東北地方整備局
東北地方整備局
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 09:58 UTC 版)
「国土交通省直轄ダム」の記事における「東北地方整備局」の解説
東北地方整備局管内では既設ダム・堰21基、施工中ダム3基、再生・再開発事業中ダム3基のの合計27基を直轄管理・施工している。これは全ての地方整備局の中で最多である。また、総貯水容量が1億立方メートルを超える大人造湖を擁するダムが8基あり、これもまた地方整備局の中では随一である。ただし東北地方の直轄ダムにおいて、阿賀野川水系と荒川水系にあるダム(大川ダム、横川ダム)については本流河口が新潟県に位置するため、水系一貫管理の観点から北陸地方整備局の管理となっている。なお仙台市などの水源でもある釜房ダム(碁石川)の人造湖である釜房湖はダム湖としては唯一、湖沼水質保全特別措置法(湖沼法)に指定されており、厳重な水質管理が行われている。事業については河川法第17条に基づく兼用工作物として鳴瀬川中流堰(鳴瀬川)が国土交通省と農林水産省の共同事業として建設されている。 東北地方は日本でも早期より多目的ダムによる河川総合開発事業が積極的に進められていた。青森県は多目的ダムとして日本最初の施工例となった沖浦ダム(浅瀬石川)や十和田湖の総合開発事業を1938年(昭和13年)より実施。河川総合開発の父である物部長穂の故郷・秋田県も田沢湖・玉川の総合開発を1939年(昭和14年)より実施するなど他の都道府県に先駆けて河川開発を進めていた。当時河川行政を管轄した内務省も1941年より国直轄の河川総合開発を計画し、北上川と名取川が東北では対象とされ田瀬ダム(猿ヶ石川)が直轄ダム日本第一号として施工を開始、さらに田瀬ダムなど5ダムを北上川本支流に建設する北上川五大ダム計画(田瀬、石淵、湯田、四十四田、御所)がこの時成立した。また釜房ダムの計画も進められたが、太平洋戦争により事業は中断した。 戦後東北では1947年のカスリーン台風、翌1948年のアイオン台風で北上川や名取川、雄物川などが致命的な水害を引き起こし多数の死者を出した。治水対策が急務となった建設省は北上川と支流の江合川、および鳴瀬川を対象とした河川改訂改修計画を立案しダムによる治水を盛り込む。さらに戦後の食糧・電力不足にも対応するため1950年の国土総合開発法に基づく特定地域総合開発計画が実施され、東北では岩木川・奥入瀬川を対象とした「十和田岩木川」、北上川・鳴瀬川を対象とした「北上」、名取川を対象とした「仙塩」、米代川・雄物川を対象とした「阿仁田沢」、最上川・赤川を対象とした「最上」そして阿賀野川・只見川・信濃川を対象とした「只見」と東北6県全てが特定地域の対象となった。これに基づき北上川五大ダムなど多数の直轄ダムが建設され、一部は所在地方自治体へ管理を移管させた(後述)。さらに東北自動車道や東北新幹線開通などによる人口の増加に伴う治水安全度の低下や水需要の増大、羽越豪雨などの深刻な水害を機に阿武隈川水系や最上川水系で直轄ダム事業が進められ、阿武隈川水系では七ヶ宿ダム(白石川)、三春ダム(大滝根川)、摺上川ダム(摺上川)が、最上川水系では白川ダム(置賜白川)、寒河江ダム(寒河江川)、長井ダム(置賜野川)が、赤川水系に月山ダム(梵字川)が建設された。また、東北の直轄ダムで最も総貯水容量の多い玉川ダム(玉川)は事業の一環として玉川の酸性水を中和する施設を建設、ダム湖を利用して粒状石灰石と中和させることで長年流域住民を苦しめた玉川毒水を大きく改善させた。 直轄ダムで施工中のダムは6基あるが、鳥海ダム(子吉川)、成瀬ダム(成瀬川)は何れもダム事業再検証の対象となったが事業再開されている。また鳴瀬川ダム(筒砂子川)は田川ダムを統合拡大する形で計画され、宮城県営の漆沢ダム(鳴瀬川)は多目的ダムから流水型の治水専用ダムへと再開発する(次節参照)。さらに四十四田ダムかさ上げと御所ダム貯水容量配分変更を軸とした北上川上流ダム再生事業が着手されている。ダム再開発事業として既存のダムを水没させて再開発させたダムも多く、浅瀬石川ダム(浅瀬石川)により沖浦ダムが、長井ダムにより管野ダム(置賜野川)が、胆沢ダム(胆沢川)により石淵ダムが、津軽ダム(岩木川)により目屋ダムがそれぞれ湖底に水没した。