意思を示さないからこういう事態になった」と述べ、菅政権を批判した。
 自民党は中国漁船衝突事件のビデオ映像を全面公開するよう求めており、「中国に配慮しても外交のプラスにはならない」(「影の外相」の小野寺五典衆院議員)として、攻勢を強める構えだ。
 一方、民主党の枝野幸男幹事長代理は29日夜、記者団に「会って話をすることを否定するのは理解しがたい」と不快感を示した。

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October 12, 2010

今後の中国のイメージ

■ 既に色々なところで指摘されているけれども、中国共産党体制の行く末は、次の三つに大別される。
 ① 中国共産党体制が継続する。
 ② 中国が「普通の民主主義国家」に変貌する。
 ③ 中国全土を支配する「統治能力」を持った政治勢力が登場せず、分裂と混沌の状況が出現する。
 雪斎が判断する限り、①と②にも、それぞれ次のようなのパターンがある。
 ①については、「対外態度」で二つのパターンである。
  ⅰ 現在の方向の継続、「覇権主義傾向」の加速、対外摩擦の激化
  ⅱ 「しおらしい」方向へ変化
 ②については、「国内体制」と「対外態度」で四つのパターンである。
  a 中国共産党の「昔日の自民党」化 一党独裁から一党優位へ
ⅰ、「民族主義傾向」の加速、対外摩擦の激化
  ⅱ 対外協調を旨とする「しおらしい」方向
  b 中国共産党とは全く別の政治勢力による支配
ⅰ 「民族主義傾向」の加速、対外摩擦の激化
  ⅱ 対外協調を旨とする「しおらしい」方向
 こうしたシナリオの中で、どれが最も可能性が高く、そして日本にとって望ましいのか。

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September 29, 2010

対中ネガティブ・イメージの拡散

■ 尖閣に関して、中国が南沙諸島・西沙諸島でも騒動を引き起こしている「問題児」である実態が頻繁に伝えられているのは、結構なことである。しかも、それが、「欲深な中国」というイメージの拡散と重なり合っているのだから、中国の被るダメージは、かなりのものになるであろう。
 何分、日本人の価値意識からは、「欲深い」というのは、最も嫌われる性向である。
 『花咲か爺』『舌切り雀』『鶴の恩返し』『金の斧 銀の斧』・…。
 日本の昔話で戒められているのは、この「欲深い」という性向なのである。
 一旦、ついたネガティブ・イメージの払拭は難しい。
 「ソフト・パワー」軽視の帰結であろう、


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September 27, 2010

対中「臥薪嘗胆」の時節

■ 金曜日、八戸に行っていた。母校での講演である。
 一旦、宮城県北の故地に立ち寄って、日曜夜に帰京である。
 ネット環境未整備なので、情報遮断の状態になっていた。
 
 「尖閣」の「その後」が気になっていた。
 釈放で決着かと思いきや、中国政府は、「謝罪と補償」を要求したそうである。

 「いいわ…。もっとやって…」と雪斎は、反応した。ただし、雪斎は、マゾヒストではない。

 日本における「対中幻想」が崩れれば崩れるほど、それは、中国政府の足元を揺さぶる。
 民間企業関係者を脅せば、中国からの資本流出が加速する。
 日本だけでなく、他の国々も、「チャイナ・リスク」を認識するようになるであろう。
 「チャイナ・リスク」が世界のコンセンサスになれば、それで中国の発展は失速する。

 清朝というひとつの王朝の崩壊前夜を描いた『蒼穹の昴』が昨日からNHK総合で放映されているのは、何の暗示であろうか。ドラマとしては、「よい作品」だったとは思うが…。

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September 25, 2010

勝つと思うな。思えば負けよ。

■ 尖閣の一件で、船長釈放だそうである。

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September 21, 2010

兵の忿(いか)る者は敗れる

■ 中国政府の「エキサイト」ぶりには、既に滑稽の趣を感じさせるものであるけれども、どうしたものであろうか。
 

□ 中国が日本との閣僚級交流を停止、船長拘置に対抗措置
                ロイター 9月20日(月)11時20分配信
 [北京/東京 19日 ロイター] 中国外務省は19日、尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺で発生した日本の海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件を受けて、日中間の閣僚級以上の交流を停止した。日本側が中国漁船船長の拘置期間延長を決めたのに対し、強硬な対抗措置を取るとしている。
 中国外務省の馬朝旭報道局長は、ウェブサイトに掲載した声明で「中国は船長の無条件での即時釈放を日本に要求する」と表明。「日本が忠告に反して故意にふるまい、次々と過ちを犯し続けるなら、中国側は強烈な対抗措置を取る。すべての結果の責任は日本側が負うべきだ」と述べた。
 また、中国国営テレビは、別の外務省当局者の発言として、日本の決断は「中日関係に深刻な打撃を与えている」と報道。
 新華社によると、王光亜外務次官は丹羽宇一郎駐中国大使に対し、船長の拘置に「厳重な抗議」と「強い憤り」を伝えている。
              最終更新:9月20日(月)11時20分

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