IT本

2024/12/08

「世界一流エンジニアの思考法」の感想

世界一流エンジニアの思考法」を読んでみた。
気づきをラフなメモ書き。

【1】試行錯誤は悪であること。
本番障害の原因調査でも、手当たり次第、ログから調べて探すのは生産性が悪い。
事実から仮説を1つずつ立てて、その仮説を1つずつ検証して可能性を潰していく。

試行錯誤が良くない理由は、後で得られる経験知がないからだ。
やみくもにモグラ叩きのように潰して、ああ終わったというだけ。
障害解決した一つの経験が後で活用できない。

事実から推測して、起きそうな仮説を複数パターンで立ててみる。
そこから1つずつ潰していくことで、自分のロジックを検証していることにもなる。
どこに原因があったのか、後で振り返るときにも役立つ。

すぐに手を動かさない。まず仮説を立ててアプローチを選択して一つずつ動かす。
分かっていれば当たり前なのだろうが、納期に迫られて焦っているときほど忘れやすい気はする。

【2】コードリーディングのコツは極力コードを読まないこと。
すべての実装ロジックを理解しようとすると、脳みそのメモリが浪費されて余裕がなくなる。
空きメモリがなくなる。

動くものと仮定して、中身のロジックよりも、インターフェイスの役割やパラメータを調べて、関係性や動作を構造化することに注力する。
全体像を把握することと同じだろう。
この辺りは、コンポーネント図やシーケンス図、ステートマシン図、クラス図などを書きながら、構造を理解する方法もあるだろう。

コードリーディングは重要だが、いかに自分の脳みその負担を減らすか、に注力する。
自分にとって難しすぎると感じるときは、脳の使い方が間違っているというメッセージになる。

頑張る人、完璧主義の人、焦っている人ほど、脳みその空き容量がなく、脳みそを有効活用できていない。
そういうマインドセットを持つことも大事だと思う。

【3】日本独特の批判文化はソフトウェア開発と相性が悪いこと。
日本人は完璧主義すぎて、機能の網羅性や機能の品質を重視しすぎるために、ソフトウェアを漸進的に開発して品質を改善するやり方に馴染めていない。
最初に出したバージョンからソフトウェアに完璧を求める。

日本人は責任の所在や完璧を過剰に求めることで、開発者の心を砕いてしまう。
ソフトウェア開発者が先陣を切って何かにトライする行動に足かせを作らせる。
嫉妬、批判、冷笑、嘲笑が新しいことへのチャレンジ精神を阻害する。

人に何かを期待するのではなく、まず自分がどういう貢献ができるかという公共性をベースに考える。
これにより、互いにありがとうという感謝の精神が生まれる。

しかし、日本では理不尽なカスタマーハラスメントが起こりやすい潜在的な土壌が多い。
つまり、日本ではアジャイルなソフトウェア開発をやりにくい精神的土壌がたぶんあるのだろう。
従来からずっと言われているように、日本でソフトウェア開発がなかなか上手くいかない理由の一つは、国民性や文化的な側面もかなりあるのかもしれない。

また、日本の産業界ではハードウェア文化が強すぎて、ソフトウェアを甘く見てきている節もある。
どうしてもプログラマよりもマネージャ職の方が待遇面もキャリアも良いように制度も文化も作られてきた。
よって、アジャイル開発のように、現場の開発チームのメンバーが自分で実際に作って動かして、ソフトウェアを使って組織や世界を変えていくという方向性を実現しづらい。
現代のイノベーションは素人が集まっても作れるわけではなく、技術やクリエイティビティを持つ専門家集団がリードする必要があるだろう。

マイナンバーカードやデジタル庁、標準の公共システム開発にしても、色々頑張ろうとしているが、乗り越えるべきハードルは大きい。

【4】牛尾さんの本は過去にもたくさん読んできたが、「世界一流エンジニアの思考法」も同様に、文章は丁寧で読みやすく、内容は新たな価値に気づかせてくれる内容が多い。
アジャイル開発に慣れていれば当たり前の話だろうが、日本人がこれから乗り越えるべきハードルが書かれているので、非常に示唆に富む本ではないかと思う。

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2024/09/22

アーキテクチャ設計はベストプラクティスを参照するプロセスに過ぎないのか?~Software Processes are Software, Too(ソフトウェアプロセスもまたソフトウェアである)

ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理 第2版」をアジャイルアーキテクトさんや他の方と輪読していたときの感想をメモ。

【1】「ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理 第2版」は既に絶版なのだが、内容は良い本だ。
アーキテクチャ設計のプロセスを現代風にうまく表現してくれている。
今のマイクロサービス設計にも当てはめることもできるだろう。

ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理 第2版」に出てくる用語は、図4-3.コンテクストにおけるパースペクティブを見ればいい。

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その時のビューは、図15-1.ビュー間の関係 の観点で整理される。

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【2】「ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理 第2版」をアジャイルアーキテクトさんや他の方と輪読していたときに一つの疑問があった。

ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理 第2版」では、アーキテクチャを定義し、設計し、実装し、評価する一連のプロセスが、図7-3.アーキテクチャ定義の詳細で定義されている。
そのプロセスの中に、「適切なアーキテクチャスタイルを識別する」プロセスでは、過去のアーキテクチャパターンを参照するという記述があり、腑に落ちていなかった。
アーキテクチャ設計はベストプラクティスを参照するプロセスに過ぎないのか。
アーキテクチャ設計はもっと高尚なプロセスではないのか、という認識が強すぎた。

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実際のシステム開発では、ユーザの要求を元に、業務やシステムの要件を定義し、スケジュールやコスト、品質の観点からアーキテクチャの候補を複数から選定して基盤を決定する。
そこから具体的な設計、実装に入っていく。
今なら、業務要件や機能要件を定義する中で、非機能要件を満たせるようなインフラ基盤やネットワーク基盤、開発フレームワークを選定するだろう。
サーバはクラウド、クライアントはPCやスマホなどを基盤に選定するだろう。

そういう設計を具体的に行うときに、過去のアーキテクチャパターンを参照するときもあるが、新しい技術を導入する時は過去の事例がないので、苦労するし、失敗しやすい。
その疑問を解決できていない気がしていた。

