日本のRedmineコミュニティの活動報告と今後の抱負
Redmine Advent Calendar 2017 - Qiitaに初参加です。
日本のRedmineコミュニティの活動報告と今後の抱負を書きます。
私が書くのは恐れ多いと思いますが、改めて、Redmine大阪スタッフとredmine.tokyoスタッフの皆さんに大変感謝です。
【参考】 Redmine Advent Calendar 2017 - Qiita
【1】日本のRedmineコミュニティ
現在活動中の日本のRedmineコミュニティは、Redmine大阪とredmine.tokyoの二つがあります。
Redmineは誕生して11年も経ちますが、どちらのRedmineコミュニティも2011年に創立されたので割と浅いです。
私はその二つのコミュニティでスタッフとして関わっているので、その立場から生い立ちとその歴史を簡単に振り返ります。
【2】Redmine大阪
過去のイベント - RxTStudy~Redmineとタスクマネジメントに関する勉強会 | Doorkeeper
【2-1】勉強会の発端は、2011年6月に、@pinkmacさんが「【緩募】関西でRedmineをタスク管理に使いたい勉強会を開催したら参加/発表してみたいという方!」というTwitterが流れたことです。
あっという間にスタッフや講演者、参加者が集まり、「RxTStudy~Redmineとタスクマネジメントに関する勉強会」というコミュニティとして発足しました。
「RxTStudy」は「Redmineとタスクマネジメント(Task)に関する勉強会(Study)」という意味です。
その後、Redmineが日本で知名度が上がる中、「RxTStudy」という名前では分かりにくいという声があったため、2016年に地域名を付けた「Redmine大阪」にコミュニティ名を変更して、今に至っています。
【2-2】第1回目の経緯は下記に書いています。
【告知】Redmineでのタスク管理を考える勉強会@大阪で発表します #RxTstudy: プログラマの思索
記念の1回目の勉強会は、その頃にRedmine本を出版した前田剛さん、倉貫さん、阪井さんと僕が講演したこともあって、定員50人があっという間に埋まり、当日の模様がUStreamで中継されてたいへん盛り上がったことを覚えています。
また、僕が講演した内容「RedmineのFAQとアンチパターン集」は、当時はすごく反響が大きかったことを覚えてます。
それから、最近は年2回ペースで開催され、現在は17回まで続いています。
【2-3】勉強会の内容は、Redmineの利用事例からRedmineのカスタマイズ方法、最新バージョンの機能紹介など多岐にわたります。
今までの中で、僕の記憶に残る主な講演は下記かな。
(1)@daipresentsさんの「チームにRedmineを適用せよ! #RxTstudy」では、楽天における1000人という当時は大規模なRedmine利用事例でした。
(2)@akahane92さんの「情報システム部門のタスク管理とIT全般統制 ~ Excel管理からの脱却 ~ (ITS Redmine #RxTstudy #5)」では、島津製作所の基幹系業務システムのタスク管理とIT全般統制にRedmineを導入して運用して効果を上げている事例でした。
その後、JaSSTやSQIPなどでも講演されて一躍有名になりましたね。
(3)陸野さんの「Redmineの活用事例‐多様なプロジェクト管理に対するツールの適用」では、パナソニックにおける組込みソフトウェア開発にRedmineを導入運用した事例でした。
従来まで数多くのプロジェクト管理のパッケージ製品を導入してきたけれど、パッケージ製品には販売元の会社のプロセスが埋め込まれていて、自分たちの組織に合わない、という指摘に改めて刺激を受けたことを思い出します。
(4)JAXAの藤田さんの「JAXAスパコン"JSS2"の運用を支えるチケット管理システム"CODA"」では、JAXAスーパーコンピュータ活用課にて、業務の管理にRedmineを利用している事例でした。
実際のRedmine画面を見ることができて大変貴重でした。
(5)@ktouさんの「全文検索でRedmineをさらに活用!」では、Redmineの全文検索の機能強化と今後の可能性に関する事例でした。
Redmineに機械学習や人工知能などの技術を組み込むと、新たな可能性が広がる、というワクワク感が満載でした。
【3】redmine.tokyo
【3-1】勉強会の発端は、僕がちょうど東京にいた頃、東京にいる熱心なRedmineユーザが集まって、勉強会を開こう、という話があがったことでした。
2011年当時は、@nobiinu_andさん曰く「東のTrac、西のRedmine」と言われるぐらい、東京ではTracコミュニティが活発だったので、Redmineもコミュニティが欲しいなあ、という雰囲気があったためです。
