2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

労働生産性と全要素生産性の違い

昨日、生産性とデフレについて書いたが、偶然にも同日に池田信夫氏が同じテーマについて書いていた。そこでは法專充男氏の著書が紹介されていると同時に、同氏の以前の論文も紹介されていた。その論文については1/4のエントリの注で既に触れたが、バラッサ=…

デフレは“トロイの木馬”によりもたらされたのか?

1ヶ月前に実質為替レートについて書いた時に、日本のデフレの原因を海外に求める見方の矛盾を指摘した。そうした見方は、簡単に言うと 日本の生産性が低いため、海外新興国の台頭により安い輸入品が流れ込み(もしくはそうした安い商品との市場での競合によ…

効率的市場仮説と合理的期待形成:シカゴ学派の中位値的(?)見解

最近ニューヨーカーのジョン・キャシディのブログに掲載されたシカゴ学派の学者への一連のインタビューは、日本でも話題を集めた。特にファーマのインタビューが注目され、twitter上のあちこちでつぶやかれたほか、equilibristaさんによる抄訳もできた。 米…

コメント欄の方針を変更します

当ブログはこれまでスパムコメントや二重投稿以外は削除しないという方針を採ってきましたが、すみませんがもう一つ削除の基準を付け加えさせていただきます。 当ブログのコメント欄を長期に亘って個人のツイッターのように使用するコメンターのコメントは削…

バーナンキ再任に関する経済学者の見方・その2

昨日は表題の件のWSJブログのまとめ記事を紹介したが、Economixにも同様のまとめ記事が上がっていたので、以下に拙訳で紹介する。WSJブログ版と丸被りしている引用もあれば、同じエントリからの引用でも別の部分を引いているものもあったりするのが面白いと…

バーナンキ再任に関する経済学者の見方

WSJブログで表題の件のまとめ記事が上がっていたので、以下に拙訳で紹介する。 Brad DeLong, U.C. Berkley (バーナンキは)もはやインフレ目標を主唱する学者ではない。彼は、今や、FOMCのコンセンサスを代表する声である。同時にFOMCの一員として、内部で…

実質政策金利の推移

FRBの2000年代前半の低金利政策を批判する経済学者の急先鋒であるジョン・テイラーが、1/12ブログエントリで以下のような図を紹介している。これによると、コアPCE(Personal Consumption Expenditures=個人消費支出)インフレ率*1(前年同期比)で実質化し…

低金利と住宅バブルに関する経済学者の見方

昨日のエントリの脚注で触れたWSJブログの経済学者アンケート抜粋を以下に訳してみる。昨日のエントリに頂いたコメントへの回答になっている部分もあるかもしれない。 ちなみに、アンケートの対象はNBER(National Bureau of Economic Research)の金融政策…

学界vsウォール街:2000年代前半の低金利についての見方

バーナンキの再任に黄信号が灯りつつあるが(cf. ここ、ここ)、最近彼の言動で議論を呼んだのは、年初のAEAでのスピーチである。そのスピーチで彼は、2000年代前半の政策金利が低すぎたという見方に反論した。 2000年代前半の低金利については、昨年半ばの…

クルーグマンの中国通貨政策批判への批判

昨年の12/31に、クルーグマンが中国の通貨政策を批判するop-edを書いた(邦訳はここ、ここ)。そこで彼は、中国の重商主義的な元安政策によって、米国の140万人の雇用が失われる、と批判した。 このクルーグマンの論説を、外交評論家の岡崎久彦氏が批判して…

事後の保険料としての銀行課税

ダイアモンドとカシャップが1/20NYT論説で提案した銀行課税の方法が話題を集めている(Economist's View、マンキューブログ、Free Exchange)。 「我々の投資を取り戻す(Return Our Investment)」と題されたその論説で、彼らは、政府による救済を受けた銀…

投資に関する9つの考察

以前のエントリで簡単に触れたが、昨年12月半ばにマンキューが投資に関する興味深い考察をしているので、以下に訳してみる。 上のグラフは、設備とソフトウェアへの実質投資の四半期ベースの前年同期比だ。左軸のスケールに注目。投資支出とは非常に変動性が…

GDP連動債構想

昨年末に、ロバート・シラーが持論のGDP連動債構想についてNYTに書いた*1。彼の構想するGDP連動債とは、米国の今年の名目GDPが14兆ドルとすると、その一兆分の1の14ドルを年間の配当として支払う証券である(ただし支払いは四半期ごとに行なう)。彼はこの証…

コント:ポール君とグレッグ君(2010年第1弾)

2010年最初の衝突は欧州と米国の比較を巡って。クルーグマンが、1/11のOp-Ed(邦訳はここ、ここ、ここ)で、米国が欧州から経済面で学ぶこともある、と書いたのに対し、マンキューがやんわりと皮肉った。 グレッグ君 今日のポール君の論説を読んだ人たちは、…

実質金利均等化の意味

池田信夫氏が実質金利均等化について書いている。同様の議論は以前Baatarismさんが紹介された藤沢数希氏もしており、小生はBaatarismさんのコメント欄でそのおかしな点を指摘した。簡単に言えば、金融市場が裁定を図るのはあくまでも名目金利であり、実質金…

