玉川毒水
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 09:27 UTC 版)
「玉川温泉 (秋田県)」の記事における「玉川毒水」の解説
硫酸イオン(SO42-)を含んだ強酸性の湯は湯治においては人々の役に立つが、かつては田畑を枯らし、魚を殺す「玉川毒水」として恐れられてもいた。玉川が流れこむ雄物川流域はもともとの洪水による荒れ地開拓に加えて悪水により作物の生育が悪く作付に苦労していた。江戸時代より角館の藩士や地域の施政によって水質の改良が図られたがうまくいかなかった。 1930年代、工業振興のための発電所建設と玉川の水質改善および周辺水系での農業振興を図る機運が高まり(玉川河水統制計画)、1940年から水源からの酸性水を田沢湖に排水して弱酸化する事業が開始された。田沢湖はそれまで大きな流入河川がなかったため摩周湖に迫る透明度 (31m) があり、かつ水産生物も豊かであったが、結果水質環境が急激に悪化、クニマスを始めとして生息していた多くの魚類が死滅した。クニマスは2010年に西湖で偶然に再発見されるまで絶滅種としてレッドリストに掲載されていた。 その後、田沢湖水の水力発電施設が酸性のため劣化が進んでしまい、農業用の田沢湖疎水も稲作に不適となってしまったため、1972年東北電力の協力を得て、野積みの石灰石に温泉の酸性水を撒き、玉川に流れ込む前に中和させる「簡易石灰石中和法」による処理事業を開始。1989年の中和施設の完成(本運用は1991年)により玉川の酸性度は更に緩和された。1990年には下流の宝仙台付近に玉川ダムが完成、中和後の沈殿と攪拌も行うようになった事により、有史以来秋田平野の最大の難題であった玉川毒水は、現在基準地点(玉川頭首工)付近でpH6.8にまで回復した。しかし田沢湖の水質は目標に未だ届かず、回復の努力が続けられている。
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