天部とは? わかりやすく解説

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てん‐ぶ【天部】

読み方:てんぶ

仏語天界に住む者の総称梵天帝釈天四天王吉祥天弁才天など。


てんぶ 【天部】

天等部・諸天部とも。仏像の中で毘沙門天帝釈天のような天像の総称

天 (仏教)

(天部 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 06:52 UTC 版)

Devalokaの三神一体
仏教用語
天, 天部, 天人
パーリ語 देव
(deva)
サンスクリット語 देव
(deva)
チベット語 ལྷ
(lha)
ビルマ語 နတ်
(nat)
中国語 天人
(拼音tiān rén)
日本語 天人
(ローマ字: tenjin)
朝鮮語 천, 天
(RR: cheon)
英語 Deity
クメール語 ទេវ , ទេវតា , ទេព្ដា , ទេព
(Teveak, Tevada, Tepta, Tep)
モンゴル語 тэнгэр
(tenger)
タイ語 เทวะ , เทวดา , เทพ
(thewa, thewada, thep)
ベトナム語 thiên nhân, chư thiên
インドネシア語 dewa, dewi
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仏教における(てん、: देव[1] [デーヴァ])とは、衆生生死流転する六道のうちの最上部にある世界のことであり[2]天界天上界天道とも呼ばれる[2][1]。天界は、この地上から遙か上方にあると考えられている[1]

天界の住民の総称を天人天部天衆といい[3][1]やその眷族[2]が住んでいる。諸天部[4]天部神[5]ともいう。インドの古来の神が仏教に取り入れられて護法善神となったものである[4]

語源

サンスクリット語のデーヴァ (deva) は「神」に相当する語であり、インド神話天空神ディヤウスや、印欧祖語を介してラテン語・キリスト教のデウスやギリシア神話のゼウスとは同根語である。中国において「天」と訳され、日本語においてもそれが踏襲されている。天部が住む世界も天(devaloka)と訳されるため、漢字文化圏ではしばしば混同される。「天部」の「部」は「部門」「グループ」というほどの意味であるから、「天」だけでも意味が通じるはずだが、たとえば仏像を指すときには、日本語では「天像」とは言わず「天部像」と言いならわしている[注釈 1]。なおdevaは天神、天人とも訳すが、その場合は多少ニュアンスが異なる。ゾロアスター教においてはデーヴァに相当するダエーワは悪神・悪魔に位置付けられている。

天界と六道

天道は、六道の最上位である(この文脈では天道と訳すことが多い)。そのすぐ下位がの住む人道である。五趣六趣(六道)のうち、天は苦悩が少なく最高最勝の果報を受ける有情が住む清浄な世界[3][1]

現在の大乗仏教では人道の下に阿修羅が住む阿修羅道が位置するが、初期仏教では六道のうち阿修羅道がなく五趣とされ、阿修羅は天に住んでいた。

天台宗では六道の上に仏陀が属する仏界などの四聖を加え十界とするため、その上から第5位が天界となる。

天界についても三界として以下に分類される。

  • 無色界[1](無色天、無色界天、四禅定) - 欲望や(肉体や五感などの物質的世界)から超越した、精神のみの世界。禅定の段階により4天に分けられる。
  • 色界[1](色天、色界天、色行天、色界十八天) - 欲望からは解放されたが、色はまだ有している世界。禅定の段階により大きく4つに分けられる。
  • 欲界 कामधातु (Kāmadhātu) - 欲にとらわれた世界。

天界の住民

西洋の神々・天使との違いは以下が挙げられる。

  • 天人も衆生にすぎず、全知でも全能でもない。
  • 天人は不死ではなく(天人が死ぬ前には天人五衰という兆しが現れる)、死ねば他の衆生同様、生前の行いから閻魔が決めた六道のいずれかに転生する。
  • 天人は道徳的に完璧な存在ではない。悟りを開いてはおらず、煩悩から解放されていない。悟りを開いたものは仏陀であり、輪廻から解放され六道に属さない涅槃浄土極楽)へと行く。

天部のルーツである古代インドのバラモン教の神々は、宇宙の創造神から、悪霊鬼神の類に至るまでさまざまである。そのうちには、男性神(毘沙門天、大黒天など)、女性神(吉祥天、弁才天など)、貴紳形(梵天)、天女形(吉祥天)、力士形(金剛力士)、武将形(十二神将)など、さまざまな形態や性格のものを含む。

天人は長寿で、空を飛ぶなどの神通力が使える。快楽に満ち、苦しみはない。

梵天帝釈天吉祥天弁才天伎芸天鬼子母神大黒天四天王竜王夜叉聖天金剛力士韋駄天天龍八部衆十二神将二十八部衆などの天部が存在し、貴顕天部と武人天部に二分される[4]。仏教の尊像においては、如来菩薩明王という4区分の4番目にあたる[4]

