忘年会やら風邪で寝込むやらで遅くなってしまったが、去る13日、JA高知はた主催による
「TPP交渉参加反対集会」
が催され、約400人があいにくの雨のなか、TPP交渉参加断固反対との意気高く四万十市中をデモ行進。不肖紅星も、農家見習いとして隊列の末席に連ならせて頂いた。
紅星に研修施設の所長を通じて本集会の話があったのは10日金曜日。以前よりTPP問題は自分と密接に関係のある事ながら何の行動も起こせていない事に忸怩たる心地で居たので、所長の「出来たらデモ行進にも参加して」の言に、「出来たらではなく、是非ともこちらから最後まで参加させて欲しい」と返した事だった。
そして当日13日、いつもより早く出所して茄子の手入れや収穫そして出荷作業を済ませた後、一旦帰宅して昼食を摂り、自転車で会場のJA会館に向かった(JA会館は徒歩でも5分ほど、ウチのご近所なのだ)。
会館に近づくと、いつの間に掲げられたのか、「TPP交渉参加断固反対! 日本の国土と食を守ろう!」のスローガンが目を引いた。JA会館は地元スーパー『アピアさつき』の真正面、このスローガンはその買い物客に訴える上でGJ!である。
会館の入口には、デモ行進に使うむしろ旗やプラカードが用意されていたので写真撮影。
階段を上り会場の大ホール前に着くと、高知県議予定候補(JCP)の岡本和也さんが『TPP交渉参加断固反対』の集会ハチマキを締め、田頭県議とともにJCPのTPP問題ビラを配っていた。下はすかさず数枚の写真に納めたうちの1枚。保守層の多い農業分野、受け取りを渋る人も出るのではと思ったが、それは要らぬ杞憂、紅星の見ていた限り拒む人は居らず、岡本さんや田頭さん(田頭さん自身、稲作農家である)と親しげに言葉を交わす人も多かった。
他にも知り合いではsimanto114さんや、民青のK君も来ていた。K君とは久しぶりにあったので近況交流と「何で参加したん?」と聞いたら、「だってウチも農家で(JAの)組合員ですから」と返って来た。そういえばK君ちは兼業で農家していると昔聞いたっけ。
他にも民商時代の知り合い(民商にも農家の会員さんが結構いる)が来ていたりして挨拶をしているうちに時間が来たのでホールへ。他の研修生の皆はどこかな?とキョロキョロしていると、結構前の方で手招きしている。こちらとしても写真撮るので前の方が好都合。
席に着き、ハチマキを締めて前を見ると、壇上にJA旗と日の丸、横に大会スローガンが躍っている。日の丸に一瞬気になるものがあったが、「君が代」とは違い、日の丸には元々それほどの嫌悪感はない紅星なので、まァこんなものなのかなという気になった。
そして定刻午後2時、中岡・JA経営管理委員会会長の挨拶で集会がスタート。
次いで、佐竹・代表理事理事長が、資料を基に、TPPに関する情勢報告を行った。報告ではこれまでのオレンジ・牛肉の輸入自由化を招いたWTO交渉、さらに続くFTA(EPA)締結は評価しており、それは強い違和感を持ったが、よくまとまった資料でTPP交渉参加がもたらす影響を告発していたのは大変良く、JA組合員それぞれが「TPP参加やむなし」の声に反論する上で大きな力となると感じた。
メッセージ紹介では、高知3区の衆議院議員である山本有二氏と、大西黒潮町長のものが紹介された。
山本議員は11月に東京であったTPP反対全国集会にも参加しており、この集会にもメッセージを寄せるのは自然かつ当然であるが、日本の農林水産業を滅茶苦茶にし、食料自給率を(カロリーベースで)40%にまで低下させたがは歴代自民党のセンセイ方の仕業である。先の衆議院議員選挙でも『FTA・EPAの締結推進』をマニフェストに掲げた、更なる輸入自由化推進政党が自民党である。
それが今頃、どの面下げて「TPP交渉参加断固反対」と現れるか!?「自民党内でもTPP交渉参加に賛否両論あり、来年の統一地方選までにまとめる」とマスコミ報道されているが、恐らくは「TPP参加賛成」、もし「TPP参加反対」と表明したとしても、それは「反対のための反対」、民主党が「賛成」だから「反対」だという類の、米国の保守二大政党間でよく見られる図式に過ぎない、無責任極まりないものである。
大西町長のメッセージに対する拍手に対し、山本議員のそれに対しては拍手が殆どなかったが、参加した農家の方の無言の抗議が込められていると感じたのは紅星の考えすぎだろうか?
