2025-11-28

チー牛であることを自覚している

誰がどう見ても本来の俺はチー牛だ。髪を整えコンタクトを入れて清潔感のある服を着ているが、それでも間違いなくチー牛だ。寝る前の鏡に映った俺はあの有名なイラストと瓜二つだ。ミドサーを迎え、最近は肌荒れがひどい、ガリガリに痩せたチー牛だ。

世界で生きていくためにゆったりとした服を着て、試行錯誤の上一番似合うであろう髪型を選び、気を抜くと散乱する思考発言ギリギリで抑えている。怖いのでアスペ診断は受けていないが、おそらく該当すると思う。それに数字が苦手なので誰でもできる営業職に就き、あまり会話せずとも成り立つ地味なルート営業をこなした。その後社内転職して今では安全環境部で働いている。どの場所でも俺は寡黙なキャラで通している。誰も甲高いチー牛の声なんて聞きたくないから。

身の程をわきまえて生きる、それが俺たちの生存戦略だと思う。居心地の良い空間を探して、そこでじっと耐えて、喋らずとも、交流せずとも許される立ち位置を築くしかない。社内の誰が何をしたというような情報は、俺の耳には一切入ってこない。新卒の後輩がしたり顔他所部署の人の噂話をしているのを見て、彼らは俺には手が届かない世界で生きているんだなと悲しくなるが、俺が手を伸ばしていい領域ではないこともまた知っている。チー牛には最低限の人権しかない。

よく知らない話題を振られた時には、曖昧に笑って受け流す。沈黙は金だから。昔上司仕事愚痴を喋ったら、翌日にそのまた上司に呼び出されてキツく叱られたことがトラウマで、それ以降誰にも心を開いていない。だから、いつも曖昧に笑って受け流す。

今週も仕事を終えた。仕事中の俺は部署システムの一部になったみたいだ。A→俺→Bのように、決まりきった仕事をこなす毎日書類の内容に抜け漏れがないか確認する。突き返すか承認して上に回す。月に一回事業部長と産業医工場の見回りをする。定期的に廃棄物分別を促す。現場普段通りか、毎日決まったルートで巡視をする。同じ弁当を食う。定時になったらチャリで家に帰る。

俺はチー牛だが、最低限の生活を送ることはできる。金曜夜にウーロンハイを作って飲む。ラジオを通して流行りの曲を聴く休日には工場の周りをウォーキングする。行きつけの中華料理店餃子定食を頼む。月に一回極楽湯へ行く。盆と正月には墓参りをする。

俺たちチー牛は、誰にも迷惑をかけないように、この世界の片隅で生きている。

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