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珠玉の名曲たち、クラシック音楽を楽しむブログ。クラシック音楽の楽曲をテーマに、短いエッセーを書いています。

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ショパン ピアノ協奏曲第2番:恋と詩情

ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番
(2008/03/26)
ブーニン(スタニスラフ)

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ショパン ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21

今年はショパン・イヤーだというのに、彼の作品を取り上げないで1年を終えるという訳にはいかない。
ショパンの作品の中でも、協奏曲というのはやや「特別」なものだ。
それは彼の協奏曲が、他のピアノ独奏曲よりも優れているから、という理由ではない。むしろショパンの音楽の真骨頂はピアノ独奏曲にあると言える。
ではなぜ協奏曲が特別か。ショパンの音楽を愛し、その記念すべき年を祝うにあたって、オーケストラとピアノというこの大きな形態は、ソロコンサートと比べて見た目の華やかさや音響の壮大さが、ひときわ祝祭的なものだ。
ステージ上で、普段より多くの音楽家たちがショパンの音楽を奏でる様子は、ピアノ・ファンのみならず、すべての音楽好きにとって、自然と笑みがこぼれてしまうものだ。
やはりこういう記念すべき年の音楽にこそ、このピアノ協奏曲は適していると言えるだろう。
ショパンはピアノ協奏曲を2曲しか書いていないが、その両方とも実に素晴らしい名曲である。
第1番よりも先に出来上がったこの第2番は、弱冠19歳のショパンが、当時ワルシャワ音楽院の声楽科に通っていた少女コンスタンティア・グラドコフスカへの恋心を表した作品で、青春真っ盛りの「純愛モノ」と言えよう。
本当に純愛である。当時ショパンは彼女と話したことすらなかったのだから。彼女に心惹かれたショパンは、友人ヴォイチェホフスキに宛てた手紙に、彼女のことを想いながらこの曲を作ったと書き残している。

インパクトとしてはどうしても1番に劣るのだが、非常にロマンティックで詩情あふれる魅力が2番の特徴だ。
第1楽章はよく協奏曲風のソナタなどと説明されるが、まああまり難しく考えなくても良いだろう。弦楽を中心としたヘ短調の第1主題、管楽器が活躍する変イ長調の第2主題は、それぞれ恋愛ならではの「気恥ずかしさや緊張感」と「秘めたロマンティックな想い」を表しているようだ。
また1番でも同じようなことを述べたが、まるでピアノ曲かと思うほどの豊かなピアノ独奏もショパンらしい味わいである。
第2楽章のラルゲットはまさしく純情の表れである。ときに激情も見せる、不安定で、それでいて憧れのような恋心。ここは殆どピアノの独壇場である。初演はショパン自身のピアノによって行われたが、まさしくピアニストは、ここではショパン彼自身になる。
僕はバラード1番が好きなので、ここで似た旋律が出てくる部分がやはりたまらなく好きだ。
そんなショパンの想いは第3楽章でポーランドの舞曲風に綴られる。コル・レーニョの上にピアノが乗る部分は独特な雰囲気だ。
印象的なホルンの奏でをサインに、華麗なコーダに突入する。ここで1楽章でもサインになっていたホルンを思い出すと同時に、ヘ短調で表された胸の苦しさをも思いだす。
コーダでは一転してヘ長調になり、明るさを伴って、今までの抒情的な音楽に花を添えるのだ。
心の内に秘めた想いや、恋心の激しさ、そういった様々なものが、単にヴィルトゥオーソというだけでなく、また内省的にもなりすぎず、非常に美しく表現されている。
ショパンがピアノの詩人と言われる理由もわかる。構成はやや粗いかもしれないが、ここには紛いも無く、美しい青春の情景がある。

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ショパン ワルツ集:小さな愛の舞曲

ショパン:ワルツ集(全14曲)ショパン:ワルツ集(全14曲)
(2007/11/07)
ルービンシュタイン(アルトゥール)

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ショパン ワルツ集

「珠玉の名曲」というのは本来こういうものを言うのだろう。
ショパンのピアノ・ワルツは17曲あるが、そこからいくつか抜粋して紹介する。
ショパンの舞曲というと、ワルツ、マズルカ、ポロネーズが有名であり、マズルカが女性的だとしたらポロネーズは男性的である。
ではワルツはというと、やはり舞踏会、つまり男女の社交場、出会いというのが一般的だろう。
もちろんショパンのワルツはウィンナ・ワルツと違い、実際に踊ることを想定されていない。
舞踏の情景であり、或いはワルツの形式を取った抒情詩である。

まずは作品18の「華麗なる大円舞曲」(第1番)。
ショパンがウィーンに滞在中の作品であり、題名の通り一番きらびやかで、少々仰々しい程に華麗である。
旋律は美しく人気もあるのだが、華麗さばかり目立って深みがないのは、ウィーンに免じて、あしからず。