【3】この疑問について、先輩と議論して気づいたことがある。

アーキテクチャ設計について、アーキテクトの経験や会社の過去事例に既に実績があるならば、いきなりアーキテクチャ設計を実装するのではなく、要件を基に、過去に成功して実現性の高いアーキテクチャパターンを採用することで実装する方針を決めるのは自然な流れと理解した。
その時に、プロセスの実行(プロセスクラスをインスタンス化して実行)においても、同様に過去のプロジェクトで成功して実績のあるプロセス事例を参照して、プロセスを設計するのは自然な考え方ではないか、と気づいた。

一方、新しい技術を取り入れてアーキテクチャ設計する時、社外の専門家である外部ベンダーに参画してもらい、その知見を活かしてもらうわけだが、そのやり方も実現性の高いアーキテクチャパターンを知っている専門家を利用しているわけだ。

この辺りをモデル化してみた。

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「当初の案」では、プロセスパターンクラスをアーキテクチャごとのタイプみたいなパターンクラスとみなし、プロセスクラスとしてプロセスのテンプレートを生成し、各プロジェクトではプロセスクラスのテンプレートををカスタマイズして実行するイメージだった。

しかし、要求とパターンの整合性を取る必要がある時に、要求そのものにパターンを抽出する基準が暗黙的に既に埋め込まれている。
実際、要求に沿ってシステムとして実現できるアーキテクチャはこれだ、と選定するときに、要求を制約事項とみなすアーキテクチャを過去のベストプラクティスを元に選定しているからだ。
つまり、アーキテクチャ設計としてアーキテクチャを選定するときに何らかの選定基準は暗黙的に埋め込まれている。

その暗黙的な基準こそが、パターンでありイディオムであるわけだ。
アーキテクトは、自身の脳みその中に、多数のパターンカタログ、イディオムカタログを暗黙的に保持していて、それを基準に当てはめている。

そこで、「田中さん案を元に再構成した案」で書き直してみると、プロセスパターンクラスをインスタンス化したものがプロセス記述書になる。
これはアナリシスパターンの抽象・具象パターンに相当するだろう。
そのプロセス記述書は、アーキテクチャ設計プロセスのテンプレートであり、どのプロジェクトでも使えるテンプレートになっている。
このプロセス、手順に従えば、アーキテクチャ設計ができますよ、という手順書になっている。
そのプロセス記述書は単なる手順書ではなく、過去のベストプラクティスが盛り込まれて、ソフトウェア開発が成功するような知見が盛り込まれているわけだ。

このプロセス記述書を各プロジェクトに当てはめて、必要であればカスタマイズして実装して、プロジェクトを実行していくことになる。

【4】そんなことを考えると、まだうまく表現できていないかもしれないが、ソフトウェア設計、ソフトウェア開発そのものも一つのソフトウェアのような気がしてくる。

そんな論文「Software Processes are Software, Too」は1980年代に既に提唱されているよ、と先輩から教えてもらった。

Software Processes are Software, Too

主張は「ソフトウェア開発プロセスは、プロセス記述書というクラスをインスタンス化したものである」と理解したがもう一つ重要な観点があると思う。
それは「ソフトウェアを再利用して効率化するやり方と同様に、ソフトウェア開発プロセスも再利用できるはずだし、それがパターンやイディオムになるはず」だという考え方だと思う。
つまり、「ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理 第2版」本で「適切なアーキテクチャスタイルを識別する」ときにパターンを参照することと同義だと理解している。

この辺りはもう少し整理してみたい。

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2024/08/31

「システム開発・刷新のためのデータモデル大全」を読み直した感想~親子頻出アンチパターンは初心者モデラーに多い

システム開発・刷新のためのデータモデル大全」を読み直した。
今までの経験を思い出しながら読み直すと気づきが多かった。
気づきをラフなメモ。

【参考】
業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

【1】テーブルをリソース系とイベント系の2種類に分けてみた

データモデリングが重要と分かっていても、ER図を書いてみても実際の業務フローや画面UIがイメージしにくい。
データ構造から業務フローがイメージできないと、単にデータがそうなっているだけとしか分からない。

そこで、マスタであるリソース系はR、トランザクションであるイベント系にはEをテーブルに付けて区別して見るようにしてみた。
業務フローをイメージするために、イベント系のテーブルは、TA字型ER手法を使って、外部キーがある関係は、先行後続を付けて見るようにした。
この考え方は「システム開発・刷新のためのデータモデル大全」にないがあえてやってみた。

業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

(前略)
* resourceとresourceをつなぐ場合:対照表を生成する。対照表はeventである。
 (例)従業員と営業所
     従業員-営業所の対照表を作成し、リレーションシップを保全する。
* resourceとeventをつなぐ場合:event側に参照キーを持たせる。
 (例)顧客と注文
     注文entityに顧客コードを持たせる。
* eventとeventをつなぐ場合
** 「1:1」「1:m」:時系列の遅い方に持たせる。
 (例)受注と請求(一つの受注に対し請求は一つ)
     請求に受注番号を持たせる。
** 「m:1」「m:m」:対応表を生成する。
 (例)受注と請求(複数の受注に対し請求は一つ)
     受注-請求の対応表を生成し、リレーションシップを保全する。
(後略)

その結果、イベントに先行後続が順序付けられて、業務フローが見えてきて、付随するリソース系のイメージも湧いてきた。
そこから色々感じたこと、気になったことをメモしておく。

【2】リソース系テーブルのフィーチャオプションモデル

システム開発・刷新のためのデータモデル大全」では、製造業のモデルだけでなく、サービスやその他のモデルでもリソース系テーブルのフィーチャオプションモデルがよく出てくる。
なぜ頻出されるのか?

