2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

中心は持つのか?

以前、イェイツの「再臨」(Second Comming)という詩の一節をServaas Stormがユーロ圏の先行きに絡めて引用したのを紹介したことがあったが、サマーズが表題のProject Syndicate論説(原題は「Will the Center Hold」)で米国と世界の先行きに絡めて引用し…

金利は既に正常化されている

Nick Roweが、中銀は景気が落ち込むと金利を一時的に自然利子率以下に引き下げるが、景気が回復すれば金利を正常化する、という考え方に異を唱えている。 Here's an alternative way of viewing the world: something (the financial crisis) happened that …

ルール対裁量:金融政策の実施を巡る議論の評価

昨日紹介したミシュキン論文が提示されたルールと裁量を巡るボストン連銀の10/13-14のコンファレンスでテイラーも講演しており、そこで提示した表題の論文(原題は「Rules Versus Discretion: Assessing the Debate Over the Conduct of Monetary Policy」)…

裁量は守る、ルールは生かす

金融政策の裁量とルールの折衷案を提示した「Making Discretion in Monetary Policy More Rule-Like」というNBER論文をミシュキンが書いている(10月のボストン連銀のコンファレンスでプレゼンされたungated版)。 以下はその要旨。 This paper argues that …

ミルトン・フリードマンの会長講演の短期と長期の影響

少し前にマンキューとリカルド・ライスのフリードマンAEA会長講演に関する論文を紹介したことがあったが、今度はトーマス・サージェントとロバート・ホールが表題のNBER論文(原題は「Short-Run and Long-Run Effects of Milton Friedman's Presidential Add…

国債入札市場から見た量的緩和の効果

「The Effects of Quantitative Easing: Taking a Cue from Treasury Auctions」というNBER論文をUCバークレーのYuriy GorodnichenkoとWalker Rayが書いている(ungated版)。 以下はその要旨。 To understand the effects of large-scale asset purchase pr…

あらゆることどもの収益率、1870-2015

「The Rate of Return on Everything, 1870-2015」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はÒscar Jordà(SF連銀)、Katharina Knoll(ドイツ連銀)Dmitry Kuvshinov(ボン大)、Moritz Schularick(同)、Alan M. Taylor(UCデービス)。 以下は…

ロドリックの十戒

昨日紹介したスティーブ・キーンの33ヶ条の論題を巡る論争(支持側のガーディアン紙記事、およびそれに対する英経済学者の一団の反論)にダニ・ロドリックが反応し、経済学者向けと非経済学者向けそれぞれに彼自身の考えを表した十戒を書き下ろしている(H/T…

33ヶ条の論題

今月12日にスティーブ・キーン(Steve Keen)らが、マルティン・ルターの95ヶ条の論題よろしく経済学改革のための33ヶ条の論題を新古典派が牛耳る(と彼らが考える)経済学界に突き付け、LSEの玄関に「打ち付ける」というパフォーマンスを行った(H/T Mostly…

米復興・再投資法は最も助けを必要とする人を助けたのか? 郡レベルの分析

リーマンショック後の財政政策の恩恵が本当に必要な人に届いていたのかを分析した表題のNBER論文が上がっている(著者の一人のサイトでungated版が読める)。論文のタイトルは「Did the American Recovery and Reinvestment Act Help Those Most in Need? A …

金融パニックを備えたマクロ経済モデル

というNBER論文を清滝信宏氏とガートラーらが書いている。原題は「A Macroeconomic Model with Financial Panics」で、著者はMark Gertler(NYU)、Nobuhiro Kiyotaki(プリンストン大)、Andrea Prestipino(FRB)。 以下はその要旨。 This paper incorpora…

市場が不完備の場合の政府の支払い義務の評価

というNBER論文をコトリコフらが書いている(ungated版)。原題は「Valuing Government Obligations When Markets are Incomplete」で、著者はJasmina Hasanhodzic(バブソン大)、Laurence J. Kotlikoff(ボストン大)。 以下はその要旨。 Determining how …

株式市場は企業をより生産的にするか?

というNBER論文が上がっている。原題は「Does the Stock Market Make Firms More Productive?」で、著者はBenjamin Bennett(オハイオ州立大)、René Stulz(同)、Zexi Wang(ベルン大)。 以下はその要旨。 We test the hypothesis that greater stock pri…

行動的不注意

「Behavioral Inattention」というNBER論文をハーバード大のXavier Gabaixが上げている。以下はその要旨。 Inattention is a central, unifying theme for much of behavioral economics. It permeates such disparate fields as microeconomics, macroecono…

金融の発展が経済成長に与える影響

についての実証結果をサーベイしたWPがECBより出されている(H/T Mostly Economics)。論文のタイトルは「Evidence on finance and economic growth」で、著者はAlexander A. Popov。以下はその一般向け要旨で挙げられた4つのポイントの概要。 金融の発展は…

初期のハイエクに知的限界を課したのは誰だったのか?

