グランドスラムを駆け抜けろ。
一人の若きアスリートがコートの上を疾風の如く駆け抜けて行った。そんな印象が残る大会であった。アメリカ・ニューヨークで開催された全米オープンテニス2014は、世界の頂点を目指す若き勇者たちが約2週間に渡り熱戦を繰り広げた。
中でも特筆すべきはやはり錦織圭選手の活躍だろう。日本男子としては81年ぶりとなるグランドスラム・ベスト4進出。これだけでも十分過ぎるほどの快挙であるが、それだけでは終わらず錦織選手の快進撃が更に続く事となる。
どの時点で彼が頂点に輝くトロフィーを意識したかそれは分からないまでも、準決勝の相手である世界ランク1位のノバク・ジョコビッチに勝利した瞬間、彼が抱き続けて来た長年の夢が現実のものへと大きく羽ばたいたように思う。
決勝の相手は世界ランキング16位のマリン・チリッチ。ランキングから言えば錦織選手が優ってはいるものの、優勝候補の筆頭にいたジョコビッチが破れると言うように、試合は終わってみなければ分からないまさに筋書きのないドラマが展開される。
準決勝の時と同様の試合運びが錦織選手に出来ていれば、優勝の行方は全く分からなかったのではないだろうか。グランドスラムの決勝と言えば、過去に多くの名勝負が生まれた事でも有名であり、大差が付いて勝負が決まると言う事はなかった。
その点を踏まえてみると、今大会の決勝は名勝負に相応しかったか疑問も残る。唸り声を上げて飛んで来るチリッチ選手の強烈なサーブに最後まで主導権を握られ、それまでの錦織らしさが影を潜め、彼の持ち味である攻撃的なテニスをさせてもらえなかった…。
試合内容としてはチリッチ選手の一方的な展開のまま終わり、内容に満足していない観客たちの表情もどこか沈みがちであったように思う。敗因は錦織選手自身が一番よく理解しているだろうが、世界の大舞台で堂々の準決勝である。世界に名を刻み、そして日本のスポーツ史に深く刻まれる偉業を達成したのは間違いない。
流暢な英語で表彰式のインタビューに応える錦織圭選手の姿が語っていた。「試合に勝つ事は重要な事であるけれど、負けて己を知る事の方が遥かに大切である…」と、私には聞こえた気がしている。
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