たとえば、製品や商品の属性をテーブルで保持しようとすると、横持ちでカラムが多くなる。
サイズ、色、重量などいろんな属性があるし、新製品によってさらに属性も新規追加されやすい。
横持ちのテーブルでは品種が多くなると破綻する。
そこで、品種という属性群を別テーブルで保持し、縦持ちでデータを持たせて、新規追加できるようにする。
つまり、製品や商品の属性データを横持ちから縦持ちにもたせて、汎用化している。
その分、マスタテーブル設計は複雑になるが、理解さえできれば応用が効きやすい。

フィーチャオプションはマスタ管理を整理するためのテクニックと思う。

【3】強属性のキーはサロゲートキーの代わり

複合主キーのマスタは、サロゲートキーにすると扱いやすくなる。
しかし、関数従属性がサロゲートキーのために分かりにくくなる。
そこで、サロゲートキーに置き換えられた複合主キーに当たるカラムを一度追加更新されたら更新できない制約をかける。
システム開発・刷新のためのデータモデル大全」では、この制約を強属性と呼んでいた。
複雑な商品マスタをサロゲートキーで主キーにした時、品種区分とFO項番が主キーのようになるが、「システム開発・刷新のためのデータモデル大全」の例では、品種区分を強属性としている。

強属性を使うことでマスタテーブルの関数従属性を表し、データの不整合が出ない仕組みにしている。


【4】親子頻出アンチパターン

データモデリング初心者はテーブル同士を関連付けようとする時、主キーの親子関係だけで表現しようとする。
特にトランザクション系のテーブルで多い。
注文と注文明細みたいに。
たぶんそういう関係付けの方がイメージしやすいからだろう。
そういうアンチパターンは、親子頻出アンチパターンと言われている。

しかし、本来は外部キーを使って、トランザクション系のテーブルに先行後続を関連付けるべきだ。
その場合、先行後続では多重度が異なる。

先行後続が1対多ならば、先行イベントテーブルの主キーが後続イベントテーブルの外部キーとして設定される。
一方、先行後続が多対1や多対多ならば、先行イベントテーブルと後続イベントテーブルの間に、連関テーブルが入り込んで2つのテーブルを1対多で関連付ける。
たとえば、出荷したデータをまとめて一括請求する場合などがあげられるだろう。

データモデルではイベント系テーブルを抽出した後、多重度から先行後続を読み取り、そこから業務フローを組み立てると一連の流れが見えてくると思う。

【5】時限NULL、永続NULLデータの考え方

イベント系テーブルでは、カラムの初期値はNULLだが、後続の業務が実行されてデータが更新されるタイミングで、NULLから値がセットされる。
システム開発・刷新のためのデータモデル大全」では、このようなデータを時限NULLデータと呼んでいる。
たとえば、後続イベントテーブルにある先行イベントテーブルの主キーを外部キーとして張っている場合がそうだろう。

データモデルではNULL値はできるだけ避けるべきだが、一時的にNULLの状態であって、データ更新のタイミングで値が更新されるならそれで良しという考え方になる。
システム開発・刷新のためのデータモデル大全」では、発注と入荷のデータモデルで入荷コードが時限NULLとして使われる例があって分かりやすい。

一方、マスタテーブルでは一つのマスタに属性を増やしていくと、カラムの初期値がNULLのまま永遠にセットされる場合がある。
このような例が永続NULLデータになる。
システム開発・刷新のためのデータモデル大全」では、永続NULLデータが存在する場合、サブタイプに分割すると良い。
つまり、テーブルの継承関係を使って、親テーブルのマスタに共通するカラムをまとめ、子テーブルのマスタにそれぞれの属性を集めたデータをまとめる。
顧客や取引先、仕入先などをまとめたテーブルを作りたい場合が相当するだろう。

【6】2次キー(2次識別子)の使い道

システム開発・刷新のためのデータモデル大全」では、2次キーが有効に使われるデータモデリングの例が多い。

たとえば、在庫推移監視モデルでは、受払テーブルが受払予定テーブルと受払履歴テーブルをサブタイプに持たせるが、それぞれの主キーは異なるので、そのままでは継承関係をデータモデルで表現できない。
そこで、受払・受払予定、受払履歴テーブルに2次キーを持たせて、継承関係を表現する。
2次キーはいわゆるAlternative Keyであり、一意なキーだから、検索時にも使える。

他にも、売上履歴に出荷明細、回収明細、一般取引明細の各テーブルを関連付けて、売上の履歴を一元的に管理していつでも検索できるようにするには、それぞれの主キーは異なるので、2次キーを持たせる。

一般に2次キーは、JANコードやマイナンバーのようにマスタテーブルでよく出るが、トランザクションテーブルに使うと効果的に扱える場合が割とあるように思える。

【7】負荷計画のモデルは2種類ある

システム開発・刷新のためのデータモデル大全」では、業務知識を埋め込んだデータモデルがふんだんに盛り込まれているので、データモデルを読み解いていくと、この関数従属性にはこういう業務ルールを埋め込んでいたのか、と気づく時が多い。
宝物探しの感覚に似ている。

システム開発・刷新のためのデータモデル大全」にあるデータモデルで興味深かった例は、負荷計画のモデルだ。
製造業では、工場の機械がリソース制約になり、工場の稼働率を決めて最終的には原価につながる。
そこで、設備の制約に関するスケジューリング決定について、TOCのアイデアを入れて、工程の日程を決める。

負荷計画を立てるときに、リソースの制約がスケジューリングに最も関わるので、制約になるリソースは何があるか、という問いに置き換えられる。
制約になるリソースは、製造業の工場なら設備だが、病院の看護スケジュールなら、専門技術を持つ人員になる。
ソフトウェア開発のスケジュールでも、インフラ環境の設備もあるだろうが、専門技術を持つ開発者が最も大きな制約になるだろう。
つまり、要員シフト管理では、専門技術を持つ人員が制約になる。
制約となるリソースが業態やビジネスによって大きく異なる点が面白い。

また、負荷計画では受注生産の工場、病院の看護師なら、受注済みの製品または予約済みの患者という需要に対し、「需要を設備の稼働を確保する」考え方になる。
一方、航空機運輸業の予約搭乗管理では、飛行機を既に持っており、その飛行機の座席をいかに予約で埋めていくか、になる。
つまり、「設備の稼働ありきで需要を確保する」ことになる。
他にも、新幹線や特急の予約もこの考え方になるだろう。