大乗仏教での尊格

日本の大乗仏教の信仰・造像の対象となっている、広い意味での「」は、その由来や性格に応じ、「如来部」「菩薩部」「明王部」「天部」の4つのグループに分けるのが普通である[6][注釈 2]。「如来」とは「仏陀」と同義で「悟りを開いた者」の意、「菩薩」とは菩提を開くために修行中の者の意、なお顕教では、十界を立てて本来は明王部を含まない。これに対し密教では、自性輪身・正法輪身・教令輪身の三輪身説を立てて、その中の「明王」は教令輪身で、如来の化身とされ、説法だけでは教化しがたい民衆を力尽くで教化するとされる。そのため忿怒(ふんぬ)といって恐ろしい形相をしているものが多い。以上3つのグループの諸尊に対して、「天部」に属する諸尊は、仏法の守護神・福徳神という意味合いが濃く、現世利益的な信仰を集めるものも多数存在している。

天部の諸尊

天部の神を代表するものに、梵天帝釈天持国天増長天広目天多聞天毘沙門天)の四天王弁才天(弁財天)、大黒天吉祥天韋駄天摩利支天歓喜天金剛力士鬼子母神(訶梨帝母)、十二神将十二天八部衆二十八部衆などがある。

数尊を集めて護法や守護神的な威力を高めたものとして、四天王・八部衆・十二天・十二神将・二十八部衆などが挙げられる。

安置形態としては、寺院の入口の門の両脇に安置される場合、本尊の周辺や仏壇の周囲に安置される場合などさまざまであり、毘沙門天、弁才天などは堂の本尊として安置され、崇敬の対象となっている場合もある。

守護尊としての天部

天部の神々は釈迦時代以前から古代インドでまつられてきたが、多くは各地の民族や部族の神々であった。それらの民族神は作物豊穣から魔物退散などの他に、特に戦勝を祈る好戦的な神々が目立ったため、仏教経典においては、好戦的な神々をもブッダの威光に服し、仏法のもと人々を守護することを誓ったと説く。そうして仏教を信仰する国の人々を守護する、守護尊となったとされる。

日本では仏教伝来以降、奈良時代から鎮護国家の寺院にまつられた。護国経典の『金光明経』にちなんで、国分寺は「金光明四天王護国之寺」と呼び、鎮護国家の役割を期待されていたほどである。なお、現在でも国分寺の正式名称である。

脚注

注釈

  1. ^ 他の尊格で「部」が省略されている場合でも、「天」だけは「天部」と称されることがある。
  2. ^ 「観音」を「菩薩」と分ける場合もある。

出典

  1. ^ a b c d e f g 総合仏教大辞典 1988, p. 1020-1021.
  2. ^ a b c 天(テン)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年10月12日閲覧。
  3. ^ a b 天上界(テンジョウカイ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年10月12日閲覧。
  4. ^ a b c d 天部(てんぶ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年10月13日閲覧。
  5. ^ 関衛 『日本絵画史』 日東書院、1931。[要ページ番号]
  6. ^ ひろさちや『仏像でわかる仏教入門』〈講談社+α新書〉2004年。ISBN 978-4062722384 

参考文献

  • 総合仏教大辞典編集委員会(編)『総合仏教大辞典』 下巻、法蔵館、1988年1月。 

関連項目


天部

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 03:47 UTC 版)