さらに、生産部会を代表して松本畜産部部長、女性部を代表して宮脇女性部部長が決意表明。
宮脇女性部長の「コメンテーターのTPP推進発言が目立つワイドショーのスポンサーは大抵自動車会社だったりするが、そういう人達にTPP参加は仕方ない事と皆が思わされている事に腹が立つ。幡多の自然を見るために観光客が大勢訪れるが、そういった自然・景観は私達農林水産業に携わる人々が手入れをして保たれているのではないか。TPPにより農林水産業が壊滅的打撃を受けると、地域も崩壊する。今まで農家は政治家にお任せ、頼り切りだったが、これからはそうは行かない。皆で声を上げて行きましょう。」には全く同感。
そして、『TPP交渉参加 断固阻止に関する特別決議』案を、福留運営委員会委員長が読み上げ提案されると、満場の拍手で承認。
特別決議の文面は以下の通り。
TPP交渉参加 断固阻止に関する特別決議
政府は「包括的経済連携に関する基本方針」を、11月9日に閣議決定した。このなかでTPPについて、交渉の参加・不参加を先送りにしたものの、「関係国との協議を開始する」と判断したことは、きわめて遺憾である。
我々は、改めて、TPP交渉への参加は反対であり、絶対に認めることはできない。
仮に今後、政府がすべての品目を自由化交渉対象とし、TPP交渉に参加する判断を行えば、WTO農業交渉における、「多様な農業の共存」という高い理念の実現に向けた取り組みは、一瞬にして水泡に帰し、多くの国々や関係者の信頼を裏切る背信行為となる。
基本方針では、わが国の農業分野について「国を開く」ことを目標に掲げているが、農業分野はすでに十分に開かれている。
わが国は世界最大の農林水産物輸入国であり、国民の圧倒的多数が望むのは、食料自給率の向上である。
わが国、1億2千万人の国民の食糧安全保障を担保し、安全・安心な食料の安定供給と併せ、農林水産業が果たしている地域経済、社会、雇用の安定を確保することが、わが国の「強い経済」を実現することにつながり、「未来を拓く」ことになる。
わが国は、今、たしかに「歴史の分水嶺」に立っている。地球環境を破壊し、目先の経済的利益を追求し、格差を拡大し、世界中から食料を買いあさってきた、これまでのこの国の生き方を反省しなければならない。
自然の恵みに感謝し、食べ物を大切にし、美しい農山漁村を守り、人々が支え合い、心豊かに暮らし続け、日本人として品格ある国家を作っていくため、また、高知県の豊かな環境、農業を守っていくため、我々は、TPP交渉への参加を断固阻止しなければならない。
このため、我々はJAグループや他の共同組合組織と手をとりあって、地域住民の理解と支持を得ながら、TPP交渉参加に断固反対する大きな運動を展開していく決意である。
以上、決議する。
平成22年12月13日
JA高知はた TPP交渉参加反対集会
集会の締めくくりに、松浦青壮年部部長の音頭で『ガンバロー三唱』を行った後、デモ行進に参加すべく皆合羽に着替え、ロビーでむしろ旗やプラカード等を受け取っていく。
そしてJA会館から四万十市役所までの約700mを、「TPP交渉参加、断固反対!」、「多様な日本農業を守ろう!」と唱和しつつデモ行進し、沿道の四万十市民の皆さんに訴えた。大雨が降りしきり気温も下がるなかでの行進だったが、下校途中の男子高校生の集団が「農家のおんちゃんら、ガンバレ~!!」と応援してくれ勇気百倍、こちらも「おおっ~、頑張るけん!!」と返す。
参加者の人が何人か言っていたように、「こんなデモ行進なんて今までした事もない」という人達の集団だから、シュプレッヒコールや行進の仕方もどことなくぎこちないが、そんな農家のおんちゃんやおばちゃんが危機感から立ち上がらざるを得なかったのがこのTPPというものなのである。
(予断ながら、集会で発言した人、そしてシュピレッヒコールでも皆、「TPP」を「チ~ピ~ピ~」と言っていて、デモ行進で並んで歩いたsimanto114さんの奥さん(関西出身)に「何でみんなチ~ピ~ピ~って言うんやろか?」と聞かれたので「幡多弁やないですか!?」と答えたが・・・どうなんだろう???)
