2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「紐を押す」の語源

「紐を押す」という言葉の起源はしばしばケインズに帰せられるが*1、Tim Taylorがそれについて以下のように書いている。 Although I have seen the "can't push on a string" metaphor attributed to John Maynard Keynes in a number of places, I haven't …

なぜユーロ圏のインフレ率はこれほど低いのか?

というワーキングペーパーがイタリア銀行から出ている。原題は「Why is inflation so low in the euro area?」で、著者はAntonio M. Conti、Stefano Neri、Andrea Nobili。 以下はその要旨。 Inflation in the euro area has been falling steadily since ea…

価格水準のニューケインジアン理論に向けて

というBOEの論文(Staff Working Paper)が出ている。原題は「Towards a New Keynesian theory of the price level」で、著者はJohn Barrdear。 以下はその要旨。 Modifying the standard New-Keynesian model to replace firms' full information and stick…

ロジスティック回帰なんか嫌いだ

とChris Blattmanが毒づいている(H/T Economist's View)。 該当ブログエントリのタイトルは「Statistician Neal Beck just justified my longstanding hatred and loathing of logit(統計学者ニール・ベックはロジット分析に対する私の積年の嫌悪と忌避を…

富の測定:景気後退、持続可能性、および格差

以前ここで紹介した富とレントの問題を、スティグリッツが表題のNBER論文としてまとめたようである(もう一つのテーマとして「欠損資本」も取り上げられている;原題は「The Measurement of Wealth: Recessions, Sustainability and Inequality」)。 以下は…

マイケル・ウッドフォードとフィッシャー式逆さ眼鏡派

ニューケインジアンの重鎮マイケル・ウッドフォードが、コロンビア大学の同僚のMariana Garcia-Schmidtと共に新フィッシャー派(フィッシャー式逆さ眼鏡派)の議論を初めて取り上げ、話題を呼んでいる。直近ではDavid Glasnerがその件について書いているが、…

ショイブレを突き動かしているもの

Fabio Ghironiというワシントン大学教授が、表題の件を分析したVoxEU記事を書いている(H/T Economist's View)。記事によれば、メルケル首相との齟齬もものともせずにギリシャに対し実現不可能とも思える要求を突き付けているウォルフガング・ショイブレ財…

瞬時に論破されたメルケル=ショイブレ・ドクトリン

ピーター・ドーマンが、ギリシャの債務減免を否定したメルケルとショイブレの発言を槍玉に挙げている。それによると、メルケルは「昔ながらの3〜4割の債務削減は通貨同盟においては起きえない」と発言し、ショイブレは「債務削減と通貨同盟の参加国の地位は…

憂鬱なユーロ擁護者

経済学者はユーロの政治学を分かっちゃいねえ、という昨日紹介したマクナマラ論説の指摘に、クルーグマンが表題のエントリ(原題は「Annoying Euro Apologetics」)で以下のように反論している。 The point, however, is that while the European project ha…

これがユーロ危機について、あるいは米ドルについても、経済学者が分かっていないことだ

Kathleen R. McNamaraという国際政治学者が表題のWaPo論説を書いている(原題は「This is what economists don’t understand about the euro crisis – or the U.S. dollar」;H/T Economist's View、本石町日記さんツイート)。 以下はその最後の段落。 Euro…

カモとしての日本企業の後継

Chris Arnadeという人が、元ウォール街トレーダーという視点からギリシャ危機についてThe Atlanticに書いている。(H/T Economist's View)。 以下はその冒頭部。 One of the first lessons I was taught on Wall Street was, “Know who the fool is.” That …

真剣ではないバーナンキ

クルーグマンが、我が意を得たり、とばかりにバーナンキのブログ記事から以下の一節を引用している。 The slow recovery from the crisis of the euro zone as a whole is the result, among other factors, of (1) political resistance that delayed by ma…

ヴェーバー「金融政策は消火はできるが家を建て直すことはできない」

前回エントリではNYTで報じられた現ブンデスバンク総裁のイェンス・ヴァイトマンの考えを紹介したが、その前任者のアクセル・ヴェーバーの考えがCecchetti & Schoenholtzブログのインタビュー記事で紹介されている(H/T Economist's View)。 以下はそこから…

中央銀行は最後の貸し手たる義務はない?

ピーター・ドーマンが、NYT記事で引用されたイェンス・ヴァイトマン・ドイツ連銀総裁の以下のコメントに対し、これは見過ごせない(I don’t think we should let this pass)、と反応した。 “Central banks, although they have the means, have no mandate,…

EITCは格差解消の決め手となるか?