では、データモデルにはどのような違いが出てくるのか。
受注生産の工場、病院の看護師の負荷計画では、予定→製造指示のようにイベントテーブルは1対多の関係になる。
「需要を設備の稼働を確保する」データモデルでは、需要という予定をいかに設備で捌くか、という考え方になるので、予定→負荷を割り当てた計画スケジュールのように、先行後続のイベントテーブルが1対多になる場合が多い。

一方、飛行機のフライト管理では、フライト日程→フライト日程明細--予約搭乗明細→予約搭乗というイベント系テーブルで関連付けたデータモデルになっている。
つまり、先行後続のイベントテーブルが多対多の関係になっている
「フライト日程明細--予約搭乗明細」の関係は、それぞれの主キーが異なるのでそのままでは関連付けられないが、フライト日程明細テーブルの主キーを2次キーとして予約搭乗明細テーブルに持たせて、関連付けるモデルにしている。
これにより、フライト日程を決めたら、フライト日程の飛行機の座席に予約を割り当てて管理するという業務フローが成り立つことになる。

さらに、フライト日程明細テーブルの主キーを予約搭乗明細テーブルの2次キーに設定しているので、2次キーはNULLも設定できる。
NULLが設定される例として、座席指定できていないデータ、キャンセル待ちや搭乗者にカウントされない乳幼児があげられていて、そこまで業務ルールとして埋め込んでいるのか、と気付いて面白かった。

他のデータモデルでも、関数従属性に業務ルールが巧妙に埋め込まれているので、この辺りを読み解くと面白いと思う。

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2024/05/06

「システムアーキテクチャ構築の原理」の感想part2~非機能要件がシステムのアーキテクチャに影響を与える観点をプロセス化する

システムアーキテクチャ構築の原理」を読んでる。
平鍋さんの記事「『ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理(第2版)』読んだ #Java - Qiita」を読み直して、理解が深まった。
平鍋さんの記事に触発されたので、理解できたことをラフなメモ。
間違っていたら後で直す。

【参考】
『ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理(第2版)』読んだ #Java - Qiita

「システムアーキテクチャ構築の原理」の感想: プログラマの思索

【1】「システムアーキテクチャ構築の原理」を読んでいて分かりにくかったことは、ビュー、ビューポイント、パースペクティブという概念が出てきて混乱したこと。
これらの言葉は何を表しているのか、具体的に理解できていなかった。

平鍋さんの記事「『ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理(第2版)』読んだ #Java - Qiita」では、概念モデルでまとめてくれているので理解しやすかった。

【2】図4-3.コンテクストにおけるパースペクティブが「システムアーキテクチャ構築の原理」のメッセージを全て表している。
平鍋さんの解説が分かりやすい。

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(引用抜粋 開始)
「非機能要件がシステムのアーキテクチャに影響を与える」という観点を本書は、この言説を徹底的に解説したもの。

非機能要件に限らず、横断的な視点を「パースペクティブ」として捉えている

実際にアーキテクチャを記述しようとすると、1つの文書ではとっても複雑で巨大な説明になる。「ステークホルダー」の「関心事」毎に分割するために、「ビュー」と「ビューポイント」を導入する

「パースペクティブ」は、従来の言葉で近いものとして「非機能要求」「横断的関心事」がある。本書ではこの「ビューポイント」と「パースペクティブ」のカタログを作っています。
(引用抜粋 開始)

【3】図15-1.ビュー間の関係では、ビューを開発や運用の観点で分解している。
この図は、システム開発とシステム保守で分割すれば理解しやすい。
今ならDevOpsだから、開発も運用も一体化しているだろう。

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【4】図7-3.アーキテクチャ定義のプロセスは、「システムアーキテクチャ構築の原理」が提唱している、アーキテクチャを定義し評価するプロセス。
アーキテクチャ設計の中で、特に非機能要件を含めた横断的関心事をいかにアーキテクチャに盛り込むのか、を考えた一連のプロセスになる。
プロセスの流れは、アーキテクチャ要素や横断的関心事を段階的詳細化して組み立てたあとにアーキテクチャを評価するので、違和感はない。

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【5】「システムアーキテクチャ構築の原理」では上記3つの図が本書のメッセージになると思う。
本書のやり方を各システム、各案件にテーラリングして設計、実装する必要があるから、本書は、アーキテクチャ設計のメタ概念、メタプロセスの解説書みたいな感触を持っている。

【6】「システムアーキテクチャ構築の原理」の副題「ITアーキテクトが持つべき3つの思考」が指す「3つ」とは、「ステークホルダー」「ビューポイント」「パースペクティブ」と最初に書かれている。

その意図は、ステークホルダーの横断的関心事、特に非機能要求をユーザ観点のビューポイント、システム観点のパースペクティブで分解して組み立てて、トレードオフを考慮したアーキテクチャを設計すること、を意味していると考える。

他にも気づいた他内容があれば書いていく。

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「システムアーキテクチャ構築の原理」の感想

システムアーキテクチャ構築の原理」を読む機会があったので感想をラフなメモ書き。

【参考】
「システムアーキテクチャ構築の原理」の感想part2~非機能要件がシステムのアーキテクチャに影響を与える観点をプロセス化する: プログラマの思索

『ソフトウェアシステムアーキテクチャ構築の原理(第2版)』読んだ #Java - Qiita

アーキテクチャ構築の原理 第2版を読んだ - 勘と経験と読経

【0】「システムアーキテクチャ構築の原理」は最新版の第2版もある。
僕は確か、デブサミ2010の時に会場で購入した記憶があり、第1版を持っている。
その時から興味のある部分だけかいつまんで読んでいたので、全部を通して読んでいなかったので、輪読するのは良かった。

システムアーキテクチャ構築の原理」を読んで興味を持った部分はいくつかある。

【1】1つ目は、2008年の初版でありながら、マイクロサービスやサービス志向のアーキテクチャ設計を目指していること。
機能的ビュー、情報ビュー、並行性ビューなどのソフトウェア構造のアーキテクチャ設計の観点は、業務システム設計と微妙に違うな、と感じていたが、実際はクラウドベースのマイクロサービス設計を目指しているのだろう。
実際、並行性ビューでは、昔のバッチ処理設計よりもイベント駆動の並列性アーキテクチャに力点をおいている。
たとえば、REST APIやAdapter・Facadeパターンのようなアーキテクチャ設計を念頭に置いて実装しようとしている。

