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ヨーゼフ・ランナー ワルツ「シェーンブルンの人々」:ウィンナ・ワルツの本質

ウィーンの夜会ウィーンの夜会
(2000/02/23)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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ヨーゼフ・ランナー ワルツ「シェーンブルンの人々」作品200

ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートが好きな方なら、ヨーゼフ・ランナーの名を目にしたことがあるだろう。
「ワルツの始祖」とも呼ばれるランナーは、ヨハン・シュトラウス1世と並んで、ウィンナ・ワルツを確立した人物として知られている。
ウィンナ・ワルツというと、普通はその優雅で洗練された美しさが魅力と言われる。しかし、ウィンナ・ワルツの中にも色々種類があるし、特にシュトラウスファミリーとランナーとでは、その違いも意外に大きい。
つまり、ランナーやシュトラウス1世が切磋琢磨し作り上げたウィンナ・ワルツを、後のシュトラウス2世がよりいっそう洗練させたという歴史があり――現代に生きる我々はついそれらを一緒くたにしてしまいがちだけど――できたてほやほやのウィンナ・ワルツというものを見ることができるのが、ランナーのウィンナ・ワルツなのだ。
そして、この「シェーンブルンの人々」は、ランナーの再後期の作品。完成度も高く、シュトラウスファミリーとははっきりと味の違う美しいワルツであり、人気も高い名曲だ。
1842年に作曲されたもので、60年以上後だが、ストラヴィンスキーがバレエ「ペトルーシュカ」でこの曲を引用している。第3場ムーア人の部屋の“バレリーナの踊り”の部分だ。
荒っぽいムーア人の部屋でバレリーナが踊る様子としては、少し田舎臭さが残るようなランナーのワルツがよく似合う。

田舎臭さと言ったのも、シュトラウスと比較した時の話で、決して下品な感じではない。上品で程良く華やかで、シェーンブルン宮の舞踏会を思わせるようなワルツだ。
もちろん、当時のランナーにとってのシェーンブルン宮と、今の人々にとってのシェーンブルン宮ではイメージが違うと思うので、一概に僕の言っていることがおかしいということもないだろう。
そもそも本当にシェーンブルン宮の舞踏会を表現しているかというと、特にその根拠になるようなものはないようだ。
ランナーをはじめ、シュトラウスファミリーも多く使用していたダンスホール付きのカフェ「カジノ・ドンマイヤー」で初演されたが、シェーンブルン宮はこのすぐ向かいに位置している。
始まりを告げるファンファーレ風のホルンは上昇する3つの音を奏で、それはその後の主題を予期させる。
主題もまた、単音3つが繰り返される形式であり、それはまた以降のウィンナ・ワルツのひとつの特徴となる。
単純な上昇や下降を繰り返す主題は、優雅でありながら嫌味がない。ほんの少し面白みに欠けると言われればまあそうかもしれないが、この柔和な優雅さは、シュトラウスファミリーには見られないものだ。
「洗練された」とは言いがたいものの、どこか長閑でほっとするような、それでいて庶民的でなく、日常を少し離れたような……この独特の面持ち。
そこからは、ウィンナ・ワルツの本質のようなものを確認することができるだろう。

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