Shibuya.trac Wiki - Shibuya.trac - OSDN
たしか、キックオフ飲み会が暑い8月に行われた時、当時はRedmineで唯一の日本人コミッタである@marutosijpさんも来られて、Redmineを話題に盛り上がったのを思い出します。
記念の第1回目の勉強会は、IPAで場所をお借りして開催されました。
第1回目の内容は、下記に書いています。
【告知】第1回品川Redmine勉強会を開催します #47redmine: プログラマの思索
当初は「品川Redmine」という名称でしたが、参加者から限定的なコミュニティのイメージを持たれることもあり、2014年から地域名を付けた「redmine.tokyo」にコミュニティ名を変更して、今に至っています。
それから、ほぼ年2回ペースで開催され、現在は13回まで続いています。
【3-2】勉強会の内容は主に、講演が数本、ライトニングトークスやグループディスカッションです。
redmine.tokyoの最大の特徴は、参加者がすごく多い点でしょう。
@naitohさんがまとめてくれているアンケート資料「Redmine.tokyo 13 questionnaire」を見ると、過去は参加者が100名超えの時もありました。
よって、いつも大変盛り上がっているのが印象的です。
また、@tkusukawaさんたちがボランティアで、UstreamやYoutubeで講演をリアル放映してくれています。
そのおかげで、いつも満員御礼になっているにも関わらず、参加できなかった人や東京以外の地方のRedmineユーザも視聴できます。
いつもありがとうございます。
【3-3】勉強会の内容はRedmine大阪と同じく、Redmineの利用事例からRedmineのカスタマイズ方法、最新バージョンの機能紹介など多岐にわたります。
今までの中で、僕の記憶に残る主な講演は下記かな。
(1)Takashi Okamotoさんの講演「RedmineとGitとスクラム」では、当時最新の使い方であったRedmineとGit連携の事例でした。
(2)@akahane92さんの講演「Redmineチューニングの実際と限界 - Redmine performance tuning」では、100万チケットでも耐えれるRedmineのチューニングノウハウの紹介でした。
(3)@netazoneさんの講演「ある工場のRedmine +(Plus)」では、製造業におけるRedmineの運用事例でした。
当時の環境では、プラグインが23個もあるのが驚異的でした。
(4)@onozatyさんの講演「View customize pluginを使いこなす」では、View customize pluginによるRedmineのカスタマイズ事例でした。
この発表後、View customize pluginの利用が広まったように思います。
(5)@kazuphさんの講演「IoT企業とRedmine // Speaker Deck」では、IOT企業のハード製造部門とソフト開発部門、サポートデスクの3部門におけるRedmine利用事例でした。
かんばんとガントチャートを使い分けている点が興味深ったです。
(6)JAXA木元さんの講演「CODAの定義・運用の現在 - 2017年版 -」では、JAXAにおけるRedmineのノウハウを惜しみなく公開した事例でした。
【4】参加している人たち
【4-1】参加者は、実際にRedmineを使ってプロジェクト運営しているSIのプロジェクトリーダー、Redmineのパッチを作ったりプラグインを開発する人達、SIでRedmineのサーバーのインフラを管理する人、などが多いです。
さらに、参加者層を分析すると、開発プロセスに興味がある人たちだけでなく、Redmineのパッチを作ったり、プラグイン開発者が割と多いことが特徴的だろうと思います。
つまり、素のRedmineを運用してみて不足している機能はプラグインで開発して、それをGithubで公開されている人が多いように感じます。
たとえば、@akiko_pusuさん、@tkusukawaさん、@haru_iidaさん、@two_packさん、@onozatyさんたちです。
また、@naitohさんのように、PDFの日本語化Gemを開発して貢献されている方もいます。
【4-2】Redmineコミュニティに携わるスタッフの立場では、プロジェクト管理や開発プロセスに興味を持つ人たちだけでなく、Redmineの機能強化につながるプラグイン開発者は非常に重要と思います。
なぜなら、Redmineの不足機能をプラグインで代替できるようにオープンソースで提供してくれているからです。