そう考えると、マイクロサービス設計における新たな設計思想はまだ含まれておらず、荒削りな内容を感じるが、文章の背後にある著者の思い、こういうことを言いたいのではないか、を推測しながら読むと理解できるのでは、と感じる。

【2】2つ目は、ATAMという非機能要件の設計技法を解説してくれている点だ。

データベースコンサルタントのノウハウちょい見せ アーキテクチャをレビューする方法(ATAM)

ATAMはシナリオベースで非機能要件を評価する設計技法。
僕の理解では、システムのアーキテクチャの特に非機能要件を品質特性ごとに分類し詳細化して、それをシナリオに落とす。
そのシナリオを優先度付けして、シナリオベースにアーキテクチャを評価して整合性を取ったり、システム設計を明確化する。

利点は、非機能要件をアーキテクチャとして評価する技法として、シナリオベースを用いているので、アジャイル開発をやっている人には取り組みやすいと思う。
デメリットは、CMMIを作ったSEIがATAMを提唱しているので、重たいプロセスになりがちで、テーラリングが必須であり、プロマネによってばらつきが出やすいこと。

ATAMに関する日本語書籍は「システムアーキテクチャ構築の原理」と「間違いだらけのソフトウェア・アーキテクチャ―非機能要件の開発と評価 (Software Design plus)ぐらいしかないので、貴重だと思う。

データベースコンサルタントのノウハウちょい見せ 書評「間違いだらけのソフトウェア・アーキテクチャ―非機能要件の開発と評価」

【3】3つ目は、2009年頃の書籍なので、UMLをベースとした設計を念頭に置いていること。
機能的ビューではコンポーネント図、情報的ビューではER図やDFDや概念クラス図、並列性ビューではステートマシン図を使うと良いと説明されている。
このあたりの意見は僕も同意するが、注意点はいくつかあると思う。

コンポーネント図は「アジャイルソフトウェア開発の奥義」でも重要視されている。
機能を1つのコンポーネントとみなし、コンポーネント間のインターフェイスを重視する設計は重要だと思う。
一方、コンポーネント図だけでは表現しきれない仕様や要件があり、不十分と感じる。

その点は「システムアーキテクチャ構築の原理」でも、メッセージングのやり取りは記述できないので補足説明や別の図が必要と書かれている。

並列性ビューに出てくるステートマシン図は、より詳しく書いていくと結局、詳細設計レベルになってしまう。
アーキテクチャ設計ではRFPに出てくる要件レベルまでで留めたいので、粒度を揃えるのが難しい場合が多いだろう。

【4】「システムアーキテクチャ構築の原理」を読んでいて思い出すのは、2000年代にソフトウェア・プロダクトラインが流行した頃に読んだ「 実践ソフトウェアアーキテクチャ」に出てくる一節だ。

そのボタンを押したら何が起きるのですか?~アーキテクチャは利害関係者のコミュニケーション手段: プログラマの思索

実践ソフトウェアアーキテクチャの解説記事: プログラマの思索

実践ソフトウェアアーキテクチャ」では、政府のある委員会の2日間に渡る討議の中で、新人のアーキテクトが、政府が作ろうとしているシステムのアーキテクチャをコンサル独自の記法でモデルを描いて委員会の参加者に説明していたところ、委員会の参加者たちは何が問題なのかに初めて気づいた。
そして、委員会の参加者たちは、新人のアーキテクトの説明を途中で止めさせて、システムのアーキテクチャの問題点を活発に議論し始めたという一節だ。
これが意味しているのは、アーキテクトの役割とは、システムのアーキテクチャ設計に関する最終責任者ではなく、各利害関係者の間でシステム要件のトレードオフを考慮させる調停者であることだ。

つまり、アーキテクトの役割はシステム要件を決めることではなく、システム要件のトレードオフを色んなステークホルダーに説明して理解させて、最終的な意思決定を引き出す調停者として振る舞うべきだ、ということ。
この一節は僕が一番好きなところでもある。

システムアーキテクチャ構築の原理」では、アーキテクトがすべてのパースペクティブやビューポイントを理解している全能の神のように思えてしまうが、実際はそうではなく、アカウンタビリティを持つ調停者という観点で捉えると理解しやすいと考える。

気づいた点はまた書き留めていく。

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2023/12/10

「GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた」の感想

GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた ドキュメントの活用でオフィスなしでも最大の成果を出すグローバル企業のしくみを読んだ。

【0】リモートワーク主体の組織運営をどうやってやるか、PDCAで整理した本と思う。
とは言っても、リモートワーク普及に奇策はない。

【1】Planでは、ガイドラインを定めて形式知化する。
リモート責任者など組織体制も整備する。
経営層が率先してリモートで働く。
利用するツールは絞り込む。

他にもいくつか施策はあるが、割りと形式知化を重視している点が印象に残った。
リモートだからこそ、対面でのやり取りがないので、どうしてもローコンテキストな対話にならざるを得ないだろうから。

コミュニケーションルールも定める。
非公開情報ではSAFEアプローチを取る。
Sensitiveなのか、Accurateなのか、Financialなのか、Effectなのか、の判断基準を定めて、情報を公開しても良いのか判断する。

【2】Doでは、従業員の動機づけ要因、衛生要因を整備する。
リモートに合った組織文化が根付くように実行する。
心理的安全性を重視する。
人材戦略、つまり従業員の動機づけ要因では、ダイバーシティ、インクルージョン、ビロンギングを重視する。

ダイバーシティは、人種や性別、年齢、宗教、性的指向などの多様性を認めること。
インクルージョンは、マイノリティもマジョリティもすべての従業員が活躍できる状態を目指すこと。
ビロンギングは、自分の居場所はここである、という感覚。
帰属意識みたいなものかな。
一昔前の日本の会社の愛社精神みたいなもの。
今風ならエンゲージメントかな。

面白い点は、ビロンギングを重視していること。
従業員の流動性が高くても、帰属意識を重視しているのはなぜか。
たぶん、マズローの欲求5段解説で考えれば、帰属欲求が満たさなければ、承認欲求や自己実現を満たす欲求に達しないからだろう。