David Glasnerが直近エントリの冒頭で、初期のハイエクの矛盾について以下のように指摘している(H/T Mostly Economics)。 For a month or so, I have been working on a paper about Hayek’s early pro-deflationary policy recommendations which seem to…

財政緊縮策がナチスを台頭させた・補足

前回エントリは意外に多くの反響を頂いた。紹介したNBER論文のungated版は見当たらなかったが、内容を取り上げたVox記事「Study: austerity helped the Nazis come to power」があったので、以下に引用してみる。 同記事によると、大恐慌がナチスを台頭させ…

財政緊縮策がナチスを台頭させた

という主旨のNBER論文が上がっている。論文のタイトルは「Austerity and the rise of the Nazi party」で、著者はGregori Galofré-Vilà(ボッコーニ大)、Christopher M. Meissner(UCデービス)、Martin McKee(ロンドン大学衛生熱帯医学大学院)、David St…

新たな金融政策伝達経路としてのDSR

BIS Quarterly Reviewの12月号の特集記事(Special features)の一つで、金融政策が民間部門の債務返済比率に与える影響についての研究結果を示している(H/T Mostly Economics)。記事のタイトルは「Is there a debt service channel of monetary transmiss…

コント:ポール君とグレッグ君(2017年第3弾)・補足

6日エントリで紹介したマンキューのブログエントリに以下の追記がなされていた。 Update: Robert Waldmann looks at the issue, concluding "no one has made an algebra mistake. Taxes on capital and capital income are different." (拙訳) 追記:ロバ…

資金循環表今昔

先月末にイタリア銀行が資金循環勘定をテーマとしたコンファレンスを開催し、そのオープニング講演で同行のルイジ・シニョリーニ(Luigi Federico Signorini)副総裁が資金循環勘定の歴史を振り返っている(H/T Mostly Economics)。 Real national accounts …

紙幣印刷の経済学

High Security Printing Asiaなる会議*1が今月初めにメルボルンで開催され、オーストラリア準備銀行のAssistant GovernorのLindsay Boultonがオープニングスピーチを行った(H/T Mostly Economics)。 以下はその概要。 高度な証券印刷のアジア市場は、経済…

中央銀行が生み出したモラルハザードへのハイエクの批判

をローレンス・ホワイト(Lawrence White、ジョージ・メイソン大&ケイトー研究所)が紹介している(H/T Mostly Economics)。ホワイトは、比較的最近(1999年)に全文が英語に翻訳されたハイエクの1925年の論文「Monetary Policy in the United States Afte…

7文で表す150年の金融政策史

と題したエントリ(原題は「History of 150 years of monetary policy in 7 sentences….」)でMostly Economicsが、ジョン・ウィリアムズSF連銀総裁の11/17の講演から以下の7文を引用している。 During the late 19th century, most economies were on the g…

債務の持続可能性の新指標

というNBER論文をブランシャールらが書いている(ungated版)。原題は「A New Index of Debt Sustainability」で、共著者はMitali Das(IMF)。 以下はその要旨。 Debt sustainability is fundamentally a probabilistic concept: Debt is rarely sustainabl…

コント:ポール君とグレッグ君(2017年第3弾)

久々のガチンコ対決キター、という感じである。 ポール君 昨日出席したある会合で、元政府職員の人から、とても良い質問を受けた。著名な共和党系経済学者で、彼らの党がつい最近上院をごり押しで通過させた、良いところが見当たらない恐ろしいほど悪い税制…

L字型のフィリップス曲線

「The L-Shaped Phillips Curve: Theoretical Justification and Empirical Implications」というNBER論文をコチャラコタが書いている。 以下はその要旨。 This paper has two parts. In the first part, I demonstrate that, in the absence of price and w…

トランプ減税は10年でGDP4%増のハードルを越えられるか?

12/2エントリの末尾で100人の経済学者が署名したトランプ減税法案を支持する公開書簡に触れたが、その後半部は以下の通り。 The enactment of a comprehensive overhaul — complete with a lower corporate tax rate — will ignite our economy with levels …

トランプ減税と経済学界・続き

昨日エントリの最後でリンクしたサマーズ=ファーマンの「Dear Colleagues: You responded, but we have more questions about your tax-cut analysis」という論説の概要は以下の通り。 多くの点を明確にしてくれことに感謝。特に、「長期的な結果に収束する…

トランプ減税と経済学界

トランプ減税の是非を巡って米経済学界が真っ二つに割れている。 まず、11/25付けのWSJに、9人の経済学者がトランプ減税を支持する「How Tax Reform Will Lift the Economy」という公開書簡をムニューシン財務長官宛てに書いた。この書簡は購読者しか読めな…