企業向けのネットワーク機器には「ライセンス」がつきものである。一般に、ライセンスには有効期間や細かな利用条件が設定されている。購入時には留意するものの、運用が安定してくると、ともすればライセンス回りの決まりごとは見落としがちになる。今回は無線LAN(Local Area Network)コントローラー(Wireless Local Area Network Controller、以下WLC)のライセンスにまつわるトラブルだ。
フロア単位で無線LANにつながらない
トラブルに見舞われたアド近鉄は大阪市の広告代理店で、大阪本社の他に全国に複数の拠点を持つ。そのうち本社と中部支社、伊勢支社、東京営業部の4拠点に無線LANアクセスポイント(Access Point、以下AP)を設置し、無線LANへの接続環境を整備している。4拠点で合計18台あるAPは、大阪本社のサーバールームに設置したWLCで集中管理している。これらの仕組みは2016年に構築した。
WLCは2台あり、主系(WLC1)と副系(WLC2)のアクティブ-スタンバイ構成で冗長化している。さらに、2台で1台の仮想WLC(Virtual Wireless Local Area Network Controller、以下VWLC)としている。WLC1とWLC2にはそれぞれ固有のIP(Internet Protocol)アドレスを割り振っているが、それとは別にVWLCにもIPアドレスを割り振っている。
APは通常時、WLCと通信する際はVWLCのIPアドレス宛てにアクセスする(1)。実際にWLCとしての機能を提供してAPを管理するのは、アクティブのWLC1である(2)。WLC1に障害が起こるとWLC2がスタンバイからアクティブに移行し、APを管理する(3)。