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2020/11/05

第73回 SEA関西プロセス分科会 「モデルベースシステムズエンジニアリングの活用」 の見所 #seakansai

2020/12/12土の夕方に、SEA関西プロセス分科会 「モデルベースシステムズエンジニアリングの活用」が開催されます。

私も関わっているastah関西コミュニティの高井さんをお招きして、SEA関西にて「モデルベースシステムズエンジニアリングの活用」の講演2本が実現しました。

特に、自動車業界などで組込みソフトウェア開発を担当している技術者やアーキテクトに対し、上流工程におけるモデリング技法並びにモデリングツールを活用した設計技法のお話は参考になると思います。
興味のある方はぜひご参加ください!

講演の見所を少しだけメモ。

【申し込み】
第73回 SEA関西プロセス分科会 「モデルベースシステムズエンジニアリングの活用」 | Peatix

(引用開始・一部入れ替え)
開催日時: 2020年12月12日(土)16:00~18:00

開催形式: オンライン(ZOOM)

講師: 高井 利憲 氏(株式会社チェンジビジョン)

講演1:モデルベースシステムズエンジニアリングにおける形式手法の効果的な活用
 最近のシステム開発では上流工程での検証の必要性が高まっています。
 本講演では、モデルに基づくシステムズエンジニアリングアプローチと形式手法を組み合わせて活用する方法について、自動車分野のシステム開発を例に、ツールによる支援可能性を中心に議論します。

講演2:モデルベースシステムズエンジニアリングにおけるシナリオ生成手法の効果的な活用
 最近のシステム開発においては、シナリオベースの検証や妥当性確認を求められることが多くなってきています。
 本講演では、自動運転車の安全規格の一つであるISO21448(SOTIF)や同じく自動車分野のセキュリティ規格であるISO21434(車両サイバーセキュリティ)を例に、システムズエンジニアリングにおける効果的な実施方法を紹介します。
 講演1と同じ例題モデルを用いることにより、モデルの再利用可能性についても議論します。

本講演1及び2は名古屋大学倉地亮先生とdSpace藤倉俊幸様との共同研究の結果に基づいています。

主催: ソフトウェア技術者協会(SEA)関西支部

プログラム:
 15:30 アクセス受付開始
 16:00 講演1「モデルベースシステムズエンジニアリングにおける形式手法の効果的な活用」
 16:30 質疑応答
 16:45 講演2「モデルベースシステムズエンジニアリングにおけるシナリオ生成手法の効果的な活用」
 17:15 質疑応答・フリーディスカッション
 18:00 閉会

 閉会後、オンラインでの懇親会を持ちたいと思います。
 お時間の許す方は、お好きな飲み物をご用意の上、お気軽にご参加ください。

定員:
 100名
 お申し込み順です.定員になり次第受け付けを締め切ります.

(引用終了)

実は、過去に高井さんの講演や資料を見聞きして、刺激を受けた部分がたくさんある。
一つは、モデリングツールを経由して、開発プロセスと成果物のトレーサビリティを保証する仕組みを作り出すお話は面白かった。

astahで設計書とモデル、プロセスをつなぐ為の資料のリンク: プログラマの思索

ソフトウェア開発に置いて、開発プロセスが重要な理由は、単に手順を標準化して、作業の効率化を図るだけではない。
作業と成果物の間でトレーサビリティを保証することで、プロダクト品質とプロセス品質の両方を保証することだ。
例えば、ソースにバグがあれば、過去の変更履歴からどこでバグが埋め込まれたのか、どんな変更理由や要件の変更があったのか、を探れる。
あるいは、たった一つの仕様変更がどれだけの範囲のソースに影響を及ぼすのか、ということも追跡できるはず。
つまり、作業と成果物のトレーサビリティは、ソフトウェア構成管理に直結する。
ソフトウェア開発では、ソフトウェアの構成管理こそが、開発プロセスの本質ではないか、と思う。
そういう仕組みの実現に、実はastahというモデリングツールが一役買っている、という話が興味深かった。

2つ目は、SysMLというモデリング言語が、組込みソフトウェア開発において、メーカーのプロダクトオーナー、ハードウェア技術者、ソフトウェア技術者、自然科学者の間で、共通のコミュニケーション言語になっている、という講演も面白かった。

第2回astah関西の感想 #astahkansai: プログラマの思索

特に、組込みソフトウェア開発では、ハードウェア技術者が設計したハード機器に対して合うようなソフトウェアを開発するために、ソフトウェア技術者はどうしても弱い立場になりやすい。
そして、ハードの仕様変更や要件の理解不足などで、どうしてもソフトウェアの品質を担保するのは難しい。
その真因には、ハード技術者とソフト技術者の間で、コミュニケーションが不足しているから、ということがあるだろう、と思う。
ハード技術者にも理解してもらうために、UMLではなく、ハードの構造も表現できるSysMLを使うことで、ハード技術者とソフト技術者がSySMLという共通言語で会話できるようになった。
さらに、製品を市場にフィットさせる責任を持つプロダクトオーナーや、ハードに電気・流体・機械などの自然科学の制約を与えるドメインまで、すべての話をSysMLで会話できる。

多様なドメインを持つ製品開発では、こういう人工的なモデリング言語があるからこそ、ソフトウェアも含むハードを開発できるという点が面白い。
つまり、モデリング言語が我々の思考そのものを規定し、効率化させる部分があるわけだ。

今回の講演1本目は、モデルに基づくシステムズエンジニアリングと形式手法を組み合わせて検証する時に、astahというモデリングツールを使った事例を紹介してくれる。
モデリングツールによる検証方法の実装がどれだけ実現性があるのか、興味がある。

講演2本目は、自動運転車の安全規格などについて、システムズエンジニアリングにおける効果的な実施方法の事例を紹介してくれる。
自動車業界は今、ガソリンエンジンから電気自動車に大きく変更しつつある時代なので、こういう機能安全規格をいかにモデリング技法で実現するか、は、色んな観点で興味を引くはず。

最近、「モデルに基づくシステムズエンジニアリング」も読んでとても面白かったので、感想はまた今度書く。


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コメント

こんにちは。

ソフトウェア技術者とハードウェア技術者のコミュニケーションが取れるようになるのは、すばらしいですね!

投稿: 師子乃 | 2020/11/14 14:47

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