そのおかげで、ユーザはRedmineを自社の組織文化に合わせてカスタマイズすることが容易になります。
つまり、ユーザ自身が設計したプロセスへツールを合わせるように運用しやすくすることで、自然にプロセス改善の雰囲気がチーム内に発生し、チーム自身で問題解決していくという自律化の雰囲気を醸し出すメリットもあるのだろう、と感じるからです。
【4-3】最近は、勉強会の参加者層は幅広くなったように感じています。
グループディスカッションで聞いてみると、IT業界に限らず、製造業やゲーム業界、Webデザイン業界、など幅広い業界の人たちが参加しているようです。
また、Redmineを長年使っている人たちだけでなく、PMOや品質保証部に在籍する上層部の人や、興味があるから来てみたという初心者も増えているようです。
背景には、Redmineが日本でかなり知名度が上がり、実際に使われている場面が多くなっているからでしょう。
実際、日本国内におけるGoogleトレンドを見ると、現時点ではTracやJiraよりもRedmineが上位に上がるケースが多いようです。
【5】今後の抱負
Redmineコミュニティに携わるスタッフとして、今後の個人的な抱負は2つあります。
【5-1】一つ目は、Redmineコミュニティの参加者の多様化を図る事です。
Redmineが持つ特徴として、二つの側面があります。
まず、プロジェクト管理を柔軟に運用できるプロセス基盤または、ソフトウェア工学の理論を実験できるメトリクス収集・集計基盤であること。
「Redmineの運用パターン集~私に聞くな、チケットシステムに聞け」
SQIP2015講演資料「チケット駆動開発の運用パターン集~問題はチケットに分割して統治せよ」
次に、汎用的なプロジェクト管理ツールの開発基盤であること。
第6回品川Redmine勉強会発表資料「開発基盤としてのRedmine~Redmineをカスタマイズするポイント」
すなわち、Redmineの利用者層は、前者の観点では、プロジェクトリーダーやPMO、品質保証部のような立場でプロセスを構築し運用する人達である一方、後者の観点では、プラグインを開発したりRedmineをカスタマイズするRuby開発者という二つの側面があるのです。
そして、その両方に詳しい技能を持つ人は非常に少ないでしょう。
よって、全く異なる技能を持つ人達が集まることで、プロジェクト管理やソフトウェア工学で困っている問題がプラグインやカスタマイズで解決できたり、新たなプラグイン提供によってプロジェクト管理の新たな使い方が生み出されることもあるでしょう。
つまり、プラグイン開発者とプロセス管理者がお互いに有意義な議論を重ねながら、ソフトウェア開発の現場を改善する道具として、Redmineは発展できるはずと考えます。
そういう化学反応、シナジー効果を提供する場を構築したいと考えてます。
【5-2】2つ目は、Redmineのエコシステムを作る事です。
日本の企業でRedmineがかなり普及している現在、Redmineは日本のSIにおける事実上の基幹業務システムではないか、と思います。
すると、Redmineは今後も安定的に機能改善されて保守されて欲しい。
幸いなことに、Redmineの歴史をたどると、自動テストが整備されたおかげで、RubyやRailsのバージョンアップにも追随しており、セキュリティパッチも早急に対処されています。
そのおかげで、Redmineの品質は割と高いのではないか、と思います。
また、性能面でも、Redmine大阪第17回勉強会に参加した - Basicに記載あるように「機能が増え続けるRedmineの処理の重さを、RubyやRailsの足回りが地道に改善してカバーしている」ように進化しています。
しかし、現在のRedmineのコミッタはJPLを含めて3人しかいない。
今後の夢としては、オープンソースの成功事例であるLinuxやRubyのような永続的なオープンソースとして確立して欲しい、と思っています。
たとえば、LinuxやRubyも当初は、開発者のおもちゃと見なされて、エンタープライズでは使えない、と思われた時期もありました。
しかし、コミュニティが発展してマーケットが広がっていくうちに、エンタープライズ界隈にも広がり、今ではむしろ、オープンソースで無いと保守され続けなくなるリスクがあるように見受けられます。
そして、LinuxやRubyも、コミッタと熱心なユーザだけでなく、ベンダーもユーザの一部として加わり、マーケットが拡大する方向へ成長している状況があります。
よって、RedmineもLinuxやRubyのように、コミッタ・ユーザ・ベンダーの三者が良好な関係を保ち、成長のらせん構造を昇っていけるような環境をいつか作りたい、と思っています。
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