作品34の「華麗なる円舞曲」は3曲ある。
34の1(第2番)は、作品18なんかに比べるとぐっと味わいが増す傑作である。
34の3(第4番)は俗に猫のワルツなどと呼ばれ、深みはないが、速いテンポで駆けめぐる旋律は天才のセンスが光る。
第11回ショパンコンクールでブーニンの弾くこの曲と英雄ポロネーズのライブ録音を初めて聴いたときは衝撃的だった。

「大円舞曲」作品42(第5番)は間違いなく傑作である。
2拍子と3拍子の重なる優雅な音楽に可憐な高音旋律、聴かせるうたあり技術あり、の非常に完成度の高いワルツである。
コーダの前で転調が続き、コーダそのものも華やかに終わる。非常に美しい曲だ。

作品64の1(第6番)は「小犬のワルツ」の名で有名な作品。
自分のしっぽを追いかけくるくる廻っている小犬の様子である。
あっという間に終わってしまう曲だが、だからこそ良いというもの。

「別れのワルツ」で知られる作品69の1(第9番)は、死後出版されたもので、最も甘美な作品だ。
ショパンが恋人のマリアと結婚し、幸せいっぱいの頃の曲だが、ショパンは彼女の両親から突如婚約破棄の手紙を受け取る。
悲しみのショパンはこの曲を思い出として、ずっと胸に秘めていたのだろう。

作品70の3(第13番)も実に甘美でいじらしいような魅力がある。
理想の女性に当てたラブソングのような作品で、中間部の左手の旋律は愛の言葉を囁きながら寄り添っていくようにも思える。
まったく、恋というのは音楽を魅力的にするものである。

ワルツは比較的演奏が容易なので、自分で弾いて楽しむことも出来るし、また録音も大変多くあり、鑑賞も非常に楽しめる。
自分の好みに一番合う作品を見つけるのも良いし、情感たっぷりに弾くピアニスト、淡々と弾くピアニスト、技巧派のピアニスト、と様々なテイストを味わうのも良い。
僕の崇敬するルービンシュタイン先生は、ものすごくしぶい。
あまりにもしぶくて吃驚するほどだが、枯れるような渋さに潜ませたうたごころは老巨匠ならではとも言える。
ちなみに僕の一番好きなワルツは、順番を付けるのは難しいのだが、第4番のような気がする。
傑作かどうか、美しいかどうかと、好きかどうかはまた別の話だ。

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ショパン ピアノ協奏曲第1番:ピアノ曲です

ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番
(2008/01/23)
アルゲリッチ(マルタ)

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ショパン ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11

ピアノの詩人ショパンの、数少ない管弦楽が含まれる作品。
ショパンが20才の時に作曲され、故郷ワルシャワを離れる際の告別演奏会で演奏された。
実際には2番の方が先に作られたのだが、出版の関係でこちらが1番になった。
ショパンの作品の中では初期のもので、ショパン後期のピアノ曲に見られるような、円熟した美という感じはしないのだが、作品の長さもあり、「ショパンらしさ」を十二分に味わえる。
管弦楽法の下手さなどがよく指摘されるが、それをも気にさせない抜群のピアノ使いは、さすがピアノの詩人と言ったところである。

初めてこの曲を聴いたとき、まあショパンと言えばピアノ音楽の代名詞のような人だから、「ショパンのピアノ協奏曲ってどんなにすごいんだろうな…」と思ってわくわくしながら聴いた訳だが、まず最初数分間ピアノが出てこないことに驚いた。
いつになったらピアノ来るの?と思ううちに、力強く、悲しげな独奏が始まる。
始まってしまえばもういつものショパンワールドである。オケなど知らない。
ピアノだけで十分な程の美しさ。
華やかな1楽章が終わると、2楽章から有無を言わせぬ甘美の世界が始まる。
こんなにロマンティックなものが他にあろうか。実に幸せな気分になれる。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番の2楽章といい勝負だと個人的には思っている。
甲乙は付けられないが、ロマンティックさで言えばショパンの右に出る者はそうそういない。
そして3楽章も、他の協奏曲と比べても圧倒的なピアノの存在感。
オケと掛け合いで進み、民族風な旋律も登場する。この民謡調の旋律もショパンらしさの1つだ。
以前も述べたが、この楽章もピアノのアルペジオ、それも超絶なものが出てきて、曲を盛り上げている。

ピアノがなかなか登場しない、という点にショパンのピアノ愛が感じられると言ったら少し考えすぎだろうか。
しかしこの曲を聴いてると、正直これはピアノ曲で良かったのではないか、と思うこともしばしばある。
今はそれを肯定的に捉えるようにしている。
それほどにピアノという楽器はオーケストラに引けを取らないし、またそれほどにショパンのピアノは別格なのだ。

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