他にも、イテレーション、透明性も重視している。
この辺りはアジャイル開発の文化に近いので理解しやすい。

コンディショニングを実現する章は衛生要因の話だろう。
長期休暇制度、人間関係の構築、運動の推奨。

【3】CheckとActoinでは、KPIを用いた評価制度を作り、イテレーションごとにフィードバックを回していく。

SMARTな目標を定めて成果を評価する。
GitLabで活躍できる能力や意欲があるのに、マネジメントの問題で活かしきれない状況を避けるために支援する。
マネージャはメンバーを支援する。

優れたマネージャのコンピテンシーは事前に把握しておく。
感情的知性(EQ)、コーチング、衝突の解決、フィードバック文化の体現、高業績チームの構築。

Actionでは、メンバーに精神的成長と技術的成長を促す。
技術的成長を促すには、現状のスキルレベルと目指すスキルレベルの可視化が不可欠。
しかし、日本企業はスキルマップが画一的だったりそもそもなかったり、メンバーのスキル保有を把握していない。

能力開発のプロセスでは、コルブの経験学習モデルが有効。
具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→積極的実践のサイクルを回して、能力を高めていく。
日本と海外の差は、抽象的概念化と積極的実践の部分だろう。

抽象的概念化では、普通の業務では既に他の人や過去の人が既に実践しているから、ノウハウや問題解決の手順は既に知られている。
しかし日本ではわりと形式知化されていないので、一人で暗中模索して試行錯誤しながら解決策を導く手間がかかる。
海外では形式知化されたマニュアルや書籍、トレーニングが充実しており、それらを通じて先人が得た整理された知識まで早期に到達することができる。

積極的実践では、せっかく研修したのに、研修に対して意味がないと感じたりネガティブな印象を持ったりする。
座学の場合は特にそうだろう。
だから、研修を実務に適用し、研修転移を進めるために、マネージャや周囲が定期的にコミットメントしたりフィードバックするのが大事になる。
GitLabでは、個人開発計画を作成し、メンバーのキャリア開発について議論しているという。

【4】そんな話を読むと、GitLabではリモートワークを単に活用しているだけでなく、包括的にメンバーの意識付けからスキルアップまで組織的に考えていることが分かる。
おそらく長年の試行錯誤を経て、3000ページにのぼるGitLabのガイドラインにまとめられたのだろう。

また、この本では、既に知られているビジネスやマネジメントのフレームワークがふんだんに使われていて、情報が整理されて理解しやすいと感じた。


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『世界一流エンジニアの思考法』が学べる環境を手に入れてかつ継続する方法の感想 #devboost

デブキャリで牛尾さんの講演を聞いた。
世界一流エンジニアの思考法」を出版されている。

Developers CAREER Boost 2023 (2023.12.09)

デブキャリでこっそりシェアする三流エンジニアが『世界一流エンジニアの思考法』が学べる環境を手に入れてかつ継続する方法

話が上手いし面白い。
牛尾さんには15年以上前にXP祭り関西2006でXP寸劇にも参加して頂いたこともあり、あの頃の雰囲気を思い出した。

Subject: [ruby:1293] XP祭り関西2 006 in ワッハ上方

XP祭り関西2006 in ワッハ上方 (プログラミング C# - 翔ソフトウェア (Sho's))

【告知】XP祭り関西2006 in ワッハ上方: プログラマの思索

牛尾さんの講演の気づきは3つ。

1つ目は、常日頃から職歴を更新して、アピールできるレベルに随時ブラッシュアップすること。
牛尾さんはアジャイルのエバンジェリストでは超一流だったが、自身曰く、プログラマのスキルは低かった。
だから、マイクロソフトでプログラマになるべく、Githubに書いてアップしたり、エンジニアが来日したらAttendeしたり、色々アピールした、と。
そのためにも、職歴に、第三のスキルを常に磨いて記載するようにした、とのこと。
職歴は、LinkedInのプロフィールみたいなもの。
私はこういう人です、こういうスキルがあります、こういう職歴を積んできました、とアピールできるもの。
自分がより良い職業や職場に行きたいなら、そういうアピールできるものが必要。

一方、会社は「こういう人が欲しい」というジョブディスクリプションを出す。
それを見て、そのジョブディスクリプションに応募する。
その時に、会社が提示したジョブディスクリプションに対し、2つ上のレベルを目指すようにする。
そうすれば他人の目を引くことができるから。

牛尾さんほどの優れたエバンジェリストのレベルであっても、地道に努力されているんだなと思った。

2つ目は、何をやらないか、が大事なこと。
Be Lazyと言っていた。

Xユーザーのakipiiさん: 「Be Lazy。何をやらないか。物量よりもインパクトが大事。日本人は勤勉重視、努力重視なので価値観が正反対だよね。染み付いた価値観を捨てるのは難しい。 #devboost」 / X

どうしても日本人は「努力」が好きなので、全部をやろうとしてしまう。
捨てるのが難しい。

物量よりもインパクト重視。
たくさんできるよりも、何か一つ目立つものが成果として出れば十分。
そういう発想が大事。

3つ目は、「チャンスの時に受けないと次に進まない。受けましょう。」

Xユーザーのakipiiさん: 「牛尾さんが最後に伝えたこと。チャンスの時に受けないと次に進まない。受けましょう。つまり、挑戦しましょう。実力がなくても英語力がなくても関係ないと。 #devboost」 / X

今、牛尾さんはマイクロソフトでAzureファンクションのプログラマをされていると聞いた。
そのきっかけは、米国チームから、新卒に教えるのが得意なエンジニアで採用されたのがきっかけ。
そこからチャンスを掴み、今プログラマとしてバリバリ働かれている。
気後れせずに、チャンスをつかめ、というメッセージとして受け取った。

牛尾さんがすごいなと思うのは、40代を過ぎてから、英語を習得し、エバンジェリストからプログラマへキャリアを転換されたこと。
今までの実績や経験をすべてアンラーニングして一からやり直されたのはすごいと思う。
普通は、今までのキャリアやスキルをベースに深めていくのが普通であって、最初からやり直すのは大変。

本当に自分がやりたいことは何なのか、を深く考えて実行されたのだろうと思う。

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2023/11/12

「ソフトウェアアーキテクチャ・ハードパーツ」の情報リンク~マイクロサービスの設計技法の課題は何なのか

ソフトウェアアーキテクチャ・ハードパーツ ―分散アーキテクチャのためのトレードオフ分析を読んでいて、まだ中身を理解できていない。
ネット上の感想記事を自分用にリンクしておく。

【参考】
『ソフトウェアアーキテクチャ・ハードパーツ』 - Don't Repeat Yourself

(引用開始)
また、最近話題になっていた『ソフトウェアアーキテクチャの基礎』(以降、「基礎」)を執筆した著者陣が書いたもう一冊の本でもあります。
「基礎」はアーキテクトとしての姿勢や、それぞれのアーキテクチャの簡単な概要が中心でしたが、この本はより実践に近く方法論寄りです。「基礎」が「What」を扱うとすれば、本書は「How」を扱うといった関係性でしょうか。
(引用終了)

(引用開始)
現代ではデータをどのように設計し、分割しつつ整合性を保って保管しておくかといった一連の流れの重要度が増しています。この問題についても本書は拾い上げるよう努力しています。[*1]
従来のアーキテクチャの議論では、マイクロサービスはどう分割するかとか、コードの関心事がどうこうとかそういったアプリケーションに限った範囲が中心だったように私は思っています。が、そうではなくデータをどう分割、配置、保管していくかといった問題についても議論に含めるようにしています。
(引用終了)

『ソフトウェアアーキテクチャ・ハードパーツ』完全に理解した - Mirai Translate TECH BLOG

(引用開始)
一言で言うと
「マイクロサービスの大きさと通信方式をどう決定するか」について書かれた書籍です。
(引用終了)

ソフトウェアアーキテクチャ・ハードパーツ - Forkwell Library #12に参加してきた - 天の月

(引用開始)
レガシーで大規模なモノリシックシステムをどう解決していくか?というのを物語形式で紹介してくれているということです。

ソフトウェアの中でも土台となるような部分の決定は「モノリシックなシステムをどう分解していくか?」で前半部分に表現され、「ソフトウェアアーキテクチャをどう決めるか?」は分散システムで直面する難しい問題をどのように決定するか?で後半部分に表現されているということです。

もう少し具体的に言うと、前半部分は戦術的フォークとコンポーネントベース分解を中心に登場人物がトレードオフ分析を行なっている様が描かれており、後半部分は、粒度分解要因と粒度統合要因のバランスによって決定されるという前提をもとに、分解をどこまでするかが具体的に描かれているそうです。
(引用終了)

「ソフトウェアアーキテクチャの基礎」読書感想

【1】「マイクロサービスの大きさと通信方式をどう決定するか」が根本テーマであるとすれば、マイクロサービスの設計上の課題や留意点がテーマになる。

2020年代の現在では、マイクロサービスの実装はAWSなどのクラウド基盤が前提条件だろう。
AWSならEC2ではなく、CloudFormationを使って各種サービスを組み合わせて一体化したシステム設計をするのではないか。
一方、オンプレ環境のシステムでは、弾力的なスケーラビリティ向上、つまりスケールアップやスケールアウトを動的に変更するのは非常に難しい。
逐一サーバースペックをサイジングしてどれだけのスペックを持つべきか見積もりして導入するまでに非常に手間がかかる。

では、マイクロサービスの落とし穴はどこにあるのか?
マイクロサービスの利点や美味しいメリットを得るにはどんな留意点があるのか?

モノリシックな基幹系システムやモノリシックな巨大なシステムをビジネス上の観点でサービスごとに分割して、分散サービス化した時、それぞれのサービスの粒度は小さくなるので運用保守しやすくなる点もあるだろう。
昨今のDevOpsの観点では、小さな開発チームが設計や開発から運用までを担当する流れなので、チームが担当するシステムのサイズは小さい方が実現しやすい。

一方で、複数のサービスを連携して初めて、顧客が満足する1つのユースケースが成り立つような場合、途中でサービスが停止すると成り立たなくなる。
分散サービスのアイデアは20年以上前のCORBAやEJBからずっと言われていては失敗してきたが、クラウド基盤でようやく実現可能な設計手法になった面もあると思う。
僕はまだAWSやクラウド基盤のことは無知なので、今までのオンプレ環境で構築するシステム設計とは違った観点がマイクロサービスの設計にはあるのだろうと思う。

理解できた内容はBlogに残しておこうと思う。


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2023/10/21

概念モデリングや設計原則は進化しているのか

最近、概念モデリングや設計原則の勉強会に参加して色々気づきがあった。
ラフなメモ書き。

【1】「実践UML第3版」を勉強会で読み始めた。
僕は「実践UML第1版」を購入して読んでいた。
思い出せば20年前になるのか。
そこから第2版も買ったし、最近第3版も買ってみた。
中身は変わってきているが、版を重ねるごとにオブジェクト指向設計の内容が洗練されて、RUPという開発プロセスに準じるように設計から実装、移行まで一気通貫する。

2020年代の現在、「実践UML」を再度読んで気づきがいくつかある。

【2】1つ目は、RUPはもう不要と思う。
スパイラル開発プロセスはWF型開発からの脱却という観点で重要だったが、Scrumを中心としたアジャイル開発が全盛の時代だから、わざわざテーラリングが必要な重厚長大なRUPを利用するメリットはないと思う。

【3】2つ目は、モデリングに必要なUMLのダイアグラムの力点が変わっていること。
「実践UML第1版」では、以前は協調図(コラボレーション図)、今のコミュニケーション図がオブジェクト指向設計で重要です、と主張していた。
理由は、コラボレーション図を描くことで、機能をどのクラスに割り当てるべきか、凝集度や結合度、生成などの観点で検討する時に有用だから。
オブジェクトからたくさんの指示が出ていれば責務が多すぎるね、と気づきやすいから、と。
当時の自分はすごく納得した。

実践UML第2版実践UML第3版では、クラス図やシーケンス図で説明する場面が多い。
コラボレーション図の話はなくなっていた。
たぶん、UMLの中でも重要度が下がったためだろう。

