2025-09-12

医学部になじめずに6年間が終わろうとしている

わたしは1浪で入学した首都圏医学部に通い、いま6年生になる。

あと半年卒業するけど、医学部わたしにはつくづく合わない環境だったなと思う。

医学部に入って低学年の時から、周りの人たちがみな「見えない枠を外れないように様子をうかがっている」ように見えていた。あたりさわりのない会話をして、うわべでは人のよさそうな笑顔を張り付けながら、仲良しグループではどぎつい悪口を言っていたりする。

そういう雰囲気が嫌だったので、人とあまりつるまなかったら、1年生のうちにあっという間に孤立した。そして、今もとうとう孤立したまま、医学部卒業することになりそうだ。

わたし哲学とか、医療日本社会がどうなるのかとかそういう話に興味があったけど、そんな話ができる人はほとんどいなかった。「意識高い系だね」と、鼻で笑われた。

みんな、誰が付き合ったとか別れたとか結婚秒読みだとか、だれが試験に受かったとか落ちたとかそんな話ばかり。

医者社会を知らない」と言われるのも、無理はないと思った。

みんな、自分の半径5メートルのことしか興味がないのだから

世界が狭くなるのが嫌で、わたし自分の居場所は学外に持とうと思った。

ボランティアインターンに参加して医学部生以外のいろいろな人とかかわったことで、自分のいる世界特殊なんだと分かって救われた。

その時出会った人たちは、自分人生自分で切り開こうとしている人たちばかりで、自分視野も広がった。

高学年になってくると、医学知識必死に詰め込んできた人たちの中で、能力至上主義知識偏重主義的な雰囲気が色濃く立ち込めるようになった。

成績の良くない再試験常連の人や、口頭試問にスムーズに答えられない人を笑いものにしたり、なんなら明らかに見下していたりする人も多かった。

論理的によくわからないものあいまいもの、すぐに役に立たないものは「無意味」としてそぎ落とされていった。論理的説明できる医学知識がすべてだと言わんばかりに。

講義の時も、試験に出る話の時は必死メモをとるのに、先生キャリアの話や雑談になったとたんに態度が悪くなる人、「あいつ話長いんだよ、国家試験勉強させろよ」と悪態をつく人の多いこと。名門高校出身で、成績も優秀、挫折せずに現役で医学部に入っている人のほうがこういうことを言う人が多かったような気がする。

勉強熱心なのは良いことだと思うけれど、知識能力がすべてを測るものさしになってしまうと、人間的に大事ものがどんどん零れ落ちていくのではないだろうか。

「周りの人の動向から外れないこと」がモットー多数派医学生たちの間では、こうした風潮に大勢の人があっという間に飲み込まれていった。

病院で実習するときにも、違和感を抱くことが多かった。

たとえば実習の最初、その科でお世話になる先生挨拶するときに、出身高校まで発表させられること。

もう全員高校卒業して少なくとも5年は経つのに、まだ高校の話するの…?と正直違和感を隠せなかった。

首都圏の名門中高一貫校出身の人には先生たちもひとしきり絡む。もはや、「子供中学受験させてその学校に入れたいけどどんな勉強した?」とかまで聞く。いやそれいま聞く必要ある?

わたしはそこまで知名度の高くない高校出身だったので、毎度微妙な反応をされて特につっこまれることもなく、虚無な時間をやり過ごした。

エリート選民思想蔓延する空気の中で、どうにか息がしやす場所を探しながら過ごした6年間は本当に息苦しかった。

医師国家試験受験資格を得るためだけに、心を無にしてなんとか毎日学校に通った。

周りの人たちは、大学受験期と同じように、より知名度レベルが高い病院、都会の病院を探し求めて就職が決まろうとしている。「成長という幻想」にとらわれているように見える。

わたし東京出身だが、自分意思で、あえてゆかりのない地域の、ほとんど誰も知らないけど、独特な取り組みをしていて面白そうな、自分の肌に合いそうな病院就職することに決めた。

早く卒業して、この能力主義的な空気から抜け出したい。

その一心で、国家試験に向けて勉強している。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん