REVIEW

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HRテック&ラーニングDX

ベネッセコーポレーション

ベネッセグループの取り組みに見る
DXを成功に導く戦略と組織のあり方

ベネッセグループは、一人ひとりの「よく生きる」の実現に向け、教育・介護をはじめ人々の一生を支える事業を展開。これらの事業においてデジタルシフトへの対応を念頭に置きながら、縦割りの事業部を横断したDXの推進を目指し、2021年にデジタルの専門人材を中央集権化した組織を設立。この組織は、2018年にDXの推進に向けた取り組みをスタートしてから約3年を経て約700名という規模へと成長した。その背景には、小さな「実績」の積み重ねにより、DX推進組織に寄せられる各事業部門の信頼を順次拡大できたことがあげられる。

塩野 健一 氏

株式会社ベネッセコーポレーション
人財・総務本部 変革推進室
室長
塩野 健一

 18歳以下の通信教育や学習塾を展開する「国内教育」、高齢者向け住宅や保育園の運営を行う「介護・保育」、オンライン動画学習プラットフォーム「Udemy」を中心としたキャリア支援を展開する「大学・社会人」と、3つのセグメントで事業を展開するベネッセグループ。同社では2018年にDXの推進に向けた取り組みを開始。しかし、当初2年間は、世のなかのデジタル化に追随していけるような取り組みを進めるに至らなかった。これについてベネッセコーポレーションの塩野健一氏は、「2018年当時、メンバーは6人しかおらず、しかも兼務ばかりでDX推進のための十分な人員リソースを割けておりませんでした」と振り返る。それが2020年頃に変わる。

アジリティを持って変革できる
“組織能力の向上”をDXで目指す

 そうした反省を踏まえて、2020年には自社にとってのDXの意義と方法論をあらためて問い直した。そこでは「常に、お客様にとって、最良の商品・サービスを提供し続けられる」ために、サービス、ビジネスモデルをスピードとアジリティを持って変革できる“組織能力の向上”をDXの推進において目指すことも確認された。

ベネッセグループがあらためて定義した“DX推進”の方法論。これがその後のDXを急加速する契機となった
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 また、2021年には、DX推進を担う社内横断組織を設立。これは自社に散在しているデジタル人材を集めて、必要に応じて各事業へと派遣する「デジタルイノベーションパートナーズ(DIP)」という組織だ。「横断組織にした理由は2つです。1つは現場にいるデジタル人材のアウトプットをうまく戦略に組み込み、適正に評価したかったこと。もう1つは、社内のデジタル人材にベネッセグループ内部においての成長のためのキャリアパスがあることを示したかったからです」と塩野氏は説明する。

 以後、ベネッセグループのDXは大きく加速し始める。成功しているデジタルシフトの例を1つあげてみよう。「デジタル赤ペン先生」である。これは、従来、郵送でやり取りしていた添削サービス「赤ペン先生」をデジタルで送受信できるようにしたもの。「これによりお客様からの提出率は2.7倍になりました。郵送費がなくなったことで、10%以上のコストダウンも実現しました」と塩野氏は成果を紹介する。

 その後も各種の施策が奏功。そうした小さな「実績」の積み重ねにより、DIPに寄せられる事業部門の信頼も時とともに厚くなり、DIPに任せると“DXが進む”という空気を全社に醸成することができた。現在、社内では常に50~80のDXプロジェクトが進められており、随時、新たな実績が生み出されるかたちとなっている。

 一方、人材開発基盤の整備もDIPの拡充に大きく寄与するものだ。これについては、ベネッセグループ内のDX人材にどんな職種があるのか、そこではどんなスキルが求められるのか、社員1人ひとりの能力の現状はどうなっているのかといったことを可視化することから始めた。「取り組み2、3年を経て、人員のアサインメントの精度もかなり向上しています」と塩野氏は言う。また各人に合わせた研修プログラムには、自社が展開するUdemyを最大限に活用。DX人材のためのオリジナルプログラムなども作成している。

 すでにDIPを構成するメンバーは約700名を数え、2024年には戦略を刷新。デジタルビジネスの成長にコミットすべく、各事業部の戦略企画チームへと入り込んで協働を行える体制を強化している。

※ベネッセコーポレーションは、日本におけるUdemy社の独占的事業パートナーです。

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