プロジェクト・チームのトップであるプロジェクト・マネジャーには,チームをスムーズに運営できる「適性」と,リーダーシップやネゴシエーション能力などの「資質」が必要だ。どんな適性や資質が必要なのかを,現場の視点から解説する。

布川 薫/日本IBM
ゲスト執筆者:神野 幸英/日本IBM

 プロジェクト・マネジャーの役割は,プロジェクトの総括責任者として,コストや品質に全体的な責任を負いながら約束したシステムを構築し,予定通りに稼働させることにある。そのためには,プロジェクトのスコープ(範囲)の定義,開発コストの見積もり,適切なスケジューリング,開発計画の作成,必要なリソースの調達,プロジェクト・チームの組織化など,多くの仕事をこなさなければならない。さらに,プロジェクトのリスクを識別して対策を練ったり,発生した問題を速やかに解決していくこと,プロジェクトの遂行を通じてプロジェクト・メンバーを指導・育成することも,大事な職務である。

 こうした膨大な仕事をこなしながらプロジェクトを円滑に推進し,目的を完遂するためには,単にプロジェクトマネジメントに関する知識を備えていたり,何度もプロジェクトに参加した経験を持つというだけでは十分ではない。「資質」や「適性」といった人間的な側面も重要になる。

 そこで今回は,製造系の大規模プロジェクトで,10年以上にわたってプロジェクト・マネジャーを経験してきた神野幸英氏をゲストに招き,プロジェクト・マネジャーに必要な適性や資質について解説してもらう。

 適性は,いわば「向き/不向き」ということだから,無理に直すのは難しいかもしれない。しかし,資質については,良き指導者に教えられたり経験を積んだりすることで,自分自身で育て,磨いていくことができる。以下の説明を参考にして,ぜひ自分自身の資質を磨いて欲しい。(布川)

自分の適性をチェックする

 「自分は,はたしてプロジェクト・マネジャーに向いているのだろうか?」。現役のプロジェクト・マネジャー,またはこれからプロジェクト・マネジャーを目指すエンジニアなら,1度ならず,こうした疑問を持ったことがあるのではないだろうか。

 自分自身のプロジェクト・マネジャーとしての適性を知るのは,今後のキャリアを考えるうえで,非常に大切なことだ。そこで,まずは図1に示した「プロジェクト・マネジャーの適性チェック・リスト」に答えてみて欲しい。図に示した15の質問は,プロジェクトの現場でこれまでに見てきたプロジェクト・マネジャーやチーム・リーダーの行動を基に,筆者が独自に作成したものである。すべての質問に答えたら,「a」,「b」,「c」がいくつあったか合計し,(母数を15とした)それぞれのパーセンテージを計算していただきたい。

図1●プロジェクト・マネジャーの適性チェック・リスト
図1●プロジェクト・マネジャーの適性チェック・リスト
各質問には,絶対これが正しいという模範解答があるわけではありません。各質問の選択肢の中から,自分がとる行動に最も近いものを,必ず1つ選んでください
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