「Effective Policy for Reducing Inequality? The Earned Income Tax Credit and the Distribution of Income」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はHilary W. Hoynes(UCバークレー)、Ankur J. Patel(米財務省)。 以下はその要旨。 In th…

中銀の異なるタイプの債務不履行と、シニョリッジの果たす中心的な役割

ここで紹介した論文と同様のテーマの表題の論文をRicardo Reisが書いている(原題は「Different types of central bank insolvency and the central role of seignorage」)。 以下はその結論部。 A recent wave of work clarifies that central banks can b…

欧州がQEを試す価値ってあるの?

OFCE(Observatoire français des conjonctures économiques/[英]French Economic Observatory)というパリ政治学院(Sciences-Po)付属の研究所が、欧州議会の経済金融委員会の金融対話の資料として、これまでの日米英の量的緩和政策の欧州にとっての教…

マクロ経済安定化のための政府購買の最適利用

というNBER論文をエマニュエル・サエズらが書いている(ungated版)。原題は「The Optimal Use of Government Purchases for Macroeconomic Stabilization」で、著者はPascal Michaillat(LSE)、Emmanuel Saez(UCバークレー)。 以下はその要旨。 This pap…

時間と市場商品との間の代替の弾力性:大不況における実証結果

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Elasticity of Substitution Between Time and Market Goods: Evidence from the Great Recession」で、著者はAviv Nevo(ノースウエスタン大)、Arlene Wong(同)。 以下はその要旨。 We document…

フリーランチなどというものは存在する

ジョン・クイギンが、ここで紹介した執筆中の本「世界で二番目にシンプルな経済学(Economics in Two Lessons)」の草稿の新たな箇所を公開している(Crooked Timber、自ブログ;H/T Economist's View)。今回公開した箇所では、フリードマンやハインライン…

株価崩壊が中国経済の破綻を意味しない理由

本石町日記さんもツイートされているが、スティーブン・ローチが表題のSlate記事で中国経済に対する楽観論を述べている(原題は「Why the Stock Meltdown Doesn’t Spell Doom for China」;H/T Economist's View)。ローチに言わせれば、西側は中国経済を西…

カモノハシとカンガルーと尖度

日本語にしてしまうと意味不明だが、Dave Gilesが、スチューデントとして知られるW.S.ゴセットの1927年の論文から以下の箇所を引用している(H/T Economist's View)。 (拙訳) 「尖度」という言葉に馴染みが無い人のために言っておくと、mesokurticは「β2…

価格の無い市場で品不足を解消する:献血からの考察

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Solving Shortage in a Priceless Market: Insights from Blood Donation」で、著者はTianshu Sun(メリーランド大学)、Susan Feng Lu(パデュー大学)、Ginger Zhe Jin(メリーランド大学)。 以下は…

西海岸の港湾争議は第一四半期のGDPの減速に寄与したか?

表題のNY連銀ブログ記事が、西海岸の港湾争議が第一四半期のGDPの減速に与えた影響を推計している(原題は「Did the West Coast Port Dispute Contribute to the First-Quarter GDP Slowdown?」;H/T Economist's View;FRBサイトにも同時投稿されている)。…

人的および非人的資本の蓄積、再訪

というNBER論文が上がっている(ungated版、ungated版の要旨、3年前のスライド資料)。原題は「The Accumulation of Human and Nonhuman Capital, Revisited」で、著者はBarbara M. Fraumeni(中央財経大学)、Michael S. Christian(ウィスコンシン大学)、…

量的緩和の伝達経路:中銀の準備預金の役割

というSF連銀のWPが出ている。原題は「Transmission of Quantitative Easing:The Role of Central Bank Reserves」で、著者はJens H. E. Christensen(SF連銀)、Signe Krogstrup(スイス国立銀行)。 以下はその要旨。 We argue that the issuance of centr…

ギリシャ危機に纏わる9つの神話

ギリシャのヤニス・バルファキス財務相が、自ブログで、4年間同僚だったというジェームズ・ガルブレイスの表題のPolitico論説を引用している*1(原題は「Nine Myths About the Greek Crisis」;H/T Economist's View)。 以下はその概要。 国民投票はユーロ…

価格だけでは話が済まなくなる時

2012年にロイド・シャープレーと共にノーベル経済学賞を受賞したアルヴィン・ロスが、ミネアポリス連銀のRegion誌インタビューの中で、マッチング市場と通常の市場の違いについて説明している(H/T Conversable Economist)。 Well, it might be easiest to …

価格管理の厚生費用は死荷重のみに非ず

マンキューが、ある経済学入門の教科書を読んで、その間違いを指摘している。彼が槍玉に挙げたのは、家賃統制や最低賃金といった価格管理による費用は、厚生経済学でハーバーガーの三角形として表される死荷重になる、という記述である。それについて彼は以…

金融政策でバブルを防止すべきか?

という問いがIMFブログで投げ掛けられている(H/T Economist's View)。著者たち(Stefan Laseen、Andrea Pescatori、Jarkko Turunen)が論文で提示した答えは、否、である。彼らによれば、その仕事はマクロプルーデンシャル政策に任せるべきだという。 彼ら…