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珠玉の名曲たち、クラシック音楽を楽しむブログ。クラシック音楽の楽曲をテーマに、短いエッセーを書いています。

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ブルックナー ミサ曲 ヘ短調:旋律は縷々と天へ上る

ブルックナー:ミサ曲へ短調WAB.28【原典版】ブルックナー:ミサ曲へ短調WAB.28【原典版】
(2008/06/25)
朝比奈隆中沢桂

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ブルックナー ミサ曲 ヘ短調 WAB.28

ブルックナーの音楽の魅力である「どこまでも息の長いフレーズ」を味わうには、交響曲の緩徐楽章はもちろんだが、ミサ曲が最も適している。
正直な話、ブルックナーの最大の魅力は交響曲のアダージョだと言いきっても良いのだが、もしかしたら僕の考えが変わるかもしれないし、無駄な論争を生みたくないので、この辺はぼやかしておこう。その人にとって素晴らしい音楽は誰がなんと言おうと素晴らしいものなのだから。
ブルックナーは生涯に6つのミサ曲を作り、その中でも最高峰とされるヘ短調は、ブルックナーがリンツからウィーンへ移住する年に完成したもので、リンツ時代に書かれた最後の曲である。初演はウィーンで行われた。
初演のステージ練習をしたヨハン・ヘルベックという人物は「この曲に比肩し得るのはベートーヴェンの荘厳ミサ曲だけだ」と絶賛した(と宇野功芳が言っている)のだが、僕としてはブラームスのドイツ・レクイエムも荘厳ミサと比肩しうると思うのだがいかがなものか。
アンチ・ワグネリアンで名高いハンスクリックも、この曲は高評価したということだが、交響曲第1番が完成したばかりのころで、まだハンスクリックがワーグナー派のブルックナーをそれほど批判対象として認識していなかったのではないかと思われる(あくまで私見)。つまり、このミサ曲がブルックナーらしくないかというと、そうではないとういうことだ。
ウィーン宮廷礼拝堂からの依頼で作曲されたこの曲は、ブルックナーの「神が見える」交響曲への助走となったと言える。

ヴェルディのレクイエムを意識した「キリエ」で、まずその息の長い旋律を実感できる。
「グローリア」と「クレド」の力強さにも、旋律が途切れずに紡がれるそのあり様が、場面の展開と全体の調和を保っているのだ。特に受胎告知を歌うテノールとその裏で延々と旋律を奏でるヴァイオリンの絡み合いは、言葉にならない素晴らしさだ。
「サンクトゥス」と「ベネディクトゥス」はその純粋な美しさが堪らない。前者の金管の響き、後者の変イ長調の息の長い美しい旋律に酔い、最後はテンポが上がり「Osanna in excelsis」と歓呼の叫び。その効果が、「アニュス・デイ」のアンダンテをより活かしている。
キリエ・グローリア・クレドの主題を織り込んだ「アニュス・デイ」は圧巻である。
旋律が天に昇るような音楽は多々あるし、特にブルックナーは交響曲において顕著だが、それはこのミサ曲に見られる「祈り」から発展したものだ。
それはブルックナー自身の厚い信仰心あってこそだし、音楽でそれを表現するしっかりとした技法を確立させたもの、それがこのミサ曲ヘ短調ではないか。
ブルックナーの途切れずに天に向かう旋律は、この祈りの音楽ですでに現れていた。それが、彼の芸術の最高潮である「交響曲」を最高潮たらしめるものであることは言うまでも無い。

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ブルックナー 交響曲第7番:それでも彼は美しい

ブルックナー:交響曲第7番ブルックナー:交響曲第7番
(2006/01/25)
ヨッフム(オイゲン)

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ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調

マーラーと同じく、ブルックナーについても書くのを避けていたのだが、そろそろ書いてみよう。
そもそも、ワーグナー、ブルックナー、マーラーといった作曲家の作品を聴いたのは、僕の中ではかなり後の方である。
おそらく、僕は現代に生きているから、彼らの作品を名曲と思って聴いて楽しんでいるが、もし同時代に生きていたら、きっと「反ワーグナー派」の言葉に飲み込まれ、ブラームス礼賛、ドビュッシー礼賛、という風になっていただろうと思う。
まあそんな仮定は置いておいて、本題に戻ろう。
ブルックナーの7番は、4番と同じように、このブログで取り上げやすい理由があり、それは、いわゆる「ブルックナーらしさ」が少なく、比較的緩さのある曲だからだ。
1楽章のモティーフも馴染みやすいし、何より2楽章のアダージョが抜群に美しい。最後の部分は、ワーグナーの訃報を受け、亡き巨匠を回想する歌となっている。
ワーグナーチューバの響きが奏でる嘆きの調べ、2楽章の全てをまとめ上げるようなこの葬送曲こそ、この作品1番の聴き所に思う。
ワーグナーチューバの響きは、それそのものも十分美しいが、僕は特に、他の作曲家の交響曲にはあまりない、ワーグナーチューバの響きによってさらに生きるフレンチホルンの響きが格別に思う。
3楽章スケルツォも個人的に好きだ。アダージョと対比され、ここでかなり興奮する。

交響曲の楽しみ方は無限にある。
ブルックナーの交響曲からは特にそれを感じる。たとえそれがブルックナーらしくないとされる7番であっても。
ブルックナー好きにとっては実に物足りない感のする(僕もちょっとそう思う)4楽章でも、それが大衆ウケするのだ。
7番で長く議論を呼んだいわゆる「シンバルは本来どこで鳴るべきか」という問題にしても、まあ専門家にまかせておけば良い。
色々な版があるが、どれもそれぞれの良さがあるし、そこにブルックナーの才能を感じるとも言えるだろう。
クラシックオタクにとって7番の評価は非常に分かれるところだが、そうでない人にとっては、多分7番は聴きやすいだろう。
まあ、大体1時間くらい。僕のような「ややアンチワグネリアン寄り」の人間には、7番の1時間は至福である。
「クラシックは好きだけど、詳しくないし、あんまり長くて有名じゃない曲は聴かないなー」
「ブルックナー、名前なら聴いたことあるけど…」
という人に告ぐ、まず「ブルックナーの7番を聴いて、その美しさに陶酔して頂きたい。」
そして「これがブルックナーだと思うなよ!!」と。
「ブラボー!」と思ったら、その先には解釈、版、ライブ、録音…クラシックオタクの道は拓かれる。

追記:今まで一度記事を書いた作曲家の他の曲には触れず、違う作曲家の曲を書いていたのですが、これからは今まで書いた作曲家の別の作品にも触れて行きつつ、まだ登場していない作曲家の曲も取り上げていきたいと思います。

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