ダム事業と住民の摩擦については住民軽視の補償交渉が後年批判の的となった石淵ダム補償問題のほか、胆沢ダムと津軽ダムでは石淵・目屋ダムで移転を余儀なくされた住民が、再び移転を余儀なくされる例も現れている。また、度重なる大地震による施設被害も起こり、岩手・宮城内陸地震では石淵ダムの堤体が損傷、東日本大震災では沿岸を襲った大津波が河川を遡上したことで北上大堰(北上川)、阿武隈大堰(阿武隈川)、馬淵大堰(馬淵川)などが被害を受けている。 なお、東北の直轄ダムにおける技術的特徴として、石淵ダムはロックフィルダム施工の日本第一号であり、鳴子ダム(江合川)は日本人だけで手掛けられた最初のアーチ式コンクリートダムである。また堰では鳴瀬堰(鳴瀬川)は大河川を堰き止めた最初のゴム引布製起伏堰(ラバーダム)であり、最上川さみだれ大堰(最上川)はゴム引布製起伏堰として日本最大級である。 所在水系河川ダム型式高さ総貯水容量着工完成分類水特法備考青森 岩木川 浅瀬石川 浅瀬石川ダム 重力 91.0 53,100 1971 1988 特定 9条等指定 沖浦ダム再開発 青森 岩木川 岩木川 津軽ダム 重力 97.2 140,900 1988 2016 特定 9条等指定 目屋ダム再開発 青森 馬淵川 馬淵川 馬淵大堰 堰 - - 1973 1980 岩手 北上川 胆沢川 胆沢ダム ロックフィル 132.0 143,000 1983 2013 特定 指定 石淵ダム再開発 岩手 北上川 雫石川 御所ダム 複合 52.5 65,000 1967 1981 特定 9条等指定 ダム湖百選再生事業中 岩手 北上川 北上川 四十四田ダム 複合 50.0 47,100 1960 1968 特定 再生事業中 岩手 北上川 猿ヶ石川 田瀬ダム 重力 81.5 146,500 1938 1954 ダム湖百選 岩手 北上川 和賀川 湯田ダム 重力アーチ 89.5 114,610 1953 1964 特定 ダム湖百選 宮城 阿武隈川 阿武隈川 阿武隈大堰 堰 - - 1973 1982 宮城 鳴瀬川 鳴瀬川 漆沢ダム ロックフィル 80.0 18,000 1968 1980 再開発中 宮城 名取川 碁石川 釜房ダム 重力 45.5 45,300 1964 1970 特定 湖沼法指定ダム湖百選 宮城 北上川 北上川 北上大堰 堰 - - 1968 1979 宮城 阿武隈川 白石川 七ヶ宿ダム ロックフィル 90.0 109,000 1973 1991 特定 9条等指定 ダム湖百選 宮城 北上川 江合川 鳴子ダム アーチ 94.5 50,000 1951 1958 宮城 鳴瀬川 筒砂子川 鳴瀬川ダム 台形CSG 105.0 45,700 2013 2036 特定 田川ダム計画の後身 宮城 鳴瀬川 鳴瀬川 鳴瀬川中流堰 堰 - - 1997 2001 兼用 宮城 鳴瀬川 鳴瀬川 鳴瀬堰 ラバーダム - - 1982 1991 秋田 雄物川 玉川 玉川ダム 重力 100.0 254,000 1973 1990 特定 指定 ダム湖百選 秋田 子吉川 子吉川 鳥海ダム 台形CSG 81.0 46,800 1993 2028 特定 秋田 雄物川 成瀬川 成瀬ダム 台形CSG 113.5 78,700 1983 2026 特定 指定 秋田 米代川 小又川 森吉山ダム ロックフィル 89.9 78,100 1973 2012 特定 9条等指定 山形 赤川 梵字川 月山ダム 重力 123.0 65,000 1976 2001 特定 山形 最上川 寒河江川 寒河江ダム ロックフィル 112.0 109,000 1972 1990 特定 指定 ダム湖百選 山形 最上川 置賜白川 白川ダム ロックフィル 66.0 50,000 1968 1981 特定 山形 最上川 置賜野川 長井ダム 重力 125.5 51,000 1979 2011 特定 管野ダム再開発 山形 最上川 最上川 最上川さみだれ大堰 ラバーダム - - 1989 1995 福島 阿武隈川 摺上川 摺上川ダム ロックフィル 105.0 153,000 1982 2006 特定 9条等指定 福島 阿武隈川 大滝根川 三春ダム 重力 65.0 42,800 1972 1997 特定 9条等指定
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