2025年度の税制改正を巡る自民、公明、国民民主3党の税制調査会幹部の会合が6日、国会内であり、大学生らを扶養する親の税負担を軽くする「特定扶養控除」について、対象となる学生の年収要件(103万円以下)を緩和することで合意した。具体的な引き上げ幅は自公が来週の会合で示す。課税水準である「年収103万円の壁」引き上げは、地方税である住民税より、国税である所得税の控除額の見直しを先に議論することで一致した。
特定扶養控除は19~22歳の学生を持つ親などが対象。アルバイトで働く学生の年収が103万円以下の場合、親は所得税63万円、住民税45万円の控除が受けられる。学生の年収が103万円を超えると、扶養対象外となり、親の税負担が増え、世帯としての年収が減るため、「働き控え」の一因となっていた。
自民によると、所得税の先行議論は国民民主が要望した。自治体が地方税収減を懸念していることを踏まえたとみられる。
国民民主によると、課税水準である「年収の壁」引き上げについて自公が物価上昇率に基づく案を示した。国民民主は1995年からの最低賃金の上昇率に基づき、課税水準を103万円から178万円に引き上げるべきだと改めて主張した。自公は国民民主の要望どおりだと所得税4兆円弱程度、住民税4兆円程度の減収になるとの政府試算を説明し、減収幅の小さい物価上昇率による検討を求めた。
引き上げの実施時期も隔たりがある。国民民主は25年1月1日からの実施を主張した。自公は法改正の必要性や源泉徴収をする会社の事務負担などを考慮して26年1月からの実施を念頭に置いており、議論は持ち越した。自民の宮沢洋一税調会長は記者団に「まだまだかなり距離感があることが分かった」と述べた。
前回会合で自公は、国民民主に「年収の壁」見直しの狙いの明確化を求めていた。国民民主の古川元久税調会長は会合後、就業調整対策、消費活性化のための減税による「手取り増」、生計費への配慮といった「全ての目的達成のため」と回答したと明らかにした。
国民民主が求めるガソリン税の上乗せ分(25・1円)の廃止について同党は年内の結論を求めた。1年先送りの方針を固めている自公は早期に結論を出すのは難しいとして、継続議論となった。
公明党の西田実仁幹事長は6日の記者会見で「特定扶養控除は文字通り壁になっている。学生らが就業調整していることもよく聞く。当然引き上げていく方向が正しいのではないか」と評価した。一方、国民民主の榛葉賀津也幹事長は会見で「(年収の壁見直しの)実施時期が26年からでは話にならない。納税者の有権者は待っている。ガソリン減税もやる気がないなら(9日に審議入りする)補正予算も賛成できるか分からない」と述べ、自公を揺さぶった。【杉山雄飛、小田中大、野間口陽、安部志帆子、遠藤修平】
3党の税制調査会による協議の骨子
・「特定扶養控除」の対象になる学生の年収要件(103万円)の緩和で一致
・「年収の壁」引き上げの議論は、住民税よりも所得税を先行することで一致
・自公が物価上昇率に基づく「年収の壁」引き上げ案を提示。国民民主は最低賃金による引き上げを主張。
・ガソリン減税について国民民主は年内の結論を要求。自公は早期結論は難しいと指摘。