しかし、機能の割り当ての考え方は普遍的と思う。

【4】3つ目は、GRASPパターンは「情報エキスパート」パターンが一番大事ということ。
このパターンが「実践UML」の重要ポイント。

機能や責務はどのクラスに割り当てるべきか?
責務の遂行に必要な情報を持っているクラス、すなわち情報エキスパートに責務を割り当てるべきだ。

つまり、責務の遂行に必要な情報を自身のクラスの属性、関連先のクラスから取得した情報を自身のクラスで持ってること。
そして、処理を実行する時に、他クラスへメッセージを投げ出せること。

コミュニケーション図なら、情報エキスパートとなるクラスからメッセージという矢印が出ているだろう。
シーケンス図なら、情報エキスパートとなるクラスからメッセージが出て、他のクラスに処理が委譲されて、階段状の図になっているだろう。

その他のパターンも8つくらいあげられているが、そこまで重要ではないように思う。
生成、疎結合、高凝集度、多相性、コントローラは読めば分かる。
バリエーション防護壁はFacadeやAdapterみたいなもの。
純粋加工物、あるいは人工品は、機能の関連だけで構成するのではなく、ソフトウェアのプログラムの都合上、論理的なオブジェクトをワンクッション挟むようなもの。

【5】4つ目は、概念モデリングとデータモデリングは似ているようでやはり異なることだ。

「実践UML」では、概念モデリングでの注意点がいくつかある。

【6】属性とクラスは区別する。
一般に、ある概念をクラスの属性にするか、クラスで独立させるか、識別は間違いやすい。
「実践UML」の指針では、ある概念Xが現実世界では数値でもテキストでもなければ、Xは概念クラスであり、クラスの属性ではない、と言い切っている。

これは重要と思う。
初心者だった頃、どれをクラスにすべきか迷ってしまう時が多かった。
迷って、概念をクラスの属性にしてしまいがちな時が多い。

例えば、Destination、AirportはFlightに含めるべきか。
それぞれクラスとして独立させて、関連で結ぶべき。

実際は、1つの概念はクラスのロール名としていろんな別名として現れる。
例えば、企業クラスは顧客だったり仕入先だったり、取引先だったり、もしかしたらグループ内企業だったりする。
つまり、企業クラスはいろんなロール名として呼ばれる時がある。

【7】属性にはプリミティブ型を使わず、データ型を使う。
たとえば、属性にはDate型、Number型、String型を使う。
あるいは、Address、Color、PhoneNumber、UPC、SKU、ZIP、列挙型を使う。
区分値は列挙型を使う場合が多いかな。

例えば、会員クラスの会員名、会員IDみたいなものだろう。
でも、同じ会員名であっても、実際の人物は異なるケースもある。
だから、ValueObjectを別で用意して利用する場合もあるだろう。
ドメイン駆動設計なら、ValueObjectをかなり頻繁に使うだろうと思う。

【8】概念クラスの関連付けに外部キーや複合キーを書かない。
概念クラスの関連付けは、属性ではなくクラス間の関連で書く。

この部分がデータモデリングと異なるし、引っかかるところと思う。
一般にオブジェクトには唯一の主キーとなるサロゲートキーが割り当てられる場合が多いだろう。
すると、データモデリングで考えた時、外部キーや複合キーがなく、全てサロゲートキーなので、クラス間の制約条件が分かりにくくなる。
RailsのActiveRecordがそういう例になるだろう。
データモデリングなら、サロゲートキーを使っている場合、外部キーのペアが複合キーの役割を持つので強属性になるような制約をもたせるだろう。

では、概念モデルから実装モデルへ詳細化されていくうちに、関連はどう変わっていくのか?
概念モデルの関連から相手先のロール名が割り当てられて、最終的には関連はどこかのメソッドとして実装されて、そのメソッド内でロール名は変数名と同一視されて利用されるだろうと思う。

【9】概念クラス図でも、関連クラスのように、複合キーを使った事例はある。
しかし、関連クラスを多用すると、クラス図から読み取りにくくなる。
一方、データモデリングの観点では、関連クラスを複合キーを持つクラスと置き換えれば、明確な意味を読み取りやすくなる。

【10】概念モデリングでは、クラス間の関連と多重度でクラス間の制約条件を読み取る場合が多いように思う。
慣れるまで大変だけど。

【11】そんなことを考えてみると、概念モデリングや設計原則は以前よりも変化していないように思う。
UMLが流行していた2000年代からモデリング技法は進化しているのだろうか?

オブジェクト指向設計とデータモデリングの違いは他にも整理してみる。

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2023/09/18

ビジネス書の名著はどれ?

山口周さんがお勧めのビジネス名著をリストアップされていたのでメモ。

自分が読んだ経験のある本があったので、共感できた。

経済学をベースにした戦略論、組織論は好き。
人間の意志を超えた次元で、自然法則のように戦略も組織も縛られる。
そういう原則を抑えていれば、悪循環に陥る状態を防ぐことができるはず。
マンキュー入門経済学
戦略の経済学
イノベーションのジレンマ
組織の経済学
組織は戦略に従う

戦略/組織/人事と組織の経済学シリーズを読んでいる: プログラマの思索

組織論一般の理論を解説しているのが分かりやすかった。
組織行動のマネジメント

とても薄い本なのだが、アイデアがどうやって生まれるか解説してくれている。
アイデアの作り方

佐藤さんの解説記事がわかりやすい。
素早く考える能力、じっくり考える能力 : タイム・コンサルタントの日誌から

IT業界の営業戦略、プロセス導入ではキャズム理論が必須と思う。
パッケージ製品の営業だけでなく、新しい開発運用プロセスを導入する時もキャズムの法則に似たような事象が見られるから。
キャズム

キャズムの感想~イノベータ理論とホールプロダクト理論: プログラマの思索

伝記本として読んだ。
スティーブ・ジョブズ I」「スティーブ・ジョブズ II

岩波文庫なので文章は硬い。
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
君主論

自分が弱いのは意思決定、ゼネラルマネジメント、財務会計の分野かな。
全部読み切るには10年ぐらいかかりそうな感じ。

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より以前の記事一覧