そしてデモ行進の終着点、四万十市役所。紅星はてっきり外で要請行動をするものと思っていたが、隊列はスルスルと市役所ロビーへと吸い込まれていく。流石にデモの全参加者400人は入りきらんので、中村の参加者150人だけだったが、ロビーで横断幕やむしろ旗、プラカードを掲げつつ、田中全・四万十市長を待つ。当然平日の市役所だからJAと関係ない市民が多数訪れており、彼らにとっては予想外で合羽を着てむしろ旗持った集団が多数入ってきたものだから、「何事か!?」と驚いた顔をして見ている人もいる。
TV放送用に先ほどのシュプレッヒコールを唱和するなどしていると、市議会の多忙なスケジュールを縫って田中四万十市長が連帯のあいさつをする為に姿を見せた。田中市長は市長になる前は農林中金の支店長などを歴任されていただけあって、「四万十市の発展は農林水産業の振興なくしては有り得ない」と日頃から公言され、また市の政策の基本に一次産業の振興を据えた市政を執り行っておられる。そんな市長だから言うまでもなく「TPP交渉参加断固反対」であり、「市で試算してみたが、市内の稲・畜産だけで12億円の経済的損失が出るという結果が出ている。皆さんとともに断固阻止する為にたたかっていきたい」とのあいさつに参加者は「よ~しっ!!」などの歓声で応えた。(因みに四万十市議会は「TPP交渉参加に反対する決議」を採択している)
紅星と同じ研修施設の研修生の中にも「日本の農家は温室育ちで援助金にどっぷり浸かりきっている。TPPのような外圧でもないとこの国の農業はいずれ駄目になる」と主張する人がいるくらいだから、正直TPP交渉参加阻止は一筋縄では行かぬだろう。しかし、黙って手をこまねいていては農林水産業だけでなく、日本社会のあらゆる分野が「国際競争」の名の下、容赦ない淘汰の嵐に晒され、地方社会の崩壊など恐るべき事態も杞憂と一笑に附している場合ではなくなるやも知れない。
まずはここから、TPP交渉参加推進勢力の攻勢を押し戻し、真に国際的な共利共生の社会を創り上げていく、地道ではあるが意義深い行動を起こすしかない。
帰り道、他の参加者の人達と言葉を交わしながら、そう強く思った。
【高知新聞12月14日朝刊6面より引用始め】
TPP反対400人デモ 高知県内第1弾 四万十市で訴え
JA高知はた(四万十市右山五月町、中岡全経営管理委員会会長)は13日、政府の環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加反対を訴える集会とデモ行進を行った。
11月の県農協農政会議での反対集会実施決議を受けての行動で県内第1弾。会場の本所大ホールには、管内7市町村から生産者約400人が集合。
中岡会長が「日本は世界一の農林水産物輸入国。関税の完全撤廃は日本の農業に壊滅的な打撃を与える。絶対に認めるわけにはいかない。積極的に行動に出るべきだ」とあいさつ。TPP参加の場合に予想される影響の紹介と、生産部会の代表による「断固反対」の決意表明が行われた。
この後、JAビルから市役所までの約700メートルをデモ行進。横断幕やむしろ旗を掲げて、「食糧供給は国内で賄おう」などと連呼。ロビーで待ち受けた田中全市長「私も絶対反対の立場。皆さん方と先頭に立って戦っていきたい」とエールを送ると、「おーっ!」と場が沸いた。
県内各農協では同様の反対集会を順次実施し、締めくくりとして来年6月までに県集会を開く予定。
【掛水雅彦記者】
以上、当ブログ記事をお読み下さり有難うございました。したっけ☆
この記事に対するコメント
ここまできたか、という暮れの感想です。
歴代自民党を超えてゆく民主党の自由主義経済への傾斜です。
医療の廻りでも、介護や保育など金があれば助かるが、いったん金がなくなればどん底への支点から真っ二つに折れたシーソーゲームが登場です。
報告文の中で、TPPをチーピーピーと発音するのは幡多弁かというお話がございましたが、土佐弁でもPTAや茶会はピーチーエーとかチーパーチーとか申します。
方言の英語もあって良いかと存じます。