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なぜ原発・核燃は無くなるしかないのか(2022年3月)

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 震災11周年を前に再考してみたい。標題の前提とは異なり、原発は必要不可欠だ、必要悪だが無くすことは不可能など様々な見解があるのも事実だ。しかし、それらを考慮しても、辿り着く結論は一つしかない。

 ここで、『小出裕章・最後の講演』に収載された川野眞治「伊方原発訴訟の頃」から、原告の主張を抜粋してみる。①潜在的危険性が大きく、重大事故は健康と環境に取り返しのつかない被害をもたらす。②被曝労働という命を削る労働:差別的な構造を内包。③平常時でも放射能を環境中に放出し、環境汚染と健康被害の可能性。④放射性廃棄物の処分の見通しが立っていない。⑤核燃料サイクルの要、プルトニウムは毒性が強く、利用は核拡散をもたらす。⑥原子力推進のために情報統制が進み、表現の自由が失われる:原子力帝国(ユンク)。

 この73年の時点で問題は全て指摘されており、解決の見込みはない。しかも、①で危惧された福島原発事故を経験してもなお、温暖化対策という「まやかし」により、原発延命と新増設を図ろうとしている。

 標題の「なぜ」について説明しきれないが、例えば最終処分場は全量再処理を前提としている。しかし、それは第二再処理工場がなければ不可能で、使用済みMOX燃料の再処理技術も存在せず、工場建設の可能性も皆無だ。結論として直接処分との併用以外になく、議論は振り出しより前に戻る。そこまで何十年かかるかも見通せない。

 急加速する人口減少と社会機能の崩壊により、原発・廃炉の技術や人材も維持不能となるはずだ。核のゴミや財政負担などの負の遺産は将来世代に押し付けられるが、彼らには何の義務も責任もない。

 歴史的に積み重ねらた嘘、まやかし、問題先送り、金と権力による強権的手法が、数多くの解決不能問題を生み出してきた。

 問題先送りは更なる解決不能問題を生じ、政策転換が不可能なまま後戻りのできない道を歩み続けている。医療団体としての活動には限界があり、政治に直接関与するかの如き動きは会員の理解も得られず無益だ。

「反対しなければ賛成と同じ」という構造は何も変わっていないが、現実は必然的に変化し続けている。甲状腺がんの問題については、次の機会に再度取り上げてみたい。

(青森県保険医新聞2022年3月1日号掲載)


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