2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

グローバル化の反転と金融政策

前回エントリで紹介したトーマス・ジョルダン(Thomas Jordan)スイス国立銀行総裁の講演の前半では、グローバル化の影響について語っている。労働、資本、技術という成長の3つの要素について、それぞれ、国際的な分業、国際的な投資の活発化、知識の交換の…

ウクライナ戦争のスイス国立銀行の金融政策への影響は?

かつて円と共に増価傾向にあったスイスフランが、現在は減価傾向に転じた円と対照的に現在も増価傾向を維持している中、スイスの金融政策をどうするか、についてトーマス・ジョルダン(Thomas Jordan)スイス国立銀行総裁が4/29の第114回株主総会での表題の…

大不況の銀行取り付け騒ぎとしてのモデル化:課題

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のサイト)。原題は「Modeling the Great Recession as a Bank Panic: Challenges」で、著者はLawrence Christiano(ノースウエスタン大)、Hüsnü Dalgic(マンハイム大)、Xiaoming Li(…

米国のインフレはユーロ圏より高いのか?

4/24エントリではファーマンのWSJ論説をきっかけにしたサマーズのツイートを紹介したが、クルーグマンもファーマンの議論(明示していないが、たぶんこれなど)をきっかけに4/24に以下のツイートを行っている。 Hmm. An interesting data puzzle. Jason Furm…

コント:ポール君とラリー君――軟着陸は可能かの巻

主にツイッターを舞台にしたサマーズとクルーグマンのインフレを巡る暗闘をこれまで何度か取り上げてきたが(ここ、ここ、ここ、ここ、ここ、ここ、ここ、ここ)、直近のツイートでサマーズがクルーグマンのツイートを正面から取り上げた。 I am glad to see…

ファーマン「コロナ禍において実質報酬は生産性よりも伸びた」

前回エントリではサマーズのツイートならびにそれをきっかけにしたジェイソン・ファーマンとオースタン・グールズビーのやり取りを紹介したが、その中でグールズビーが「ではなぜ実質生産性を名目報酬の伸びと比べるのか?」と問い掛けた。これにサマーズが…

過熱経済は実質賃金を上昇させない

ということをサマーズがファーマンのWSJ論説にリンクしつつ4/13ツイートで強調している。 @jasonfurman has a smart article making the point that in neither economic theory nor empirical experience does a hot economy produce higher real wages. Th…

加法成長

というNBER論文(原題は「Additive Growth」)をNYUのThomas Philipponが上げている。以下はungated版の結論部。 TFP growth is not exponential. New ideas add to our stock of knowledge; they do not multiply it. TFP has been growing linearly over t…

在宅勤務の増加は金融安定性へのリスクとなるかもしれない

という経済コメントをリクスバンクが出している(H/T Mostly Economics)。原題は「Increased teleworking could be a risk to financial stability」で、著者は金融安定性部門のGustav Alfelt、Niclas Olsén Ingefeldt、Martin Regnér。 以下はそのニュース…

住宅市場予想

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Housing Market Expectations」で、著者はTheresa Kuchler(NYU)、Monika Piazzesi(スタンフォード大)、Johannes Stroebel(NYU)。 以下はその要旨。 We review the recent literature on the deter…

ドナルド・トランプのコロナワクチン支持を用いた公衆衛生へのカンフル剤:大規模広告実験

というNBER論文が上がっている。原題は「Using Donald Trump’s COVID-19 Vaccine Endorsement to Give Public Health a Shot in the Arm: A Large-Scale Ad Experiment」で、著者はBradley Larsen(スタンフォード大)、Marc J. Hetherington(ノースカロラ…

ロシアのウクライナ侵攻におけるルーブルについてのミニマリストモデル

というNBER論文が上がっている*1。原題は「A Minimalist Model for the Ruble During the Russian Invasion of Ukraine」で、著者はGuido Lorenzoni(ノースウエスタン大)、Iván Werning(MIT)。 以下はその要旨。 This note isolates an overlooked econo…

政府債務と課税のp理論

というNBER論文をサージェントらが上げている(ungated版)。原題は「A p Theory of Government Debt and Taxes」で、著者はWei Jiang(香港科技大)、Thomas J. Sargent(NYU)、Neng Wang(コロンビア大)、Jinqiang Yang(上海財経大)。 以下はその要旨…

ストレスシナリオの設計

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Designing Stress Scenarios」で、著者はNYUのCecilia ParlatoreとThomas Philippon。 以下はその要旨。 We develop a tractable framework to study the optimal design of stress scenarios. A princi…

ゾンビ貸付:理論的、国際的、歴史的視点

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「Zombie Lending: Theoretical, International and Historical Perspectives」で、著者はViral V. Acharya(NYU)、Matteo Crosignani(NY連銀)、Tim Eisert(エラスムス・ロッテルダム大)、Sa…