「仏像」記事における「天部」の解説

天部とは、古代インド神々バラモン教ヒンドゥー教その他のインド神話神々)が仏教取り入れられた形である。元の神性どのようなものであれ、護法善神という役割担っている姿形それぞれの神性則っており、官服を纏った貴人(例:弁才天)、武具装備した武将(例:帝釈天)、鬼にも似た精霊(例:乾闥婆)など、様々な者がいる。以下に挙げるのは代表的な天部であるが、それ以外にも様々なものが存在する弁才天 弁才天旧字体辯才天)は、バラモン教女神サラスヴァティー仏教取り入れられた形であるが、その起源アーリア人揺籃地(イランインド移動することでイラン・アーリア人とインド・アーリア人分岐するより前の居住地)と目されるカスピ海の東に広がるアムダリヤ川シルダリヤ川挟まれ流域求められ、この流域一河川が神格化されたものと考えられている。元は河川神であるが、バラモン教の時代から既に知識学芸の神でもあった。当時聖典ヴェーダ)における扱い決し大きくないが、庶民には人気があったと見られその特徴後世ヒンドゥー教におけるサラスヴァティーにも仏教弁才天にも引き継がれている。日本では鎌倉時代の頃から日本古来の招財神習合し弁財天旧字体辯財天)という神格派生し吉祥天に代わって人気集めた宇賀神習合し宇賀弁才天もその一種である。八臂の姿や琵琶抱えた二臂の姿で描写される十二天 十二天とは、仏教護法善神である十二の天部の総称帝釈天 帝釈天十二天一柱古代インドにおける最古級の神の一柱で、バラモン教において最も人気のあった雷霆神にして武神英雄神であったインドラが、仏教取り入れられた形である。帝釈天梵天修行中の釈迦助け悟り開いた釈迦から逸早く教え授かった二柱であり、仏教二大護法善神となっている。 梵天 梵天十二天一柱究極的にアーリア人哲学的概念起源がある。その概念古代インドウパニシャッド哲学によって体系化され、ヒンドゥー教において神格化され創造神ブラフマーとなった仏教において帝釈天一対語られることも多くそのこと考えればヒンドゥー教最高神になる以前取り入れられている。帝釈天梵天修行中の釈迦助け悟り開いた釈迦から逸早く教え授かった二柱であり、仏教二大護法善神となっている。 水天 水天十二天一柱バラモン教における天空神司法神・水であったヴァルナ起源としているが、仏教には水神神性のみが取り入れられた。これは、バラモン教大神であるながら最初期聖典である『リグ・ヴェーダ』時点早くも哲学的地位ブラフマー奪われ始めていることと無関係ではない。 焔摩天 焔摩天十二天一柱。閻摩天・閻魔天とも表記されるインド神話ヤマ夜摩)が仏教取り入れられて天部となったもので、ヤマラージャが仏教取り入れられた形である閻魔閻魔王閻魔大王)と同根である。 毘沙門天 毘沙門天十二天一柱ヴェーダ時代から存在する古い神格であるヴァイシュラヴァナ起源がある。インドにおいて武神神性は無い。四天王における多聞天と同じ神である。 日天 日天十二天一柱バラモン教における太陽神スーリヤ主たる起源であるが、アーディティヤ神群神性取り入れられている。 月天 月天十二天一柱バラモン教における興奮作用有する植物の液汁神格であるソーマ起源とするが、ヒンドゥー教においてこれが月神特徴強めたことが、仏教取り入れられた際の月天強く影響している。九曜チャンドラ取り入れられている。 火天 火天十二天一柱バラモン教における火神アグニ起源風天 風天十二天一柱バラモン教における風神ヴァーユ起源である。また、ヴァーユとほとんど違いの無いヴァータ(※ヴァータのほうがやや人間的特徴が強い)も起源含まれるとされてはいる。 吉祥天 吉祥天は、バラモン教における自然精霊アプサラス一柱であるラクシュミーが、美と繁栄女神として仏教取り入れられたものである一切貧苦災い取り除いて豊穣財宝もたらすとされ、日本では特に古代信仰された。中国貴婦人服装をし、左手如意宝珠持ち右手与願印とする立像が多い。 四天王 四天王は、須弥山四方仏法を守る守護神である。古代インドでは各方角を守る神とされていたのが仏教取り込まれたものである。もとは貴人であったが、中国武将の姿になって日本伝わった。肩や胸に甲冑着け邪鬼踏みつける持国天は東の守護神で、領土守り人々安心させる刀剣又は鉾を持つことが多い。増長天は南の守護神で、五穀豊穣司る右手刀剣又は三鈷杵振り上げるものが多い。広目天は西の守護神で、浄天眼千里眼)という特別な眼で世の中観察し衆生導き守る。右手に筆、左手巻子(かんす)を持つものが多い。多聞天は北の守護神で、財宝富貴司る片方の手宝塔を持つことが多い。多聞天だけは独尊として祀られることもあり、その場合は毘沙門天呼ばれる東大寺戒壇院四天王像は、天平時代秀作として知られている。 八部衆 八部衆は「天龍八部衆」の略称である。釈尊従者のうちの、人ならざる姿形をしている8つ種族総称である。種族であって一柱ずつの神を指してはいない。天、龍、夜叉(やしゃ)、乾闥婆けんだつば)、阿修羅迦楼羅(かるら)、緊那羅きんなら)、摩睺羅伽まごらが)の8衆を指すのが通例このうちで最も有名な阿修羅は、アーリア人世界観における荒ぶる神アスラ起源がある。それがヒンドゥー教成立期英雄神インドラ帝釈天起源)の宿敵という神格成長した仏教には過去悔いて帰依する者という形で取り入れられ仏法守護神として位置付けられることになった六道のうちの修羅道司る興福寺の八部衆像のうちの阿修羅像は特に有名である。 夜叉乾闥婆は、いずれもパンジャーブの自然精霊起源がある。つまりはアーリア人インド侵入した時、最初に出会った自然ということになる。夜叉ヤクシャ女性形はヤクシー、ヤクシニー)、乾闥婆ガンダルヴァ女性形アプサラス)に由来しており、多分に河川神の特徴備えていた。 龍は龍王のこと。すなわちインド神話における蛇神の王ナーガラージャ仏教取り入れられた形である。八大龍王もその一種金剛力士 金剛力士は、本来は金剛杵を執って釈迦近く仏法守護する執金剛神という1つの神であったが、インドで2分身となった。2体に分かれていることから仁王(におう)とも呼ばれる。もとは武装した姿であったが、中国裸形一般的になった。口を開いた阿形と、口を閉ざした吽形の2体で造られる仁王門置かれることが多いが、三十三間堂興福寺の像のように、堂内須弥壇の一番外側)に配置するために作られたものもある。 十二神将 薬師如来とその信仰世界守護する十二の天部を十二神将総称する如来中心にした十二方に護法善神として配置され武神である。

※この「天部」の解説は、「仏像」の解説の一部です。
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