菅直人が財務大臣になったのは良いこと

昨年12/8エントリで紹介した“ヴェブレン”君がそう吼えている。以下は氏の1/9エントリの拙訳。 日本:菅直人 菅直人が日本の財務大臣になったのはとても良い兆候だ。総理の鳩山と違って、菅直人は本当に頭が良いしリベラルだ。彼は政府の官僚を標的にすること…

ある障害に関する中間報告

今日はふと思いついて書いたネタエントリ。 現時点の障害の対応状況を報告せよとのことなので、以下に簡単にメモします。 相変わらずシステムの状態は不安定です。対応としては、せっかく中央銀行制度というシステム制御ツールが長年の歴史を経てこの経済シ…

財政刺激が効果を発揮するタイミング

昨年の12/23にメンジー・チンが、ドイツ銀行のレポートを引用して、財政刺激策が効果を発揮するタイミングが、水準で見る場合と成長率で見る場合では違ってくることを強調した。それをさらにクルーグマンが12/27に引用して、話のポイントをより模式的な数値…

りんごとみかんの比較

night_in_tunisiaさんが訳された昨年末のジョン・テイラーとメンジー・チンの両ブログエントリでは、チンの昨年11/16のエントリが経済政策評価の基準として言及されている。同エントリはギリシャ文字を散りばめた数式が議論の主要な部分をなしていて少しとっ…

シラー、ブラインダー、ラジャンらの2010年の予言

今日はまたWSJブログネタで、表題の1/5エントリの拙訳。 米国経済学会(The American Economic Association)年次総会が、ここ数日間アトランタで開かれていた。そこには、米国のトップクラスの経済学者が出席していた。その幾人かによる2010年の予言: ロバ…

経済が需要制約型になる時

Nick Roweが、WCIブログの1/3エントリで、供給制約型経済と需要制約型経済について興味深い考察をしていた。ここで前者はキューバや北朝鮮のような経済を指しており、後者はG7のような先進国経済を指している。通常の解釈では、経済があまり発展しておらず、…

温暖化対策と負のコスト

マンキューが昨年12/30のエントリで紹介しているが、昨年末、ブルッキングス研究所のテッド・ガイヤー(Ted Gayer)がクルーグマンを軽く批判した論説に対し、Free Exchange*1、デロング、エズラ・クライン、そして当のクルーグマンが相次いで噛み付くという…

マルクス経済学は戦闘中に行方不明?

拙ブログに松尾匡さんのコメントを頂いたから、というわけでもないのだが、ジョン・クイギンが表題のエントリを書いていたので、以下に拙訳でご紹介(Economist's View経由)。 金融危機は、当然ながら、経済思想家としてのカール・マルクスの評価を高めた。…

ジェレミー・スタイン、米国資本主義の今後を語る

昨日紹介したラジャン・インタビューの姉妹編のような形で、年末のWSJブログにハーバード大教授のジェレミー・スタイン(Jeremy Stein)のインタビューが掲載されていた。ジェレミー・スタインといってもあまり有名ではないかもしれないが、昨年の2月から7月…

ラジャン、米国型資本主義の今後を語る

昨日に引き続きWSJブログネタ。昨年末のラグラム・ラジャンへのインタビューの拙訳。 シカゴ・ブース・スクール・オブ・ビジネスの経済学者ラグラム・ラジャンは、その先見性で名を知られている。2005年、当時のFRB議長アラン・グリーンスパンを称える会合で…

ゴールドマン・サックスの2010年の10の予測

正月のWSJブログに、ゴールドマン・サックスの主任エコノミスト、ジャン・ハッチウス(Jan Hatzius)の2010年の10の予測がQ&A形式で出ていた。以下はその拙訳。 住宅価格は底を打ったか? 多分まだだと思うが、確信は持てない。 銀行は貸し出しにもっと意欲…

マンキューモデルと流動性の罠

池田信夫氏がこのところ頻りにマンキューの教科書を引き合いに出してリフレ派を批判している(ここ、ここ、ここ、ここ)。池田氏は特に、同教科書の14章に記述された動学的モデルに良く言及しているが、同氏のエントリやマンキューブログの昨年4/6エントリで…

バラッサ=サミュエルソン効果・再訪

再訪、と言っても、拙ブログでまともに取り上げるのは初めてだが、昨日エントリの冒頭で触れた池田信夫氏が渡辺努氏の小論を引用しており、そこでバラッサ=サミュエルソン効果(正確には「高須賀効果」)が論じられているので、以下で復習してみる。 Wikipe…

失業は経済のセクター間調整によるものか?

池田信夫氏が取り上げているが、タイラー・コーエンが経済のセクター間調整について書いている。基本的には以前ここで取り上げた議論の蒸し返しであるが、今回はEconbrowserのメンジー・チンが懐疑論者として登場している。 チンは、セクター間調整が失業を…

経済学者はいつになったら学ぶのか?

12/23に紹介したコラムに続き、Mark Thomaがmoneywatchで再び金融政策の限界を問うている。 Prior to the recent crash of financial markets, there was a widespread belief that monetary policy was all that was needed to stabilize the economy. By f…