大規模ショックの一般均衡波及効果の推計

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Estimating General Equilibrium Spillovers of Large-Scale Shocks」で、著者はKilian Huber(シカゴ大)。 以下はその要旨。 Large-scale financial and macroeconomic shocks directly affect some f…

バブルとイノベーションの価値

というNBER論文が上がっている(2020年7月時点のリッチモンド連銀WP)。原題は「Bubbles and the Value of Innovation」で、著者はValentin Haddad(UCLA)、Paul Ho(リッチモンド連銀)、Erik Loualiche(ミネソタ大)。 以下はその要旨。 Booming innovat…

コロナ禍での財政刺激策と商業銀行貸し出し

というNBER論文が上がっている。原題は「Fiscal Stimulus and Commercial Bank Lending Under COVID-19」で、著者はJoshua Aizenman(南カリフォルニア大)、Yothin Jinjarak(ヴィクトリア大学ウェリントン)、Mark M. Spiegel(SF連銀)。 以下はその要旨…

一体不可分:流動性に依存する世界における金融政策と財政政策

というNBER論文をギレルモ・カルボとアンドレ・ベラスコが上げている。原題は「Joined at the Hip: Monetary and Fiscal Policy in a Liquidity-Dependent World」で、著者はGuillermo A. Calvo(コロンビア大)、Andrés Velasco(LSE)。 以下はその要旨。 …

クルーグマン「コアインフレ理論を注視せよ、ただしブルウィップ効果に気を付けよ」

デロングが、インフレについて考察したツイート*1で、プーチンのウクライナ侵攻はサマーズの懸念するインフレスパイラルの可能性をデロングの主観確率にして5%から40%に高めた、と述べたところ、クルーグマンはそれについては同意できない、として以下のよう…

コロナ禍の最中と事後の中銀の事業継続計画

というBIS論文(原題は「Business continuity planning at central banks during and after the pandemic」)をMostly Economicsが紹介している。以下はその要旨。 In August 2021 the Consultative Group on Risk Management (CGRM) set up a task force to…

公共財の提供の失敗:アフガン軍が戦わなかった理由

というセントルイス連銀の季刊誌Review掲載予定論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Failing to Provide Public Goods: Why the Afghan Army Did Not Fight」で、著者はRohan Dutta(マギル大)、David K. Levine(欧州大学院)、Salvatore Modic…

ソブリン債の再編:コミットメント対柔軟性

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Sovereign Bond Restructuring: Commitment vs. Flexibility」で、著者はJason Roderick Donaldson(セントルイス・ワシントン大)、Lukas Kremens(ワシントン大)、Giorgia Piacentino(コロンビア大…

なぜ米国のインフレは他の国より高いのか?

という小論がSF連銀のエコノミックレターとして上がっている。原題は「Why Is U.S. Inflation Higher than in Other Countries?」、著者はÒscar Jordà、Celeste Liu、Fernanda Nechio、Fabián Rivera-Reyes。著者たちの答えは簡単で、米国ではコロナ禍対策で…

クルーグマン「総需要の鈍化は既に始まっている可能性が高い」

ここで紹介したインフレに関する3/18ツイートの補足のようなツイートをクルーグマンが3/28に呟いていたので、以下に紹介しておく。 So, this really is a very tight labor market. Yesterday in New Jersey 1/ But with all the talk about being behind th…

クルーグマン「アマゾンの組合結成は本当にすごいこと」

クルーグマンのツイートをもう一丁。以下はアマゾンの組合結成のニュースを受けた4/2の連ツイ。 This is seriously a big deal. The decline of unions has been central to a lot of what has gone wrong in America this past half century 1/ Hard for Am…

クルーグマン「インフレは世界的現象」

インフレをもたらしたとしてサマーズが米財政刺激策を批判したことを前回エントリでは紹介したが、それには直接言及していないものの、クルーグマンが4/1ツイートで欧州のインフレを援用して違う見方を呟いている。 Given all the agita over U.S. inflation…

米インフレの原因

についてスコット・サムナーが、3/28Vox記事や、エズラ・クラインがサマーズをインタビューした3/29NYT記事を基に考察している(H/T タイラー・コーエン)。 それによると、以下がインフレの要因になっていることについては経済学者の間で概ねコンセンサスが…

経済の運営者としての大統領

というNational Affairs記事(原題は「Presidents as Economic Managers」、著者はマンハッタン政策研究所のBrian Riedl)をMostly Economicsが紹介している。以下はその引用部。 Purely partisan narratives are often wrong; the familiar cliché that the…

出生と貯蓄:中国の二人っ子政策の家計貯蓄への影響

というNBER論文が上がっている(昨年12月時点のungated[SSRN]版)。原題は「Fertility and Savings: The Effect of China’s Two-Child Policy on Household Savings」で、著者はScott R. Baker(ノースウエスタン大)、Efraim Benmelech(同)、Zhishu Yan…