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2007年8月

2007年8月28日 (火)

Googleすらなかったとき

新書ブームは、租税濫造な駄本・悪本のマーケットを開拓した意義はあったのだろうか。それはともかく、かなり前に話題をさらった森昭雄・日大教授の『ゲーム脳の恐怖』は「笑って読む本」だと思っていたら、本気にする教育関係者なり、「ヴァーチャルは悪」を断ずる首相の存在で「定説」化しているらしいではないですか。

何故、あの本がトンデモかは多くの人が検証しているのですが、要は、科学的手続きを踏んで集められたデータではないし、まして、その上に結論ありきの(一般受けしそうな)「お望みの結論」ありで、これぞ「と学会」的迷著といえましょう。ゲームの種類にもよるでしょうが、ゲームの利用が脳を活性化させることだってありそうですが…。かつては小説(活字)が、クラシック(音楽)が、ロックが、紙芝居が、新聞が、漫画が、TVが、アニメが、そのようにいわれていました。一億総白痴化@大宅壮一とか。今、ネットもいわれていますし、モバイルもそうかな。

ただ、ネットばりでもゲームばかりでも、活字ばかりでも、そりゃバランスは悪くなるだろうな、とは思う。Google出現後、情報収集のあり方は変わった。昔は、わからない概念を理解するために図書館で調べものして、悶絶したものですけど、今が便利だってことは疑いもしない。

でも、新しいメディアを拒絶するのは、それを受容できない「古い脳」によってなされることは歴史が教えるところ。森昭雄教授は「脳トレ」ブームは批判したんでしたっけ?

『古事記』を語り下ろした稗田阿礼は、全部、その内容を口伝できたからこそ、語り部だったのであって、稗田翁は、これを文字化するなんて、「文字脳」の堕落ここに極まれり、ぷんぷん!とか思っていたんだろうか。

手塚治虫は、孤軍奮闘していた。新しい表現を実現する人は、いつだって異端者だ。

でも、異端者を排除する社会は、豊穣さとは、無縁だとも思うんだ。

T.D. 

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2007年8月24日 (金)

ポスト安倍よりポスト福井

ほかの問題はさておき目下のデフレを何とかすべきであるという一点では中川秀直氏は正しかったのかも知れないのですがが、中央銀行である日銀に介入過剰な節も散見され、日銀の独立性といっても道半ばという気がしなくもない。

FRBバーナンキ議長の果断な判断で利下げに踏み切り、いきなり岩瀬を3イニング目から投入する豪腕振り。ただ、結局のところ、サブプライム問題の信用収縮のマグニチュードは未だ分からずという一点で、不安な状況は続きます。耐久力テストの様相すらあります。

さて、日銀は、当然ながら利上げはなし。おっと、最大の外貨準備高を誇る中国が利上げしちゃいました。ポールソン財務相は、根回しというか地ならししていた筈なんですけどね。信用で成り立つ経済、これはインパクト大きいかなと。今後も、バーナンキ議長の耐久力テストを見守るほかないです。

問題は、福井総裁の後任ですね。財務省出身の武藤敏郎副総裁を民主党が忌避しているとすれば、もう一人の副総裁・岩田一政氏の大抜擢もあるかも知れません。それはそれで魅力があるような気もしますが…まずはデフレをどうにか…。

T.D.

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2007年8月18日 (土)

『いつまでもデブと思うなよ』

衝撃といってよい。「あの」岡田斗司夫氏のことなのですが、怪作「『世界征服』は可能か?」を出版した際に目にしたふと目にした動画ファイルが、明らかに、私の知る岡田斗司夫氏ではなかったのです。

そう、同姓同名の別人かと思えるほどに、痩せていた。これは一体何が起こったのか、私はこの事態に対する処し方を知らない、人は想像を超える知覚には言葉を失うものだとまざまざと不意打ちをされたのだと自分を納得させつつ、どこかでニュー岡田斗司夫さんを拒絶するでもなくごく自然なものとして認知し得ない錯誤に陥ったというほかのない状態になっていたのだろうと、今になって、やっと得心がいった、と私は思おうとしている、と自己説得するに足る書を手にしています。

そう、それが『いつまでもデブと思うなよ』です。新聞広告等でご覧になっているかとは思いますが、確かに大幅なダイエットに岡田斗司夫さんは成功したようです。それも50kg!117kg→67kgとは!!!

しかし、岡田節は冴えており、説得的かつ、2007年の日本社会で生きることに関する啓蒙書でもあり、ダイエット本としての切り口も鋭利です。

「学歴重視の時代は終わった、これからは見た目重視時代だ」との言葉がオタキング・岡田斗司夫さんによって刻まれるとは・・・一億層中流社会から希望格差社会へ、横並びから格差へ、未曾有の体験をしている日本人に向けて、明示的かつ確かな視点を示すものであり、それを、徒に不安を煽るでもなく、闇雲に癒しに走るでもなく、ひとつの処し方を「デブで得をすることは何もない」という、悲壮感でも諦観でもなく、かつダイエットする自分を体験できる稀有な書といえます。

これは凡百の脳トレなりコミュニケーションスキルなり資産運用を凌ぐ、「確かな事実」のあっけない提示であり、オタクというライフスタイルのあり方に対しても、それが社会化されていく過程における、体験の書、告白の書であり、それが岡田斗司夫さんによって成し遂げられてしまったという事態に、私は、ただただ呆然とするほかないのです。良書です。

T.D.

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